sociology20090930

メディア社会学(第4回)
2009年9月29日(火)
1.5 社会(あるいは全体社会)相互の比
較
• 1.4までの比較
– 集団ごと(属性ごとにグルーピングしたグループ
ごと)の比較
• 1.5での比較
– 地域ごとの比較、時代ごとの比較等々
全体社会の相対化
• 「全体社会」
– 「国民国家の全成員のなす社会」「国民社会」
• 1.4の方法
– 全体社会を部分社会に分節化
• 分節化 : 社会学の基本
• ただし1.5は、「全体社会」を一枚岩に
• 現在の「全体社会」の相対化
デュルケム(Emile Durkeim 1858-1917)
• マックス・ウェーバーの同
時代人。
• ウェーバーと共に、社会
学の史上2大巨頭(3大
巨頭という場合、ジンメル
が加わる)
• 著作
– 『自殺論』
– 『社会学的方法の規準 』
ウィキペディアからの画像
デュルケム vs ウェーバー①
• ウェーバーと対比される
• ウェーバー ・・・ 独逸人
• デュルケム ・・・ 仏人
• ウェーバー
– 方法論的個人主義
• デュルケム
– 方法論的集団(集合)主義の代表
デュルケム vs ウェーバー②
• ウェーバー
– プロテスタントの熱心な母の下で育つ
– プの信仰 → 一人で神に近づく
• デュルケム
– 父親はユダヤ教のラビ(ただしカトリック文化圏の
中で育つ)。
– カの信仰 → 集団的に神に近づく
– ユダヤ教 → カトリック → プロテスタントの順で、
集団の規範が緩くなる(とデュルケムは想定)
方法論的集団(集合)主義
• 社会を個人の意識(ウェーバー)や創意(タル
ド)に還元する見方を批判
• 社会を堅固な物として捉えることを提唱
• 社会学の分析対象は「社会的事実」
社会的事実
• 「社会的事実」
– 個人の外にあって個人の行動や考え方を拘束す
る、集団あるいは全体社会に共有された行動・思
考の様式
• 人間の行動や思考は、個人を超越した集団
や社会のしきたり、慣習などによって支配さ
れる(以上2つ、ウィキペディア「デュルケム」より引用)
• しきたり、慣習、規範、制度などが「社会的事
実」
二つの方法論の比較①
• 方法論的個人主義
– 現在の社会を分節化
→ アンケート調査など通常の調査方法に適合
• 方法論的集団(集合)主義
– 社会相互の比較
– 違う国や違う地域の比較、同じ地域の違う時代を
比較 → 既存の統計資料をつき合わせる。あるい
は文化人類学に(弟子で甥のマルセル・モースの
ように)。
二つの方法の比較②
• 社会が先か、個人が先か
– 結局は鶏と卵の関係
• 実際は、双方の流れを汲む人々共に個人の
意識も制度や規範も考慮する
• ただし、方法論的個人主義の方がアンケート
調査等、現代の社会学の主流に近い(親和
的)
– ウェーバーの方が社会学の事実上の祖のような
扱いされる理由か
全体社会の捉え方の一つの例
• デュルケム
• 全体社会を「統合-分裂」の軸で比較
• 統合
分裂
葛藤 ・・・ 社会変動の要因、階級闘争、
資本家対労働者
自由 ・・・ さらに分裂を深めかねない
• 安定
不安定性
統合の欠如と自殺
倉沢進・川本勝編著『社会学への招待』ミネルヴァ書房p.205.1992年等による
• 「統合」 ・・・ 社会の連帯、まとまりのようなも
の
• 『自殺論』(1897)デュルケムの代表作。
• 自殺率 ・・・ 社会解体、社会の紐帯が弱体化
した(統合が失われた)とき増大
• 自殺率を社会統合の指標に
• アノミー 規範が弱体化 → 個人はアスピレー
ション(向上心)や道徳的行動に規制を感じる
ことが少なくなる → 集団の統制や規制による
安心感、安定感を失う → 自殺
アノミー
宮島喬・杉山光信・梶田孝道・富永茂樹訳『ラルース社会学事典』弘文堂、1997,pp.4-5より
• アノミー
– 語源的には、規範、規則法律の欠如。アナー
キーな個人主義
• 『自殺論』でのアノミー
– 人間の欲求の無制限性と達成すべき目的の不
確定性から生じる無限の病
デュルケムの規範の考え方
• 通常の規範の捉え方
– 自由に反するもの。人々を押さえ込むもの
• デュルケムの規範の考え方
– 人々に目標を与えるもの。生きている意味に関わ
るもの。
• 自由な時代、あるいは自由なはずの人々こそ、
自殺が多くなる。
『自殺論』(1897)あれこれ
• 自殺が多いのは、以下の4カテゴリーのうち、どれ?
• 「独身・男性」「独身・女性」「既婚・男性」「既婚・女性」
(マトリックス的思考)
独身・男性 独身・女性
既婚・男性 既婚・女性
• では次の時期の比較では?
