第8課 晩秋の中国で

8課 晩秋の中国で
一、筆者の紹介
矢満田 智康(やまんた ともやす)
1937年生まれ。国学院大学文学部卒業。
読売新聞社勤務。編集。著書『越えてきた馬
飼峠』『ホロンバイルの宝石』など。
二、表現と文型
1.如し
比況を表す文語の助動詞で、口語の「ようだ」にあたる。
活用形には連用形の「如く」、連体形「ごとき」がある。
 光陰矢の如し。
 日本の和風住宅の室内は、たいていこの障子や襖
で仕切られていて、それらを全部取り外すと、家じゅ
うが「ひと部屋」の如き状態になる。
 桜の花びらは吹雪の如く散って、たちまち道を白く
染めた。
 老人は十年一日の如く、今朝も6時きっかりにラジ
オ体操を始めた。
2.~に基づく
根拠などを提示するために用いる。
 両親に反対されたが、私は自分の考えに基づいて
留学を決意した。
 政策の決定には、与論調査の結果に基づいた判断
が大切である。
 教科書に基づいて試験問題が出された。
 長年の経験に基づいた判断でも、時には誤ることが
ある。
 この映画は実際にあったことに基づいて作られたか
ら迫力がある。
3.~無しに
動作を表す名詞に付いて、その動作をしないで何
かをするという意味を表す。
 この山は冬は届出無しに登ってはいけないことに
なっている。
 遅れてきたので練習無しにいきなり演奏したが、な
んと優勝してしまった。
 断り無しに外泊したために、寮の規則でトイレの掃
除を1週間やらされた。
 研究会では、前置き無しに本題に入らないように、
分かりやすい発表を心がけてください。
4.~おかげだ
望ましい結果になった原因を述べるのに用いる。
 この事業が成功したのは、みんなが協力して頑
張ったおかげだ。
 今日たくさん洗濯できたのは、3日ぶりに晴れてく
れたおかげだ。
 遠い海の魚も新鮮なうちに食べられるのは、高速
道路が完成したおかげだ。
 時に皮肉を込めて使う場合もある。
 切符は買えず、ひどい目に遭ったのは、君が間
違った電話番号を教えてくれたおかげだよ。
5~とすると
活用語の終止形を受けて、「仮にそれが事実だと
考えた場合」、「このような現状、事実をふまえると」
という意味を表し、前件を仮定条件、確定条件とし
て、後件の判断を示す。去年あの梅が咲いたのは
3月末だったとすると、今年ももう咲くころだ。
 妹はいつも春節の1週間前には家へ帰ってくるから、
今年も例年と同じだとすると、今日あたり顔を見せ
るだろう。
 弟が学校の帰りに図書館へ寄ってくるとすると、帰
宅するのは6時ころになるだろう。
 米は洗ってから20分後に炊いた方がおいしいとす
ると、ボツボツ洗わなくちゃ。
三、言葉の理解
リーディング1
1.ウエストを絞る/束腰
2.面倒がる
形容詞の語幹・名詞などに付いて
①・・・のように感じる(思う)
寒がる/觉得冷
不思議がる/觉得奇怪
②・・・のふりをする/故作,装出,逞。
強がる/逞强;自以为强。
3.首を突っ込む/【惯用语】因感兴趣而一头扎进去,
投身,参与
(関心や興味を持って、そのことに関係を持つ。ま
た、あることに深入りする。)
政界に首を突っ込んだ。/投身于政界。
4.名物にうまいもの無し
5.~ほか(は)ない/只有,只好
諦めるほかない。
どうもすみませんと言うほかはない。
6.帰国の途に就く(つく)
7.懐旧の念を満たす/达成怀旧的夙愿
8.~でなくてはならない
四、練習問題の解答
リーディング1
K
1.リーディング1を読んで、次の質問に答えよ。
(1)私が「北京空港に着いたときの感慨は格別であっ
た」とあるが、どうしてか、その理由を述べよ。
中国に再び訪れたのは8年ぶりだったし、自分の生
まれた中国を妻に見せることができるから。
