2011年12月17日 平成22年医師・歯科医師・薬剤師 調査における産婦人科医数の分析 北里大学医学部・産科 海野信也 (日本産科婦人科学会医療改革委員会) 平成22年 医師・歯科医師・薬剤師調査 • 医師・歯科医師・薬剤師調査は、医師、歯科医 師及び薬剤師について、性、年齢、業務の種別、 従事場所及び診療科名(薬剤師を除く。)等によ る分布を明らかにし、厚生労働行政の基礎資料 を得ることを目的として、昭和57年までは毎年、 同年以降は2年ごとに実施されています。 • 平成23年12月6日に平成22年12月31日の時点 での医師・歯科医師・薬剤師の動向について最 新のデータが公表されました。 • このデータを用いて、産婦人科医数の動向につ いて、若干の分析を試みました。 主たる診療科が産婦人科+産科の医師数 全体・年齢別推移(平成8年ー22年) 12000 244 376 924 1058 538 945 1136 917 788 991 808 710 711 658 85歳以上 681 744 672 610 876 670 609 561 600 505 534 503 589 804 1066 1174 728 1071 1287 1201 1069 1046 1410 1215 1123 1139 1210 1264 1217 1290 1351 1370 1282 1127 1406 1379 1244 1170 1144 1145 1154 1182 1202 1212 1238 1213 1070 1066 1001 1109 837 550 H8 H10 H12 H14 H16 H18 427 467 476 878 404 422 477 1048 10000 75-79 70-74 8000 1067 995 1120 1231 1230 1250 6000 705 H20 H22 55-59 50-54 4000 45-49 40-44 35-39 2000 1263 1283 612 65-69 60-64 1271 1158 1090 1154 80-84 30-34 25-29 0 24歳以下 平成8年から18年 まで産婦人科医は 全体として減少し 続けていました が、平成20年と22 年には若干の増加 が認められていま す。これには特に 40歳未満の年齢層 の医師の増加の寄 与が大きいと思わ れます。 産婦人科医全体 でとりくんできてい る若手医師増加の ための取り組みが 奏効している可能 性があります。 日本産科婦人科学会 年度別入会者数(産婦人科医) 2011年9月30日現在 500 450 400 350 300 250 200 150 100 50 0 262 299 241 214 238 251 213 202 152 137 53 93 116 190 161 133 192 154 48 50 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 女性 男性 日産婦学会の入 会者数は2006年 度以降、2010年度 まで、増加を続け てきました。 2011年度は、前 年より入会者数が 少ない状況であ り、これまでのよう な増加が続くかど うか、懸念されてい る状況です。 主たる診療科が産婦人科+産科の医師数 病院勤務・年齢別推移(平成10年ー22年) 7000 289 314 554 736 970 1194 1146 1055 H10 268 271 675 685 209 390 621 701 209 468 549 717 984 1069 1151 994 H12 954 208 516 537 1144 1106 H14 927 1185 830 H16 407 442 624 701 728 755 779 744 922 982 1043 1168 1217 1244 545 607 700 H18 H20 H22 915 995 352 450 558 6000 5000 4000 788 3000 2000 1000 0 平成20年以降の 85歳以上 比較的若年層の医 80-84 師の増加傾向は病 院勤務においても明 75-79 瞭に認められます。 70-74 40歳代後半から50 65-69 歳代にかけては増 60-64 加傾向が認められ 55-59 ません。 50-54 60歳代前半の増 加は、いわゆる「団 45-49 塊の世代」の産婦人 40-44 科医がもとから多い 35-39 ことが関係している 30-34 と思われます。 