DEC,2008 Wedding market report 業界をリードするプロフェッショナルに聴く 式場再生事業の最先端 新規獲得率を上げる秘策 interview vol. 5 Reported by Yuka Usuda 年々減少する婚姻組数。来館するカップル数も減少傾向に。 ビジネスを維持拡大するためには、新規成約率が重要なキーに。 その秘策とは一体何か? 伝説のゲストハウス仕掛け人のおひとりに、その手法を直撃レポート! ↓ ゲ ス ト 現ハ ウ ・ ルス ーの ウデ先 エン駆 デスけ ィ立と ン な グ川っ ガ た ー デ ン ゲストハウスブームの先駆けとなった1997年のルーデン ス立川ウエディングガーデンの立上げに携わり、ゲスト ハウス企業の大手企業、㈱ラヴィスの前社長として、 数々の好業績を残した石坂勝美氏。その同氏がブライダ ルコンサルタントに転身し、現在、ブライダル企業の事業 運営コンサルティングを手がけられています。 今回は、ブライダル業界の超有名人でもある同氏に、驚 異の高成約率から築き上げる事業運営の秘訣をインタ ビュー。ご自身が接客スタッフ時代に培った経験や事業 運営者としての経験をもとにした貴重なお話をお伺いで きました。 ↓ ア ニ都 ヴ心 ェの ルど セ真 ルん 表中 参に 道位 置 す る 第5回インタビューは、 石坂 勝美氏が登場! ■㈱ラヴィス 事業沿革概要 1997年3月、ゲストハウスの先駆けとなった「ルーデンス 立川ウエディングヴィレッジ」(現:ルーデンス立川ウエ ディングガーデン)を前身に、2002年10月AOKIホール ディングスと資本業務提携し、福岡・大阪他へ新規出店。 2005年4月に㈱ラヴィスに会社名を変更し、さらなる全国 展開へ。現在、パルティーレウエディングヴィレッジなど の会場名称で、表参道、お台場、 立川、横浜、大宮、柏、長野、名古屋、神戸、難波、江坂、 福岡にゲストハウスを展開。現在にいたる。 Copyright by plus-be corporation all rights reserved interview vol.5 この人に聴く 新規顧客に係わる成約営業の秘訣 ~最強のセールス集団を構築~ ブライダルコンサルタント(元ラヴィス社長) 石坂 勝美 さん ●第5回目のインタビューに登場頂いたのはゲストハウス全盛の 礎を築いた、元ラヴィス社長 現ブライダルコンサルタントの 石坂 勝美さん にお話を伺いました。 ●Profile 1981年04月日本閣観光(株)入社。 1995年04月(株)ラヴィス入社 1998年09月(株)日本ウエディングビレッジ取締役 2001年03月〃ビレッジ事業本部長 2002年03月〃取締役直営事業本部長 2003年07月〃代表取締役社長(現在退任) 現在はブライダルコンサルタントとして日本全国のウエディング会場 のコンサルティングに従事し多忙な日々を送る。 年々減少傾向にある新規来館数。全国的に新規顧客の集客と顧客成約率の向上が求められる昨今。 1981年の日本閣入社以来、ブライダル一筋。 ご自身、未曾有の高成約率を誇る伝説の接客と、ゲストハウスの先駆けとなったルーデンス立川ウエディングビレッジで、 成約数・成約率の高維持を続けてこられた石坂勝美氏。 今回はその新規顧客に対する成約営業のヒケツをうかがいたいと思います。 -「成約率の向上をはかりたい」というのは、日本全国、どこの会場も同じ想いだと思います。 しかしなかなか思うようにならない というケースが多いようです。 実際に今まで手がけられた会場では非常に高い成約率を維持されてきたそうですね? 実は、日本閣の時代から自分の営業成績を記録しています。それをもとに計算したことがあるのですが、 全体接客数に対する平均成約率は80.9%でした。 接客したのが約3000組で、そのうち私が成約したのが約2400組というところです。 ちなみに、私が社長をしていた当時のラヴィス全体の平均成約率は約50%でした。 すごいですね。通常は30~35%が会場の平均成約率だと思うのですが、 それほど高い成約率を維持していた秘訣について教えて下さい。 新規のお客様に対する成約率を上げる方法には3つの要素が必要です。 ①仕組み を作ること ②スキル(技術) を磨くとこと ③環境 を整えること この3つの要素が非常に重要になります。 