思想と行為 第3回 プラトン 「『イデア』に恋いこがれる魂」 吉田寛 プラトン、どんなひと? 古代アテネの人 BC427-347 ソクラテスの弟子(~28 歳) さすらいの理想主義者 (~40歳) 教育者、思想家(~80 歳) 学校教育、国家制度の 礎を残す 生涯独身を通す 若きプラトン BC427年 アテネ生まれ 有力な家柄の若者として、政治家を目指す 兄や叔父の友人であるソクラテスとの交流 (幼少のころから?) アテネの敗北(プ23歳)と独裁政権&恐怖政 治の混乱と挫折 民主制の復活、そしてソクラテスの処刑(プ28 歳)→放浪と遍歴 遍歴の思想家 傷心のプラトン在りし日 の師ソクラテスの「対 話」を執筆『弁明』『クリ トン』etc. 地中海周辺各地の政 治を観察しつつ自らの 思想「イデア論」を固め る。『国家』完成 写真 http://home9.exblog.jp/2238624/ アテネの学園にて 40歳のとき、アテネに帰還して、自分の学園 「アカデメイア」を創設 (アカデミー、アカデミックの語源) 自分の理想「哲人政治」の教育の実践 「問答法」→哲学&政治、法律家を輩出 60歳、66歳で、哲人政治の実現を夢見てシ チリアへ渡航する→挫折 アテネに帰還→死 イデア論の基層 ソクラテス 「ソクラテスの死」のショック – 政治の問題への関心 – 勢いではなく理性による統治を ソクラテスの「対話術」継承 – 論理=ロジック=ロゴス の重視 – 絶対的な「魂の善さ」の探求 ソクラテスの「対話編」を執筆 – 師の思想を下敷きにして自分の思想を構築 「イデア」の発見と希求 ものごとには「相」=イデア(idea)がある! – 美しいものはある相(「美しさ」という特徴)を共通して持っ ている – 便利なものには「便利さ」という相、善い行為には「善さ」と いう相が共通している。 – 自転車には「自転車性」があり、クスノキには「クスノキ 性」がある。 – これを人は判別して「自転車」「クスノキ」と呼び分けたり、 「善」「悪」を判定したりする。 イデアを知らなければ迷妄の人生だ! – 愛知(哲学)=イデアの探求 イデアこそ真の存在 存在論 イデア VS. 現象(われわれの見てる世界) – 範型性:コップは「コップ性」(コップのイデア:飲み 物を入れて飲むのに利用できるという性質)をも つからコップ – 純粋性:コップ性こそ純粋な混じり気のないコップ そのもの、コップの理想だ – 永遠性:コップは壊れるけど、コップ性は壊れな いで他のコップにもコップ性を注ぎ続ける – 実在性:コップ性こそ真の存在で、個々のコップ はコップ性の影のようなもの(影絵) 「美」「善」のイデアについても同様 – 純粋な善、純粋な美、・・・・・。 イデアの認識 認識論 イデアを認識することが大切だ。 – コップ性を理解するからコップを判別できるし、コップを作 ることができる – 「美」を認識しているから、美しいものを作るとこができる。 – 「善」を認識しているから、善い行為ができる。 (ソ:「善く生きる」への理論的解答の一歩) イデアは経験できない(線の太さもない純粋な「三角 形」を見たことがあるか? ) 感覚経験でなく、経験を生かしながら、最終的には 理性で「観る」「把握する」しかない。 – モノゴトに共通する相を探す、「対話法」による理性的アプ ローチ(帰納法?)が大切 魂と身体 心身論 理性 精神=魂の働き イデアを認識する 感覚 身体的な認識 イデアを認識できない 感情 身体的な要素の混入 イデアの認識を 妨げる 善く生きる=哲学 – プ:魂の清浄化=身体からの離脱 – ソ:「飲み食い」でなくただ「魂」を配慮する人生 イデアの収束 形而上学 – 道具:コップ→コップ性→便利さ→有用性→善さ – 表現:絵画→絵画性→芸術性→美しさ→善さ – 行為:通学→通学性→向上性→卓越性→善さ すべてのイデアは階層をなし、その頂点に 「善」のイデアがある。 – すべての行為、道具、精神、存在者が求めてい る=「正しさ」、「有用性」、「健康」、「美」、「均整」 などに共通する相=「善そのもの」 – 本当に純粋で永遠で強力で普遍的で求心的 – ソ:絶対的な善がある!⇔ソフィストの「相対主 義」 プラトンの教育学 理想の学園「アカデメイア」 – アテナイ郊外「アカデモス」の学園(BC387開校) 名の由来 http://logos.vis.ne.jp/education.html • 古代随一の教育機関 現在の「学会」「大学」のモデル? – 目的=善のイデアを把握する人材育成 • 哲学者(愛知者)=学者、教育者 • 政治家=市民のリーダー – 方法 知性(理性)を磨く • ソクラテス的「対話法」がメイン • 「算術」「幾何学」「天文学」「音楽理論」などが予備学として重視さ れる(感覚・経験でなく、理性を磨く学問) • 経験(実験や観察)を重視する知は軽視される – 持続と衰退 • 学校は弟子たちに受け継がれ900年間存続(529年ローマ皇帝に より解散) • 派閥争い、懐疑論化(アカデメイア派=懐疑論) 哲人政治 プラトンの政治学 – 魂の三分説 • 魂=知性(思慮)、気概(勇気)、欲望(節制) • 国家=愛知者(行政)、軍人(軍事、治安)、農夫や職 人(生産) • 正義=三者が自分の「分」を守る(徳を実行)する – 政治は愛知者によって行われるべき • 善のイデアを把握できるほど善い政治ができるはずだ から • モノや名誉でなく、魂の善さを大切にするから – 哲人王の理想の追求 シラクサでの失敗 プラトニック・ラブ 肉体関係のない、純愛? プラトンの理想の人間とは、 「イデアへ恋いこがれる魂」(『饗宴』) 1. 人を愛し、恋いこがれる者は、愛するもののうち に「美」を感じて恋いこがれるのである 2. 「美のイデア」への憧れと情欲との戦いが始ま る 3. 情欲に打ち勝った純粋な愛=プラトニック・ラブ 4. 二人の死=身体からの離脱によって、成就? 理想と現実 「理想」って何だろう? – 「理想」(行為、性質、状態などに関して、考え得る最高の 状態。未だ現実には存在しないが、実現可能なものとして 行為の目的であり、その意味で行為の起動力である。『広 辞苑』) プラトンの「善のイデア」 – 善のイデアは最高の行為、状態、性質の純粋形(ただし、 イメージというよりは抽象的な存在?) – 現実には存在しない – しかし、それを把握することではじめてそれを実現できる (プラトン) 「理想」 – 「理想主義」 理想を立てて、理想実現を目指す – 「現実主義」 理想にこだわらず現実を処理 • 「理想論」 現実からかけ離れすぎてる考え 理想主義 VS. 現実主義 – 一長一短。あなたはどっち? – どちらもリスクがある • 理)現実離れ、独断 現)無方向、日和見 政治と理想 政治には「理想」が必要では? – 「理想の社会」実現の手段としての「政治」 – 政党政治=政策の選択≒理想とその実現手段の評価? – 「マニフェスト」によって、理想と具体的手段を明らかにす る(はず)→ただの「言質(公約) 」に – 何を実現しようとしているのか分からない政党自民党の 描く理想の社会とは? 自民党立党宣言 http://www.jimin.jp/jimin/jimin/rittou/index.html 民主党は? 公明党、社民党、共産党は? – 皆さんの思い描く理想の社会とは? 参考文献 『プラトンの哲学』岩波新書、藤沢令夫。プラトン紹 介の名著。言語や技術についての現代的な問題と もリンクさせている。 『国家』岩波文庫、プラトン。イデア論のほか、 哲人政治の理念が対話を通して力強く語られ る
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