ガイダンス - 東北大学大学院法学研究科・法学部

2014年度法情報学演習
第1回 ガイダンス
(演習の趣旨,内容,評価の説明)
2014年10月2日(木)
東北大学法学研究科 金谷吉成
<[email protected]>
2014年度法情報学演習
1
2014年10月2日
ガイダンス
 概要
– 演習の趣旨、内容、評価について説明し、本演習の位
置付けを確認する。また、情報社会およびインターネッ
トの成り立ちとわが国の対応、インターネットが持つ光
と影を概説し、インターネット上で生じるいくつかの法
律問題を紹介する。
 目的
–
–
–
–
本演習の位置付けを確認する
ゼミ生同士がお互いの顔を覚える
情報社会およびインターネットの現状がわかる
情報に関する法律問題について、どのような問題が実
際に生じているかを理解する
2014年10月2日
2
2014年度法情報学演習
法情報学演習の内容
シラバス参照
– 2014年度法情報学演習ホームページ
http://www.law.tohoku.ac.jp/~kanaya/infosemi2014/
– 少なくとも1人1回はゼミ報告
– 最終レポートとしてゼミ論文を作成
大学院科目として受講する場合は、学部演習のレ
ポートに代えて判例評釈を作成
2014年10月2日
3
2014年度法情報学演習
アイスブレーキング(自己紹介)
名前だけでなく、何か一言
たとえば……
– インターネット利用歴
– 情報法の分野で何か興味を持っていること
– その他、最近関心を持っていること
– PCやインターネットの活用術・失敗談
– この演習に期待すること
– などなど
2014年10月2日
4
2014年度法情報学演習
受講希望者多数の場合
 受講希望者が20名を超える場合は選考を行う。
受講希望者は、以下の要領で受講希望レポート
を提出すること。
出題日:2014年10月2日(木)
提出期限:2014年10月7日(火)午後5時
選考結果発表:2014年10月8日(水)法学部掲示板に掲示
レポート内容:
以下の内容について、ワープロでA4用紙1枚または1,200字以内
にまとめ、氏名・学籍番号を明記の上、金谷宛に電子メールで提
出してください。
1. 情報に関する法律問題について、関心を持っていること
2. 本演習に期待すること
2014年10月2日
5
2014年度法情報学演習
進展する情報化社会
 情報革命
– 「市民革命」「産業革命」とならび称されるほどの変化
– しかも現在進行形
 携帯電話でのインターネット利用は1999年から
 10年後の携帯電話で何ができるか?
– e-Japan戦略(2001年)以降、国家戦略としてICT利用
を推進
 パソコンの国内出荷実績(2013年度)
– デスクトップ 366万1,000台 2,744億円
– ノート型 844万8,000台 6,519億円
 (社)電子情報技術産業協会(JEITA)
http://www.jeita.or.jp/japanese/stat/pc/2013/
2014年10月2日
6
2014年度法情報学演習
携帯電話の進化(NTTドコモの例)
(出典)携帯電話の歴史-DoPlaza::携帯電話情報サイト
http://www.doplaza.jp/museum/index.html
1987年NTT
TZ-802B
2007年Panasonic
FOMA P903iX
1996年NEC
N201 HYPER
2014年10月2日
2014年Sony
Xperia A2 SO-04F
7
2014年度法情報学演習
環境としての情報通信技術
ICTが環境の
一部となって
生活の利便性や
安全性を高める
1000
1
人
あ
た
り
の
プ
ロ
セ
ッ
サ
数
ユビキタス
100
システムLSI
10
組み込み
VLSI
パソコン
1
LSI
0.1
ワークステーション
IC
オフコン
0.01
0.001
人間が意識
してICTを使う
トランジスタ
大型コンピュータ
真空管
黎明期
1950
2014年10月2日
1960
1970
1980
1990
8
2000
2010
2020
2014年度法情報学演習
他の産業にない価格性能比
km/h
ロケット
10,000
2桁
から
4桁
1,000
100
10
自動車
人
航空機
鉄道
自転車
演算数/秒
1京
10桁
から
12桁
1兆
サーバ
1億
1万
人
100円
2014年10月2日
スパコン
PC
携帯電話
電卓
1万円
100万円
9
1億円
100億円
2014年度法情報学演習
インターネットの利用者数・人口普及率の推移
※調査対象年齢
6歳以上
(出典)総務省『情報通信白書平成26年版』338頁(2014年7月)
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/
2014年10月2日
10
2014年度法情報学演習
インシデント報告数の推移
メール
通報件数
CERTへのメール通報件数・インシデント報告件数
インシデント
報告件数
800000
160000
700000
140000
米国CERT/CC(コンピュータ緊急
対応センター)では、2004年以降
インシデント報告件数を収集・公
表していない。(インシデントの多
様化・複雑化のため)
600000
500000
400000
120000
100000
80000
300000
60000
200000
40000
100000
20000
0
0
1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
(出典)CERT Statistics http://www.cert.org/stats/
2014年10月2日
11
2014年度法情報学演習
不正アクセス禁止法違反事件検挙件数の推移
(出典)総務省『情報通信白書平成26年版』350頁(2014年7月)
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/
2014年10月2日
12
2014年度法情報学演習
身近になったコンピュータとインターネット
受講生の皆さんは、生まれたときからコン
ピュータやネットワークが身近にある社会
に生きている(ディジタル・ネイティブ世代)
しかし、コンピュータやインターネットの歴史
はそれほど古くはない
インターネットが発展することで、何ができ
るようになったか?また、どんな問題が生じ
ているか?
