sociology20130521_1121

メディア社会学
2013年5月21日(火)
1
1.5 社会(あるいは全体社会)相互の比較
• 1.4までの比較
– 集団ごと(属性ごとにグルーピングしたグループ
ごと)の比較
• 1.5での比較
– 地域ごとの比較、時代ごとの比較等々
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全体社会の相対化
• 「全体社会」
– 「国民国家の全成員のなす社会」「国民社会」
「国」
• 1.4までの方法
– 全体社会を部分社会に分節化
• 分節化 : 社会学の基本
• ただし1.5は、「全体社会」を一枚岩に
• 現在の「全体社会」の相対化を目的とする
3
デュルケム(Emile Durkeim 1858-1917)
• マックス・ウェーバーの同
時代人。
• ウェーバーと共に、社会
学の史上2大巨頭(3大
巨頭という場合、ジンメル
が加わる)
• 著作
– 『自殺論』
– 『社会学的方法の規準 』
ウィキペディアからの画像
4
デュルケム vs ウェーバー①
• ウェーバーと対比される
• ウェーバー ・・・ ドイツ人
• デュルケム ・・・ フランス人
• ウェーバー
– 方法論的個人主義
• デュルケム
– 方法論的集団(集合)主義の代表
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デュルケム vs ウェーバー②
• ウェーバー
– プロテスタントの熱心な母の下で育つ
– プの信仰 → 一人で神に近づく
• デュルケム
– 父親はユダヤ教のラビ(ただしカトリック文化圏の
中で育つ)。
– カの信仰 → 集団的に神に近づく
– ユダヤ教 → カトリック → プロテスタントの順で、
集団の規範が緩くなる(とデュルケムは想定)
6
方法論的集団(集合)主義
• 社会を個人の意識(ウェーバー)や創意(タル
ド)に還元する見方を批判
• 社会を堅固なモノとして捉えることを提唱
• 社会学の分析対象は「社会的事実」(制度の
ようにモノとして個人に先立つ存在)
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ガブリエル・タルド(1843-1904)
http://www.cairn.info/revue-histoire-politique-2010-2-page-11.htm
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社会的事実
• 「社会的事実」
– 個人の外にあって個人の行動や考え方を拘束す
る、集団あるいは全体社会に共有された行動・思
考の様式
• 人間の行動や思考は、個人を超越した集団
や社会のしきたり、慣習などによって支配さ
れる(以上2つ、ウィキペディア「デュルケム」より引用)
• しきたり、慣習、規範、制度などが「社会的事
実」
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二つの方法論の比較①
• 方法論的個人主義(ウェーバー由来)
– 現在の社会を分節化
→ アンケート調査など通常の調査方法に適合
• 方法論的集団(集合)主義(デュルケム学派)
– 社会相互の比較
– 違う国や違う地域の比較、同じ地域の違う時代を
比較 → 既存の統計資料をつき合わせる。あるい
は文化人類学に(弟子で甥のマルセル・モースの
ように)。
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二つの方法の比較②
• 社会が先か、個人が先か
– 結局は鶏と卵の関係
• 実際は、双方の流れを汲む人々が、共に個
人の意識も制度や規範も考慮する
• ただし、方法論的個人主義の方がアンケート
調査等、現代の社会学の主流に近い(親和
的)
– ウェーバーの方が社会学の事実上の祖のような
扱いされる理由か
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全体社会の捉え方の一つの例
• デュルケム
• 全体社会を「統合-分裂」の軸で比較
• 統合
分裂(Dを少し離れて一般に)
葛藤 ・・・ 社会変動の要因、階級闘争、
資本家対労働者
自由 ・・・ さらに分裂を深めかねない
• 安定
不安定性
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統合の欠如と自殺
倉沢進・川本勝編著『社会学への招待』ミネルヴァ書房p.205.1992年等による
• 「統合」 ・・・ 社会の連帯、まとまりのようなも
の
• 『自殺論』(1897)デュルケムの代表作。
• 自殺率 ・・・ 社会解体、社会の紐帯が弱体化
した(統合が失われた)とき増大
• 自殺率を社会統合の指標に
• アノミー 規範が弱体化 → 個人はアスピレー
ション(向上心)や道徳的行動に規制を感じる
ことが少なくなる → 集団の統制や規制による
安心感、安定感を失う → 自殺
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アノミー
宮島喬・杉山光信・梶田孝道・富永茂樹訳『ラルース社会学事典』弘文堂、1997,pp.4-5より
• アノミー
– 語源的には、規範、規則法律の欠如。アナー
キーな個人主義
• 『自殺論』でのアノミー
– 人間の欲求の無制限性と達成すべき目的の不
確定性から生じる無限の病
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デュルケムの規範の考え方
• 通常の規範の捉え方
– 自由に反するもの。人々を押さえ込むもの
• デュルケムの規範の考え方
– 人々に目標を与えるもの。生きている意味に関わ
るもの。
• 自由な時代、あるいは自由なはずの人々こそ、
自殺が多くなる点に、彼は着目。
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『自殺論』(1897)あれこれ
• 自殺が多いのは、以下の4カテゴリーのうち、どれ?