25-29 主たる診療科が産婦人科+産科の医師数 診療所勤務・年齢別推移(平成10年ー22年) 5000 89 333 934 738 110 480 839 633 148 605 655 214 608 539 4500 341 465 380 355 450 388 344 354 350 3000 641 2500 2000 537 445 391 381 526 401 391 553 607 519 443 486 598 658 396 387 617 517 612 580 520 509 562 479 438 438 493 536 516 457 320 367 416 367 348 346 366 H10 H12 H14 H16 80-84 308 330 H18 H20 H22 85歳以上 4000 75-79 3500 70-74 65-69 1500 1000 60-64 55-59 50-54 45-49 40-44 35-39 30-34 500 25-29 0 24歳以下 診療所の産婦人科 医については、減少傾 向はありますが、大き な変化はないと思われ ます。 主たる診療科が産婦人科+産科の医師数 男性・全体・年齢別推移(平成8年ー22年) 12000 85歳以上 77 202 72 836 324 111 948 507 136 834 610 1011 658 826 725 629 916 749 673 571 762 670 617 812 676 993 1195 1109 1310 1115 1001 1015 1081 1135 1169 1138 1177 1119 958 887 875 825 778 694 581 545 460 441 H8 10000 80-84 75-79 70-74 204 589 558 528 564 990 300 433 495 468 549 1099 8000 340 369 431 442 805 306 356 391 442 970 980 895 985 938 981 1080 1066 1076 1048 898 1006 872 796 778 802 735 738 666 653 575 476 479 285 148 195 228 H10 H12 H14 H16 H18 H20 H22 65-69 60-64 6000 55-59 50-54 4000 45-49 40-44 2000 35-39 30-34 25-29 0 24歳以下 男性医師の減少傾 向は続いています。し かし30歳代前半と20 歳代の男性医師数は 平成22年は微増しま した。 この調査の時点で は、平成20年に認め られた20歳代後半の 男性医師の増加の効 果が「若干」及んでき ていた結果が示され ているものと思われま す。 主たる診療科が産婦人科+産科の医師数 男性・病院勤務・年齢別推移(平成10年ー22年) 6000 85歳以上 169 264 294 522 148 251 254 638 675 618 858 979 809 858 5000 127 199 368 586 639 75-79 106 199 447 517 646 805 105 198 499 113 336 427 119 391 409 496 501 565 635 638 550 605 559 545 611 623 583 464 194 476 226 H20 H22 721 834 752 769 668 80-84 666 640 541 459 440 283 558 148 H10 H12 H14 H16 H18 4000 3000 70-74 65-69 60-64 55-59 50-54 2000 45-49 40-44 1000 35-39 30-34 0 25-29 病院勤務の男性産 婦人科医数は、(興 味深いことに、)平成 18年以降、ほとんど 変化していません。 主たる診療科が産婦人科+産科の医師数 男性・診療所勤務・年齢別推移(平成10年ー22年) 6000 5000 診療所勤務の男性産婦人 85歳以上 科医は、減少が続いていま す 80-84 75-79 62 287 837 100 453 739 127 542 185 537 575 489 4000 306 323 358 329 469 280 311 318 323 3000 422 365 271 397 415 363 351 579 2000 543 600 553 486 657 577 502 485 376 471 422 363 372 444 557 523 468 442 480 440 277 383 311 376 333 420 285 441 267 410 237 515 348 233 H10 H12 H14 H16 H18 H20 H22 70-74 65-69 60-64 55-59 50-54 45-49 40-44 1000 35-39 30-34 0 25-29 主たる診療科が産婦人科+産科の医師数 女性・全体・年齢別推移(平成8年ー22年) 3500 85歳以上 3000 78 100 151 260 73 87 139 40 36 75 223 376 76 39 64 108 84 92 144 188 294 124 38 41 92 232 276 255 584 59 122 40 492 78 75 100 182 283 342 42 52 155 410 100 286 136 260 518 229 585 787 804 424 638 279 357 668 552 489 521 541 402 417 477 75-79 2500 70-74 65-69 2000 60-64 55-59 1500 50-54 45-49 1000 40-44 35-39 500 30-34 25-29 0 H8 H10 H12 H14 H16 H18 H20 H22 80-84 24歳以下 女性医師の増加傾向は持 続しています。