2014年10月2日
13
2014年度法情報学演習
インターネットでできること
 電子メール
 メーリングリスト、メルマガ
 Webによる情報収集、情報発信
 ネットショッピング、ネットオークション、インターネット
バンキング
 コミュニケーション(電子掲示板、チャット、SNS)
 娯楽としてのインターネット(映画、音楽、ネットゲー
ム)
 インターネット・ラジオ、インターネット・テレビ
 分散コンピューティング(SETI@home、ビットコイン)
– いつでもどこでも誰とでも
– 携帯電話からも利用可能
– 一方で、情報漏えいによって、取返しのつかない損害を発
生させてしまう危険も
2014年10月2日
14
2014年度法情報学演習
インターネットの特質
分散型ネットワーク
– 全体を統括するコンピュータは存在しない
全体を管理する特定の責任主体は存在しない
– 相互に接続されているサーバコンピュータが、
一定のルールに従って情報をやりとりすること
で成り立っている
接続している組織が各ネットワークを管理する
– 東北大学法科大学院ネットワークに接続するPCについて
は、東北大学に接続記録等が保存される
インターネットにおいて広く利用される技術やルー
ルは広く公開され、コンピュータの種類やOSを超え
て、様々なコンピュータ間で通信を行うことができる
2014年10月2日
15
2014年度法情報学演習
広がるインターネット利用(大学)
 カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)は、いく
つかの講座の全講義をYouTubeで無償公開
– UC Berkeley http://www.youtube.com/user/UCBerkeley
 マサチューセッツ工科大学(MIT)は、学術論文をWebで
無償公開
– DSpace@MIT http://dspace.mit.edu/
 Apple iTunes U
– 慶応/東大/明治/早稲田がiTunes Uで講義ビデオ配信
http://www.apple.com/jp/education/itunes-u
 東北大学の取り組み
– 東北大学インターネットスクール http://www.istu.jp/
– 東北大学動画
http://www.youtube.com/user/tohokuuniversity
2014年10月2日
16
2014年度法情報学演習
広がるインターネット利用(政府機関等)
 政府や国の行政機関でもインターネットを使った広報活
動を積極的に行っている。
– 政府インターネットテレビ http://nettv.gov-online.go.jp/
– 衆議院インターネット審議中継 http://www.shugiintv.go.jp/
– 参議院インターネット審議中継 http://www.webtv.sangiin.go.jp/
 メディアが紙媒体のものからインターネットに変わりつつ
ある一例を挙げると、『高等裁判所民事判例集』『高等裁
判所刑事判例集』は54巻2号(平成14年)をもって休刊と
なり、現在下級審判例の公式な公表は、裁判所ウェブサ
イト(http://www.courts.go.jp/)の「裁判例情報」でのみ行
われるようになっている。
2014年10月2日
17
2014年度法情報学演習
インターネットの歴史①
 ホッブズのインターネット年表(日本語訳)
http://www.zakon.org/robert/internet/timeline/
http://museum.scenecritique.com/lib/defcon0/hc/rfc2235-jp.txt
 1940年代
プログラム内蔵式電子計算機の登場
 1950年代
1957年:ソ連が最初の人工衛星スプートニクの打ち上げに成功。そ
れに対しアメリカは、国防総省内に高等研究計画局(ARPA:
Advanced Research Projects Agency)を創立する。
 1960年代
1961年:アメリカで電話中継基地の爆破テロにより、非常事態での
通信不能が判明する。核戦争にも耐えうる通信システムの研究
が開始される。
1969年:アメリカ国防総省の委託研究によりインターネットの前身と
なるARPANETが誕生する。最初の接続ノードはUCLA。その後ス
タンフォード研究所、カリフォルニア大学サンタバーバラ校、ユタ
大学が接続される。
2014年10月2日
18
2014年度法情報学演習
インターネットの歴史②
 1970年代
1971年:電子メールプログラムの発明。
1973年:ARPANETへの最初の国際接続。
1976年:パーソナル・コンピュータという言葉が登場する。
1977年:日本語ワープロ専用機が発売される。表計算ソフトが発売
される。
 1980年代
1982年:米国防衛通信局(DCA、現在はDISA)とARPAが、インター
ネットの基本プロトコルであるTCP/IPを確定する。
1984年:ドメイン名システム(DNS)が導入される。ホスト数が1,000を
突破する。JUNET(Japan Unix Network)が創設される。
1986年:コンピュータ・ウイルスが作られ始める。
1987年:ニフティサーブ(NIFTY-Serve)スタート。日本にパソコン通
信ネットワークが普及する。
1989年:ホスト数が100,000を突破。インターネットと商用パソコン通
信との間で初の電子メール交換開始。
2014年10月2日
19
2014年度法情報学演習
インターネットの歴史③
 1990年代
1990年:ARPANETが解消される。
米国で最初の商用プロバイダが現れる。
1991年:CERN(ヨーロッパ合同素粒子原子核研究機構)によって
World-Wide Web(WWW)がリリースされる。
1992年:ホスト数が1,000,000を突破する。
クリントン大統領の米国大統領選挙の公約「情報スーパーハイ
ウェイの実現」
Microsoft Windows 3.1 日本語版 リリース
1993年:画像を扱うことのできるWWWブラウザMosaicがリリースされ、
WWWの利用が急速に普及する。
1994年:ショッピングモールがインターネットに進出する。
この頃、最初の迷惑メールが登場。
また、インターネット銀行が登場する。
1995年:Microsoft Windows 95が発売され、WWWや電子メールが本
格的に家庭で使われるように。
1999年:最初のネット専門銀行が設立される。
2000年問題が取り沙汰される。2ちゃんねるサービス開始。
2014年10月2日
20
2014年度法情報学演習
インターネットの歴史④
 2000年代
– 2000年:サービス妨害攻撃(DoS: Denial of Service)が広範囲で
行われる。
中央官庁のWebサイトが一斉に書き換えられるなどの被害が出る。
Webページの総ファイル数が10億ページを越える。
– 2001年:欧州理事会がインターネット上の犯罪防止協定(サイ
バー犯罪条約)を締結する。
ウイルス(Code Red worm、Sircam virus)が各地のWebサーバに
感染し猛威をふるう。
– 2002年:ブログが流行し始める。
– 2003年:全米レコード協会(RIAA)が、音楽ファイルの違法共有に
対して261人の個人を提訴する。
– 2004年:Facebookサービス開始。
– 2005年:エストニアで、世界で初めて議会選挙に関するインター
ネット投票が実施される。
– 2006年:Twitterサービス開始。
– 2009年:インターネット、40周年を迎える。
– 2011年:IANAが管理するIPv4アドレスが枯渇する。
2014年10月2日
21
2014年度法情報学演習
インターネットの歴史⑤
 1990年代後半以降、新しいサービスが次々と
登場
– ブログ、ソーシャル・ネットワーキング・サービス
(例:Facebook、mixi)、動画提供サービス(例:
YouTube、ニコニコ動画)、地図情報サービス(例:
Google Maps)、新しいコミュニケーション・サービス
(例:Twitter、pixiv)、クラウド・コンピューティング
(例:Gmail、DropBox、Amazon EC2)などなど……
 こうした新しいサービスに対しても、考えなけ
ればならない法律問題はいくつでもあるように
思われる。
2014年10月2日
22
2014年度法情報学演習
日本のIT政策
 背景
– 1980年代までは、日本の製造業の国際競争力は優越
していた
 技術力は世界最高水準、高品質・高信頼性
– 1990年代「失われた10年」
 バブル経済の崩壊
 平成不況により、多くの企業がIT投資を抑制
 IT変革期における対応の遅れが、国際競争力の低下につな
がる
 この状況は2000年代も続いており、「失われた20年」という指
摘も(さらに……?)
