中村 卓さん

March,2008
Wedding market report
業界をリードするプロフェッショナルに聴く
式場再生事業の最先端
interview vol. 3
Reported by KUMI NISHIO
地域全体を盛り上げるウエディングへの
取り組みが注目されている“横浜”。
行政・民間が一体と
なった地域活性化の
取り組みの最前線を探る。
1会場ずつの取り組みだけではなく、その地域
全体のウエディングの活性化に取り組む
街として、全国の注目を集めているのが
「横浜」。
首都圏の中でも人気エリアとして
注目度の高い横浜で、さらなる
地域ブランド化に貢献している
“横濱ウエディング”とは?
第3回のWedding Market Reportでは、
その横濱ウエディングの中核メンバーで
横濱WEDDING実行委員会事務局長を務めて
いるアディックウエディングの中村 卓さん
にお話を伺います。
●
YOKOHAMA!
第3回インタビュー
アディックウエディング
取締役統括スーパーバイザー
中村 卓さん
横浜市と民間の連携が
行われている「横濱ウエディング」
の事業概要
横浜観光プロモーションフォーラム
と横浜市がウエディングをテーマ
に横浜市のイメージアップを図る
事業として展開。
双方の連携により、ウエディングの
施設利用を促進し、さまざまな
ビジネスを展開している。
横濱ウエディングWEBサイト:http://www.welcome.city.yokohama.jp/wedding/index.html
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interview vol.3
式場事業再生 この人に聴く
アディックウエディング 取締役 スーパーバイザー
中村 卓 さん
●第3回目のインタビュー登場は、横濱ウエディングを手がける
アディックウエディング 取締役 統括スーパーバイザー
中村 卓さん
にお話を伺いました。
●profile
株式会社アディック/株式会社ムービー企画取締役統括スーパー
バイザー。神奈川生まれ。テレビ局やホテル勤務を経て、
以来20年以上ウエディング業に携わる。2005年に現職就任。
最終学歴ホテル経営産業塾。
(社)日本ブライダル事業振興協会のブライダルコーディネーター
養成講座講師をはじめ、様々なセミナーなどで講師やコーディ
ネーターとして活躍中。業界内でも熱い男として有名で、
特に婚礼記録の大切さを語らせたら右に出るものはいないと
言われる辣腕。横濱WEDDING実行委員会事務局長。
全国的に地域一帯を活性化させようとする動きがある中、既にウエディングエリアとして人気の
ある横浜で、さらなる地域活性化を目指す取り組みが始まっています。
題して「横濱ウエディング」。
今回は、その取り組みを中核メンバーである、「横濱WEDDING実行委員会」の事務局長を務められている
アディックウエディングの中村さんにお話を伺います。
横濱ウエディングは、行政、地域の民間ウエディング事業者が双方で取り組んでいる地域活性化の
プロジェクトだと伺っていますが、その立ち上げのきっかけは何だったのでしょうか?
活動の始まりは、地域活性化に積極的な取り組みで非常に有名な中田横浜市長の政策の一環である、
横浜への観光誘致を目的とした。横浜観光プロモーション活動を行っている横浜コンベンションビューローを
中心とする行政の働きかけで始まりました。
最初の取り組みは「アニバーサリー(記念日は横浜で)」をテーマにした取り組みを、横浜コンベンションビューロー
として行い、次に手がけたのがウエディングでした。
「横濱ウエディング」のスタートです。
平成17年の秋に始まり、今年で3年目になりますが、行政・民間の共同プロジェクトとして今に至っています。
最初は、横浜にあるウエディング事業社を約70社集めて数回、会合が設けられたのですが、
この70社を行政がどのように取りまとめたら良いのかというのが難しい課題でした。
1社1社で取り組み方も考え方も異なりますからね。
そこで、まずは横浜の代表的なホテルと、この会合の際に、積極的に参加をしていた弊社(アディックウエディング)
を交えた8社でまずは、牽引していこうということになりました。
その8社を、「横濱WEDDING実行委員会」と組織化し、活動を行っています。
(横濱WEDDING実行委員会:8社)
ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル、パンパシフィック横浜ベイホテル東急、ローズホテル横浜、
ホテルニューグランド、ホテルモントレ横浜、横浜ロイヤルパークホテル、横浜ベイシェラトン ホテル&タワーズ、
アディックウエディング)
横浜市
横濱WEDDING実行委員会
横浜観光プロモーショフォーラム
*事務局:財)横浜観光コンベンションビューロー
メンバーは上記8社
