第二回

哲学
第2回
「善く生きる」
by ソクラテス&プラトン
ピロ 「人間と動物ってどうちがうんだろうなぁ?」
パロ 「人間は言葉を使う。人間は道具を使う。動物は
使わない。。。」
ピロ 「それは、そういう手段だよね。でも、目的はどう
だい?」
パロ 「言葉や道具を使うのは、やっぱり自分の安全
や快楽を満たすためだろうな。生き延びるため。より
ラクに。より快適に。」
ピロ 「でも、それじゃあ人間も動物も変わらない。生
きてる意味ってことに関しては。。」
パロ 「・・・・・」
ピロ 「人間として、意味のある人生。人間としてより
善い人生。そういうのって、ないのかな?」
ソクラテス、どんなひと?
「善く生きる」
古代ギリシャ、アテネ市民
論争家、教師、対話術
自由闊達で強靭な知性
壮健で金やモノにこだわら
ない
哲学・倫理学の創始者とも
BC399年、死刑(『弁明』『ク
リトン』)
ソクラテスの時代
(4~5C BC)
都市国家アテネの最盛期
奴隷も入れて人口20-30万人?
市民による民主主義
広場での討論
同盟国や植民地との交流
ワイン講座11回 ギリシャワインを極める http://www.asahibeer.co.jp/enjoy/wine/school/h/h_11.html
「無知の知」
学問の
世界へ
デルフォイの神託
デ:「ソクラテスほど賢い者はいない」
ソ:「他に賢い人はたくさんいる」。だが、「神託は正しい」
ソ:「私は、私が何も知らないことを知っている分だけ他
の者より賢い!」
哲学の精神
既成の常識をも検討していくラディカルな新学問
愛-知(=philo-sophy)の学=哲学(学問)の精神を確立
学
問
の
方
法
「産婆術」(「対話術」「弁証法」)
注意深い論理的な「対話」(ダイアローグ)によって、
相手を真理に導く
「真とは?」「美とは?」「幸福とは?」「正義とは?」
反例を検討しつつ、本質や根本原理を探求する。
相手がもともと知っていたことを「自覚」させる
前ページ「無知の知」の自覚の議論を参照
哲学(学問)や知的創造の基本的手法に
学会、ディスカッション
ゼミ、面談指導
クリティカル・シンキング
ソクラテスのスタイル
学芸の
道?
人生にとっての本質=「魂」「精神」を問題にする
金銭を積んでも「すぐれた精神(徳)」は得られない
金銭(所有・財産)や名誉にこだわらないライフスタ
イル
金銭を貯めて贅沢を求めない→禁欲主義、犬儒学派「犬
の生活」、ストア派「ストイック」な生き方へ
金銭的快楽にとらわれず自然に享受する→快楽主義、エ
ピクロス派へ(自然流?)
真理を求めて論敵や有力者を論破したり批判したため、
一部の者の恨みを買う。
ソクラテスの最期
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BC399年 ソクラテスの教育活動は「青年に
害悪を与えている」として、裁判に
『弁明』で「よく生きる」等々を主張
陪臣員の賛成多数で死刑宣告
友人のクリトンらの脱獄の勧め
『クリトン』での対話による脱獄の拒否
規定どおり毒杯を仰いで刑死
「善く生きる」
『クリトン』でのドラマ(ダイジェスト)
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ク:脱獄を勧める(脱獄は可能)
ソ:脱獄は自分の認めてきたこの国の法を破ること
「悪法も法なり」
ソ:そのような脱獄は、いままでの自分の人生の主
張(「徳」の尊重)を台無しにする。
ソ:自分は「ただ生きる」のではなく「善く生きたい」
のだ。
ソ:だから脱獄できない
ク:・・・・・・・・。
プラトン、どんなひと?
