mediastudies20111208

メディア社会文化論
2011年12月08日
1.メディア論と、コミュニケーション論
資料論
• メディア(論)とコミュニケーション(論)との関
係
• メディア(論)と資料(論)の関係
1.1 メディア(論)とコミュニケーショ
ン(論)①
• メディア論とコミュニケーション論
• 生地の縦糸と横糸のような関係
• 送り手→受け手
• この流れに着目・・・コミュニケーションモデル
• このそれぞれの項に着目・・・メディア論
1.1 メディア(論)とコミュニケーショ
ン(論)②
• 「送り手、受け手そのものは、自明の存在で
あろうか。
• つまりそれらは実体として固定的に捉えられ
るものであろうか。
• あるいは両者の中間にあるもの(普通の意味
でのメディア)と、端にある送り手・受け手とを、
明確に分けることができるであろうか」
1.1 メディア(論)とコミュニケーショ
ン(論)③
• 媒介という言葉の二重性
• 媒介=メディア・・・固定性に着目
• 媒介すること=メディエート・・・流動性に着目
• メディウム、ミッテル
1.1 メディア(論)とコミュニケーショ
ン(論)④
• 実体概念と機能概念(中井正一)
▽イデア論との対比
▽実体概念としての図書館から機能概念として
の図書館へ
• 「メディアはメッセージ」(マクルーハン)
▽メディア概念の重層性
マーシャル・マクルーハン
http://en.wikipedia.org/wiki/Marshall_McLuhan
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1911-1980
カナダの英文学者、メディア論研究者
『グーテンベルクの銀河系』(1962)
『メディア論-人間拡張の諸相』(1964)
途中にあるものとは?①
• (1.1.②の補足として)
• 途中にあるものとほぼいえる・・・空気、電波、
本、紙、CD
• 途中にあるものといえるの?・・・補聴器、眼
鏡・・・我々の一部、あるいは感覚器官の延
長?
• 「人間拡張の原理」(マクルーハンの著書の
題)?
途中にあるものとは?②
• 情報機器・・・ダウンサイジング→モバイルの
ようにポータブルに→我々の身体に密接不可
分に
• コンピュータやネットワークを脳や神経組織の
一部のように
• 携帯依存症、ネット依存症
途中にあるものとは?③
• 途中にはないものといえるの?・・・我々の感
覚器官(皮膚、眼、耳、舌)
• 我々の一部なのか、途中のネットワークなの
か曖昧
• →途中と終点を分ける見方は相対的
伝えられる先は?
• 脳?
• 脳の中枢?
• 中枢でも部分が相互に連携しあう→神経伝
達物質が脳神経のなかで、情報伝達
• 伝えられる先は実体視できない
マスメディアという言い方の多面性
• マスメディア・・・マスコミ産業・・・新聞社、テレ
ビ局・・・メディアとして捉える・・・マスメディア
の外側同士のコミュニケーションを繋ぐ点とい
う見方
• マスコミュニケーションの送り手として捉え
る・・・コミュニケ-ションの端としての見方
「メディア」で伝えられるモノの多面性
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メディアは情報を伝えるのか
メッセージを伝えるのか
意味を伝えるのか
思いを伝えるのか
• それらすべてを広い意味での「情報」と考える
ことはできるが
情報の二義性
• 広い意味での「情報」
①伝えられることを、伝達者が意図した情報
②伝えられることを伝達者が意図していずに
(あるいはそもそも伝達者という明確な主体
の存在しない)情報
• ②・・・コミュニケーションモデル、妥当せず
②の情報のモデル
• 送り手→受け手モデル
×
• 行為する存在+その脇にいる観察者モデル
○
• 犯人の足跡・・・情報・・・しかし犯人は送り手
たろうとしない。情報を送る意図はない。
• 天気の変化
• 雲や前線や高気圧・・・情報の送り手?
• 気象予報士が情報として読みとるのみ
• 枯れ葉
• 人は秋やもの悲しさを感じる
• 葉が情報発信しているわけではない
• ⇒送り手の居ない
送り手のはっきりしない
送り手の人でない
情報発信
受け手の不明確な情報発信①
• メールの受信の場合・・・受け手はメールサー
バ?個々のメールソフト?読み手?読み手の
眼?読み手の脳?脳の受け取り方にも濃淡
はないの?受け取っても忘れるものと憶えて
いるものあるのでは?
• 文系の研究者の論文・・・読者平均1.5人
• 理系の論文・・・ダウンロードは多いが・・・
受け手の不明確な情報発信②
• 昔の文字・・・後世の人に向けられる・・・石に
書く
• お経の受け手・・・仏?死者?葬式・法事の参
列者?参列者は経の意味、分かる?