 状況を打破するためには、官民あげてのITの推進
が重要であるとして、国は、長期的なIT推進戦略を
打ち出すことになった。
2014年10月2日
23
2014年度法情報学演習
インターネットをめぐる政府の対応
 「高度情報通信社会に向けた基本方針」(1995年2月21日、
高度情報通信社会推進本部決定)
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
誰でもが情報通信高度化の便益を安心して享受できること
社会的弱者に配慮すること
活力ある地域社会の形成に寄与すること
情報の自由で安全な流通を確保すること
情報通信インフラを総体的に整備すること
諸制度の柔軟な見直しを図ること
グローバルな高度情報通信社会の実現を図ること
 「情報化」の一つの柱として「電子政府の実現」を推進
– 「ミレニアム・プロジェクト」(1999年12月)
– 電子政府の総合窓口 http://www.e-gov.go.jp/
2014年10月2日
24
2014年度法情報学演習
IT基本法とIT戦略本部
 高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法、
2000年12月6日公布、2001年1月6日施行)
– http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H12/H12HO144.html
– ITの推進が国の重要政策であるとして、国としての方針や
理念を提示
– 基本理念(第3条)
 「すべての国民が、高度情報通信ネットワークを容易にかつ主体
的に利用する機会を有し、その利用の機会を通じて個々の能力
を創造的かつ最大限に発揮することが可能となり、もって情報通
信技術の恵沢をあまねく享受できる社会」の実現
 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略
本部、2001年1月22日設置)
– 基本理念及び施策の基本方針に沿って、政府によって迅
速に講ぜられるべき施策を定めた重点計画を策定、イン
ターネット等により公表
2014年10月2日
25
2014年度法情報学演習
国家戦略の推進(e-Japan戦略)
 e-Japan戦略(2001年1月)
– 「我が国が5年以内に世界最先端のIT国家になること」
– 超高速ネットワークインフラ整備及び競争政策
 2005年までに、世界最高水準のネットワークを整備し、国民にとって安価で使いや
すいネットワーク・インフラ環境を実現する。そのために、電気通信事業における大
幅な規制の見直しや独占禁止法上の指針の策定等を通じた公正競争条件の整備、
光ファイバ等の敷設の円滑化等の施策を推進する。
– 電子商取引ルールと新たな環境整備
 2003年に、電子商取引を阻害する規制の改革や電子契約ルールや消費者保護
等に関する法制整備を行い、誰もが安心して電子商取引に参加でき、便利で使い
勝手の良い環境を整備して、電子商取引の大幅な普及を促進する。
– 電子政府の実現
 2003年までに、行政(国・地方公共団体)内部の電子化、官民接点のオンライン化、
行政情報のインターネット公開・利用促進をするために、地方公共団体の取組み
支援等を推進し、電子情報を紙情報と同等に扱う行政を実現し、幅広い国民・事
業者のIT化を促す。
– 人材育成の強化
 2005年までに、国民すべてがインターネットを使いこなせるようになる中で、専門的
な知識・技術を有する創造的な人材がITのフロンティアを開発していくようになるよ
う、学校のIT化、あらゆる人へのIT学習機会の付与等の施策を推進する。
 2005年までに、米国水準を上回る高度なIT技術者・研究者を確保する。そのため
に、大学改革や外国人受け入れによる技術力の抜本的向上を図る。
2014年10月2日
26
2014年度法情報学演習
e-Japan戦略の達成状況
 超高速ネットワークインフラ整備及び競争政策
– ブロードバンドの急速な普及により、世界で最も高速で廉価な環境となっ
たと言える
 電子商取引ルールと新たな環境整備
– 電子署名法、電子契約法、特定商取引法など、電子商取引を促進する
ための多くの法的措置が行われた。その効果もあり、電子商取引は、順
調な発展を遂げた。
 電子政府の実現
– 行政内部の電子化は進展したが、2005年時点では端緒についたばかり
– 電子署名法、認証制度、e-文書法など手続や文書の電子化のための措
置もとられ、情報システムそのものは充実してきたが、肝心の利用率は
まだ低い状況
 人材育成の強化
– 初等・中等教育での情報科目の正規科目化
– 学校へのPC配置、インターネット接続環境は整備されたが、教員側の体
制が十分とは言えず、あまり効果が得られていない
– 高等教育では、産業界のニーズとのミスマッチが多く、即戦力となる人材
の育成ができているとは言い難い
2014年10月2日
27
2014年度法情報学演習
IT新改革戦略、i-Japan戦略
 IT新改革戦略(2006年1月)
– 「いつでも、どこでも、誰にでもITの恩恵を実感でき
る社会の実現」
e-Japan戦略は、部分的には実現したものの、いまだ多
くの課題が残されている
また、ITの発展は急速であるため、継続的な推進が必
要
構造改革による飛躍、利用者・生活者重視、国際貢献・
国際競争力強化
 i-Japan戦略2015(2009年7月)
– 第3次5か年計画
– 2010年策定予定だったが、リーマンショックに続く
深刻な経済危機に対応するため前倒しで策定
2014年10月2日
28
2014年度法情報学演習
新IT戦略
新たな情報通信技術戦略(2010年5月)
– 2009年の政権交代を受けて、新政権によるIT
基本施策が示された
①国民本位の電子行政の実現
②地域の絆の再生
③新市場の創出と国際展開
国民ID制度(マイナンバー)←2013年成立
通信・放送の法体系の見直し(2011年6月30日完全
施行)
– 地デジ完全移行
2014年10月2日
29
2014年度法情報学演習
国民ID制度(マイナンバー)
 共通番号制度
– 「行政手続における特定の個人を識別するための番
号の利用等に関する法律」(2013年5月31日公布、一
部未施行)
– 国民ひとりひとりに番号を付与し、納税実績、年金、医
療保険などの情報を行政機関が管理する仕組み
– 行政手続き簡素化などのメリット
– 番号漏えいによる悪用の懸念
 cf. アメリカの社会保障番号(SSNs: Social Security Numbers)
– 本人確認の手段として、社会保障以外の行政事務や、民間の企業
にも広く使われている
– 個人番号の利用範囲を限定
 施行後3年をめどに利用範囲の拡大について検討するとして
いる
 悪用や弊害をどのように防止しうるかが今後の課題
2014年10月2日
30
2014年度法情報学演習
現在の取り組み
 世界最先端IT国家創造宣言(2013年6月策定、
2014年6月改定)
1. 革新的な新産業・新サービスの創出と全産業の成長
を促進する社会の実現
 公共データの民間開放(オープンデータ)
 ビッグデータの利活用推進等
2. 健康で安心して快適に生活できる、世界一安全で災
害に強い社会の実現
 医療情報連携ネットワークの標準化
 無人やリモートで操作できる災害対応ロボットの導入等
3. 公共サービスがワンストップで誰でもどこでもいつでも
受けられる社会の実現
