論文紹介 Query Incentive Networks 2006/6/2 加藤公一 1 紹介する論文 Jon M. Kleinberg and Prabhakar Raghavan. 2005. Query Incentive Networks. In FOCS '05: 46th Annual IEEE Symposium on Foundations of Computer Science. Pittsburgh, PA, 132--141. 2 Insentive Networkとは? • ネットワーク上のノードが隣のノードにご褒美 (Incentive)をちらつかせながら、情報を得ようとす るモデル • 例としては・・・ – P2Pファイル共有 Winny, Share, etc. – ソーシャルネットワークサービス Mixi, Orkut, etc. 3 例 $5あげるから Berryz工房の動 画をくれ! 動画? 持ってるよ $1 Get! $4 $5 $1 $3 $1 $4あげるから動画さ がしてくれない? 答に到達できないと一銭も得られない(成功報酬) あまり搾取すると答までたどり着けなくなる確率が高くなる あまり遠慮すると、自分の子孫にたくさん持っていかれる ノード間のゲームと考える 4 問題 答を得るためには、どのくらいのutility(効 用?)を用意すればよいか? Utility:ルートノードが答を得るために用意するコスト 5 ここで考えるネットワークのモデル • Tree Model – 各ノードにが、ツリー構造を知っているとする • Branching Model – ツリー構造ではあるが、各ノードはその構造を知 らない(地図がない状態) – ノードにはActiveなものとinactiveなものがある • 例:Mixiでログインしていないユーザ – ノードあたりの子の数の期待値bが与えられる 6 努力の価値 • ノードが受け取る報酬は整数値しかとらないとする • 答が見つかった後に、その答を送るためには、ノー ド通過ごとにコスト1かかる。(最初からそのコストを 見込んで報酬を取り決める) さもないとZeno(ゼノン)のパラドックス 「用意すべきutilityは無限に小さくできる」 Utility r でうまくいって各ノードの戦略が f v ならば、utility r / a のとき は戦略 f v / a にすればよい 7 例 報酬:$2 接続コスト:$1 Utility $10 $7 報酬:$2 接続コスト:$1 報酬:$2 接続コスト:$1 $4 $1 8 記号 T:木全体、 T’:アクティブなもの全体 ノードが答を持っていない確率: p Rarity(珍しさ?): n 1 /(1 p) (平均でn個に一つは答を持っている) T’内での平均分岐数: b 与えられたIncentiveに対して、ノード vT が隣に渡す量(報酬 f f v vT 関数、reward func.): f v ノードvが子に報酬xを与えたときの成功確率: v (f , x) 失敗確率: v (f , x) 1 v (f , x) 9 問題(より詳しく) 十分に高い確率で答を得るために必要な utility r は b と p の関数としてどうあら わされるか? 10 ゲーム理論としての視点 • ノード v がプレーヤ • f v : v がとる戦略(関数!) • ノードを通過すると報酬総額が減る ノード v に報酬 r が与えられたとする。そのときの ノード v の取得利益の期待値は (r x 1) v (g, x) ナッシュ均衡:上式を最大にするような g v の集合 g ナッシュ均衡は必ず存在し、唯一に定まることが証明される (Appendix) 11 結論 b 2 のとき ある程度以上の確率で成功するためには、必要なutilityは (n c ) b 2 のとき ある程度以上の確率で成功するためには、必要なutilityは O (log n) (両方とも定数は b に依存) 分岐が激しいほうが少なくて済む (直感と異なる) 12 証明 記号の定義(以下全員が最適な戦略をとったと仮定して) (r ) :誰も答を知らないと仮定したときに、報酬 r で到達する深さ ˆ :ルートが答を知らず、しかも深さ j まで誰も答を知らない確率 j u j : (r ) j 1 となる最小の r (u j ) j となることが証明できる (r ) 3 2 1 r u1 u2 u3 任意のjに対して (r ) j となるrが存在する u j は任意の j 0 について定義される まずは u j の値について解析する 13 u j (breakpoint structure)の計算 帰納的に u1 ,, u j から u j 1 を計算する ルートが持っているutilityがrのときに、子ノードに u j を与えたときのペイオフの期待値: l j (r ) l j (r ) (r u j 1)(1 ˆj ) 帰納法の仮定: r u j 1 ならば l j 1 (r ) l j (r ) l1 (r ) l j (r ) l j 1 ( r ) j 1 r ルート u j 1 r このとき、ルートに とっての最適戦略 は子に与える報酬 を u j 1 にすること このときの最適戦略 u j r j 1以上の深さまでは進まない u j 1 はこのへんに! uj 深さ j まで到達可能 14 計算の続き l j (r ) l j 1 ( r ) r y j 1 u j 1 y j 1 l j ( y j 1 ) l j 1 ( y j 1 ) ( y j 1 u j 1)(1 ˆj ) ( y j 1 u j 1 1)(1 ˆj 1 ) 1 ˆj 1 y j 1 u j 1 ˆj 1 u j u j 1 15 ˆj の計算 ˆj 1 (1 q(1 pˆj )) d ただし b qd q :アクティブなものの率 子ノードの数は d 個 t ( x) (1 q(1 px)) d ˆ j t t ( p) とすると で計算できる j 1 16 b 2 のときの証明(概要) 失敗確率を上から押さえて、必要なutility r を上から押さえる 0 0 1 について pb(1 2bd ) 1 ならば (つまり n が十分大きければ、) t を (log( 1 / 0 )) 回繰り返せ ば 1 0 から 1 1 へ到達可能 Claim 4.3 定義 j 1 I1 j 1 0 / n ˆj I2 0 ˆj 1 0 / n 0 は pb(1 2bd 0 ) 1 を満たす 0 はある条件(Lemma 4.5で使う)を満たす Lemma 4.4 I O(1), I (log n) 1 2 証明:Claim 4.3より明らか Lemma 4.5 1 ˆ j 1 ある定数 b1 2 が存在して j I 2 ならば b1 1 ˆ j 証明略 17 Theorem 4.6 b に依存する定数 c 1が存在して ˆj 1 ならば u j nc アイデア:すでに得られた u j とˆj の関係式をうまく使う u j 1 u j u j u j 1 y j 1 u j u j u j 1 y j 1 u j u j 1 1 1 ˆ j 1 Breakpoint structure u j u j 1 1 ˆj 1 y j 1 u j 1 ˆ 1 ˆ 1 1 1 b1 1 j j 1 u j u j u j 1 u j u j 1 u j 1 u j 2 u j 1 u j 2 ui ui 1 1 iI 2 ui 1 ui 2 b1 1 Lemma 4.5 u2 u1 u1 u j 2 u j 3 u1 I2 log n 1 b1 1 n log(1/(b1 1)) 18 b 2 のときの証明(概要) (再掲!) 0 0 1 について pb(1 2bd ) 1 ならば (つまり n が十分大きければ、) t を (log( 1 / 0 )) 回繰り返せ ば 1 0 から 1 1 へ到達可能 Claim 4.3 定義 j 1 ˆ 1 J1 j 1 0 ˆj J2 j 0 0 は pb(1 2bd 0 ) 1 を満たす は任意(バウンド用) Lemma 4.7 J1 (log n) 証明:Claim 4.3より明らか Lemma 4.8 証明略 Lemma 4.9 1 ˆj 1 ある定数 b2 2 が存在して j J1 ならば b2 1 ˆ j J 2 O(1) 証明略( は任意なのでClaim 4.3は使えない) 19 Theorem 4.10 b, に依存する定数 c' 1 が存在して ˆj 1 ならば u j c' log n J1 , J 2 のそれぞれについて上から押さえる J1 について: u j u j 1 定義: j1 max J1 , j2 max J 2 2(b2 1) b2 2 を数学的帰納法で証明 j 2 のときはOK y j 1 u j 1 u j u j 1 1 1 ˆ j 1 1 ˆ 1 1 b2 1 j u j u j 1 u j 1 u j y j 1 u j 1 Lemma 4.7より u j b2 1 j1 (u u i 3 i i 1 2 2(b2 1) b2 2 ) O(log n) 20 Theorem 4.10の続き J 2 について: x t (x) は範囲 [1 ,1 0 ] で最小値 を持つ 1 u j 1 u j 1 1 ˆ j 1 1 ˆ 1 1 1 1 ˆj2 ˆj2 1 j 1 1 1 ˆj2 t (ˆj2 ) 21 結論(再掲) b 2 のとき ある程度以上の確率で成功するためには、必要なutilityは (n c ) b 2 のとき ある程度以上の確率で成功するためには、必要なutilityは O (log n) (両方とも定数は b に依存) 分岐が激しいほうが少なくて済む (直感と異なる) 22 研究の展開 • b 2 のときはどうなるか? – Binary treeのときは O (log n) – それ以外のときは? • b 1 のときはどうなるか? • TreeではなくてDAGのときは? 23
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