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Interview.vol03
この人に聴く アディックウエディング中村 卓さん
では立ち上げのきっかけは行政からということですよね。
全国的に見ても、行政からウエディングのエリア活性化というのは珍しいですね。
そうですね。私が知っている限りでは横浜だけではないでしょうか。
ふたを開けると、エリアの全社というよりはまずは8社という形になりましたが、
平成17年の夏に行政からの働きかけがあり、その秋には行政による認定審査があって、認定され、
我々「横濱WEDDING実行委員会」は、行政からのバックアップもありながら立ち上がりました。
その8社での活動開始から今に至るわけですが、主な活動内容はどんなことをされているのか
教えて下さい。
現在行っているのは、8社共同のウエディングフェアの開催や
ウエディングプランの企画・販売です。
ウエディングフェアは8社が同日に開催しているわけでは
ありませんが、年2回(夏と冬)に8社共通のリーフレットを
作成し、8社で各所に設置依頼を行い、
フェア来場特典などを打ち出したりして、
さまざまな場所に設置させて頂いております。
横浜市の公共物の配布場所や都内の百貨店など、
横浜市の行政から支援されているということで
幅広い活動が出来ています。
また8社としても結婚情報誌の告知を自社で行う際に告知スペースに
共通ロゴを入れたり、
地味ではありますが共通で何か打ち出すような
仕掛けを心がけています。
8社での告知を始めてから、少しずつではありますが
認知も進んでおり、お客様の足も伸びてきております。
また共通のウエディングプランは、本来の横浜市の目的である、
他エリアから横浜へ来てもらうことを念頭に、
横浜7ホテルでの挙式プラン「YOKOHAMA WEDDING
\458,000~」を企画し販売しております。
458,000円というのは、ゴロあわせですが
ヨコハマ(4580)にかけた値段設定です(笑)。
チャペル挙式・新郎新婦の衣裳・ヘアメイク・ブーケ・ブートニア
・宿泊・ディナーまでついたプランで、7ホテルのうちの
どの会場でも同じ値段でご利用頂けるプランになっています。
またアディックでは主にオプションのロケーション撮影などを
担当しています。
これはまだそんなにご利用者数が多いわけではありませんが
横浜でのウエディングを意識していただく
きっかけにはなっていると思いますね。
→横濱WEDDING実行委員会8社
共通プラン・リーフレット
Interview.vol03
この人に聴く アディックウエディング中村 卓さん
活動が活発になってくるともっとほかの会場さんも巻き込んだ
形になりそうな予感がするのですが・・・?
そうですね。自分個人としては、参加される企業が増えれば増え
るほど、良いと考えています。ただ、参加企業数が増えてくると
収拾がつかなくなるという危惧があることも事実なので、
この点をどう改善していくのかが、今後の課題ですね。
いまは8社で実施している実行委員会ですが、年に1回
(8/8)、夏に横浜でご活躍されているウエディング事業者を
対象にしたYOKOHAMA WEDDING SUMMER SEMINAR
を実施しています。
2年開催し、毎回約300名もの参加を頂きましたので
今年も引き続き開催して認知を図っていきたいと
考えています。
横濱ウエディング公式WEBサイト
立ち上がって3年目、これからの横濱ウエディングはどういう風に動いていくのでしょうか?
つい大きいことを言ってしまうようですが、この活動を立ち上げた時の目標は、
「横浜を日本一のウエディングの街にしよう」
というテーマがありました。
幸いなことに横浜は既にブランド力もあり、ウエディングでは「日本一価値のある街=誰しもが一度はデートで
訪れたことがある街」です。
そのようなブランド価値があるからこそ、自分たちのエリアだけをターゲットにするのではなく、
他のエリアからも来てもらおう、色々なニーズに応えてふたりだけのウエディングも叶えられる街にしよう。
そういういろいろなエリア、ニーズを受け入れやすい街にしたいと考えています。
もちろんそれだけではなくて、今は横浜エリアから、外へ出さないようにしたいということも目標にしています。
横浜という街は、ある意味、他の街から見ると贅沢な悩みをもつ街でもあります。
そもそも集客力のある街だからです。
たとえば他のエリアだと、その地域に人を呼ぶことから始めないといけない場合も多いはずです。
だからみんな、より一致団結して共同で集客することを考えたり動いたりしていることもあります。
ですが、だからこそ「横浜」は実はなかなか一致団結しにくいのです。
横浜の中にも、海岸エリアや山下エリア、山の手などがあって、エリア内での戦いもありますから。
本当はここにも意識の差があって、ニーズが違うのは当たり前ともいえます。