情報メディアの二面性
情報メディア
• 記録媒体の面(固定性)・・・メディウム性①
• 伝送(伝達)媒体・・・ミッテル性②
• しかし①にも未来への伝送の面
• ②にも微少な記録の面はある
• 通常のコミュニケーションモデルにおける送り
手と受け手のあいだに様々なプロセスで人以
外も含めた多くの小さな{送り手-情報-受
け手}のプロセスの連鎖
• コミュニケーションモデル・・・意図した情報伝
達が中心
• メディア論(情報媒体論)・・・意図せざる情報
伝達を含む
1.2 メディア論(メディア)と資料論
資料とは①
• 資料論
• 専門資料論、図書館資料論・・・司書科目
• 資料とは何かという分野は当然、研究分野と
しても、ありうる
• →(図書館資料論→)選書論、コレクション形
成論(専門資料論→)学術情報流通論
資料とは②
• 資料とは?(メディアとの関係において)
• 2つの考え方
①資料⊆メディア(後述)
②資料=メディア
資料=メディアについて①
• ②の資料=メディアについて
印刷資料以外の資料を捉える際、メディアと
いう用語を用いるのが好適
• 「こうした現状を踏まえ,本章では知識・情報
を伝達するあらゆる装置,仕組みを広く取り
上げようとする主旨から,印刷資料のみなら
ず,多様な非印刷資料等も含む各種の資料
を総称する意味でメディアということばを用い
ることにした」(長澤雅男1988 247)
資料=メディアについて②
• 資料をメディアという例
図情図書館プリントメディア部門
ディジタルメディア部門
• 資料→メディアと呼び換える代える以上に、
図書館→インフォメーションセンターと呼び換え
るべき
メディアの分類①
• 1)伝送(伝達)と記録という観点から分類
①情報を伝送(伝達)のみするもの・・・空気、電
波、電話線
②情報を記録のみするもの・・・レコード、音楽C
D、DVD
③情報を伝送(伝達)し、さらに記録するも
の・・・新聞紙
→しかし本当にこうなるの?という感じはある・・
メディアの分類②
• 2)また、上記②(および③)でも
②(Ⅰ)記録される能力があり、実際には記録され
ていないものと、
②(Ⅱ)記録される能力があり、実際に記録されて
いるもの
とに、分けられる。
なお、「資料」=記録された情報ゆえ
②(Ⅰ)は、メディアであるが、資料ではない。
(資料⊆メディア)
メディアの分類③
• 3)さらに、「伝送(伝達)」と「記録」は実体的
に分けられない。・・・1)の分類は便宜的なも
の
例
• 紙=記録媒体
紙切れに書いたメモを渡す・・・(記録を)伝送
する媒体
メディアの分類④
• 本・・・記録媒体←読者が読む・・・伝送媒体に
• 音、空気・・・伝送媒体、空気の揺れの記録
(まとまり・単位)が伝えられる側面も
メディアの分類⑤
• 媒体というもの(実体)と、それの機能とを分けて
考えよう。
• ①記録媒体も、ある程度時間を隔てた情報の伝
送という意味で、電送媒体の機能を果たす。
• ②伝送媒体も、微少な記録の繰り返しによって
伝送を果たすという意味で、記録媒体の機能も
有する。
1.3 情報とメディアと資料の定義
1.3.1 情報の定義①
『コミュニケーション論』(後藤将之著、中公新書、
1999,p.45)での定義
• もっとも広義の情報・・・物質やエネルギーが構
成するなんらかのパターン、あるいはそれが持
つ一定の秩序性
• その上で二種類の情報
①それが当初は人為によって構成されたような情
報
②当初は少なくとも人為によって構成されてはいな
かった情報
情報の定義③
• 後藤将之の定義の「物質やエネルギーが構成す
るなんらかのパターン、あるいはそれが持つ一
定の秩序性」について
• 「パターン」「秩序性」・・・認識する主体を要する。
ただし情報の出来る当初から「パターン」を要す
る訳ではない。
• 「パターン」を機械に教え込めば、機械も「パター
ン」を「認識」できるように。
• しかも機械(コンピュータ)の情報の送受信・・・パ
ターンの認識も不要かも
物財の情報性①
• 「情報を専門的に担うのは、情報媒体(情報メ
ディア)ですが、情報媒体として意図されていな
い存在物であっても、そこに多くの情報や意味
が結果的に担われていることは多々あります」
(後藤将之p.52)
• →物財の情報性への着目
• 先週の配付資料の「情報の二義性」のうちの
「②伝えられることを伝達者が意図していずに(あ
るいはそもそも伝達者という明確な主体の存在
しない)情報」に相当
物財の情報性②
• しかし物財の情報性は、「情報媒体として意
図されていない存在物」の専有物?
• 形態書誌学等は?
• 昔の本=写本、奥付なし、一冊、一冊違う
1.3.2 メディアの定義①
• 「メディア」英語のmediateの名詞形
• mediate 「媒介する、仲介する、取り次ぐ、取
り持つ、介在する、中間にある、連結の役を
する」
• 名詞形の単数がmedium、複数がmedia
• 太鼓持ち、仲人、くっつけるもの
• 弁証法の「媒介」
粉川哲夫のメディアの定義①
• 『社会学事典』(弘文堂,1989)「メディア」(粉
川哲夫)
• 「「中間」「媒介」などを意味するラテン語
mediumの複数が語源であることからも分か
るように、伝達を「媒介」するもののこと」
• 従来のメディア・・・「透明な媒体」を理想・・・
自らの存在感を極小化(ノイズの減ってくる録
音の歴史、モノラル→ステレオ、白黒→カ
ラー) →電子メディアに
粉川哲夫のメディアの定義②
• 透明性の逆説・・・透明性が増すと、「「送り
手」のメッセージがそのまま「受け手」に伝わ
るわけではないという逆説」
• ←例えばレコードは生演奏の際限ではなく、
一度も存在しない音を作り出す。
• では「透明性」の増す時代のメディアとは?
「コミュニケーションそのものを成り立たせる
「場」であって、単なる通路ではない」。
粉川哲夫のメディアの定義③
• 「「今や「メディアがメッセージ」を作るのであり、
「送り手」「媒介」「受け手」という発想そのもの
を無意味にしているのである」。
• 「 「メディアがメッセージ」 を作る」・・・マクルー
ハン「メディアはメッセージである」
• 「送り手」「媒介」「受け手」の無効化・・・前回、
申し上げたようなそれらの相対化の必要性を
裏付ける