貨幣のシステムを管理する中央銀行がある

IV 長期における貨幣と価格
<キーワード>
貨幣数量説
古典派の二分論
11章 貨幣システム
食事をするためにレストランに入ると、満腹という価値を手に
入れる。このサービスに対して対価を支払うには、貨幣(お
金、紙幣)もしくは小切手を手渡せばよい。
貨幣そのものには本源的な価値はないが、将来、自分の欲
しいものと引き換えに第3者が貨幣を受け取ってくれることを
レストランの経営者は確信しているため、このような取引が
成り立つ。
もし、世の中に貨幣が存在しなければ、人々は自分の必要と
するものを獲得するために物々交換に頼らざるを得ない。
 その際には、欲求の二重の一致(2人の人がお互いに相
手の欲しい財・サービスを持っていること)というあまり起
こりそうもない状況を想定しなければならない。
11.貨幣システム.pptx
2
1.貨幣の意味
貨幣とは、以下の3つの機能を有する資産を
いう
交換手段―財・サービスの購入に当たって、買い
手が売り手に渡すことができる
計算単位―価格を表示したり、借入金を記録す
るときの尺度となる
価値貯蔵手段―購買力を現在から将来に移転
する
11.貨幣システム.pptx
3
貨幣の意味(2)
ただし、価値貯蔵手段をもつ資産は貨幣だけ
ではない
貨幣は、最も流動性の高い価値貯蔵手段
流動性とは、交換手段に変換する際の容易さを
いう
»流動性の高い資産:銀行預金、株式、債券、
貴金属
»流動性の低い資産:土地、建物、美術品
11.貨幣システム.pptx
4
貨幣の意味(3)
貨幣には、本源的価値をもつ商品貨幣と、本源的
価値をもたない不換紙幣の2種類ある
 商品貨幣の代表例は銀、金(銀貨、金貨)
» 装飾品や工業用の材料となることから、本源的価値あり
 金貨もしくはそれと何時でも交換可能な紙幣(兌換紙幣)
を用いる経済を金本位制という
» 例えば、戦前の日本は1円=金0.75gの金本位制を採用していた
時期がある
 現在の先進国経済のほとんどは、不換紙幣を用いている
» 不換紙幣の材料は単なる紙=本源的価値なし
11.貨幣システム.pptx
5
現実経済における貨幣
貨幣には当然に現金通貨(紙幣、硬貨)が含
まれるが、それより流動性の低い資産も含め
る貨幣の概念がある
統計上の貨幣には、以下のようなものがある
マネタリーベース
=現金通貨+日銀当座預金
M1
準備預金制度(後述)に基づき
銀行が中央銀行に預け入れる預金
M2
M3
広義流動性
11.貨幣システム.pptx
6
日本のマネーストック統計
(2013年3月末、残高)
1600
(兆円)
金銭の信託、投資信託
金融債、銀行発行普通社債
金融機関発行CP、国債、外債
1400
1200
定期預金
など
1000
一部銀行
の預金
800
1142
834
552
600
400
200
1480
要求払
い預金
79
0
現金通貨
M1
M2
M3
広義流動性
※要求払い預金とは、普通預金と当座預金のこと
11.貨幣システム.pptx
7
2.中央銀行
各国・地域の経済には、貨幣のシステムを管理する
中央銀行がある
 米国:連邦準備銀行(Fed: Federal Reserve)/米ドル
 日本:日本銀行/円
 欧州(ユーロ圏):欧州中央銀行(ECB)/ユーロ
 英国:イングランド銀行(BOE)/英ポンド
中央銀行の役割は、
 銀行に対する最後の貸し手となること
 貨幣供給の調整により、金融政策を行うこと
11.貨幣システム.pptx
8
金融政策
中央銀行は、公開市場操作(国債の入札による売
買)によって貨幣供給量を調整し、政策金利を目標
値に誘導する
 政策金利は短期金利であり、米国ではフェデラル・ファン
ド金利、日本ではコールレート
ただし、2013年4月以降、日本の金融政策当局(日
銀)は政策目標を政策金利ではなく、マネタリーベー
スとしている(「量的・質的金融緩和」)
※「量的・質的金融緩和」の導入について(2013年4月4日、日本銀行)を参照
11.貨幣システム.pptx
9
3.銀行と貨幣供給
極端なケース―100%準備銀行
 もし、銀行が受け入れた預金を全て準備に回さなければ
ならなければ、信用創造は起こらない。
第一銀行のB/S
準備 100
預金 100
(貸方)
(借方)
=
当初の
通貨の量
» 準備―銀行が預金の払い戻しに備えて、貸出に回さず現金とし
て保持する残高と中央銀行に預け入れる預金(準備預金)の合
計。
» 信用創造―部分準備制度のもとで銀行の貸出によって貨幣供給
量が増加することをいう。
11.貨幣システム.pptx
10
貨幣乗数
準備預金制度の導入により信用創造(貨幣
の創造)が起こる
準備預金制度(部分銀行準備制度)―銀行は受
け入れた預金の一部(のみ)を「準備」として中央
銀行に預金する制度
準備率Rのもとでは、通貨1に対して最大1/R
の貨幣が創造される
この1/Rを(理論上の)貨幣乗数という
11.貨幣システム.pptx
11
10%準備制度の下では
銀行は、限度まで貸出を行い、同額が他の銀行に預金とし
て還流すると仮定すると・・・
第一銀行のB/S
準備 10
預金 100
貸出 90
第二銀行のB/S
準備 9
貸出 81
預金 90
第三銀行のB/S
準備 8.1
預金 81
貸出 72.9
これを第N銀行まで続けたとすると、貨幣供給量=預金の合
計は
当初の通貨の量100に対して1/0.1=10倍になっている
11.貨幣システム.pptx
12
中央銀行による貨幣供給調節手段
公開市場操作(9頁参照)
» オペと呼ばれる(オペレーション:操作の略)
法定準備率の変更
» 準備率を変更することにより貨幣供給量を操作できるが、現代の
先進国でこの手段を採ることはまれと思われる。
公定歩合(現在は正式には基準貸付利率、いわゆ
るロンバート金利)での銀行に対する無担保貸出
 金融システムの維持のために最後の貸し手となる場合も
、この方法で中央銀行貸出を行う
 以前は公定歩合を政策金利としていたが、現在(ただし 「
量的・質的金融緩和」 前)はオペを通じたコールレートの
誘導に移行
11.貨幣システム.pptx
13
貨幣供給調節に関わる問題
準備預金制度の下では、一国経済の貨幣供給は部
分的に預金者や銀行の行動に依存する。
ところが、中央銀行は
• 家計が保有する貨幣のうちどれだけの割合を銀
行預金とするか、コントロールできないし、
• 民間銀行が貸出にまわす金額を、コントロールで
きない。
したがって、現実には貨幣乗数は1/Rより小さくなる
し、中央銀行が一国経済の貨幣供給を完璧に調節
することはできない。
11.貨幣システム.pptx
14