傷病者観察票を活用し救急隊とのより良い情報共有をめざして

傷病者観察票を活用し救急隊との
より良い情報共有をめざして
2007.6.9
高知医療センター
救命救急センター 救急外来
村上志穂・大黒有記・小笠原恵子・斎坂雄一
はじめに
救急搬送患者
病態は重症であり何らかの救急処置が必要
迅速性が要求される
患者の観察や処置が優先される・・・
⇒必要な情報を救急隊より直接収集することが難しい現状
傷病者観察票からの情報収集が鍵となってくる
しかし、既往歴、主訴、処置、バイタルサイン、覚知~病着時間・・・
⇒記載が不足していて、情報収集が困難な現状
目的
傷病者観察票による救急隊との情報共有が
どの程度できているか明らかにし、よりよい医
療へつなげていく。
傷病者観察票とは
救急隊が現場において、迅速・適確な観察を
行うとともに必要な応急処置を実施し、現場到
着から医療機関に搬入するまでの経過と観察
結果を医療機関へ明らかにするため、また、
救急隊員の患者観察能力および技術の向上
を図るために一定の様式を定め、統計資料と
しても利用すること。
救急業務実施基準より
対象および方法
①傷病者観察票の記載率
対象:2006年4月1日~12月31日
当院に救急搬送された、多発外傷の患者
30名
②救急外来看護師の観察票に対する認識
対象:2007年2月から1週間
当院救急外来看護師17名
方法:傷病者観察票に対する認識をアンケートを用いて、記載率と比
較検討した
アンケート内容
①傷病者観察票の中でも情報として優先順位の
高いものは?
②傷病者観察票の記載項目で不足を感じる内容
は?
③傷病者搬送時、救急隊から情報収集できてい
るか?
結果①
傷病者観察票の中でも情報として優先順位の高いも
のと実際の記載率
1.受傷機転
2.意識レベル
3.主訴
4.BP、P、SPO2などの数値
5.受傷部位
家族・警察への連絡の有無
83%
63%
10%
80%
56%
10%
結果②
傷病者観察票の記載項目で不足を感じる内容と
実際の記載率
1.既往歴
家族への連絡の有無
2.実施した処置
3.警察への連絡の有無
4.瞳孔所見
その他(痙攣・嘔吐など)
かかりつけ医
5.バイタルサイン
受傷機転
43%
10%
46%
10%
26%
40%
3%
80%
83%
結果③
傷病者搬送時、救急隊から情報収集
ができているか?
はい・・・4名
いいえ・・・1名
状況による・・・11名
理由として
患者の処置や治療が優先される時
マンパワーが不足時
救急領域の看護の知識や技術不足
傷病者観察票の記載率からの考察①
・主訴が10%と低い。急病と異なり受傷部位と重なる部
分があるから記載率が低いと考えられる。
・家族・警察への連絡の有無が10%と低い。患者の処
置や観察が優先され、連絡は、後回しとなるためと考え
られる。病院前と病院内での考え方の違いがある?
・主訴や既往歴、かかりつけ医の記載があれば、患者や
家族は繰り返し何度も同じ質問を繰り返されることに対
する苦痛が軽減される。
傷病者観察票の記載率からの考察②
・処置の記載は46%と低い。現場から院内へ継続した
キュアやケアを行うためには処置内容の記載は必要。
・バイタルサインやSPO2、主訴などは、傷病者の経時
的な変化を知る上でも特に重要。
・受傷機転の記載率は、83%と高いにも関わらず、記
載内容の不足と感じているのは、より詳しい記載を求
めていると考えられる。
まとめ
・傷病者観察票は、重要な情報共有のツール
・傷病者観察票を目的に応じた使用をすることで、
より良い医療に繋がる