• 「戦争の時期」「平和で豊かな時期」
『自殺論』での自殺の4類型
(主にウィキペディア「デュルケム」による)
• 集団本位的自殺 ・・・ 伝統社会中心
• 自己本位的自殺 ・・・ 孤立した現代社会での
もの。次の「アノミー的自殺」と共にデュルケ
ムの議論の中心
• アノミー的自殺 ・・・ 過度に自由な社会での自
殺
• 宿命論的自殺 ・・・ 規範の拘束力の強い社会
での自殺
– デュルケムは注で記すのみ
集団本位的自殺
(以下の各類型は主にウィキペディア「エミール・デュルケム」による)
• 集団本位的自殺
– 集団の価値体系に絶対的な服従を強いられる社
会、あるいは諸個人が価値体系・規範へ自発的
かつ積極的に服従しようとする社会に見られる自
殺の形態。
• 自己犠牲が強調される伝統的社会や、それ
を受け継ぐ軍隊組織で見られる
自己本位的自殺
• 過度の孤独感や焦燥感
→ 個人が集団との結びつきが弱まること
→ 個人主義の拡大 → 自殺
• 宗教による自殺率の違い
ユダヤ教 < カトリック < プロテスタント
• 地域による違い
農村部 < 都市部
• 未既婚による違い
既婚 < 未婚
アノミー的自殺
• 社会の規則・規範がない(もしくは少ない)状
態において起こる自殺の形態。
• 規範欠如 → 多くの自由 → しかし自由である
が、欲望充分に満たせない(満足を知らない)
→ 虚無感 → 自殺
• 時期による自殺率の違い
不況 < 好況
宿命論的自殺
• 集団・社会の規範による拘束力が非常に強く、
個人の欲求を過度に抑圧することで起こる自
殺の形態
• 宮島喬(お茶大名誉教授)によると、「心中」
がこの典型例
デュルケム批判のいくつか①
• 精神病による自殺を除外しているが
– 現代では自殺すると鬱だったとされることがほと
んど。
• アノミー的自殺で「自殺率 ・・・ 不況 < 好況」
というが
– 現在、不況で自殺する人が増えている。
デュルケム批判のいくつか②
• 軍隊での自殺率の多さというが
– 社会の比較と属性の比較とが混在している。
– 未開社会 vs 現代社会で未開 = 集団本位的自
殺というのは分かる。
– ところが、未開の延長 = 軍隊というのは変。現
代社会での、軍人の自殺の多さということであれ
ば、それは「自己本位的自殺」や「アノミー的自
殺」と矛盾してしまう。
デュルケム批判のいくつか③
• 社会を纏めて比較出来る前提は?
– 社会の統合・安定
→ そもそも分裂している社会には方法論的集団
主義は向かない
– ボーダレスな現代社会での有効性の疑問
→ べつの言い方をすると社会の変動要因をみら
れない可能性
「統合-分裂」の軸で国家を測定する
要因項目
統合に向かう要因
分裂に向かう要因
文化的共通性
疑似単一民族国家
多民族国家
言語
方言の共通語化
カナダ等
宗教
国教あり
宗教的寛容の徹底
宗教紛争
経済的格差
なし・弱い(従来の日本)
社会主義国家(の理念)
あり(構造改革後の日本)
資本主義国家
統合された社会と分裂した社会の
メリット、デメリット
統合した社会
分裂した社会
犯罪
少ない
多い
創意工夫の余地
少ない
多い
自由
少ない
多い
拘束・規範
多い・堅固
少ない・緩やか
社会の流動性
(浮き沈みのチャン
ス)
少ない
多い
生の意味
明確
曖昧 : アノミー
社会の統合の装置(としての側面)
• 義務教育制度:「読み書きそろばん」
→ 良質な労働力
→ 貧富の格差是正
→ 社会の安定・統合
• 公共図書館の無料原則
• コンピュータリテラシー、メディアリテラシー
• デジタル・ディバイドの解消施策
スケープゴード(身代わりの子羊)
• アドルフ・ヒトラーの方法
• 社会内部の対立あり
→ 外部に大きな対立軸を作る
→ 共通の外敵
→ 内部の対立隠蔽
葛藤の大きな要因
ー属性(デモグラフィック要因)の違う者相互の葛藤ー
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•
年齢 ・・・ 世代差
性 ・・・ 女性の進出
学歴 ・・・ 階層再生産、生まれ変わり
職業 ・・・ 階級闘争、生まれ変わり
宗教 ・・・ 支配的宗教
年齢による葛藤
• 年齢 : 世代間葛藤、親子の対立、全共闘世
代、新人類(「世代」と「年代」の違いに注意)
• 新世代に新しい文化:行動様式(対抗文化)
→ 親世代に反撥
→ 彼らがいずれ親世代に
→ 主流文化に(ブルージーンズの一般化、ポー
ル・マッカートニー「卿」、アキバ系の漢字の読めな
い前首相・漫画の社会的受容)
性差による葛藤
• 性役割分業の時代
– 女性の社会進出の時代へ(マイノリティの権利と
しての女性の権利、ジェンダー論。
– それを支える家庭の領域への産業資本の浸食。
家電製品の発達)
学歴差による葛藤
• 階層再生産(ブルデューPierre Bourdieu
1930-2002)の道具か、階層の流動化の要因
か
• 前者の考え方によると、教育の差が他の差を
拡大再生産することになる。これは、デジタル
デバイドの発想と共通する。
• 戦後すぐの日本は後者の面も強かった。
宗教の違いによる対立・葛藤
• 宗教:支配的宗教か否か
→ 社会変動の大きな要因に。
• 意味世界に関わるし、「政教分離」していない
社会においては「権力」の配分にも密接に関
わる
– イラクでのシーア派・スンニ派の対立。
– ケネディ元大統領。