• 「独身・男性」「独身・女性」「既婚・男性」「既婚・女性」
(マトリックス的思考)
独身・男性 独身・女性
既婚・男性 既婚・女性
• では次の時期の比較では?
• 「戦争の時期」「平和で豊かな時期」
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『自殺論』での自殺の4類型
(主にウィキペディア「デュルケム」による)
• 集団本位的自殺 ・・・ 伝統社会中心
• 自己本位的自殺 ・・・ 孤立した現代社会での
もの。次の「アノミー的自殺」と共にデュルケ
ムの議論の中心
• アノミー的自殺 ・・・ 過度に自由な社会での自
殺
• 宿命論的自殺 ・・・ 規範の拘束力の強い社会
での自殺
– デュルケムは注で記すのみ
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集団本位的自殺
(以下の各類型は主にウィキペディア「エミール・デュルケム」による)
• 集団本位的自殺
– 集団の価値体系に絶対的な服従を強いられる社
会、あるいは諸個人が価値体系・規範へ自発的
かつ積極的に服従しようとする社会に見られる自
殺の形態。
• 自己犠牲が強調される伝統的社会や、それ
を受け継ぐ軍隊組織で見られる
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自己本位的自殺
• 過度の孤独感や焦燥感
→ 個人が集団との結びつきが弱まること
→ 個人主義の拡大 → 自殺
• 宗教による自殺率の違い
ユダヤ教 < カトリック < プロテスタント
• 地域による違い
農村部 < 都市部
• 未既婚による違い
既婚 < 未婚
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アノミー的自殺
• 社会の規則・規範がない(もしくは少ない)状
態において起こる自殺の形態。
• 規範欠如 → 多くの自由 → しかし自由である
が、欲望充分に満たせない(満足を知らない)
→ 虚無感 → 自殺
• 時期による自殺率の違い
不況 < 好況
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宿命論的自殺
• 集団・社会の規範による拘束力が非常に強く、
個人の欲求を過度に抑圧することで起こる自
殺の形態
• 宮島喬(お茶大名誉教授)によると、「心中」
がこの典型例
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デュルケム批判のいくつか①
• 精神病による自殺を除外しているが
– 現代では自殺すると「鬱だった」と診断されること
がほとんど。
• アノミー的自殺の説明で「自殺率 ・・・ 不況 <
好況」というが
– 昨今、不況で自殺する人が増えている。アベノミ
クスで減ればデュルケム正しいとなろうが。
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デュルケム批判のいくつか②
• 軍隊での自殺率の多さというが
– 社会の比較と属性の比較とが混在している。
– 未開社会 vs 現代社会で未開 = 集団本位的自
殺というのは分かる。
– ところが、未開の延長 = 軍隊というのは変。現
代社会での、軍人の自殺の多さということであれ
ば、それは「自己本位的自殺」や「アノミー的自
殺」と矛盾してしまう。
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デュルケム批判のいくつか③
• 社会を纏めて比較出来る前提は?