 2021年度を目途に、原則すべての政府情報システムをクラウ
ド化して、運用コストを圧縮する
 各府省のIT投資の状況等をインターネット経由で一覧性を
もって国民が確認できる仕組みの整備等
2014年10月2日
31
2014年度法情報学演習
情報セキュリティ政策
 情報セキュリティ
– 自分の持つ情報を、不正に改変されることなく、見せる必要
のある人にはきちんと見せ、見せたくない人には見せない、
そのための人的・組織的・技術的な対策を講じること
– 近年は、重要インフラに対する標的型攻撃が増加
 内閣官房情報セキュリティ対策推進室(2000年2月)
① 政府の情報システムのセキュリティ確保
② 重要インフラ防護のためのサイバーテロ対策
③ 情報セキュリティに関する研究開発の推進
 内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)(2005年4月)
– 情報セキュリティ推進対策室の機能強化
 IT戦略本部の下に情報セキュリティ政策会議を設置
(2005年5月)
2014年10月2日
32
2014年度法情報学演習
情報セキュリティ政策会議
 情報セキュリティ政策会議
– わが国の情報セキュリティ基本政策等、根幹に関する
事項を決定する会議
– 第1次情報セキュリティ基本計画(2006年2月)
– セキュア・ジャパン2006/2007/2008(2006~2008年)
– 情報セキュリティ2010/2011/2012(2010~2012年)
– サイバーセキュリティ2013/2014(2013~2014年)
① 「強靱な」サイバー空間の構築
– サイバー攻撃に対する防御力・対応力・回復力の強化
② 「活力ある」サイバー空間の構築
– 産業活性化、高度な技術の開発、人材やリテラシーの育成・涵養
③ 「世界を率先する」サイバー空間の構築
– 閣僚レベルによる発信の強化、国際的なルール作りへの参画
2014年10月2日
33
2014年度法情報学演習
インターネットの立法による規制
 1987年:刑法に電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法234条の2)追加
 1998年:風俗営業法の改正により、アダルト映像をインターネットを通
して送信することに対して規制を強化
 1999年:不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止
法)
 2000年:電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)
 2001年:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信
者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)
電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法
律(電子消費者契約法)
 2002年:電子政府オンライン化関係3法(行政手続等における情報通
信の技術の利用に関する法律)など
特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(迷惑メール規制
法)
 2008年:青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の
整備等に関する法律(青少年ネット規制法)
 2010年:放送法等の一部を改正する法律
 2011年:情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正
する法律
2014年10月2日
34
2014年度法情報学演習
例:防衛省・自衛隊 サイバー防衛隊
サイバー防衛隊を組織(2014年3月)
– サイバー攻撃の脅威に対応
情報の収集、分析、調査研究
24時間体制でサイバー攻撃に対応
サイバー空間は、陸・海・空・宇宙に続く、
第五の戦場であるとも言われる
2014年10月2日
35
2014年度法情報学演習
電子商取引の分野では
 ビジネスのあり方が変化
– インターネット上の通信販売
– インターネットを通じた銀行サービス、保険契約、証券売買
– 取引の決済方法
 これまでのクレジットカードや銀行口座からの引落としに加えて、
「電子マネー」による決済が普及しつつある
 他方で次のようなトラブルも
– 代金を支払ったのに商品が送られてこない
– 注文したものと違うものが送られてきた
– 認可を受けていない薬品や譲渡を禁止されている麻薬等
の売買
– インターネット上での詐欺やねずみ講
– ソーシャルゲームでの予期せぬ高額請求
– 偽のウェブサイトに誘導して、会員情報などの個人情報や
ID・パスワードを盗み取る詐欺(フィッシング詐欺)
2014年10月2日
36
2014年度法情報学演習
インターネットでの表現規制
 ドイツ
– 1997年にいわゆるマルチメディア法 (情報サービス及び通信サー
ビスのための大綱条件の規律のための法律) を制定し、電子商
取引とともに、表現行為についても規制を盛り込む
 アメリカ
– 品位を欠く表現や明らかに不快な表現を青少年に送信することを
禁止する通信品位保持法(Communications Decency Act of
1996 “CDA”)を制定したが、政府は自主規制路線を進んできた。
 これはアメリカがインターネットの発達を重視する政策をとったため
 なお、CDAは1997年のレノ対アメリカ自由人権協会事件で合衆国最
高裁判所により違憲とされた
 日本
– 総務省(旧郵政省)は包括的な法規制を構想してきたが、経済産
業省(旧通産省)は民間主導の発展を主張し、結局自主規制路
線がとられることになった。
2014年10月2日
37
2014年度法情報学演習
インターネット電子商取引の規制
 日本は、電子商取引についても包括的な法規制
はなく、ここでも民間主導の自主的なルール作り
が続けられてきた。
 しかし、実際にさまざまなトラブルが生じており、
民法や消費者基本法の規定をインターネット上の
取引にどのように適用していくべきかが重要な法
律問題となってきている。
 電子商取引を推進するには、さらに包括的な法
制度の整備が求められる。
–
–
–
–
「電子マネー」に関する法制度の整備
「暗号技術」の開発とその法的保護
取引に伴う消費者のプライバシー保護
インターネット上の紛争を裁判外で解決する処理方法
2014年10月2日
38
2014年度法情報学演習
インターネットの光と影
 良い点
– 個人が情報を自ら主体的に選択して収集することが可能になった
– 地球規模のコミュニケーション
– 個人が自己の情報を発信することが可能になった
 悪い点
– インターネットの普及に必要なインフラの整備が不十分
– インターネットの利便性を享受できる人とできない人の間の格差
(ディジタル・ディバイド)
– 無責任な情報の氾濫
– インターネット上での名誉毀損・プライバシーの侵害
– わいせつな画像をサーバにアップロード(サイバーポルノの問題)
– インターネット上での殺人依頼、集団自殺、犯罪予告
– 爆弾の製造方法や自殺のためのノウハウ等の情報が流布
– 青少年に対する有害な表現の送信
– 著作権侵害
– ネットカフェ難民、ネット依存
2014年10月2日
39
2014年度法情報学演習
インターネットは匿名か?
