会計法

中国会計の法律的な枠組み
 はじめに
 現行企業会計制度の法律的な枠組み
 会計法
 企業財務会計報告条例
 企業会計基準
 企業会計制度
 その他の会計法規
 むすび
 質疑応答
会計制度一般の特徴
 会計法令と会計基準などによって支えられてい
る。
 フランコージャーマン型とアングローアメリカン
型に分類される。
 政治的および経済的な要因によって融合して
いく傾向がある。
フランコージャーマン型
 成文法体系をとる国々
 会計法令を主軸とする。
 商法または会社法に会計規定が設けられてい
る。
会計法令の歴史
 フランス:1673年のSavary法典⇒商業帳簿お
よび財産目録の作成規定
 ドイツ:1794年のプロシア普通国法⇒商業帳
簿および財産目録に関する会計規定
 日本:1890年の商法⇒商業帳簿および財産目
録に関する会計規定
成文法
 権限を有する機関によって文字によって表記さ
れる形で制定されている法である。文字による
表記がされていないが法として存在する不文法
に対置される概念
 史上初の成文法:紀元前536年中国の鄭国
『左伝』に拠れば「参辟」と言う法律が定められ
て、鼎(青銅器)に鋳込んだと言う。
Savary法典
 1963年3月に商業に関するフランス国王Louis14世
勅令のこと
 その編纂者の一人であるSavaryの名をとって,サバ
リー法典とよばれ
 世界最初の成文商法であり、会計史上、財産目録の
作成義務を法制化した最初のもの
文献:嶌村剛雄編著.比較会社法会計論.白桃書房.1993年
プロシア普通国法
 ドイツ帝国統一の中心になった王国。プロイセンともい
う。▽13世紀にドイツ騎士団が,スラブ系の先住民を
征服して始めた。16世紀に公国,1701年王国となっ
た。
 プロシア普通国法はフランスの商事勅令が参考にさ
れた。
 プロシア憲法は日本の明治憲法の参考にされた。
アングローアメリカン型
 コモンロー体系をとる国々
 会計基準を中核とする。
 会社法の関係関連規定は簡略である。
アメリカとイギリス
 アメリカ:
各州会社法、模範事業会社法⇒配当規定
具体的な会計処理/報告手続等⇒GAAP
 イギリス:会計基準審議会による財務報告基準
コモンロー
 中世以降の契約法を中心に形成発展してきた英米な
ど少数の国の法系。判例法としての特質がある。
 判例法とは判例の積み重ねにより形成される法律の
こと。
 端的には同じような紛争は同じ方法で解決するやり方。
 そうすることで権利関係に一貫性が生まれ、それが法
律となる。
融合傾向
 日本:第2次大戦後はアメリカ会計制度が積極
的に導入され、企業会計原則の設定が行われ、
それとの調整をはかるために会計法令改正の
経緯が強く見られる。
 イギリス:EC指令第4号との関連で1981年以
降会社法に詳細な会計規定がみられる。
2005年問題
 2005年より、欧州連合加盟国の上場企業は、
国際会計基準による連結財務諸表の作成とと
もに、国際監査基準による監査が義務付けら
れるようになっている。
日本の動向
 1996年から現在に至って、国際会計基準の内
容と動きを強く意識した会計制度改革が行わ
れている。
中国の動向
 2006年2月に1号の基本基準と38号の具体基
準を含む企業会計基準の体系を公表し、2007
年から上場企業で適用するとし、国際会計基
準との調和を通して会計基準を中核とする会
計制度の構築に努めている。
European Committee: EC
 欧州共同体:
1957年に締結されたローマ条約により、加盟国間
の法律および経済制度を統合することを基本的な目
的として発足した。1993年にマーストリヒト条約に従
い、経済通貨統合を進めるとともに、共通外交安全保
障政策、司法・内務協力等のより幅広い協力をも目指
す欧州連合(European Union:EU )に改組。
European Commission:EC
 欧州委員会:
EU の執行機関:加盟国の合意に基づき欧
州議会の承認を受けた委員で構成(各国1名
の計25名、任期5年)。25の総局があり、政策、
法案を提案、EU諸規則の適用を監督、理事会
決定等を執行(共同体事項につき対外的にEU
を代表)。
EC指令
 加盟国の法律制度の差異を除去する目的で会
社法の調整作業が行われた。こうした調整が
「会社法指令」という法的な手段を用いて行わ
れた。
 会計の領域では3つの指令が代表的なもので
ある。
1978年 第4号 個別財務諸表関係
1983年 第7号 連結財務諸表関係
1984年 第8号 会計監査人の資格要件関係
現行会計制度の法律的な枠組み
財務制度
会計制度
企業財務通則
会計法
企業会計基準
企業財務会計報告条例
業種別会計規則
業種別財務規則
財務処理規定
会計処理規定
勘定科目規定
財務諸表規定
測定・評価
記録・分類
編成・提出
経済事象
会社法会計規定
 会社法では「会社は法律、行政法規および国
務院財政部の規定に従って財務・会計制度を
確立しなければならない。」とし、会計関連規定
は財務報告規定、利益配分規定および剰余金
規定ならびに監査関連規定に限られる。
 会社法会計規定については資料2-1を参照。
会計処理と報告手続規定
 会計に関しては独立で構成されている会計法
に総括的な会計規定が設けられている。
 企業会計基準および企業会計制度と呼ばれる
企業会計規制において具体的な会計処理およ
び報告手続等について規定されている。
特徴
 会計法を中心とし、財務規制と会計規制に基づ
いて会計制度が構築されている 。
 複数の規制が重複して会計実務を規定する 。
規制間の整合性を保つことが難しくなり、不合
理なものになる可能性が大きい。
改革