ここでいう仕組みとは、スタッフの力量に頼ることなく、 ある程度の業績を維持することを実現する方策をたてることであり、 環境とは、スタッフが成約に向けがんばったことを適正に評価し、 モチベーションを高めるということです。 Copyright by plus-be corporation all rights reserved interview vol.5 この人に聴く 新規顧客に係わる成約営業の秘訣 ~最強のセールス集団を構築~ ブライダルコンサルタント(元ラヴィス社長) 石坂 勝美 さん まずその仕組みについて、マ-ケットの中での目標の設定というのは具体的に どのように作るのでしょうか。 そのマーケットのなかでどの程度のお客様を獲得するベースがあるのか、それが自社の評価基準であり、 イコール自社の目標数値といえます。その数は次の式で割り出すことができます。 その商圏の挙式数÷商圏の披露宴バンケット数=1バンケットの挙式件数の評価基準 例えば、その商圏の挙式組数が6500組の市場に、合計40バンケットがあるとします。 単純に割ると、平均で1バンケット160組のお客様の数が割り当てられます。 これが、まず評価基準になります。お客様がそれだけいるわけだから、 単純計算では1バンケット当たり160組成約出来てしかるべし、ということになります。 さらに自社が有するバンケットの数をかけることで、最低でも獲得すべき目標組数が割り出されます。 なるほど。それをベースにして集客や競争方法の構築を考えていくわけですね。 目標獲得組数から、必要な集客数も割り出すことができます。 目標獲得組数÷成約率÷(100%-キャンセル率)=目標集客数 例えば年間の最大受注可能組数が400組だとします。 年間の成約率が、例えば35%で、10%のキャンセルを仮定すると、 400÷35%÷90%=1269.8… 1270組の集客が必要だということになります。 これは言い換えれば、1270組以上のお客様を集める必要はないということです。 経営者は集客が増えるとついつい喜んでしまいがちですが、受け皿には限界があります。 集客が必要以上に多いと、その対応に必要な人件費も増えるし、サロンも広くしなければいけない。 かえってスタッフの負担を増やし、成約率を落とすということにもなりかねません。 会場の適正集客数がわかれば、その数値にしたがって、 広告宣伝費や人件費などのコストのコントロールが可能になるということでもあります。 非常に論理的な計画や目標が立てられるということでもありますね。 そうですね。目標集客数から、コスト部分になる新規接客担当スタッフの人員も算出が可能です。 集客組数÷110日(年間有効土日祝日の日数)÷2.5=必要なスタッフ数 例:1270組÷110日÷2.5=4.6人 この2.5というのは、1人のスタッフが1日に対応できるお客様の数です。 常に1日3組接客できるのが理想ですが、日によって来館数や接客時間も異なるので、 2.5という数字にしています。 接客スタッフの人数だけではなく、サロンの広さ、テーブルや椅子の数まできちんと算出し、 適正化をはかることができます。 これにより、接客スタッフの人数、人件費の適正化はもちろん、予約サロンの広さの適正化もはかれます。 Copyright by plus-be corporation all rights reserved interview vol.5 この人に聴く 新規顧客に係わる成約営業の秘訣 ~最強のセールス集団を構築~ ブライダルコンサルタント(元ラヴィス社長) 石坂 勝美 さん なるほど。適正集客数以上にお客様が集まりすぎてしまって、かえってきちんとお客様の対応ができない ケースも実際にはあると思うのですが、なにか対策はあるでしょうか。 まずはお客様の下見を予約制にすることだと思います。 予約制にするという方法は、お客様が集まりすぎる、すぎないにかかわらず、非常に有効です。 事前に申し込むということでお客様の真剣度が高まりますし、 お客様に満足いただける接客をする意味でもメリットがあります。 つまりお客様をお待たせせずに、事前の受付時に招待人数などの希望などを把握した上で、 最適な接客が可能だからです。 最近は、結婚式日時で会場を仮予約してから下見するお客様は少なくなり、 まず来館予約をするケースが増えています。 