 Webページ、ブログ、電子掲示板
– 著者の実名が記載されていないことが多い
– 一方で、現実の店舗で現金で何かを買うときには
いちいち名乗らなくてもよいのに、インターネット上
で買物をするときは、何かしら自分の身元を確認
される
 Webページや電子掲示板を閲覧したとき、書
込みをしたとき、誰かにメールを送信したとき
に、相手方やプロバイダ(インターネット接続
業者、ISP)にどのような情報が記録され伝わ
るのか?
2014年10月2日
40
2014年度法情報学演習
アクセスログ(通信記録)
 通信の相手に伝わる情報
– 電子メールの場合、本文/差出人/宛先/件名
/送信日時/使用したメールソフト名/電子メー
ルの経路情報等
– Webサイトの場合、アクセスした日時/IPアドレス
/OSやブラウザのバージョン・種類等
 プロバイダに記録される情報
– 通信元のIPアドレス/通信先のIPアドレス/メー
ルアドレスやURL/日時等
– また、プロバイダは、自分の管理するIPアドレスを
自らのユーザに割り当てており、どのユーザがど
のIPアドレスを利用したかを把握している
2014年10月2日
41
2014年度法情報学演習
IPアドレス
 PCでWebページを閲覧するという行為
– 特定のWebサーバに対して、特定のPCに対して情報
を転送せよというコマンドを出すこと
– したがって、必ずこちらのPCを識別するための情報
(IPアドレス)が相手側のサーバや情報伝達の経路上
の通信機器に送信されている
 IPアドレス
– インターネット接続機器には、機器毎にユニークなIPア
ドレスが割り当てられている
– 現在一般的に使われているIPアドレスは32ビットの数
値列
 二進数:10000010.00100010.10010001.11110000
 十進数:130.34.145.240
– IPv4 232=4294967296≒43億
– IPv6 2128≒340×1036=340×1兆×1兆×1兆
– cf. 世界の人口 71.6億人(2013年時点での推定値)
2014年10月2日
42
2014年度法情報学演習
IPアドレスの管理体制
アドレス資源(IPアドレス、ドメ
イン名、ポート番号等)の標準
化や割当てを行う
北米
欧州
アジア・太平洋
南米
アフリカ
出典:社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター
http://www.nic.ad.jp/ja/ip/admin-basic.html
2014年10月2日
43
2014年度法情報学演習
ドメイン名
 ドメイン名
– 単なる数値の羅列では記憶困難
– アルファベット文字を組み合わせた文字列
www.law.tohoku.ac.jp
– ドメイン名とIPアドレスとの対応は、DNS(Domain
Name System)と呼ばれる仕組みにより、世界的
にデータベース化されている
JPNIC
http://www.○○○.co.jp/
(国別ドメイン)
第3レベル
ドメイン
第2レベル
ドメイン
第1レベル
ドメイン
ICANN http://www.○○○.com/
(一般ドメイン)
2014年10月2日
第2レベル
ドメイン
44
第1レベル
ドメイン
※http://は通信方法を
wwwはホスト名を表す
2014年度法情報学演習
IPアドレスとユーザ情報
一般的に、IPアドレスは、一定の範囲毎に
各ISPが管理
– ICANN→APNIC→JPNIC→TAINS(東北大学)
– IPアドレスの範囲:130.34.0.0~130.34.255.255
これを、各PCに一つずつ割当てている
216=65536では、東北大学の教職員・学生の全員
に割当てることができないので、実際にはプライ
ベートアドレスなども使用している
– つまり、どのユーザがどのIPアドレスを使用し
てインターネットにアクセスしているかというこ
とは、これらをたどっていけば把握可能
2014年10月2日
45
2014年度法情報学演習
ユーザ特定の困難
 しかし、実際のユーザ特定は困難
– IPアドレスとユーザを結びつける情報は一般に非公開
 ISPは、プライバシーや通信の秘密を保護する観点から、情報
の開示に慎重
 ユーザ情報が開示され得る場合
– 捜査機関(警察・検察)による捜査が行われる場合
– 名誉毀損や著作権侵害等の権利侵害に対して訴訟が提起されよう
としている場合
– ネットカフェや公衆無線LAN
 ユーザの本人確認をしないでネットの利用を許可しているとこ
ろもある
– 電子掲示板
 情報発信者が多数いるサイトに書き込まれた情報については、
掲示板の管理者が発信者に関するアクセスログを保存してい
なければ誰の発言なのかを特定することができない
2014年10月2日
46
2014年度法情報学演習
IPアドレスで発信者が特定できるか?
 アクセスログ(通信記録)からIPアドレスがわ
かる
 ISPでは、どのユーザがどのIPアドレスを利用
していたかを把握している
 よって、IPアドレスから発信者が特定できる?