 2006年2月に新しい企業会計基準の体系が公表され
たとき、企業会計基準の実施を持って企業会計制度
を廃止する指示が出された。
 2002年9月から、企業財務通則の改定に取り掛かり、
2005年に改正案を完成した。
現状
 国際会計基準との統合を通してアングローアメ
リカン主導の潮流と合流することになる。
 その骨格および改正の経緯の面で管理責任会
計という特質も強く見られる。
日本では会計法とは
 国による歳入徴収、支出、契約等について規
定した法律である。
 企業会計法をさす場合は、企業会計に対する
法規制に関する法律を意味するが、関係する
法律が商法、証券取引法そして税法があるた
め、単項の法律ではない。
中国では会計法とは
 『中華人民共和国会計法』
 1980年8月に制定開始
 1985年1月成立
 1993年第一回改訂
 1999年第二回改訂
 その概要については資料2-2を参照。
会計法のraison d’etre
 会計全般に関する法律で、具体的な会計処理
および会計報告手続について規定するもので
はない。
 1985年会計法
 1993年会計法
 1999年会計法
1985年会計法
 背景
 目的
1978年から1980年にかけて
 文化大革命が終了したまもなく、経済再
建のなかで「一国一企業」における管理責
任会計の建て直しが国民経済運営の最
重要課題である。
「一国一企業」の会計
 「指令と報告による企業内部管理形態の国家大への
拡張」のため会計情報の真実性は国民経済の健全な
発展にとって不可欠である。
 「企業指揮者の居所と経営の場所とが空間的に離れ
ているような場合には、所有者が自ら検査をすること
なく、自分の代わりに帳簿係を送り込む」ため、現場の
会計担当者の所有者に対する忠誠心が求められてい
る。
会計担当者保護
 会計業務を強化し、会計担当者の法による職
権行使を保障して、会計の国家財政制度およ
び財務制度を維持すること、社会主義公有財
産を保護すること、経済管理の強化によって経
済効率を向上することにおける役割を発揮する
こと
1993年会計法
 背景
 目的
経済改革
 1985年以降の経済改革により「所有と経営の分離」
が進んできた。
 現場の会計担当者が所有者利益の立場から会計処
理を行い、所有者のために経営を監督することが不
可能になってくる。
 所有者は会計情報に基づいて経済的意思決定を行う
ことになる。
 情報の非対称性(asymmetric information)の問題
が顕在化することになる。
誠実な会計情報
 不正な会計情報に対して、経営者に誠実に会計情報
を作成するよう求める。
 組織の責任者は会計資料の合法、真実、正確、完全
を保障し、会計担当者の職権が侵害されないように保
障すること(第四条)
1999年会計法
 社会主義市場経済においてミクロレベルでは市場経
済が確立されたことを背景に、帳簿の作成から財務諸
表まで、会計担当者の資格から経営者確認まで、内
部牽制・監査から外部監査・監督まで、プロセス・人
間・外部監視の3つの側面において会計情報の真実
性を高めようとする法律である。
改訂内容
 プロセス:会計処理に関しては会計帳簿の作成規定、
真実の原則、会計証憑規定、会計帳簿規定、財産照
合規定、財務諸表規定および責任者確認手続規定
 人間:会計組織に関しては会計担当者資格規定
 監督:会計監督に関しては内部会計監督規定、外部
監督規定、法律責任については禁止事項規定
改訂の経緯に見られる特徴
 1985年法と1993年法は、制定目的は異なるものの、
立法の立場は変わりない。両方とも所有者の立場か
ら会計の監督役割と会計情報の作成を規制するもの
であり、会計システムにおける人間の役割を強調する
ものであった。
 1999年法は、会計利害関係者の合意として会計情報
の作成を規制するものである。
会計法VS. SOX
 企業会計や財務報告の信頼性を規律する『会
計法』の思考と『サーベインス・オクスレー法』
( Sarbanes‐Oxley Act of 2002: SOX)の
考え方には同じ哲学の論理が含まれる。
 SOXについて資料2-3を参照
SOX
 Enhanced responsibility and penalty of top
management(トップの責任強化)
 Requirement for adoption of disclosure controls and
procedures (情報管理開示手続きの採用義務)
 Expanded role and power and enhanced
independence of audit committee (監査委員会の役割
と権限、および独立性の強化)
 Code of ethics (倫理基準の採用)
 Hotlines (ホットライン)
 Protection of whistle blower (内部告発者の保護)
SOX制定の経緯
 エンロン社の破綻
2001年12月 連邦破産法11章の申請
 2002年11月30日 サーベインス・オクスレー
法の成立
 大型破産事件によって顕在化する企業不正・
会計不信に対する対応
Highlights of SOX
 Section 301: You must provide systems or procedures that let
whistle-blowers communicate confidentially with company’s
audit committee. No effective date.
 Section 302: Your CEO and CFO must sign statements