ということは接客の力量で、挙式日時を優先にした会場決定から、 「この会場でできるなら挙式の日時は多少調整してでも…」という、 会場優先の気持ちに変えることが可能だということです。 確かに。実際に目で見て肌で感じて気に入った会場の場合、そうなりますね。 それだけに、人の力もさらに重要になってくるわけですね。 新規接客の場合、1人が1日でお相手できる適正組数は3組です。 1組あたり3~3.5時間かけることで、ゆったりした時間の中で会場案内も打ち合わせもできます。 予約制の場合、そのスケジューリングもできますし、担当も事前に決めておけます。 実際に接客する際の、成約率アップのポイントがありましたらお願いします。 自社にしかない商品、サービスの強みをきちんと伝えることです。 バックヤードの話を織り交ぜながら、お客様に「そこまでこだわっているんだ」と思っていただけて、 実際の挙式を想像してもらえるような説得力のある接客がポイントになると思います。 また、押し売りをするのではなく、きちんと自社の全ての商品についてお客様に提案をすることにより、 お客様の満足度がアップし、さらに単価アップにもつながります。 会場や商品をベストな状態でお見せすることも大切です。 新規接客時の担当スタッフと、成約後の担当スタッフが同じという会場と、そうでない会場がありますが、 石坂さんはどのようにお考えですか? 私は新規接客の担当スタッフと、成約後の担当スタッフつまりプランナーは分けるべきだと思っています。 新規接客とプランナーを同じ人物が兼ねることによる弊害のほうが大きいからです。 成約率が高いスタッフは成約したお客様をすべて自分が担当することになり、 仕事が何倍にもふくれあがってしまいます。 成約したお客様の対応に追われることで、新規には手が回らなくなってしまう。 また、「成約するほど自分が大変になる」という気持ちがブレーキになってしまう面もあります。 さらに、例えば自分が5月に多くの件数を抱えている場合、自社のバンケットが空いていても 5月をご希望のお客様を4月や6月に変更させようとし、 結果5月でOKの別会場に決まってしまうということもあり得ます。 だからといって、スタッフを責めることはできません。 実際、成約後に満足のゆくお世話をすることが困難になるからです。 Copyright by plus-be corporation all rights reserved interview vol.5 この人に聴く 新規顧客に係わる成約営業の秘訣 ~最強のセールス集団を構築~ ブライダルコンサルタント(元ラヴィス社長) 石坂 勝美 さん 確かにそうですね。それでは新規接客に必要な資質と、 プランナーに必要な資質が違うという面もあるのでしょうか。 新規接客は知識や経験の他、その人柄が重要です。 実際、新規獲得における成約率は経験年数にあまり関係いたしません。 ただ、結婚年齢は年々上昇傾向にあります。 お客様は様々な雑誌を読んだり、式に参列したり、知識が豊富です。 特にプランナー(プロデューサー)は十分な教育とお客様を家族と思えるような人間性を培うことが重要です。 ちなみに前職のラヴィスでは、新人研修にOJTを含めて7ヶ月かけていました。 プランナーとしても一般的な研修期間ではとうてい通用しないと思います。 一方で、お客様のなかには、 「この人だから決めたのに、担当が変わってしまった」という不満を持つ場合もあるようですが。 確かにそういうケースもありますが、それが原因でキャンセルするお客様はまずいません。 成約したら、すぐにプランナーへ引継ぎ、担当が誰なのか分からない空白期間をなくし、 お客様を不安にさせないことがまず大切です。 さらに、新規接客担当スタッフからプランナーへの情報・約束事の引継ぎを確実にすることが何より重要で す。「約束が違う」「言っていることが違う」となると大きな問題になります。 新規接客時は成約を上げるために大風呂敷を広げてしまいがちですが、 できないものはできないと、きちんといわなければいけません。2通りに取れるような回答もだめです。 そのためにも、きちんとマニュアル化し、ルールを明確にする必要があるのです。 マニュアルにするというのは、具体的にどのようなことでしょうか。 例えば、値引きには必ずルールが必要です。 