– 契約者名がわかるだけ
– PC利用者の故意は認定できない
PC遠隔操作ウイルスによる犯罪予告と誤認逮捕
– ウイルスに感染して情報発信してしまうケースもあり得る
– ネットカフェや公衆無線LAN
– アクセスログを保存していない場合もある
2014年10月2日
47
2014年度法情報学演習
犯罪予告→逮捕→釈放
大阪市のウェブページに大量殺人(大阪・日本橋の歩
行者天国にトラックで突っ込む)を予告するメールが
届く
→IPアドレスから、AのPCによりメールが送信されて
いたことが判明、Aを威力業務妨害容疑で逮捕
→A否認、府警や大阪地検は「IPアドレスという確証
がある」「認めたら罪が軽くなる」などと持ちかける
→同様の犯罪予告が三重(伊勢神宮を破壊する)や
東京(お茶の水女子大付属幼稚園を襲撃する)でも
→府警、三重県警が遠隔操作ウイルスを確認
→釈放
 第三者が、他人のPCを遠隔操作して犯罪予告メール
を送信していた
2014年10月2日
48
2014年度法情報学演習
PC遠隔操作ウイルス
 IPアドレスにのみ頼るのは危険
– なりすまし事件を続発させないためにも、
ウイルスの感染原因を特定し、真犯人を
突き止めることが重要
– 被疑者が否認している場合には、慎重に
捜査を行うことが求められる
– その上で、捜査機関は、未知のウイルス
などの新たな手口について、幅広く情報
を収集していくべきであろう
 新種のウイルスに注意
– 遠隔操作ウイルスは「iesys.exe」という
ファイル名(ただし、遠隔でファイル名の
変更や削除ができる可能性も)
– セキュリティ会社「トレンドマイクロ」の調
べによると、当該ウイルスはバックドア型
の新種ウイルス「BKDR_SYSIE.A」
2014年10月2日
49
2014年度法情報学演習
再度、インターネットは匿名か?
 匿名か?
– 完全な「匿名」ではない
– 発信者の情報が簡単にはわからないという限りにおい
ては、「匿名」と言えるかもしれない
 電子掲示板等では、自ら名乗らなければ相手に自分が誰か
を知られることはない
 今後どうなるか?
– 現状では、いつでも追跡・監視されているのではない
かと心配する必要はない
– 通信傍受システムの存在
 エシュロン
 米国国家安全保障局(NSA)による個人情報収集(スノーデン
事件)
 中国等では、大規模な通信傍受が行われているとの報道も
ある
2014年10月2日
50
2014年度法情報学演習
情報に関するさまざまな法律問題①
 迷惑メール
– インターネット利用に伴う被害経験のうち、「迷惑メールを受
信」が最多
– 特定電子メール法(特定電子メールの送信の適正化等に
関する法律)の制定や特定商取引法(特定商取引に関する
法律)の改正による規制
 2002年以降も頻繁に改正が行われ、法の実効性強化、国際連
携の強化を図る
 そのほかの電子メール問題
–
–
–
–
–
–
他人へのなりすまし
電子メールの盗聴
社内における電子メール監視
他人への誹謗中傷、悪質なメール
チェーン・メール
コンピュータ・ウイルス
2014年10月2日
51
2014年度法情報学演習
情報に関するさまざまな法律問題②
 インターネットと刑法
– 刑法の改正による規制
電子計算機損壊等業務妨害罪(第234条の2)
電子計算機使用詐欺罪(第246条の2)
電磁的記録不正作出及び供用の罪(第161条の2)
支払用カード電磁的記録に関する罪(第163条の2~第
163条の5) (2001〔平成13〕年改正)
– クレジットカードに関する罪(スキミングにも対応)
不正指令電磁的記録に関する罪(第168条の2~第168
条の3) (2011〔平成23〕年改正)
– コンピュータ・ウイルスに関する罪
– 特別法による規制
不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス
禁止法、1999年)
2014年10月2日
52
2014年度法情報学演習
情報に関するさまざまな法律問題③
 サイバーポルノ規制
– 刑法2編22章「わいせつ、姦淫及び重婚の罪」
 2011年改正により、「電気通信の送信によりわいせつな電磁
的記録その他の記録」の頒布等も処罰対象に
– 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童
の保護等に関する法律(児童買春・児童ポルノ禁止法)
– 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
(風営法)
– 地方公共団体などが制定する青少年健全育成条例等
 サイバー犯罪対策
– 各都道府県警察では、サイバー犯罪対策の取締り、サ
イバー犯罪の予防対策に関する広報活動等を行って
いる
– サイバーテロ、クラッキング対策
2014年10月2日
53
2014年度法情報学演習
情報に関するさまざまな法律問題④
 電子商取引
– 電子商取引とは何かを正面から定義する法律は
存在しない
 民法、商法
 特定商取引に関する法律(特定商取引法)の「通信販売」に該当
(2条2項)
 消費者契約法の「消費者契約」に該当(2条3項)
 民法の「隔地者間の契約」に該当(97条、526条、527条)
– 電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律(電
子消費者契約法)
 決済にクレジットカードが用いられる場合は、消費者、販売業者、
クレジットカード会社の間には割賦販売法上の契約関係
 経済産業省「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」(法
的拘束力を当然に持つものではないが、解釈上参考にされる)
 電子決済、電子マネー
 電子署名・認証制度と電子公証制度
2014年10月2日
54
2014年度法情報学演習
情報に関するさまざまな法律問題⑤
 デジタル時代の著作権
– インターネットの普及と情報のデジタル化、ITビジネスの進
展により、著作権法の法的枠組み自体が変更を迫られてい
る。インターネット上の表現行為に対してどのように著作権
を保護するべきか。既存の著作権の保護をそのまま認める
ことはインターネットの普及に大きな足かせとならないであ
ろうか。
– これに対して、日本の著作権法では、自動公衆送信権や送
信可能化権という権利を新たに創設して、インターネット上
での著作物の利用行為について、権利者に排他的権利を
認めて、ネットワーク時代における権利者の保護を図って
いる。これは、果たして妥当な解決と言えるか。
– ダウンロード違法化(2009年改正)、違法ダウンロード刑罰
化(2012年改正)
– その他、リンクに関わる問題、技術的保護手段の回避に係
る規制の問題、送受信の過程でメモリ上に一時的に蓄積し
た情報を複製と見なすかどうかの問題などもある。
2014年10月2日
55
2014年度法情報学演習
情報に関するさまざまな法律問題⑥
 ファイル共有ソフト
– 利用者のパソコン間でデータを送受信させるいわゆる
ピアツーピア(P2P)技術を用いて、不特定多数の利用
者のパソコンに保存されている電子ファイルの中から
さまざまなデータをダウンロードする行為が問題となっ
ている。
– 「Napster事件」「Grokster事件」
– 「ファイルローグ事件」
– 「Winny事件」
 2004年5月に、ファイル交換ソフト「Winny」の作者が逮捕・起
訴された事件。著作権法違反行為を幇助したとして、刑事責
任を問われた。
 第1審:罰金150万円(求刑懲役1年)の有罪判決
 控訴審:逆転無罪→上告審:検察側の上告棄却、無罪確定
(2011/12/20)
2014年10月2日
56
2014年度法情報学演習
情報に関するさまざまな法律問題⑦
 ビジネスモデル特許
– 特許制度のあり方も重要政策のひとつ
– プロパテント政策
 知的財産権取引の活性化、創造型技術開発の促進、新規産
業の創出、ひいては科学技術創造立国の実現を目的とする
政策
– 知的財産高等裁判所の設立(2005年)
 プロバイダの責任
– インターネット上で名誉毀損や著作権侵害が行われた
場合、情報媒介者であるプロバイダの責任は?