verifying the completeness and accuracy of financials reports.
Effective now.
 Section 404: CEO’s, CFO’s and outside auditors must attest to
the effectiveness of internal controls for financial reporting.
Effective now.
Computerworld, April 14, 2003
 Section 806 : PROTECTION FOR EMPLOYEES OF PUBLICLY
TRADED COMPANIES WHO PROVIDE EVIDENCE OF FRAUD.
Largest Bankruptcy Filings
(1980 to Present)
Company
Assets(Billion
s)
When Filed
1. WorldCom
2. Enron
3. Texaco
$101.9
$63.4
$35.9
July, 2002
Dec., 2001
April, 1987
4. Financial Corp of
America
5. Global Crossing
6. Adelphia
$33.9
Sept., 1988
$25.5
$24.4
Jan., 2002
June, 2002
7. PG&E
8. MCorp
$21.5
$20.2
April, 2001
March,198
9
SEC‘s Final Rule of 2003.8.14
 Management's Reports on Internal
Control Over Financial Reporting and
Certification of Disclosure in Exchange
Act Periodic Reports.
Internal Control over Financial Reporting
A process designed by, or under the
supervision of, the registrant‘s principal
executive and principal financial officers, or
persons performing similar functions, and
effected by the registrant’s board of directors,
management and other personnel, to provide
reasonable assurance regarding the reliability
of financial reporting and the preparation of
financial statements for external purposes in
accordance with generally accepted
accounting principles and includes those
policies and procedures that:
that:
(1) Pertain to the maintenance of records that in reasonable detail
accurately and fairly reflect the transactions and dispositions of
the assets of the registrant;
(2) Provide reasonable assurance that transactions are recorded as
necessary to permit preparation of financial statements in
accordance with generally accepted accounting principles, and
that receipts and expenditures of the registrant are being made
only in accordance with authorizations of management and
directors of the registrant; and
(3) Provide reasonable assurance regarding prevention or timely
detection of unauthorized acquisition, use or disposition of the
registrant's assets that could have a material effect on the
financial statements.
歴史の偶然
 第二十一条
VS.
302条
 第二十七条
VS.
404条
 第三十 条
 第四十八条
VS.
301条
VS.
806条
会計基本法
 企業会計や財務報告の信頼性を規律する法律
として、中国においてSOXに匹敵する存在であ
る。
会計法規制の枠組み
会計法
統制
プロセス
人間
企業財務会計報告条例
企業会計基準
会計統制規範
業種別会計規則
会計基礎業務規範
会計従業資格管理方法
第二十一条
組織の責任者(CEOのこと、訳者注)および
会計責任者(CFOのこと、訳者注)または会計
部門の責任者は財務会計報告にサインをし、
捺印しなければならない。総会計師を設置して
いるところでは総会計師もサインし捺印しなけ
ればならない。
 組織の責任者は財務会計報告が真実、完全で
あることを保証すべきである。

