基礎講座:「発達障害とは」.

徳島県発達障がい児支援専門員養成研修
2015.9.4.
発達障害とは
鳴門教育大学
特別支援教育専攻
井上とも子
解釈の違い
 発達障害・・・医学,心理学と教育の違い
 教育:文部科学省の『発達障害』
 医学・心理学:知的障害も含む
原仁医師は
 知的発達障害
 脳性麻痺などの運動発達障害
 広汎性発達障害(自閉症・アスペルガー症候群)
 注意欠陥多動性障害
 学習障害
 発達性協調運動障害
 発達性言語障害
 てんかん
『発達障害とは』
アスペルガー障害
注意欠陥多動性障害ADHD
学習障害LD
高機能自閉症
IQ
70
知
能
自閉症
軽度
中度
知的障害
重度
弱い
行動の偏り
強い
「特別支援教育における教育実践の方法」ナカニシヤ出版2006(一部改変)
発達障害児の目立つ特徴と支援の方向性

個の特性・・・経験・体験・・・自己主張(含む方法)

対人関係の問題・・・マナー・対人対応技能

自己の精神保健の問題・・・自己認識と資源活用

不安・神経症的な症状(強迫神経症・チック)

学業不振→進路の問題・・・社会と自身の関係把握

社会自立の問題・・・折り合いのつけ方


ジョブマッチング
対人対応・自立生活技能・自己管理能力
特別な支援は将来の自立への
大きな鍵を握っている
緩やか
軽い
症状
激しい
重い
教育・養育・対応・関係の在り方
※治すのではなく、適切な環境の中で育てましょう
発達障害児は学校・社会の中で不安がいっぱい
不安
ADHD
LD
不安
不安
自己有能感の喪失
対人関係の維持困難
不登校・引きこもり・自暴自棄
ASD
不安
学習障害
Learning Disabilities
 特定の能力の習得と使用に著しい困難を示す
様々な障害を指す
聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する
 学齢期に顕在化することが多い
 環境的な要因が直接原因とはならない
 行動の自己調整、対人関係等における問題が伴った
形で現れることもある

がんばってもがんばってもできないことがある
学校の中のLD児・・・不器用
 ○○ができるのに△△ができない

学習面:書字障害・読字障害・計算障害
 運動のぎこちなさ・計画性の問題・空間把握の問題・・・・
 △が、形にならないと幼稚園から引き継ぎがあったら・・・
 「漢字が書けない」のは?・・・千差万別
記憶容量・企画や計画、位置の把握や方向性・手指の
巧緻性・視知覚(形のとらえ・線の差・・・)・・・
 強みを活用して(例:意味を付加させる)
 遊びや対人対応にも影響する
 周囲との比較ができる→自尊感情が損なわれる

注意欠如多動性障害
Attention Deficit Hyperactivity Disorder
 注意集中困難,不注意
 多動性
 衝動性
量
・7歳以前の発症
・同年齢児と比べて3つの症状が,顕著に強い場合
・2カ所以上の場面で見られる
どうにも調整できない
学校の中のADHD児・・・突然・・・
 注意散漫・不注意
周囲の物音などですぐ,簡単に注意が逸れる
 注意を持続したり切り替えたりすることが困難
 片付けられず,忘れ物や物をなくすことが多い

