H22年度

平成 22 年度
事業計画
当研究所は、事業として、家畜、水産動物の疾病に対し、より効果的な免疫学的予防に
関する研究を行っているが、それら動物の産業界が直面している重要疾病に対し、迅速に
対応し、その効果的な予防法を確立するため、これらに関した基礎、応用研究を行う。
平成 22 年度は以下の事業を行うこととする。
1
予防衛生に関する知識、技術養成
家畜、養殖魚類の疾病の免疫学的予防法に関する研究、開発においては、最新の研究
情報と高度な技術を身につけることは勿論であるが、産業界に関する幅広い知識を習得
しておくことも必要不可欠である。
そのため、職員を以下のところへ派遣し、研修、技術習得、調査等を実施する。
1) 関係学会、研究会、シンポジウムへの参加
2) 大学、研究所等における研修、共同研究
3) 畜産、水産界の産業現場の視察
2 家畜、養殖魚の飼育者に対する衛生等の啓蒙啓発、普及
ワクチンによる疾病予防、特に、慢性病の予防にあっては、動物の健康、栄養、飼
養環境等により大きく左右されるもので、これらに関する幅広い知識と経験が必要で
ある。特に、養殖魚飼育者に対しては、これまで抗菌剤による疾病に治療から、ワク
チンによる予防に切り替えるにあたり、これらの啓蒙啓発、普及が必要とされる。
3 研究、開発
海水養殖魚用のワクチンは、現在、多用されているブリ属のレンサ球菌症不活化ワ
クチン(注射用)、ヒラメのレンサ球菌症不活化ワクチンが開発されてから、まだ、数
年しかたっておらず、免疫学的予防の観点から、疾病自体も十分には解明されていな
い現状にある。このような状況において、当研究所は、当面、海水養殖魚における疾
病の調査、研究を行い、産業上、問題となっている疾病の免疫学的予防法を確立する
ため、その、基礎、応用研究を行う。
淡水養殖魚においては最も問題となっているアユ冷水病について、これまで国、都
道府県、全国内水面漁業協同組合連合会等で構成されたアユ冷水病対策協議会におい
て不活化全菌体ワクチンの検討が行われてきたが、さらに実用化に向けての開発を推
進するため、協議会からの要請により当研究所はアユ冷水病ワクチンの開発を継承し
た。
一方、国内においては狂犬病予防法により飼い犬への狂犬病予防注射が義務付けら
れているが、実際には予防注射率は 40%を切っていると推計されており、世界保健機
関(WHO)のガイドラインにより狂犬病の流行を阻止するために必要とされている予
防注射率である 70%を大きく下回っていると考えられる。
そこで、当研究所は、予防注射率の実態を把握するため、徳島県動物愛護管理セン
ターと共同して、徳島県における飼い犬及び野犬での狂犬病ウイルス抗体の保有状況
の調査を行う。また、鹿児島大学農学部藤崎幸蔵教授がマダニ・ディフェンシンを応
用したイヌバベシア症の予防・治療薬の開発研究を行っているが、これは多剤耐性や
人獣共通感染症などの広範な病原体に対して強い傷害作用を発揮することが発見され
たマダニ・ディフェンシンを用いて、その抗原虫活性を担う合成ペプチドを作製し、
これをバベシア原虫感染症に対する予防・治療として実用化する試みである。
当研究所は、本研究において共同研究者として前臨床試験を含む全試験を実用・企
業化の視点から助言を行う。
平成 22 年度は以下の課題について調査・研究を行う。
1)ブリ属魚類の伝染性疾病に関する研究
①
新型レンサ球菌 Streptococcus dysgalactiae による疾病の調査
②
ブリ属新型連鎖球菌症に対する不活化ワクチン、その混合ワクチンに関する
研究
2)ヒラメの伝染性疾病予防に関する研究
①
ヒラメの新菌種 Streptococcus parauberis による疾病に関する調査
②
ヒラメの新菌種連鎖球菌症に対する不活化ワクチン、その混合ワクチンに
関する研究
3)ヒラメエドワジェラ症の免疫学的予防に関する研究
4)アユ冷水病の予防に関する研究
① アユ冷水病不活化全菌体ワクチンの野外における安全性及び有効性に関する
研究
②
Flavobacterium psychrophilum から分泌される protease の免疫原性に関す
る研究
5)徳島県における飼い犬及び野犬での狂犬病ウイルス抗体の保有状況の調査
6)その他
4 見学、研修の受け入れ
研究者、学生等の見学、研修を積極的に受け入れる。
5
病勢鑑定、検査依頼の受け入れ
疾病の診断、病原の同定、抗体検査等、外部機関からの検査依頼等を積極的に.
受け入れる。