第二十七条

組織は内部会計監督制度を構築し健全にしなければならな
い。内部会計監督制度は次の要件を満たすべきである。
(一)記帳係と経済業務事項・会計事項を審査し許可する者、
業務担当係、財産保管係との職責・権限を明確にし、互いに分
離され牽制されるようすべきこと;
(二)重要な投資、資産の処分、資金調達およびその他の重
要な経済業務事項の決定と執行に対する相互監督・相互牽制
の手続を明確にすべきこと;
(三)財産棚卸の範囲、期限および組織体制を明確にすべき
こと;
(四)会計資料に対する定期的内部監査の方法および手続を
明確にすべきこと;
第三十条

いかなる組織または個人はこの法および国家統一
会計制度の規定に違反する行為に対して、告発する
権利がある。告発を受け付けた部門は、それを処理
する権限を持つ場合は法に基づいて職責分担の仕組
みに従って速やかに処理し、その権限を持たない場
合は速やかに処理の権限がある関係部門に転送す
べきである。告発を受け付けた部門、処理に責任を持
つ部門は告発人に関して守秘すべき、告発人の名前
と告発資料を告発された組織または個人に転送して
はならない。
第四十八条

この法の第三十条規定に違反し、告発人の
名前と告発資料を告発された組織または個人
に転送した者には、その職場または関係部門
により行政処分を処すること。
概況
 2000年6月21日に中華人民共和国国務院第287号
令として公表され、2001年1月1日から実施される。
 国務院令は日本の内閣府令に等しく、この条例は『会
計法』に次ぐ上位法令である。
 資料2-4は『報告条例』の概要である。
制定背景と規制目的(1)
 1992年、財政部は『企業会計準則』と『企業財務通則』を公布
し、翌年に全企業を対象に施行した。
 1992年の会計制度改革は財務報告に及ばなかった。1955年
に制定した「国営企業決算報告作成・提出方法」はそのまま継
続された。
 『企業財務会計報告条例』はミクロレベルでは社会主義市場経
済が確立されたことを踏まえて、公平に市場参加者に企業情
報を開示するため制定されたと想定できる。
制定背景と規制目的(2-1)
 報告条例では財務報告の要件、財務報告の作成およ
び提出に関する規定だけではなく、すでに1992年の
『企業会計準則』で取り上げた会計要素の定義も含め
ている。
制定背景と規制目的(2-2)
 1992年の『企業会計準則』における会計要素の定義
は、国際会計基準を参考に国営企業の会計慣行から
帰納し要約したものである。
 市場経済が進むにつれて、『企業会計準則』と現実と
のかけ離れがますます大きくなる。このことから、『報
告条例』は財務報告基準として『企業会計準則』を修
正し、制定されたと想定できる。
会計要素の再定義
 資産:資産の将来に経済利益をもたらす属性を明確
にした。
 負債:負債は企業の現時点の義務であることを明確
にした。
 収益:資産使用権の譲渡による収益を加えた。
 費用:費用を日常経営活動の過程における経済利益
の流出として、広義の定義にした。
2006年企業会計基準の体系
基本準則(1)
具体準則(38)
一般事項準則(24)
特殊業種準則(7)
報告準則(7)
2007年1月から施行
 基本準則:全企業を適用対象