60歳代にいた るほぼすべての年齢層で増 加しています。 主たる診療科が産婦人科+産科の医師数 女性・病院勤務・年齢別推移(平成10年ー22年) 2500 85歳以上 59 151 32 61 112 215 337 37 67 126 35 62 149 32 71 194 226 261 235 476 399 41 93 174 57 117 185 80-84 2000 243 70-74 65-69 460 1500 359 1000 610 753 768 514 535 547 H12 H14 H16 45-49 35-39 30-34 397 413 474 25-29 0 H10 50-54 40-44 500 666 60-64 55-59 311 545 75-79 H18 H20 H22 24歳以下 病院勤務の女性医師数 も、平成20年以降、増加 を続けています。 男性の病院勤務医は増 えていないので、産婦人 科病院勤務医の増加は、 女性医師の増加に依存し ている、ということもできる と思います。 主たる診療科が産婦人科+産科の医師数 女性・診療所勤務・年齢別推移(平成10年ー22年) 900 800 27 46 10 27 97 100 81 34 20 46 39 43 45 20 56 21 24 55 55 56 51 25 H10 H12 21 63 29 71 80 35 29 42 57 50 23 26 55 52 62 73 37 68 35 28 30 58 67 95 82 81 57 42 81 99 40 H14 H16 83 35 57 30 25 57 64 82 106 109 50 44 26 27 62 67 700 80-84 75-79 70-74 600 500 65-69 60-64 55-59 92 400 109 300 133 85歳以上 200 50-54 45-49 40-44 35-39 30-34 133 124 100 28 34 36 0 H18 H20 H22 25-29 24歳以下 診療所勤務の女性 医師数も増加していま すが、その絶対数は、 それほど多くありませ ん。 しかし、40歳以降、す べての年齢層で増加 が認められており、今 後、増加していくものと 思われます。 産婦人科医の増減について • 平成18年と平成22年の医師歯科医師薬剤師調 査の結果を比較すると、 • 「主たる診療科が産婦人科または産科」の医師 数は、病院で566名、診療所で12名、全体で578 名増加していることになります。 • しかし、そのような実感は全くない、と感じている 産婦人科医も多いと思われます。 • 実際には、この増加は、どこで起きているので しょうか。 • 都道府県別の増減を検討してみました。 163 87 61 20 30 9 4 7 7 15 -6 10 9 5 -1 -3 1515 6 2 -10 1316 14 8 5 -3 -1 13 1 2 -9 -3 -5 -5 -2 道 森 手 城 田 形 島 城 木 馬 玉 葉 京 川 潟 山 川 井 梨 野 阜 岡 知 重 賀 都 阪 庫 良 山 取 根 山 島 口 島 川 媛 知 岡 賀 崎 本 分 崎 島 縄 -6 -13 8 6 25 1921 18 3 5 3 01 北 海 02 青 03 岩 04 宮 05 秋 06 山 07 福 08 茨 09 栃 10 群 11 埼 12 千 13 東 14 神 奈 15 新 16 富 17 石 18 福 19 山 20 長 21 岐 22 静 23 愛 24 三 25 滋 26 京 27 大 28 兵 29 奈 30 和 歌 31 鳥 32 島 33 岡 34 広 35 山 36 徳 37 香 38 愛 39 高 40 福 41 佐 42 長 43 熊 44 大 45 宮 46 鹿 児 47 沖 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 -20 主たる診療科が産婦人科または産科の医師数の変化 都道府県別・平成22年と平成18年の比較 • 全体では578名の増加となっていますが、東京、大阪、神奈川、埼玉の増加分の和 は全体の増加分の59%を占めています。 • 山形、福島、群馬、福井、山梨、鳥取、徳島、香川、高知、佐賀、長崎、熊本、鹿児島 では減少しています。 