まず値引き一覧表を作るということ。値引きの際はかならず正価と比較して提示すること。 また、値引きの出し惜しみをせず、新規時から適正に値引くことも大切です。 出し惜しみをすると、他店との比較のなかで×になることがある上に、 「粘ればまだ値引きできるのか…」という不信感を与えることにもなります。 最近ではネットを通じて、お客様同士が情報交換をされている時代です。 お客様が矛盾を感じるような対応をしていると、不信感のもとになってしまいます。 マニュアル化することで、常にブレないサービスをお客様に提供できるわけですね。 私は、支配人など決定権者にこそマニュアルが役立つと思っています。 決定権者といえども人間ですから、その日の気分によって適正に判断できないことがあります。 スタッフに「先週はOKと言ったのに」、「あの人にはOKと言ったのに・・」と、なってはいけない。 決定権者が適正に判断できないことで、成約を逃すこともあります。 例えば、4ヵ月後の4月に100名キャパの会場がまだ空いていて、 そこに招待客50名をご希望のお客様がいらしたとします。 支配人が「もう少し待てば100名のお客が来るかもしれない」と判断したことで、 結果、その会場はそのあとにそういうお客様が来ず、空いたままになってしまうこともあり得ます。 決定権者が適切に判断できるよう、例えば「4ヶ月前を切ったら人数をフリーにする」といったルールを、 経験・知識豊富な人間こそが、きちんと作るべきだと思います。 私もラヴィスの時代に全てを細かくルール化したマニュアルを作りました。 自分が部下に相談されたときにブレないためでしたが、 このマニュアルは全社に開示し、共有していました。 Copyright by plus-be corporation all rights reserved interview vol.5 この人に聴く 新規顧客に係わる成約営業の秘訣 ~最強のセールス集団を構築~ ブライダルコンサルタント(元ラヴィス社長) 石坂 勝美 さん お話を伺い、成約率を上げるためには個々人の努力やスキルもさることながら、 経営側がルール作りなど仕組みを整備することが、大変重要なのだと感じました。 環境についてのポイントもお聞かせいただけますか。 マネージメント側が、できる指導者の育成することが重要です。 スタッフの勉強会などは、四半期に1回ぐらい定期的にやるべきですね。 その際、成績好調なスタッフに話をさせる。スタッフ本人も会社から評価されているということを感じ、 モチベーションの向上にもつながります。もちろん個々人のスキルアップにもつながります。 マネージメント側による環境づくりが大切ということですね。 前年より集客率や成約率が落ちたりした場合の原因の見極めもマネージメント側に必要なポイントです。 集客率が落ちてきたという場合、どの時期から落ちてきたのかを見極め、その頃に何があったのか、 例えば、媒体広告の見せ方を変えた、強い競合ができた…などの原因を探ることが必要です。 成約率が落ちているなら、例えば、スタッフの人事異動があった、モチベーションが下がったことなどが 考えられます。スタッフの私生活が原因ということも大いにあります。 その原因をきちんと探ったうえで、打開策を考え、きちんと指示するのがマネージメント側の責務です。 原因がわからないまま、スタッフに「とにかくがんばれ!」という根性論ではダメです。 スタッフはすでにきちんとがんばっているのですから。 なるほど。経営側、マネージメント側の努力も成約率アップに必要不可欠であることがわかりました。 では最後に、現在石坂さんが取り組んでいるお仕事についてお聞かせいただけますか。 さまざまな角度から成約率のアップを実現するための婚礼営業部門のコンサルタントを行っております。 成約率を向上させるための技術指導が私の得意分野ですが、他にも業務の効率化を図り、 残業を減らしてプランナーの離職率を低減させる環境づくりや、 クレームの起き難い仕組みづくりも得意とするところです。 本日はたくさんの貴重なお話をありがとうございました。 Copyright by plus-be corporation all rights reserved
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