 具体準則:上場企業を適用対象
 その他の企業に任意に適用することが推奨
 国用資産監督管理委員会の発表:国有企業に2008
年年末までに全面的に適用
 具体準則の実施をもって企業会計制度が廃止
1992年基準の意義
 資本をはじめとする6つの会計要素の概念を確立した。
 会計等式を「資金の運用=資金の源泉」から「資産=
負債+資本」へと変更した。
 財務諸表として貸借対照表、損益計算書および財政
状態変動表を導入した。
会計要素
 建国以来、中国では「資本」は資本主義社会に特有の
ものと考えられていた。『企業会計準則』および『企業
財務通則』では、「資本」が明確にされるとともに、他
の5つの会計要素、すなわち資産、負債、収益、費用
および利益の概念が定義された。
会計等式
 計画経済体制における「統収統支」のもとでは、企業
における固定資産、流動資産およびその他の資産は、
それぞれ固定資金、流動資金、その他の資金に対応
させていた。企業会計は国家主体を反映した「資金の
運用=資金の源泉」等式に基づいて行われていた。
経済改革により「統収統支」に対する規制緩和の進み
を背景に、 『企業会計準則』では、企業主体を反映し
た「資産=負債+資本」等式が導入された。
財務諸表
 資金平衡表、損益計算書、原価計算表、専用基金表
およびその他20種以上の会計報告書が存在していた。
 ①財政資金管理のニーズを重視し、企業財産の法律
的所有関係を明らかにしていなかった、②種類が多す
ぎ、体系が複雑であったため、国際慣行と大きく異な
るという欠点があった。
 『企業会計準則』では、貸借対照表など市場経済諸国
で一般に認められている財務諸表を導入した。
2006年基準の導入背景
 市場経済の発展に伴う
 コーポレート・ガバナンスの変化
 企業活動のグローバル化
 資本市場の国際的な一体化
ガバナンスの変化
 1992年以降、『会計法』、『会社法』および『証券法』の制定と
改訂が行われた。また、2001年『報告条例』が適用された。こ
れらの法律・法令における関連会計規定に適応するために企
業会計基準の改訂が迫られてきた。特に『報告条例』は会計要
素を大きく修正し、それによって会計基準と会計関連法令との
食い違いが大きい。
企業活動のグローバル化
 2007年問題の中国版
 ダビング訴訟の問題
資本市場の国際的な一体化
 1984年1月中国銀行(香港)グループと華潤グループが新瓊
企業有限会社を設立し、香港の上場企業である康力投資有限
会社の67%株を取得した。
 2005年12月現在香港証券市場のメインボードでは84社、成
長企業ボード(Growth Enterprise Market: GEM)では44社
がH株を発行している。
 レッドチップ株(Red Chip Stock)という会社が92社である。
 ニューヨーク証券市場でも2社が上場している。
2007年問題

2005年1月から、EU域内で公募又は上場するEU域内の会社の連結財務
諸表の作成基準としてIFRS/IASの採用を義務付ける。

「目論見書指令(Prospectus Directive)」(2005年7月施行)と継続開示
(定期開示)を規制する「透明性指令(Transparency Directive)」(2007年
1月施行)