– 社会の統合・安定
→ そもそも分裂している社会には方法論的集団
主義は向かない
– ボーダレスな現代社会での有効性の疑問
→別の言い方をすると社会の変動要因をみられ
ない可能性
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「統合-分裂」の軸で国家を測定する
要因項目
統合に向かう要因
分裂に向かう要因
文化的共通性
疑似単一民族国家
多民族国家
言語
方言の共通語化
カナダ等
宗教
国教ありOR
宗教的寛容の徹底
宗教紛争
経済的格差
なし・弱い(従来の日本)
社会主義国家(の理念)
あり(構造改革後の日本)
資本主義国家
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統合された社会と分裂した社会の
メリット、デメリット
統合した社会
分裂した社会
犯罪
少ない
多い
創意工夫の余地
少ない
多い
自由
少ない
多い
拘束・規範
多い・堅固
少ない・緩やか
社会の流動性
(浮き沈みのチャン
ス)
少ない
多い
生の意味
明確
曖昧 : アノミー
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統合した社会と分裂した社会
• それぞれメリット、デメリット
• グローバリズムはどちらの方向?
• 世界の統合と国内の分裂か
• 皆さんの希望は?
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社会の統合の装置(としての側面をも
つ)制度や施策
• 義務教育制度:「読み書きそろばん」
→ 良質な労働力
→ 貧富の格差是正
→ 社会の安定・統合
• 公共図書館の無料原則
• コンピュータリテラシー、メディアリテラシーを
身につけさせる政策
• デジタル・ディバイドの解消施策
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物質面での統合装置は?
• もちろん、上記の情報政策以外に
• 累進課税制度
• 各種福祉政策
• 場合によって公共事業と地方交付税
は、物質面で、社会の統合を図る仕組み
(富の再配分)
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富の再配分は誰のため
• 一見すると社会の底辺の人に役立つ
• しかしエリート層に有益とも。
• なぜか?
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スケープゴード(身代わりの子羊)
• アドルフ・ヒトラー(1889-1945)の方法(統合
のための方法のひとつ)
• 社会内部の対立あり
→ あえて外部にもっと大きな対立軸を作る
→ 共通の外敵に
→ 内部の対立隠蔽
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葛藤の大きな要因
-属性(デモグラフィック要因)の違う者相互の葛藤-
•
•
•
•
•
年齢 ・・・ 世代差
性 ・・・ 女性の進出
学歴 ・・・ 階層再生産、生まれ変わり
職業 ・・・ 階級闘争、生まれ変わり
宗教 ・・・ 支配的宗教
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年齢による葛藤
• 年齢 : 世代間葛藤、親子の対立、全共闘世
代、新人類(「世代」と「年代」の違いに注意)
• 新世代に新しい文化:行動様式(対抗文化)
→ 親世代に反撥
→ 彼らがいずれ親世代に
→ 主流文化に(ブルージーンズの一般化、ロンド
ン五輪開会式ポール・マッカートニー「卿」、アキバ
系の、漢字の読めない元首相・漫画の社会的受容)
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性差による葛藤
• 性役割分業の時代
– 女性の社会進出の時代へ(マイノリティの権利と
しての女性の権利、ジェンダー論)。
– それを支える家庭の領域への産業資本の浸食。
家電製品の発達、お総菜産業の発展
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学歴差による葛藤
• 階層再生産(ブルデューPierre Bourdieu
1930-2002)の道具か、階層の流動化の要因
か(従来は後者のための武器と考えられた)
• 前者の考え方・・・教育の差が他の差を拡大
再生産。デジタルデバイドの発想と共通。
• 戦後すぐの日本・・・後者の面、強かった。
• 「生まれかわり願望」(苅谷剛彦)
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宗教の違いによる対立・葛藤
• 宗教:支配的宗教か否か
→ 社会変動の大きな要因に。
• 意味世界に関わるし、「政教分離」していない
社会においては「権力」の配分にも密接に関
わる
– イラクでのシーア派・スンニ派の対立。
– ケネディ元大統領。
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1.6 自明性への疑いの眼差し
• 現代社会の様々な自明とされる事柄(制度や
仕組み)を改めて疑う
• 子供の目で社会ととらえ直す。
• 外国人の眼、あるいは過去の人の眼で、今
の時代をみると、別の様相、異様なものに映
る。
→比較による、自己相対化
