メディア社会文化論 2014年10月02日 本日の(場合によって次週も)目標 1)メディア論とコミュニケーションモデルとが縦 糸と横糸の関係にあることを理解する 2)送り手、受け手というものを実体で捉えない 見方を理解する(機能的、関係的なとらえ方) 3)「媒介」としてメディアを捉える 4)我々の脳や神経の延長としてのメディアとい う感覚を理解する 5)意図せざる情報伝達を理解する 1.メディア論と、コミュニケーション論 資料論 • メディア(論)とコミュニケーション(論)との関 係 • メディア(論)と資料(論)の関係 1.1 メディア(論)とコミュニケーショ ン(論)① • メディア論とコミュニケーション論 • 生地の縦糸と横糸のような関係 • 送り手→受け手 • この流れに着目・・・コミュニケーションモデル • このそれぞれの項に着目・・・メディア論 1.1 メディア(論)とコミュニケーショ ン(論)② • 送り手、受け手そのものは、自明の存在? • つまりそれらは実体として固定的に捉えられ る? • 両者の中間にあるもの(普通の意味でのメ ディア)と、端にある送り手・受け手とを、明確 に分けることができる? 1.1 メディア(論)とコミュニケーショ ン(論)③ ←この記載への思い・・・ • 現実的には分かれている • でも連続的な部分もあり、明確には分け得な い • 分け得ないという視点から、双方向性(対等 性)への道も開かれうる。 1.1 メディア(論)とコミュニケーショ ン(論)④ さらに • 「媒介」という言葉の二重性 • 媒介=メディア・・・固定性に着目 • 媒介すること=メディエート・・・流動性に着目 • メディウム、ミッテル・・・モノ、コトの違い 1.1 メディア(論)とコミュニケーショ ン(論)⑤ • 実体概念と機能概念(中井正一) ▽イデア論との対比 ▽実体概念としての図書館から機能概念として の図書館へ • 「メディアはメッセージ」(マクルーハン) ▽メディア概念の重層性 マーシャル・マクルーハン http://en.wikipedia.org/wiki/Marshall_McLuhanより 1911-1980 カナダの英文学者、メディア論研究者 代表作 『グーテンベルクの銀河系』(1962) 『メディア論-人間拡張の諸相』(1964) 中間(途中)にあるものとは?① • (1.1.②の補足として) • 中間=送り手受け手の途中にあるものとほ ぼいえる・・・空気、電波、本、紙、CD • 途中にあるものといえるの?・・・補聴器、眼 鏡・・・途中といえば途中。でも、我々の一部、 あるいは感覚器官の延長? • 「人間拡張の原理」(マクルーハンの著書の 題) 中間(途中)にあるものとは?② • 情報機器・・・ダウンサイジング→モバイルの ようにポータブルに→我々の身体に密接不可 分に • コンピュータやネットワークを脳や神経組織の 一部のように • 携帯依存症、ネット依存症 中間(途中)にあるものとは?③ • 途中にはないものといえるの?・・・我々の感 覚器官(皮膚、眼、耳、舌) • 我々の一部なのか、途中のネットワークなの か曖昧(「メガネは体の一部です」。逆に、眼 は体の半ば外側とも) • →途中と終点を分ける見方は相対的 伝えられる先は? • 脳? • 脳の中枢? • 中枢でも部分が相互に連携しあう→神経伝 達物質が脳神経のなかで、情報伝達 • 伝えられる先は実体視できない 「メディア」で伝えられるモノの多面性 メディアは情報を伝えるのか • メッセージを伝えるのか • 意味を伝えるのか • 思い、人柄を伝えるのか • ウェーバーの行為の類型(場合によって支配 の類型)にも照応 • それらすべてを広い意味での「情報」と考える ことはできるが (参考)ウェーバーの行為の類型 • • • • 目的合理的行為 価値合理的行為 感情的行為 伝統的行為 (参考)ウェーバーの支配の3類型 • 合法的支配 • 伝統的支配 • カリスマ的支配 情報の二義性 • 広い意味での「情報」 ①伝えられることを、伝達者が意図した情報 ②伝えられることを伝達者が意図していずに (あるいはそもそも伝達者という明確な主体 の存在しない)情報 • ②・・・コミュニケーションモデル、妥当せず ②の情報のモデル • 「送り手→受け手」モデル × • 「行為する存在+その脇にいる観察者モデ ル」○ • 犯人の足跡・・・情報・・・しかし犯人は送り手 たろうとしない。