両指令では、EU域外の会社によるEU域内での公募又は上場についても、
連結財務諸表の作成基準として「IFRS/IAS又はIFRS/IASと同等と認めら
れる会計基準」に拠ることを義務付けている。

第三国会計基準とIFRS/IASとの同等性義務付けの適用は2005年から
2007年に延期され、2年間の猶予が与えられた。
ダビング訴訟の問題
 多くの企業は原価計算方法が国際的に理解されない
ため反ダビングの対象となっている。
 会計基準とIFRS/IASとの同等性は市場経済国として
認めてもらうことにも関わっている。
2006年基準の実現要素
 国際会計組織への参加
 1997年5月、CICPAは国際会計士連盟(International
Federation of Accountants:IFAC)に参加し、国際
会計基準委員会(The International Accounting
Standards Committee:IASC )の会員になった。
 1998年10月に財政部会計基準委員会(China
Accounting Standards Committee:CASC)が設立し
た。
 中国は数回にわたってIASC、big5、英米の著名大学へ
学習者を派遣し、国際的な人材を育ってきた。
2006年基準の特徴
 いくつかの項目を除き、IFRS/IASの主要な原則をほぼ反映し
ている。
 具体準則は、IFRS/IASの基本的原則のみを反映したものと
なっており、基本的原則以外の部分は、今後、ガイドラインとし
て公表される。
 参考文献 山田辰夫.「中国における新会計基準の採用につい
て」JICPAジャーナル.No.611.JUN.2006
会計制度の意味
 会計制度は、Accounting Systemと英訳され
るが、実際、日本の「財務諸表等規則」と同じよ
うなものである。
現行会計制度一覧
名称
公布年月
施行日 適用対象
企業会計制度
2000年12月29日 2001年1月
注1を参照
金融企業会計制度
2001年11月27日 2001年1月
注2を参照
小企業会計制度
2004年4月27日
2005年1月
注3を参照
民間非営利組織会計制度
2004年8月18日
2005年1月
注4を参照
村集団経済組織会計制度
2004年9月30日
2005年1月
注5を参照
注