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• 自明とされた制度や規範、習慣等を相対化。
あるいは制度、規範等の意味、理由を探る。
• 例)現象学的社会学、イリッチなどの病院や
学校を相対化する歴史研究
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イリッチの経歴①(ウィキペディアより)
• 「イヴァン・イリイチ」イヴァン・イリイチ(Ivan Illich,
1926年9月4日 - 2002年12月2日)は、オーストリ
アのウィーン生まれのユダヤ系知識人。社会評
論家。文明批評家。イバン・イリッチとも表記され
る。
• 南米での解放の神学などの運動に共感を抱き、
のちカトリックから離れる。 プエルトリコのカトリッ
ク大学の副学長を経て、メキシコのクエルナバカ
で、世界文化情報センター(CIDOC、ケドック)を
主催。このセンターは、1976年に閉鎖。
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イリッチの経歴②
• 学校、交通、医療といった社会的サービスの
根幹に、道具的な権力、専門家の権力を見て、
それから離れて地に足を下ろした生き方を模
索。過剰な効率性を追い求めるがあまり、人
間の自立、自律を喪失させる現代文明を批
判し、学校教育においては、真に学びを取り
戻すために、学校という制度の撤廃を提言。
「脱学校論」として知られる。これは、当時の
フリースクール運動の中で、指導的な理論の
ひとつになった。
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イリッチの経歴③
• また、彼は家庭の主婦の家事労働など、報酬を
受けない再生産労働を「シャドウワーク」(影法師
の仕事?鶴見和子の訳)と命名、女性の家庭内
労働の捉え方で新しい視点を提示したことでも
知られている。
著書
• 『脱学校の社会』
• 『シャドウワーク』
• 『脱病院化社会』
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イリッチの写真
http://d.hatena.ne.jp/asin/4938710560http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0436.html
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『脱学校の社会』①
• 通念「学校・・・賢くする施設」
• イリッチの逆説「学校・・・バカ製造器」
• なぜこういうことがいえるのか?
• 好きなアーティストは?
• 『源氏物語』、ビートルズの学校化(教科書掲
載)
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『脱学校の社会』②
• 制度のもつ落とし穴
• 自ら学ぶ力vs制度
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『脱病院社会』
• 常識「病院は健康を維持するための施設」
• イリッチ「病院は病気を作る施設」
• これも制度の落とし穴
• 病院・・・医療関係者の生活のための施設
• 自己治癒力、自然治癒力vs薬漬け、検査漬
け
• 医原病
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『シャドウ・ワーク』①
• (旧来の)常識「(専業主婦のいる家庭の場
合)男が女性を食べさせている」
• (20年前の「わたおに」での台詞)
• イリッチ「(専業主婦であっても)家計に貢献し
ている」
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『シャドウ・ワーク』②
• フェミニストからの肯定と否定
• 沖縄経済との関係(玉野井芳郎)
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韓国(韓流)ドラマの様式とリアリティ
• 財閥、不治の病、プラトニックな愛といったお
約束の道具立て
• 自明になったものを異邦人の眼によって捉え
直す
→日本にいる韓国人留学生に韓国ドラマにつ
いて聞く。
→向こう(韓国)に居る時:自然なもの
日本:リアリティが欠如したもの
と考えるようになったという。
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現象学的社会学での日常生活の
自明性への疑い・・・
•多元的現実論
 我々が〈現実〉と呼んでいるもの=多元的な領域か
ら成る意味の秩序として主観的に構成されたもの
にすぎない。
 それでも〈現実〉が客観的拘束力を持つのは、〈現
実〉が主体的に構造的に〈内在化〉されるため。
 このような〈現実〉構築のプロセスは本質的に社会
相互作用の場と切り離すことができない
作田圭一・井上俊編『命題コレクション社会学』1986,p.51より(一部改変)
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コスモス/ノモス/カオス①
• バーガー(Peter Ludwig Berger)の用語
• ノモス
– 自らの経験に秩序を与える意味世界〔規範〕。
– 社会に参加し、共通の意味世界を分かち合うこと
によって成立する。
• コスモス
– ノモスの上位に秩序付けられた世界観
– 例:宗教など。
