微生物学序論

微生物学1
微生物学序論
どんな菌が恐ろしいか?
1.結核菌
2.破傷風菌
3.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
4.コレラ菌
5.大腸菌O157
どんな菌が恐ろしいか?
1.結核菌
2.破傷風菌
3.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
4.コレラ菌
5.大腸菌O157
主要死因別死亡率(人口10万対)の年次推移
1945~2011年
250
悪性新生物
結核
200
脳血管疾患
心疾患
150
100
肺炎
50
0
昭和20年
1945
25
1950
30
1955
35
1960
40
1965
45
1970
50
1975
55
1980
60
1985
平成2
1990
7
1995
12
2000
17
2005
人口動態統計 厚生労働省大臣官房統計情報部
注: 1995年の心疾患の低下および脳血管疾患の上昇は、ICD-10の適用と死亡診断書の改正による影響が考えられる。
23
2010
微生物学1
細菌学
微生物学2
真菌学,寄生虫学,ウイルス学
微生物学の歴史
微生物の発見
Antonie van Leeuwenhoek (1632~1723)
オランダの織物商
レンズ
Leeuwenhoekの顕微鏡
詳細な観察記録を報告(1684)
細胞の発見
微生物の発見
微生物自然発生説
細菌やカビの繁殖
栄養分を含む液体
微生物自然発生説の否定
Lazzaro Spallanzani (1729~1799)
イタリアの博物学者,実験動物学の祖
加熱,密封
栄養分を含む液体
微生物の発生なし
酸素不足のため ?
微生物自然発生説の完全否定
Louis Pasteur (1822~1895)
フランスの生化学者,微生物学者,近代微生物学の開祖
通気可能
加熱後には微生物が発生しない
微生物自然発生説を実験的に否定(1861)
微生物自然発生説の最終否定
干し草の浸出液は煮沸では滅菌できない
微生物自然発生説の拠り所
John Tyndall (1820~1893)
アイルランドの物理学者
間歇加熱法・・・耐熱性胞子をもつ細菌の滅菌法
加熱
発芽
胞子
耐熱性消失
繰り返す
殺菌
生物的過程としての発酵
アルコール発酵への酵母の関与(1837)
糖
エタノール + 二酸化炭素
Pasteurの研究(1857~1876)
アルコール製造業における発酵失敗例
糖
乳酸
乳酸菌の発見
実験室で乳酸発酵を再現
乳酸菌
糖 + 炭酸カルシウム
乳酸カルシウムの沈殿
嫌気性菌の発見
Pasteurによる酪酸発酵の研究
糖
酪酸 + 二酸化炭素 + 水素
酪酸菌
酪酸発酵
空気接触で運動性消失
通気により阻害
好気的 aerobic
嫌気的 anaerobic
発酵の生理的意義
Pasteurの酵母を用いた実験
酸素有:好気的呼吸
酸素無:発酵
発酵
二酸化炭素のみ
エタノール + 二酸化炭素
糖
糖
嫌気条件におけるエネルギー供給経路
通性嫌気性菌 facultative anaerobes
偏性嫌気性菌 obligate anaerobes
H. Buchnerの実験(1897)
酵母抽出液 + 糖
エタノール + 二酸化炭素
発酵は化学反応である
生化学
抗菌薬開発の歴史
抗菌薬の発見
Paul Ehrlich(1854~1915)
ドイツの細菌学者,生化学者,化学療法の父
NH2•
HCl
HCl•H2N
HO
As As
OH
サルバルサン(1909)
梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)に有効
ヒトの梅毒に有効・・・世界初の化学療法薬
サルファ薬の発見
Gerhard Domagk(1895~1964)
ドイツの病理学者,細菌学者
レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)感染マウスを用いたスクリーニング
H2N
N
N
SO2NH2
NH2
プロントシル・ルブラム
H2N
SO2NH2
スルファミン(1935)
ペニシリンの発見
Alexander Fleming(1881~1955)
イギリスの細菌学者,リゾチームの発見
Penicillium nonatum が生産する抗ブドウ球菌物質
ペニシリン(1929)
化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)
抗菌作用,毒性なし
ペニシリンの再発見
Howard Florey(1898~1968) & Ernst Chain(1906~1979)
Oxford大学の研究グループ
ペニシリン研究再開(1938)
粗精製ペニシリン(2%)がブドウ球菌感染マウスに有効(1940)
ペニシリンの臨床試験(1941)
ペニシリン発酵法の改良と大量培養(1941)
ペニシリンGの構造決定(1945)
O
H
H
S
N
H
N
CH3
CH3
O
COOH
ペニシリンG(ベンジルペニシリン)
ストレプトマイシンの発見
Selman Waksman(1888~1973)
アメリカの生化学者,微生物学者
NH
HN
HO
HN
H2N
O
NH
O
CHO
H3C
OH O
HO
NH2
OH
OH
ストレプトマイシン(1944)
Streptomyces griseusが生産し,
結核菌を含むグラム陰性・陽性菌に対して
幅広い抗菌スペクトル
微生物が生産する抗菌性物質
O
HO
NHCH3
HO
抗生物質
微生物遺伝学の歴史
Frederick Griffithの実験(1928)
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の形質転換
注射
注射
S型菌
(病原性)
加熱
注射
混合
R型菌
(病原性なし)
注射