注1:外部から資金調達しない企業、経営規模の小さい小企業および金融
企業を除くすべての企業。

注2:信用金庫を含む銀行、保険会社、証券会社、信託投資会社、先物会
社、基金管理会社、リース会社および財務会社。

注3:外部から資金調達しない企業、経営規模の小さい小企業

注4:民間非営利組織には社会団体、財団法人、民営非企業組織(学校
等)、寺院、道教寺院、イスラム寺院、教会等を含む。

注5:町、村の協同組合のような企業。
企業会計制度の構成
 『××企業会計制度』
 「会計処理方法」
 「補充規定」
 「問題回答」
××企業会計制度の構成
 本文:会計処理方法の説明
 「勘定科目と財務諸表」規定:
①総説明
②勘定科目の名称と番号
③勘定科目の使用説明
④財務諸表の様式
⑤財務諸表の作成説明
⑥財務諸表の注記
会計処理方法
 11業種に分けてそれぞれの業種に特有な勘定
科目を取り扱い説明書のように説明している。
補充規定
 個別問題を取り扱っている。
問題回答
 現場からの典型的な問題に対する解答をまと
めている。
会計制度の特徴
 一般商工企業
大中企業:企業会計制度
小企業:小企業会計制度
 金融業:金融企業会計制度
大中企業の財務報告書
 財務諸表
 貸借対照表
 損益計算書
 キャッシュ・フロー計算書
 資産減損引当明細表
 利益処分計算書
 所有者持分変動表
 セグメント別計算書
 その他の関係付属表
 財務諸表注記
 財務状況説明書
金融企業の財務報告書
 財務諸表
 貸借対照表
 損益計算書
 キャッシュ・フロー計算書
 資産減損引当明細表
 利益処分計算書
 所有者持分変動表
 セグメント別計算書
 信託資産管理会計報告書
 その他の関係付属表
 財務諸表注記
 財務状況説明書
小企業の財務報告書
 財務諸表
貸借対照表
損益計算書
キャッシュ・フロー計算書(任意)
支払増値税明細表
 財務諸表注記
その他の会計規制
 「会計従業資格管理方法」
 「会計基礎業務規範」
 内部会計統制規制
会計基礎業務規範
第一章 総則
第二章 会計機構と会計担当者
第一節 会計機構の設置と会計担当者の配置
第二節 会計担当者職業倫理
第三節 会計担当の交代
第三章 会計処理
第一節
第二節
第三節
第四節
会計処理の一般要求
会計証憑の作成
会計帳簿の記録
財務報告の作成
第四章 会計監督
第五章 内部会計管理制度
第六章 附則
会計ファンダメンタ
ルに関する指針
内部会計統制規制
2001年6月22日
内部会計統制規範—基本規範(試行)
内部会計統制規範—貨幣資金(試行)
2002年12月23日 内部会計統制規範—仕入と支払(試行)
内部会計統制規範—売上と受取(試行)
2003年10月22日 内部会計統制規範—建設工事(試行)
2004年8月19日
内部会計統制規範—担保(試行)
内部会計統制規範—対外投資(試行)
基本規範の構成
第一章 総則
第二章 内部会計統制の目的と原則
第三章 内部会計統制の内容
第四章 内部会計統制の方法
第五章 内部会計統制の検査
第六章 附則
内部会計統制の目的
 組織の会計行為を規範にあわせ、会計資料の
真実性、完全性を保証すること;
 欠陥を修復し、未然を防止し、誤謬と不正行為
を防止または発見し是正することによって、組
織の資産を保全すること;
 国家の関係法律法規および組織内部の規制
制度を遵守することを確保すること
内部会計統制の原則(1)
 国家の関係法律法規およびこの規範ならびに組織の
実情に適応しなければならないこと;
 組織内部の会計にかかわる者を制限しなければなら
ない。いかなる人も内部会計統制を超越する権力を
持ってはいけないこと;
 組織内部の会計にかかわる業務および関係部署をカ
バーし、業務プロセスにかかる統制上の要点に関連し
て決定、執行、監督、フィード‐バックの各プロセスにお
いて具体化すること;
内部会計統制の原則(2)
 組織内部の会計にかかわる機構、部署の設置および
職務権限の分割の合理性を保証し、兼務のできない
職務を分離し、業務機構と部署の権限と責任を明確
にし、相互牽制と相互監督を働かせること;
 費用と便益の原則に準拠し、合理的な統制コストで最
善な統制効果を挙げなければならないこと;
 外部環境の変化組織の業務機能の調整と管理に対
する要求の向上に応じて、修正し完全されること。
内部会計統制規範の意義

企業などの組織における内部会計統制の設
計と構築に関する実務指針
管理責任会計による特徴
 会計法系統の会計法令が会計制度の基本に
なっている。
 会計認識・測定に関する規定にとどまらず、会
計ファンダメンタルにかかわる定まりが多い。
会計法令の特徴
 国家が会計主体とする管理責任会計においては、会
計に関する一切の判断は国家権力機関によって行わ
なければならなかった。
 それらの判断は成文法として企業に徹底されたので
ある。
 政府部門が現在でもなお最大の財務情報利用者であ
ることから、依然として企業会計を支配することができ
る。
会計ファンダメンタルの特徴
 中国において会計基礎の整備がまだ完全でな
いからと認識されるかもしれない。企業の内部
会計統制が非常に弱いことも現実である。
 会計法令によって会計ファンダメンタルを整備
することには、国家がそのようにすることができ
るという簡単な事実がある。
規制対象の特徴
 自由経済を前提とする受託責任会計にしても情報提
供会計にしても、外部に規制できる対象は会計システ
ムの結果、すなわち、財務報告や会計情報である。
 たとえば、SOXでも企業の内部統制を規制する手段と
して、内部統制報告の提出と監査に求めた。
 中国は管理責任会計の影響で、直接内部会計統制そ
のものを対象に規制することができる。
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