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コスモス/ノモス/カオス②
• カオス
– ノモスを揺らがせる、日常を攪乱する出来事
– 身近な者の病気や死や災害など。旧来の意味
世界では解釈できない出来事
• ノモスはコスモスによってたえず再構築され
なければならない
『社会学のエッセンス』有斐閣,1995,p.274 より(一部補足あり)
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エポケー(哲学的判断停止)①
• 現象学的エポケー
– 現象学は、デカルト的懐疑という方法を徹底化す
ることによって、世界の現実性に対する我々の暗
黙の信念を停止することを教えてきた。
• シュッツによると、これは現象学的エポケーと
よばれる。
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エポケー(哲学的判断停止)②
• 自然的態度のエポケー
– 日常世界の中で生活している人びとの自然的態度は
世界は見かけどおりではないのではないか、という疑
いを括弧に入れることで成立している。
– そこでは、世界が経験されるとおりの形でそこにある
ことが素朴に信じられ、その存在根拠は問われること
なく自明的に理解されている。
• シュッツはこれを自然的態度のエポケーとよぶ。
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エポケー(哲学的判断停止)③
• 現象学的還元
– 現象学は、自然的態度におけるあらゆる自明的
理解をいったん括弧に入れ、意識に直接現れる
がままの「事象そのもの」へ向かおうとする。
• 現象学還元とよばれる操作によって、世界は
素朴な実在であることを止め、純粋な意識的
生の流れに現れるがままの「現象」となる。
『命題コレクション社会学』1986,pp.52-53より
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自明とされる世界を括弧に入れると
• 我々は、それぞれ多様な世界、多様な物の見方
(世界観)があり得ることに気付かされる。
• しかし、多様な現実、多様な世界観のなかでも自
分たちが自明とする現実を「至高の現実」と捉え
ていることに気づく。
• そのような「至高の現実」は、自分たちの社会的
相互作用(教育による文化伝承や習慣、規範に
基づく色々な相互行為、コミュニケーション等)に
よって構築されたものであることに思い至る。
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• 命に関わる病気、大災害などを想定したり、
身近な者の死に直面すると・・・
→ 今まで自明のものとしてきた世界が異なっ
て眺められるようになる。
→ 異界からの眼、異邦人の視線で眺め直すこ
とが可能になる。
• つまり、エポケーのようなものを強制的に迫ら
れると言える。・・・今まで自明のものとしてき
た世界、「至高の現実」に疑いの眼を。
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神義論①
• バーガーによると・・・
– こういったコスモスの変化は「神義論」に関係する。
• 神義論
– ライプニッツに由来する用語。
– 端的に言えば、神がこの世界を創造したにもかかわ
らず、なぜ悪や苦難が存在するのか、なぜこの世で
は義人が苦しみ悪人が栄えるのか、という疑念に対
して、そのような事態は決して神の存在を脅かすも
のではなく、むしろ神の存在の否定が誤りであること
を論じて、神を弁護する試みのことを指す。
「ヨブ記」における神義論批判 (http://rc.moralogy.jp/ronbun/360.html)より。
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神義論②
• 人が不幸な事態(大災害や伝染病、幼少の
子どもの死など)に見舞われると・・・
– 自暴自棄あるいはニヒリズムに陥るケース
– 逆に、「だけど神はいる」と信仰世界に入ったり、
神の存在を確信したりするケースも少なくないと
いう。
→ 意味ある世界秩序、コスモスに憧れ、現世
の不完全性、無意味さを自覚するという道筋
があり得る。
http://www.iwakimu.ac.jp/~moriyuki/sr/07/sr07.htm より。
58
神義論③
• 例えば身近な人が亡くなった際
– 普段は信仰心の弱い人でも、その人が別の世で
生きていて、亡くなった人のいる「天国」、「来世」
があると考えるケースは多い。
→ 亡くなった者があの世へと旅立ち、見守ってくれ
ているなどと考えることで死というものを合理化し
ようと考える。
• 失われたものが取り返しがつかないものであればあ
るほど、我々は失った物の価値を自分の意味づけ
の体系の中で下げることで、失った事実を軽く見積
もる合理化を図る。
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神義論④
• 「失った事実を軽く見積もる」=この世の生(
故人が失ったもの)を軽くする・・・もっと価値
あるものとして「あの世」の存在を想定する
• こういう合理化は、例えばふられた友人に慰
める場合を想起すると良い。
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