金融システムのアーキテクチャー

金融市場論
Financial Markets
2013年度前期・商学科発展科目
⑨金融システムの機能と進化
大学院商学研究科 齋藤一朗
金融取引における情報の不完全性
借り手の将来所得に関する情報の非対称性
情報の非対称性
「逆選択」の可能性
借り手の返済努力に関する情報の非対称性
「モラル・ハザード」の可能性
借り手の将来所得に関する不確実性
不確実性
貸し手と借り手の間のリスク選好の不一致
貸し手の将来支出に関する不確実性
貸し手と借り手の間の流動性選好の不一致
金融システムの機能比較
銀行中心の
金融システム
証券市場中心の
金融システム
引受審査
逆選択
→情報生産(審査)
貸出審査
モラルハザード
→情報生産(監視)
債権管理
(投資家の自己責任)
リスク選好の不一致
→リスク負担
ポートフォリオ分散
自己資本の充実
(投資家の自己責任)
流動性選好の不一致
→流動性の創出
資金プールの形成
自己資本の充実
→アンダーライター機能
流通市場の形成
→ブローカー機能
ディーラー機能
情報生産
• 証券市場中心の金融システム
 「証券市場」とは、多種多様な情報の収集機構として捉え
られる。
 最適な経営判断に必要な情報が複雑な場合でも、情報の
チェックが市場価格や取引量などを通して反復的に行われ
る。
事前的な非対称情報の解消ないし緩和に優位
• 銀行中心の金融システム
 経営判断にコンセンサスが得られやすく、情報生産の主た
る目的が執行プロセスのモニタリングにあるような状況で
は、情報生産の重複を回避できる点で望ましい。
事後的な非対称情報の解消ないし緩和に優位
リスク負担
• 証券市場中心の金融システム
 本源的な資金提供者は、“値洗い”されるタイプの証券を保
有しているため、資産価格の変動が直接的に影響する。
資産価格の変動が金融システム自体の崩壊につながりに
くい。
• 銀行中心の金融システム
 本源的な資金提供者は、銀行による元本保証タイプの証券
を保有しているため、資産価格の変動による影響を直接に
は受けない。
資産価格の変動が銀行のリスク負担能力を超過したとき、
金融システム自体が崩壊しかねないリスクを孕んでいる。
金融システムのパフォーマンス
• これら2つのタイプの金融システムは、それぞれに長所と
短所をもっており、いずれの類型が優れているとは、一概
に言えない。
• 金融システムを巡る環境に応じて、パフォーマンスの優劣
は変化する。
 技術の創造が基軸となる局面では、事前的な情報生産が相
対的に重要になるため、複眼的かつ反復的なスクリーニン
グを行うことのできる「証券市場中心の金融システム」の
方が望ましい。
 技術の改良・伝播・普及局面では、事後的な執行プロセス
のモニタリングが相対的に重要となるため、銀行が主要な
債権者として振る舞う「銀行中心の金融システム」の方が
望ましい。
金融システムを巡る基本的構図
Financial Innovation
Change of
Economic Environment
Financial Instability
Regulation
Private
Sector
Corporate
Sector
金融ビジネスモデルの
革新
新しい金融サービスや
手法の開発
Financial System
Demand for
New Financial Services
顧客の
NeedsやWantsを刺激し
新たな需要を喚起
Technological Progress
金融システムの進化
• 金融システム進化の動因
 人口構成の高齢化
 高水準の資産蓄積
 情報通信技術の革新
• 金融取引の高度化・複雑化
 各種デリバティブ商品の開発
 金融取引のグローバル化・24時間取引化
• 金融取引に関わる「参加費用」の上昇
システム間関係の変容
• 代替的なシステム間関係
• 補完的なシステム間関係
Lender
Financial
Distributor
Service
Financial
Servicer
Products
Flow of Fund
Service
Financial
Manufacturer
Products
Financial
Distributor
Borrower
金融システムを巡るいくつかの論点
• プロフェッショナル同士が取引を行う“場”とし
ての「証券市場」の整備
• マーケットとエンド・ユーザーをつなぐ多様な
金融機関の必要性
 金融仲介機能のアンバンドリング
• 金融仲介プロセスにおける非効率の抑止とコス
トの低減