情報を送る意図はない。 • 天気の変化 雲や前線や高気圧・・・情報の送り手? 気象予報士が情報として読みとるのみ • 枯れ葉 人は秋やもの悲しさを感じる 葉が情報発信しているわけではない(たぶん) • ⇒送り手のいない 送り手のはっきりしない 送り手の人でない 情報発信 ・・・多分に妖精その他、擬人的存在を過去に人が好ん で物語に取り上げてきた理由かも。 →擬人化できにくい現代・・・別のコミュニケーション・ モデルの必要 受け手の不明確な情報発信① • メールの受信の場合・・・受け手はメールサー バ?個々のメールソフト?読み手?読み手の 眼?読み手の脳?脳の受け取り方にも濃淡 はないの?受け取っても忘れるものと憶えて いるものあるのでは? • 文系の研究者の論文・・・読者平均1.5人(と 自嘲するが、じつは自嘲の数以下かも) • 理系の論文・・・ダウンロードは多いが・・・、読 み方は・・・ 受け手の不明確な情報発信② • 昔の文字・・・後世の人に向けられる・・・石に 書く(神話や預言=物語で後世の人の像が 見えていた)(というかその前は歌で物語は語 られ、だから韻を踏んだ詩になっていた) • お経の受け手・・・仏?死者?葬式・法事の参 列者?死者は聞こえぬ。他方、参列者は経 の意味、分かる?やはり死者? 情報メディアの二面性 情報メディア • 記録媒体の面(固定性)・・・メディウム性・・・ ① • 伝送(伝達)媒体の面・・・ミッテル性・・・② • しかし①にも未来への伝送の面 • ②にも微少な記録の面はある 送り手-受け手モデルの連鎖で • 通常のコミュニケーションモデルにおける送り 手と受け手のあいだに • 様々なプロセスで人以外も含めた多くの小さ な{送り手-情報-受け手}のプロセスの連 鎖 1.1のまとめ • コミュニケーションモデル・・・意図した情報伝 達が中心 • メディア論(情報媒体論)・・・意図せざる情報 伝達を含む 1.2 メディア論(メディア)と資料論 資料とは① • 資料論 • 専門資料論、図書館資料論・・・旧・司書科目 • 資料とは何かという分野は当然、研究分野と しても、ありうる • →(図書館資料論→)選書論、コレクション形 成論(専門資料論→)学術情報流通論 資料とは② • 資料とは?(メディアとの関係において) • 2つの考え方 ①資料⊆メディア(後述) ②資料=メディア 資料=メディアについて① • ②の資料=メディアについて 印刷資料以外の資料を捉える際、メディアと いう用語を用いるのが好都合 • 「こうした現状を踏まえ,本章では知識・情報 を伝達するあらゆる装置,仕組みを広く取り 上げようとする主旨から,印刷資料のみなら ず,多様な非印刷資料等も含む各種の資料 を総称する意味でメディアということばを用い ることにした」(長澤雅男1988 247) 資料=メディアについて② • 資料をメディアという例 図情図書館プリントメディア部門 同ディジタルメディア部門 • 資料→メディアと呼び換える 並行して • 図書館→インフォメーションセンターと呼び換 えるべき 資料=メディアについて③ • 境界線の曖昧なもの・・・資料という語感に馴 染まない • 某私立大学湘南藤沢キャンパスに10年前あ る研究者が行った際・・・。塾員「図書館どこで すか」塾生「?」塾員「図書館あるでしょ。藤沢 だって」塾生「メディアセンターのことです か?」 メディアの分類① 1)伝送(伝達)と記録という観点から分類 ①情報を伝送(伝達)のみするもの・・・空気、電 波、電話線 ②情報を記録のみするもの・・・レコード、音楽C D、DVD ③情報を伝送(伝達)し、さらに記録するも の・・・新聞紙 →しかし本当にこうなるの?という感じはある・・ メディアの分類② 2)また、上記②(および③)でも ②(Ⅰ)記録される能力があり、実際には記録され ていないものと、 ②(Ⅱ)記録される能力があり、実際に記録されて いるもの とに、分けられる。 なお、「資料」=記録された情報ゆえ ②(Ⅰ)は、メディアであるが、資料ではない。 (資料⊆メディア) メディアの分類③ 3)さらに、「伝送(伝達)」と「記録」は実体的に 分けられない。