発病
発病せず
発病せず
発病
Oswald Averyの実験(1944)
Griffithの形質転換因子がDNAであることを証明
マ
ウ
ス
か
ら
回
収
さ
れ
る
菌
Phoebus Leveneの研究(1920~)
DNAの化学組成
A,T,G,C,4種の塩基,デオキシリボース,リン酸
James WatsonとFrancis CrickによるDNAの構造解明(1953)
George BeadleとEdward Tatumの実験(1941)
アカパンカビ(Neurospora crassa)
栄養要求突然変異株(アルギニン要求)
前駆体
argA
argB
argC
酵素A
酵素B
酵素C
オルニチン
シトルリン
1遺伝子1酵素説
アルギニン
細菌のゲノム解析
ゲノムサイズ(Mb)
Homo sapiens(ヒト)
Saccharomyces cerevisiae (出芽酵母)
Bacillus subtilis (枯草菌)
Borrelia burgdorferi B31(ライム病の病原スピロヘータ)
Escherichia coli K12 MG1655(大腸菌)
Haemophilus influenzae Rd(インフルエンザ菌)
Helicobacter pylori 26695(ピロリ菌)
Lactococcus lactis(乳酸菌)
Mycobacterium tuberculosis H37Rv (結核菌)
Mycoplasma genitalium (マイコプラズマ)
Myxococcus xanthus(粘液細菌)
Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)
Streptomyces coelicolor(放線菌)
Synechocystis sp.PCC6803 (ラン藻類)
Treponema pallidum (梅毒トレポネーマ)
Vibrio cholerae(コレラ菌)
3300
12
4.21
0.91
4.64
1.83
1.67
2.4
4.41
0.58
9.5
6.3
8.67
3.57
1.14
4
遺伝子数
20000~25000
6286
4100
850
4289
1709
1566
2266
3918
484
10000
5565
7825
3169
1031
3827
生態系と微生物
食物連鎖
太陽光
生産者
植物
無機物
捕食
第一次消費者
草食動物
捕食
第二次消費者
肉食動物
有機物
死骸
排泄物
微生物
分解者
窒素循環
排泄(動物)
有機態窒素
分解(微生物)
窒素同化
(植物)
窒素固定
(根粒菌)
窒素
N2
アンモニア
NH3
脱窒
(脱窒菌)
硝化
(亜硝酸菌)
硝酸還元(脱窒菌)
硝酸
NO3-
亜硝酸
NO2-
硝化(硝酸菌)
バイオレメディエーション
(bioremediation )
微生物等の働きを利用して汚染物質を分解等することによって
土壌地下水等の環境汚染の浄化を図る技術
風の谷のナウシカ
汚水処理
活性汚泥・・・好気性微生物群を多く含む浮遊性の泥
有機物を分解・沈降
微生物の分類
微生物の生物学上の位置
細菌
真性細菌
古細菌
真菌
糸状菌(カビ)
キノコ・・・子実体形成
酵母
原核生物
放線菌・・・菌糸
バイキン(黴菌)
原生動物
粘菌
Pneumocystis carinii
微細藻類
ラン藻(シアノバクテリア)
(ウイルス)
初期の微生物分類(1800年頃)
植物
藻類(非運動性,光合成性)
真菌(非運動性,非光合成性)
動物
Infusoria(運動性の顕微鏡的生物)
細胞説(1840年頃)
Infusoria
微細無脊椎動物
原生動物
細菌
微生物を植物界と動物界に配分しようとした最後の試み(1860年頃)
動物
小型後生動物
輪虫類
線虫類
節足動物
原生動物
繊毛虫類
鞭毛虫類
アメーバ状原生動物
競合した群
植物
藻類(光合成性)
光合成鞭毛藻類
粘菌類
非運動性種
真菌(非光合成性)
真菌類
細菌類
Haeckelが提唱した3界説(1866)
動物
脊椎動物,無脊椎動物
植物
種子植物,シダ植物,コケ植物
原生生物
藻類,原生動物,真菌,細菌
真核生物と原核生物(1950年頃)
真核生物
動物,植物,藻類,
高等原生生物・・・藻類,原生動物,真菌
原核生物
下等原生生物・・・ラン藻類,細菌
Woeseが提唱した3ドメイン説(1990)
真核生物 Eukarya
動物,植物,藻類,原生動物,真菌
細菌(真正細菌) Bacteria
細菌,ラン藻類,リケッチア,クラミジア,マイコプラズマ
原核,細胞の化学組成は真核生物に類似
古細菌 Archaea
原核,独特な細胞の化学組成
16Sおよび18S rRNA配列に基づく生物の系統樹
緑色硫黄細菌
細菌
クラミジア
ラン藻類
Bacteroidetes
スピロヘータ
放射線抵抗性菌群
グラム陽性菌
緑色非硫黄細菌
グラム陰性菌
好熱嫌気性菌
高度好塩菌
胞子虫類
メタン産生菌群
鞭毛虫類
粘菌類
繊毛虫類
古細菌
真核生物
動物
真菌
植物
高度好温菌
O
O O
O
HO
OPO3HR
真正細菌の膜リン脂質
真核生物の膜ステロイド
OH
OH
O
O
OPO3HR
古細菌の膜リン脂質
古細菌の膜ホパノイド
OH
OH
真核生物
細菌
古細菌
細胞構造
真核
原核
原核
膜脂質
脂肪酸エステル
脂肪酸エステル
ポリイソプレノールエーテル
ステロイド
-
ホパノイド
核膜
+
-
-
ミトコンドリア
+
-
-
小胞体
+
-
-
ゴルジ体
+
-
-
葉緑体
±
-
-
微小管
+
-
-
染色体数
>1
1
1
イントロン
+
-
±
リボソーム
80S
70S
70S
生物の特徴とウイルス
典型的生物
偏性寄生性細菌
ウイルス
外界との境界
自己複製
代謝
○
○
○
○
○
○
○
○
×
細胞
遺伝子
刺激応答
○
○
○
○
○
○
×
○
○