(2)私は「屋台や小さな食堂」を利用したが、どうしてか、
その理由を答えよ。
その国の人の心を知るには、その国の言葉を使い、
その国の人たちと同じ物を食べるのが早いと考えて
いるから。
(3)「名物にうまいもの無し」と言うことわざの意味を説
明せよ。
各地の名物といわれるものには、とかくうまいもの
がない、名は実を伴わないたとえ。
(4)「年年歳歳花相似、歳歳年年人不同」の意味を日本
語で説明せよ。
毎年毎年花は同じように咲くが、人の世は生まれる
者があれば死ぬものがあったりして、年とともに変わ
る。自然の世界は変わらなくても、人間は変化すると
とらえて、人のはかなさをいう。
(5)「不幸な歴史を未来への戒めに結びつける」とはど
ういうことか答えよ。
日本は、かつての戦争で中国の人民に大きな被
害は与えた。筆者は日本人として、そのことを反省
して、中国と日本の永続的な平和と友好を願ってい
る。
2.リーディング1の要約文を120字以内でまとめよ。
中日関係が不正常なころの中国で生まれた「私」
は、この国へ妻を案内氏、中国人の心を知るため
に庶民と同じ物を食べ、同じ言葉で交流した。新た
な友人と中国での日本語教育に取り組む付き合い
も始まり、中国訪問は両国民の友好を深める実り
多い旅となった。
3.次の文の__のことばと同じ意味の使われ方をし
ているものはどれか、a~dの中から一つずつ選べ。
(1) a
(2) c (3) c (4) b (5) d
4.次の文の__にはどんなことばを入れたらよいか、
a~dから最も適当なものを一つ選べ。
(1) a (2) c (3) d (4) c (5) a
(6) c (7) d
(8) c (9) b (10) c
リーディング2
1.空欄(A)・(B)・(C)を補うのに最も適切なことばを
次の中から選べ。
(A) d
(B) b (C) c
2.空欄(a)・(b)・(c)を補うのに最も適切なことばを次
の中から選べ。
(a) a
(b) d
(c) b
3.下線部①の「何かすごい力がうごめいているように
思える」とはどのようなことを言ったものか、次の中
から最も適切なものを一つ選べ。
a
4.筆者の言いたいことは何か。次の中から最も適切な
ものを一つ選べ。
c
5.リーディング2の要約文を100字以内でまとめよ。
近代都市に変わった西安の町を行く若者たちは希
望に満ちている。多くの若者は外国へ出かけて交流
を広め、中国の未来を象徴している。この国は発展
を続け、世界に飛躍して、「21世紀は中国の時代」と
なるであろう。
リーディング3
1.リーディング3を読んで、寒山寺の歴史について、
簡単に説明せよ。
寒山寺は南朝・梁の天監年間に建立され、すでに
1500年に近い歴史がある。
2.漢詩「楓橋夜泊」を暗唱せよ。
月落ち 鳥鳴きて 霜天に満つ
江楓の漁火 愁眠に対す
姑蘇城外 寒山寺
夜半の鐘声 客船に到る
3.漢詩「楓橋夜泊」の果たした役割を簡単に説明せよ。
張継のこの一首は、目立たない存在だった寒山寺
の名を中国国内のみならず、世界各地にまで広め
た。
4.寒山寺の特徴を述べよ。
寒山寺には雄大なものとか豪華なものはなく、蘇州
の山河や人と同様、淡白で優雅な雰囲気の中に清
新さを漂わせている。
5.あなたの知っている寺の歴史とその特徴を述べよ。
白馬寺は洛陽市の東にあり、西暦68年に建てられ
た中国最古の仏教寺院である。伝説によると、二人
の僧侶が白馬に経文を積んでこの地にやってきて、
仏教うぃ伝えたという。山門の前には白馬の像が立
ち、門をくぐると僧侶の墓がある。境内には、天王
殿、大仏殿、大雄殿といった伝統的な四合院形式
による建築物が並ぶ。