– 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及
び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任
制限法、2001年)
 プロバイダの損害賠償責任を一定の場合に制限
 発信者情報開示請求権
2014年10月2日
57
2014年度法情報学演習
情報に関するさまざまな法律問題⑧
 個人情報保護
– 増加する個人情報漏えい事件
– 情報化の進展により、個人情報が思わぬ使われ方を
してしまう懸念
– 個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法、
2003年)
 個人情報取扱事業者の義務等を規定
 個人情報保護法への「過剰反応」
 ドメイン名紛争
– サイバースクワッティング(電脳空間の不法占拠)
 他人の著名な商号、商標、製品名、サービス名等を含むドメ
イン名を抜け駆け的に登録し、本人にこれを高値で買い取ら
せようとする
– どのように解決すべきか?
 不正競争防止法の改正
2014年10月2日
58
2014年度法情報学演習
情報に関するさまざまな法律問題⑨
 インターネット時代の通信と放送の融合
– 通信と放送の区分と法制度。通信と放送の中間的
領域の登場。サービスの融合か、事業体の融合
か、伝送路の融合か、端末の融合か。通信と放送
の融合に対する法制度上の対応は。また、今後の
法制度の動きは。
 インターネットと国際訴訟
– トラブルに国際的な要素が含まれる可能性
– 国際的な民事紛争の場合
 どの国の裁判所で救済を得られるのか(国際裁判管轄)
 どの国の法律によるべきか(準拠法)
– 国際的な民事紛争に関わる法分野=国際私法、国際民事
訴訟法
2014年10月2日
59
2014年度法情報学演習
司法試験にも
 平成20年新司法試験「論文式試験・公法系科目・第1
問」では、インターネットにおける表現行為に対して、
フィルタリング・ソフトを用いた表現内容規制の問題が
出題された。
– 試験問題(平成20年新司法試験試験問題)
– 論文式試験出題の趣旨(平成20年新司法試験の結果につ
いて)
 平成23年新司法試験「論文式試験・公法系科目・第1
問」では、インターネット道路周辺映像提供サービス
(Googleストリートビュー)について、表現の自由とプラ
イバシー保護の調整に関する問題が出題された。
– 試験問題(平成23年新司法試験試験問題)
論文式試験出題の趣旨(平成23年新司法試験の結果につ
いて)
 インターネットに関する法律問題は、もはや新しい問題
とばかりも言っていられない。
2014年10月2日
60
2014年度法情報学演習
カレログ問題
カレログとは
– 「家族やパートナーが現在どこにい
るかを把握するスマートフォンの
GPS機能を用いた位置情報通知
サービスです。あらかじめ彼氏や家
族の持つAndroid携帯電話に、カレ
ログアプリをインストールしておけば、
彼氏の現在のGPS位置情報を常に
チェックすることが可能です。」
GPS: Global Positioning System(全地
球測位システム)
– 2011年8月30日公開
2014年10月2日
61
2014年度法情報学演習
カレログの機能
 通常会員(2011年9月末まで試用無料期間)
– 「★彼氏や家族の携帯の位置をGPSで特定できます。」
– 「★端末のバッテリー残量もわかるから、『電源が切れちゃった』
なんて言い訳は通用させません!」
– 「★サービス利用はバックグランド操作で行うから、どのタイミング
で情報取得しているかは彼氏の端末では一切わかりません。ま
たアプリアイコンもGPSの設定画面になっています。
彼氏が彼氏の友達に見られても大丈夫。男のメンツも守ってあげ
なきゃね♪」
 プラチナ会員
– 「★さらに!
彼氏の携帯電話の通話記録まで、リアルタイムに入手可能!
もう浮気や電話代の無駄使いは絶対にさせません。」
– 「★さらに!×2
彼氏の携帯電話にインストールしたアプリも丸わかり!
出会い系アプリやエッチなアプリを入れてもすぐにチェックでき
ちゃう!」
2014年10月2日
(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
62
2014年度法情報学演習
カレログ問題の経過
 2011年8月30日 アプリ公開
– カレログ http://karelog.jp/
– 公開後から抗議メールやTwitterでの批判が高まる
 8月31日 サイトに謝罪文掲載
 9月5日 マカフィー社は、カレログを不審なプログラム
(PUP: potentially unwanted program)として検出対象と
する
– セキュリティ対策、ウイルス対策ソフトを提供する会社
– ウイルス名「Android/Logkare.A」
 「ターゲットのデバイスの通話記録、インストールされているアプ
リケーションのリスト、GPS位置情報、バッテリー残量を監視」して、
Webサイトにポスト
 「『Android/Logkare.A』は正規のソフトウェアですが、ユーザが知
らぬ間に、明確な合意を得ないまま、個人情報を第三者に転送
できる機能が組み込まれています。」
– その後、カレログのバージョンアップにより、ウイルス検出さ
れないように
2014年10月2日
63
2014年度法情報学演習
カレログの使い方
① カレシの携帯電話にカレログをインストール
– 「もう浮気や電話代の無駄使いは絶対にさせませ
ん」
– 「出会い系アプリやエッチなアプリを入れてもすぐ
にチェックできちゃう!」
② アプリインストール後にカレシと自分のメール
アドレス等を設定
③ 登録完了メールにID・パスワード・URLが記
載されている。専用サイトにアクセスして利用
開始。
– https://kare-log.appspot.com/login
2014年10月2日
64
2014年度法情報学演習
カレログの問題点
 利用者と端末保持者が異なる
– 利用者(契約者)=カノジョ
– 端末保持者=カレシ
– 「★「カレログ」アプリは、携帯端末にインストール
する時に、端末所有者の同意をとってご利用くださ
い。」(カレログ「利用上のお約束」より)
同意があったといえるか?