・・・1)の分類は便宜的なもの 例 • 紙=記録媒体 紙切れに書いたメモを渡 す・・・(記録を)伝送する媒体 • パソコンのハードディスク=基本は記録媒体 として機能しているイメージであるが、メール ソフトその他送信機能の中枢のアプリも入れ てある メディアの分類④ • 本・・・記録媒体←読者が読む・・・伝送媒体に • 音、空気・・・基本、伝送媒体。 ただし、空気の揺れの記録(まとまり・単位) が伝えられる側面も。・・・微少に記録媒体で もある。 メディアの分類⑤ • よって、媒体というもの(実体)と、それの機能と を分けて考えよう。 • ①「記録媒体」といわれるものも、ある程度時間 を隔てた情報の伝送という意味で、伝送媒体の 機能を果たす。 • ②「伝送媒体」といわれるものも、微少な記録の 繰り返しによって伝送を果たすという意味で、記 録媒体の機能も有する。 1.3 情報とメディアと資料の定義 1.3.1 情報の定義① 『コミュニケーション論』(後藤将之著、中公新書、 1999,p.45)での定義 • もっとも広義の情報・・・物質やエネルギーが構 成するなんらかのパターン、あるいはそれが持 つ一定の秩序性 • その上で二種類の情報 ①それが当初は人為によって構成されたような情 報 ②当初は少なくとも人為によって構成されてはいな かった情報 情報の定義③ • 後藤将之の定義の「物質やエネルギーが構成す るなんらかのパターン、あるいはそれが持つ一 定の秩序性」について • 「パターン」「秩序性」・・・認識する主体を要する。 ただし情報のできはじめる当初から「パターン」を 要する訳ではない。 • 「パターン」を機械に教え込めば、機械も「パター ン」を「認識」できるように。 • しかも機械(コンピュータ)の情報の送受信その もののみとりあげるなら・・・パターンの認識も不 要かも 物財の情報性① • 「情報を専門的に担うのは、情報媒体(情報メ ディア)ですが、情報媒体として意図されていな い存在物であっても、そこに多くの情報や意味 が結果的に担われていることは多々あります」 (後藤将之p.52) →物財の情報性への着目 配付資料の18の「情報の二義性」のうちの 「②伝えられることを伝達者が意図していずに(あ るいはそもそも伝達者という明確な主体の存在 しない)情報」に相当 物財の情報性② • しかし物財の情報性は、「情報媒体として意 図されていない存在物」の専有物? • 形態書誌学等は? 昔の本=写本。 奥付なし、一冊、一冊違う 形態から年代や発行地を推定 1.3.2 メディアの定義① • 「メディア」英語のmediateの名詞形 • mediate 「媒介する、仲介する、取り次ぐ、取 り持つ、介在する、中間にある、連結の役を する」 • 名詞形の単数がmedium、複数がmedia • 太鼓持ち、仲人、くっつけるもの • 弁証法の「媒介」 粉川哲夫のメディアの定義① • 『社会学事典』(弘文堂,1989)「メディア」(粉 川哲夫) • 「「中間」「媒介」などを意味するラテン語 mediumの複数が語源であることからも分か るように、伝達を「媒介」するもののこと」 • 従来のメディア・・・「透明な媒体」を理想・・・ 自らの存在感を極小化(例。ノイズの減ってく る録音画の歴史、SP→モノラル→ステレオ→ アナログ→デジタル) →電子メディアに 粉川哲夫のメディアの定義② • 透明性の逆説・・・透明性が増すと、「「送り 手」のメッセージがそのまま「受け手」に伝わ るわけではないという逆説」 • ←例えばレコードは生演奏の際限ではなく、 一度も存在しない音を作り出す。 • では「透明性」の増す時代のメディアとは? 「コミュニケーションそのものを成り立たせる 「場」であって、単なる通路ではない」。 粉川哲夫のメディアの定義③ • 「「今や「メディアがメッセージ」を作るのであり、 「送り手」「媒介」「受け手」という発想そのもの を無意味にしているのである」。 • 「 「メディアがメッセージ」 を作る」・・・マクルー ハン「メディアはメッセージである」 • 「送り手」「媒介」「受け手」の無効化・・・前回、 申し上げたようなそれらの相対化の必要性を 裏付ける
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