 多動
落ちつかずよく動く,体のどかが常に動いている
 突き動かされるように動く・話を聞いていられない

 衝動性
キレル!
 待てない,思ったらすぐ行動する
 聞きかじって判断する
自閉症スペクトラム障害ASD
障害の3つ組み
 社会的相互交渉の障害
 コミュニケーションの障害
質
 想像力の障害(こだわり,常同的な行動)
・知能指数70以上=高機能自閉症
・話し言葉の発達が良好=アスペルガー症候群
見えないものが理解しにくい
学校の中のASD児
・社会的相互交渉の質的障害
▶大人とも対等、反面だれにもいやに敬語を使う
▶大人とは関われるけれど、同年齢の子とうまくつきあえない
▶周囲の動きを気にしない、合わせられない行動
・コミュニケーションの質的障害
▶思ったことをしゃべらずにはいられない
▶相手の立場に立って話ができない
▶一方的に質問をするが、応えは少ない
・想像力の障害(こだわり,常同的な行動)
▶変化や切り替えを嫌う、新しいことへの拒否、見通せない
▶数字やある事態に執着する・・・こだわり
▶相手の痛みがわからない・・・共感できない
症状論としての発達障害だから・・・
ADHDからアスペルガー症候群へ
幼児期
小学校中学年・・・青年期
問題行動は一人では大きくならない
障
害
特
性
+
・学習環境
・周囲の人との関係
・学習状況
・過去の経験
・生活リズム
・家庭環境
不
適
切
な
行
動
不
適
切
な
行
動
たいてい
コミュニケーション行動の代替
 要求の言葉の代わり
「いやなんだ」と言えたら起こらない
 「したいことがある」

 だから、うまく交渉できれば、その交渉内容が
受け止められる環境なら、起こらない
指導の始まりは、受け止め、要求がかなうように協
力すること
 「だめ」とその場のルールや先生の思いに沿わせる
ことを優先させると決裂する

保護者との話は顔を合わせて!
わたしばっかり
この子のせいで
特別支援教育の在り方の変遷
個
•
•
•
•
個の課題と障害特性に着目
個の改善をめざした支援
個別の対応を重視した取り組み
大人との関係(安定した関係を保ちやすい)
集団
•
•
•
•
個の課題を環境との関わりでとらえる
個を含めた集団の課題(関係)改善をめざす
学校ぐるみ・学級ぐるみの取り組み
日常への広がりが期待できる・子ども同士の学び合い
(思い通りには行かない体験もできるから)
特別支援教育のトピックス
学校ぐるみ・学級ぐるみの支援
 子ども同士の関わりを重視
 行動問題の改善も周囲の者との関係から
 他児と共に指導する
 子どもの成長は学校・学級経営の在り方し
だい
 自分を認め、他者を認められる学級づくり
 全員が主体的に自立的に行動し、学習参加
する学級作り
落ち着いた学級に
学習環境を整えましょう
 雑然→整然(余裕教室等の利用)
 整理した状態を見せることが指導の第一歩
 整理された状態→刺激の統制、遮断
 静かに学習するマナーを身につける
 メリハリのある流れ(合図を決める)
 中心の人に注目する習慣をつけるetc.
 心のゆとりが大事(周りの子も同じ)
 認められる→自信→人の良さに気づく余裕
 指導してこそ持てるポジティブな視点
指導のめあて
 ポジティブな自己評価,課題解決ができるように
 人や事態を受け止められるように

共感と受容(他者を許せる余裕)→他者理解
 自己修正できるように
手助けが頼める→やり直しが気軽にできる
 後始末ができる→気持ちのゆとり

 自己決定できるように→責任感,自主性,自発性

選択できる(折り合いが付けられる)
自己管理の力・解決力
小さい時から社会自立をめざして
主体性・自己管理能力の向上
指示の強要
従属
指示待ち・判断力の低下
ストレス増幅
VS
選択・自己決定
主体・独立
判断力・自己責任の向上
ストレス低減
自分のこと
・生活技能
・学業
・趣味
・職業技能
他者との関係
支援(教育)
連 動
に立つ)
・家族のために
・友達のために
・社会のために
自立した社会生活
(役
主体的な集団参加の力を育てる
 特別支援教育知的障害部門では
子ども自ら「分かって動ける」(藤原,2012)授業作
りが主流に
 分かる動ける環境作り

 構造化・課題や進め方のルーティン化
 子ども同士の協働・・・常に仲間を意識させる役割と活動
 役割と確認のための自己評価・他者評価

「嫌です」が言える環境
 困ったときの切り抜け方
 つまずいたときの立ち直り方(回復力を引き出す)
 間違ったときの責任の取り方
先生
二人の世界
教 卓
要支援児