主たる診療科が産婦人科または産科の医師数の変化 病院勤務・都道府県別・平成22年と平成18年の比較 123 94 48 43 26 10 5 9 9 5 5 4 9 -9 3 1814 19 15 12 5 2 8 8 4 -6 21 13 10 10 8 4 2 4 -9 9 -3 12 3 0 -6 -3 1 -3 -3 道 森 手 城 田 形 島 城 木 馬 玉 葉 京 川 潟 山 川 井 梨 野 阜 岡 知 重 賀 都 阪 庫 良 山 取 根 山 島 口 島 川 媛 知 岡 賀 崎 本 分 崎 島 縄 -1 14 01 北 海 02 青 03 岩 04 宮 05 秋 06 山 07 福 08 茨 09 栃 10 群 11 埼 12 千 13 東 14 神 奈 15 新 16 富 17 石 18 福 19 山 20 長 21 岐 22 静 23 愛 24 三 25 滋 26 京 27 大 28 兵 29 奈 30 和 歌 31 鳥 32 島 33 岡 34 広 35 山 36 徳 37 香 38 愛 39 高 40 福 41 佐 42 長 43 熊 44 大 45 宮 46 鹿 児 47 沖 140 120 100 80 60 40 20 0 -20 • 病院勤務医は全国で566名増えたことになっています。東京、大阪、神奈川、福岡で 増加が著しいようです。 • 山形、福島、山梨、鳥取、香川、高知、佐賀、大分、鹿児島では、産婦人科病院勤務 医が減少しているという結果になりました。 -10 -20 -30 道 森 手 城 田 形 島 城 木 馬 玉 葉 京 川 潟 山 川 井 梨 野 阜 岡 知 重 賀 都 阪 庫 良 山 取 根 山 島 口 島 川 媛 知 岡 賀 崎 本 分 崎 島 縄 10 01 北 海 02 青 03 岩 04 宮 05 秋 06 山 07 福 08 茨 09 栃 10 群 11 埼 12 千 13 東 14 神 奈 15 新 16 富 17 石 18 福 19 山 20 長 21 岐 22 静 23 愛 24 三 25 滋 26 京 27 大 28 兵 29 奈 30 和 歌 31 鳥 32 島 33 岡 34 広 35 山 36 徳 37 香 38 愛 39 高 40 福 41 佐 42 長 43 熊 44 大 45 宮 46 鹿 児 47 沖 主たる診療科が産婦人科または産科の医師数の変化 診療所勤務・都道府県別・平成22年と平成18年の比較 50 40 40 30 20 10 10 4 2 -5 -2 13 2 4 5 0 -5 -4 1 -4 3 1 -3 -5 7 10 0 -9 9 1 2 -1 -7 -6 -2 -1 -4 6 2 -3 -5 0 4 -1 -3 -8 • 診療所医師数は増加と減少が相半ばしているようです。 • その中で、東京と神奈川の増加が目立ちます。 • 東京と神奈川では病院も診療所も産婦人科医が増えていることになります。 1 1 1 -5 -15 -29 都道府県別の直近5年間の新規産婦人科専攻医数 (後期研修医) 2006年から2010年の新規産婦人科専攻医数(人口10万対) 4.00 3.50 3.00 年間500人のレベル 2.50 2.00 1.50 1.00 0.50 日産婦学会で把握している各都道府県における2006年から2010年までの新規専攻医 数の合計を人口10万対で補正した場合、日本全体で年間500人のレベルを超えてたる のは、宮城、栃木、東京、石川、京都、大阪、徳島、福岡、沖縄でした。 合計 北海道 青 森 岩 手 宮 城 秋 田 山 形 福 島 茨 城 栃 木 群 馬 埼 玉 千 葉 東 京 神奈川 新 潟 富 山 石 川 福 井 山 梨 長 野 岐 阜 静 岡 愛 知 三 重 滋 賀 京 都 大 阪 兵 庫 奈 良 和歌山 鳥 取 島 根 岡 山 広 島 山 口 徳 島 香 川 愛 媛 高 知 福 岡 佐 賀 長 崎 熊 本 大 分 宮 崎 鹿児島 沖 縄 0.00 産婦人科医の増減について・考察 • 産婦人科の状況は平成18年は最悪だったと思います。そのときと の比較での増減です。 • 増えているところも、もう十分というところはないと考えられます。 • まして、減少しているところは、状況が悪化していることが明確に 示されたことになります。 • 私は、産婦人科医療提供体制の安定的確保のためには、産婦人 科医が5年で2000人は必要だと考えています。まだ多い年齢層で 1200人台にすぎません。もっと産婦人科医を増やす必要があると 思います。 • しかし、現実には平成23年度の日産婦学会入会者数は、9月末時 点では、前年度同時期よりも少ない状況です。産婦人科新規専攻 医を増やすための努力をさらに強化する必要があると考えられま す。 • それと同時に、地域間のばらつきの大きさについても、対策が必 要です。新規専攻医は、大都市圏に集中する傾向が明らかに認 められています。これまで行ってきた様々な施策では、この問題を 解決することは難しいでしょう。新たな作戦を考える必要がありま す。 • 皆様の、ご意見をお待ちしております。 資 料 • E-Stat: 医師・歯科医師・薬剤師調査: – http://www.estat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=0000010309 62
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