思想と行為 第2回 ソクラテスの 「善く生きる」 吉田寛 ソクラテス、どんなひと? 古代ギリシャ、アテネ市 民 論争家、教師 自由闊達で強靭な知性 哲学・倫理学の創始者 とも BC399年、死刑(『弁 明』『クリトン』) 「善く生きる」 ソクラテスの時代 都市国家アテネの最盛 期 市民による民主主義 奴隷も入れて人口2030万人? 同盟国や植民地との交 流 ソクラテスの人生 – 弟子のプラトンらの記述から 割合名門?アテネ市民として生まれる。 父は石工、母は産婆 お金儲けや地位を得る活動には関心をもたない。 兵役に行って、あとはぶらぶら?? 家庭教師? 有力者の客人? 生活保護? 青空学校? 晩年まで壮健で金やモノにこだわらない、精神にこ だわる人物像 妻:悪妻?クサンティッペ→「哲学者の妻」 ソクラテスの哲学 著作はない 弟子のプラトンがソクラテスの対話を編集・著 述 – ただし、プラトンはソクラテスの対話スタイルでし だいに自分の思想を表現する – 最初の数編がソクラテスの思想を表現している ソクラテスの議論の断片、衝撃的な人生 – これが、哲学と倫理学の精神を確立し、2500年の 伝統を築いた 「無知の知」 学問の 世界へ デルフォイの神託 デ:「ソクラテスほど賢い者はいない」 ソ:「他に賢い人はたくさんいるのに」「神託は正しい」 ソ:「私は、私が何も知らないことを知っている分だけ他の者 より賢い!」 ソクラテスは自分の使命を自覚 既成の常識をも検 討していくラディカルな新学問 愛-知(=philo-sophy)の学=哲学(学問)の精神を 確立 学 問 の 方 法 「産婆術」(「対話術」「弁証法」) 注意深い論理的な「対話」(ダイアローグ)によって、 相手を真理に導く – 「真とは?」「美とは?」「幸福とは?」「正義とは?」 反例を検討しつつ、本質や根本原理を探求する。 – 相手がもともと知っていたことを「自覚」させる – 前ページ「無知の知」の自覚の議論を参照 哲学(学問)や知的創造の基本的手法に – 学会、ディスカッション – ゼミ、面談指導 – クリティカル・シンキング ソクラテスのスタイル 学芸の 道? 人生にとっての本質=「魂」「精神」を問題にする – 金銭を積んでも「すぐれた精神(徳)」は得られない 金銭(所有・財産)や名誉にこだわらないライフスタ イル – 金銭を貯めて贅沢を求めない→禁欲主義、犬儒学派「犬 の生活」、ストア派「ストイック」へ – 金銭的快楽にとらわれず自然に享受する→快楽主義、エ ピクロス派へ 「真理」の探究 相対主義と の戦い ソフィスト(知者)=職業弁論家(コンサル、教師) – ゴルギアス「人間は万物の尺度」 – 真理や正義の「相対主義」 ソクラテス – 「無知の知」の精神 – 「対話術」によって論理的に「真理」「正義」を求める – 「精神」を善くする「知恵」を求める 「徳」の倫理 真=善=美 – その内容は、わりと標準的なギリシャの「徳倫理」 – 具体的な理論展開は、弟子のプラトンやアリスト テレスによる 真理、正義、善い精神とは? – 「徳」(思慮、勇気、敬神、節制、自足など)に基づ く行為は正しい – 「思慮」「徳」に基づく人生が幸福な人生⇔所有や 身分などでは得られないもの ソクラテスの死 1. 2. 3. 4. 5. 6. ソクラテスの教育活動は「青年に害悪を与 えている」として、裁判に 『弁明』で「よく生きる」等々を主張 陪臣員の賛成多数で死刑宣告 友人のクリトンらの脱獄の勧め 『クリトン』での対話による脱獄の拒否 毒杯を仰いで刑死 「善く生きる」 1. 2. 3. 4. 5. 6. 『クリトン』でのドラマ(ダイジェスト) ク:脱獄を勧める(脱獄は可能) ソ:脱獄は自分の認めてきたこの国の法を破ること 「悪法も法なり」 ソ:そのような脱獄は、いままでの自分の人生の主 張(「徳」の尊重)を台無しにする。 ソ:自分は「ただ生きる」のではなく「善く生きたい」 のだ。 ソ:だから脱獄できない ク:・・・・・・・・。 「テロリズム」の倫理 明治以降、日本は、アジアでは西欧型にいち早く対 応しメリットを得てる国 ではテロリスト、クーデター主義者の議論を論駁で きる? – ソ:「悪法も法なり」(ただし、自分の人生の期間中、長く国 家の法に同意を与えてきたから) – テ:悪法には法的手段では対抗できない→超法規的手段 超法規的手段正当化のエッセンスを抽象したもの – ルール自体に反対したいとき、そのルールの枠内では不 可能。 – ルールの外に飛び出るしかない。 国際政治の構造 アラブの原理主義者らのテロ行為、タイの軍事クー デター、北朝鮮の核開発の議論。 – アメリカや西欧中心の国際秩序(「民主主義」)が国際 ルールとして設定されている。 – このルールの下では、一部の人々、一部の民族、一部の 思想や宗教は不利を固定化される。はなはだしい場合に は存在が許されない。(住む場所がない、食料などがない、 借金地獄から抜けられない、信仰生活が破壊される) – 「国際ルール」に反してでも、自分たちの主張を認めさせ ようとする。 ソクラテス的検討 テロリスト倫理批判 – 「相対主義」を前提とした超法規的手段では、何でもあり になってしまう。対テロ戦争も同様の議論で正当化されて しまう – 国際秩序の中で自分に都合の悪い部分だけを攻撃して いないか 「アメリカの正義」批判 – 「アメリカの正義」は自分にばかり都合がよくないか? – 暴力による押し付けではなく、「対話」「熟慮」による同意 が必要だ 総合:物質的満足や名誉心にとらわれずに、お互い の「精神の善さ」を配慮して判断するべき。
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