「ねえねえ、アプリインストールしていい?」「ああ、いい
よ」
「『カレログ』ってアプリがあるんだけど、入れちゃってい
い?」「ああ、いいよ」
「『カレログ』ってアプリでいつでも居場所がわかるんだっ
て。ダーリンがどこにいるかいつでも知りたいから、入れ
ていい?」「ああ、いいよ」
2014年10月2日
65
2014年度法情報学演習
個人情報保護法上の問題
カレシの位置情報は「個人情報」にあたる
か?(2条1項)
カレログを提供する(有)マニュスクリプト社
は、個人情報取扱事業者にあたるか?(2
条3項)
個人情報保護法を遵守しているか?
– 適正な取得(17条)、安全管理措置(20条)、第
三者提供の禁止(23条)
2014年10月2日
66
2014年度法情報学演習
刑法上の問題
ウイルス作成罪・供用罪
改正後
第十九章の二 不正指令電磁的記録に関する罪
(不正指令電磁的記録作成等)
第百六十八条の二 正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供す
る目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、三年以
下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意
図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録
二 前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録
2 正当な理由がないのに、前項第一号に掲げる電磁的記録を人の電子計算機におけ
る実行の用に供した者も、同項と同様とする。
3 前項の罪の未遂は、罰する。
(不正指令電磁的記録取得等)
第百六十八条の三 正当な理由がないのに、前条第一項の目的で、同項各号に掲げる
電磁的記録その他の記録を取得し、又は保管した者は、二年以下の懲役又は三十万円
以下の罰金に処する。
2014年10月2日
67
2014年度法情報学演習
カレログはウイルスか
不正指令電磁的記録(168条の2第1項第1
号)に該当するか?
不正指令電磁的記録供用罪(168条の2第2
項)に該当するか?
「正当な理由」の存否
既遂か、未遂か?
– カノジョは?マニュスクリプト社は?
2014年10月2日
68
2014年度法情報学演習
カレログの有用性
技術的価値中立性
– リアルタイムで位置情報を通知する技術
子どもの居場所を保護者に通知
友人同士で現在地を通知
従来は、自らが位置情報を登録して初めて反映さ
れていたが、主体的な操作不要でリアルタイムに通
知できる技術は画期的かもしれない
– 新技術の研究開発を萎縮させるべきではない
どうすべきか?→ゼミで議論
2014年10月2日
69
2014年度法情報学演習
クラウド・コンピューティング
クラウド・コンピューティングとは
– ネットワーク上でサービスを利用者に提供
電子メール、グループウェア
– Gmail、Tumblr.、DropBoxなど
ソフトウェアだけでなく、プラットフォーム(データ
ベースやアプリケーション)、ハードウェアの提供ま
でを含む
– Amazon EC2など
クラウドで取り扱われる情報はさまざま
– 契約や約款に基づいて取り扱われる
2014年10月2日
70
2014年度法情報学演習
クラウドと個人情報
 GoogleのGmailアカウントは誰のものか?
– もちろん利用者のものである
プライバシーや個人情報は完全に保護される
– Googleが提供しているサービスなのだからGoogle
のものである
電子メールの内容に応じた広告を表示することができる
Googleの主張:
– 適切な広告を人々に届けることを理由にしてGmailを読んで
いる
– サービスを維持するためにも、ユーザ間で交わされる電子
メールすべてに目を通す必要があり、ビジネスとして当然の
行為である。今後もその姿勢は崩さない。
– Gmail利用者は、Googleのサービスを利用するにあたって
Googleに電子メールを閲覧する権利を与えている
2014年10月2日
71
2014年度法情報学演習
Suica利用履歴販売問題
 事実関係
– JR東日本は、交通系ICカード「Suica」の乗降履歴を、個人
を特定できないように加工した上で日立製作所に提供
– 日立製作所は、提供されたデータから利用者の年代、性別、
駅周辺での滞在時間などの傾向や時間ごとの変化を分析
し、駅周辺に店を出したい企業などに情報を提供するサー
ビスを開始した
 問題点
– JR東日本は、Suica利用履歴をマーケティング分析等に利
用することを、事前に利用者に対して説明していない
 「個人情報を無断販売するとはけしからん」
– JR東日本は、提供したデータには個人情報は含まれてい
ないと主張
 「No.0001:20歳の女性、7月1日10時10分にA駅で乗車、7月1日
11時10分にB駅で下車、7月2日8時0分にC駅で乗車……」
 本当に個人を特定できないと言えるのか?
2014年10月2日
72
2014年度法情報学演習
NTTドコモ、ビッグデータ販売問題
 事実関係
– NTTドコモは、携帯電話利用者の位置情報などが分かる
ビッグデータを企業向けに有料で販売するとした
– モバイル空間統計
 携帯電話サービスを提供する過程で必要となる運用データの一
部(携帯電話の位置データおよび利用者の年齢、性別、住所)に
非識別化処理、集計処理、秘匿処理を施した上で作成する統計
情報
 場所や時間による人口の変動を推計することができる
– 「10月1日午前10時、東京駅周辺に20歳台の人が5000人いた」
– 企業は、店舗周辺の来訪者分析や実態を把握できる
– 防災の分野でも、昼に地震が起きた場合の帰宅困難者数がわかり、避
難計画に役立てることができる
 契約者が電話で申請すれば、個人データの利用を停止する
 問題点
– 個人を特定できないと言えるか?
– オプトアウト方式が適切か?
2014年10月2日
73
2014年度法情報学演習
参考文献、Web
 高橋和之、松井茂記、鈴木秀美編『インターネットと法』
(有斐閣、第4版、2010年)
 堀部政男『インターネット社会と法』(新世社、第2版、2006
年)
 松井茂記『インターネットの憲法学』(岩波書店、2002年)
 夏井高人『ネットワーク社会の文化と法』(日本評論社、
1997年)
 酒匂一郎『インターネットと法』(信山社、2003年)
 小向太郎『情報法入門』(NTT出版、第2版、2011年)
 電子政府の総合窓口
http://www.e-gov.go.jp/
 総務省『情報通信白書平成26年版』(2014年)
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/
2014年10月2日
74
2014年度法情報学演習
おしまい
この資料は、2014年度法情報学演習の
ページからダウンロードすることができます。
http://www.law.tohoku.ac.jp/~kanaya/infosemi2014/
2014年10月2日
75
2014年度法情報学演習