「イデア論」
理想主義者
古代アテネの人BC427-347
ソクラテスの指導(~28歳)
アテネの敗北(プ23歳)
独裁政権&恐怖政治の混乱
ソクラテスの処刑(28歳)
さすらいの理想主義者(~
40歳)
教育者、思想家(~80歳)
「アカデメイア」を創設(40歳)
学校教育、国家制度の礎を残
す
生涯独身を通す
ソクラテスの「善く生きる」の継承
「ソクラテスの死」のショック
感情ではなく理性による善悪の判断を
ソクラテスの「対話術」継承
論理的対話の精神
• =ロジック=ロゴスの重視
絶対的な「魂の善さ」の探求
• 安易な相対主義批判
ソクラテスの「対話編」を執筆
師の思想を下敷きにして自分の思想「イデア論」
を構築
「イデア」の発見と希求
ものごとには「相」=イデア(idea)がある!
美しいものには、ある相(「美しさ」という特徴)が共通する
便利なものには「便利さ」という相、善い行為には「善さ」と
いう相が共通している。
自転車には「自転車性」があり、クスノキには「クスノキ
性」がある。
イデアを使って、人は言葉を理解したり行為をなした
りするのだ。
「自転車」/「クスノキ」を呼び分ける
「お祈り」/「呪い」を区別して、実行する。
イデアを知らなければ人生は迷妄だ!
愛知(哲学)=イデアの探求
イデアこそ真の存在
存在論
「イデア」 の基本性質
範型性:コップは「コップ性」(コップのイデア:飲み物を入れて飲むの
に利用できるという性質)をもつからコップ
純粋性:コップ性こそ純粋な混じり気のないコップそのもの、コップの
理想だ
永遠性:コップは壊れるけど、コップ性は壊れないで他のコップにも
コップ性を注ぎ続ける
実在性:コップ性こそ真の存在で、個々のコップはコップ性の影のよう
なもの(影絵)
「美」「善」のイデアについても同様
純粋な善、純粋な美、・・・・・。
「現象」(感覚的世界)には存在しない
三角形のモノはあっても、「純粋な三角形」は存在しない。
理想、理念としてのイデア(ideal)
イデアの認識
認識論
イデアを認識することが大切だ。
コップ性を理解するからコップを判別できるし、コップを作
ることができる
「美」を認識しているから、美しいものを作るとこができる。
「善」を認識しているから、善い行為ができる。
(ソ:「善く生きる」への理論的解答の一歩)
イデアは経験できない(線の太さもない純粋な「三角
形」を見たことがあるか? )
感覚経験でなく、経験を生かしながら、最終的には
理性で「観る」「把握する」しかない。
モノゴトに共通する相を探す、「対話法」による理性的アプ
ローチ(帰納法?)が大切
魂と身体
心身論
理性 精神=魂の働き イデアを認識する
感覚 身体的な認識 イデアを認識できない
感情 身体的な要素の混入 イデアの認識を
妨げる
善く生きる=ソ:「魂への配慮」
プ:イデアの追求=魂の清浄化=身体からの離
脱
参考文献
ソクラテス関係
『ソクラテスの弁明・クリトン』プラトン著、岩波新書。哲学・倫理学の
起点となるテキスト。短い。
『ソクラテス』田中美知太郎著、ソクラテスの人生を詳しく紹介しつつ、
その思想を解説。往年の第一人者による。
『人と思想 ソクラテス』中野幸次、清水書院。思想家の人生と思想を
紹介する定番シリーズ。
プラトン関係
『プラトンの哲学』岩波新書、藤沢令夫。イデア論を中心に紹介。言語
や技術についての現代的な問題ともリンクさせている。
『人と思想 プラトン』清水書院、中野幸次。生涯の解説が詳しい。
『国家』岩波文庫、プラトン。「イデア論」のほか、哲人政治
の理念が対話を通して力強く語られる
「新書」読みやすい紹介本、「文庫」古典的原典の翻訳
「人と思想」シリーズ 思想家とその思想についての入門的
解説書