ですから8社でできることにも限界はあるわけです。だからこそ横浜全体を巻き込んだことが
できれば、本当の意味で「日本一のウエディングの街」になれるような気がしています。
国内のほかのエリアでもこういう地域を巻き込んだ活性化の動きが出ています。
いち早く地域活性化立ち上げにかかわった、中村さんならではのご意見でかまいませんので
何か成功させるコツのようなものがあれば、ぜひ教えていただきたいのですが・・・。
そうですね。コツと言えるかわかりませんが、
自分が考えるに「身の丈にあったこと」を行うということです。
まず、自分のエリアの特徴や、環境をよく把握すること。
そこから始めないと絶対にうまくいきません。
何をどのように目指すのかをきちんと考えて、そこに賛同してもらえる人・企業を巻き込んでいくこと。
また、支援してくれる行政の力も絶対に必要です。
横浜というのはブランド力、人の流れがあるという前提があっての話でしたので、ウエディングで来た
カップルやゲストに、周辺を楽しんでもらえるための観光施設の周遊クーポンを出す。これは横浜市が声かけをしてくれて
実際に実現しています。そのエリアのことを本当に考えてくれる行政とのタッグは心強い限りです。
Interview.vol03
この人に聴く アディックウエディング中村 卓さん
なるほど。民間・行政・地域の三位一体の動きができれば色々なことができますよね。
そうですね。もちろんそれだけではなく、地道にやっていくことが重要です。
立ち上げたからといってすぐに何かの効果や成果を求めないことも必要です。
民間は言いかえれば営利企業の団体になるので、ほとんど自社の婚礼組数を多くしようと考えるのが
普通だとは思いますが、そういう視点で臨むとうまくいかない気がします。
例えば立ち上げた初年度、その次の年。
会社に帰ってこの活動の報告をしたときに、取り組んでいる効果があったのかと聞かれるとします。
活動による数字が上がっていなければ、「そんな活動やめてしまえ」となります。
そうなると続かない。
長い目で見られるかどうか、これも大変重要です。
現場の会場担当者の方から見るとなかなか難しい課題ですね。
真にエリアを盛り上げる、というのはさらに言うとどういう意識が必要でしょうか。
そのエリアがカップルにとって必要なエリアになることです。
ウエディングは、ふたりの過去・現在・未来のうちのたまたま現在の表現の形でしかありません。
ふたりの過去と未来を、このエリアでどうつなげるか。
たとえば、結婚前のカップルが、とあるエリアを訪れる。
エリアはふたりにとっての思い出の場所になるように、地域としてどのような演出をして、
記憶に残る街になるのか、何かのときに選んでもらえる場所になるのかをイメージし、
活性化していくことが大切です。
過去(思い出の場所)・現在(結婚する場所)・将来(これから住む場所)。
ウエディングの集客だけをもくろむのではなく、ゆくゆくはその街に住んで欲しい。
横浜市もそう望んでいると思います。
結婚したカップルが横浜に住んで、子どもを育てていってもらえるような街にしたい。
時系列でふたりの過去・未来を取り込む努力をするというのが、成功の秘訣ではないでしょうか。
実際には未婚化対策が少子化対策にもつながると思うのです。
自分の会場の件数増加は自分たちで努力すれば良いのです。
地域で取り組むということは、参加企業それぞれ効果の有無もまちまちになりますから
目先のことに振り回されないことが重要です。
日本一のウエディングの街にしよう という目標を掲げて活動している横浜が
10年後、20年後にどんな街になっているか、
長い目で見ていくゆとりが地域活性化に必要とされているように思います。
横濱ウエディングはおかげさまで認知度があがってきて、いろいろなところから
お声かけを頂くようになっています。
だからこそ、これからは何をやっていくのかよく吟味しないといけないとも考えています。
やることの意味を考え、それが20年後の横浜のウエディングのためになっているかどうかを、
長い目で判断していくこと。
それが重要だと思います。
Interview.vol03
この人に聴く アディックウエディング中村 卓さん
中村さんの横濱ウエディングにかける今後の夢は何でしょうか。
いまは8社で活動していますが、将来的には横浜のほかの事業者にも参加
してもらい、協力しあって横浜を盛り上げていければと思っています。
それには価値観や目標の共有も必要ですが・・・。
私たちが考える「横浜を日本一のウエディングの街に」というのは、
挙式組数や売上で日本一を目指すのではありません。
横浜で行うウエディングの質・価値が日本一高いものになるようにしたい。
目に見える数字ではないもので、実際には優劣をつけるのは難しいと思いますが、
自分たちの目標は、挙式をするカップルの満足度を日本一高い街にするということです。
カップルの満足度は、ふたりの両親、招待したゲストの満足度が高くて初めて充足するもの
ですよね。その支払って頂いた料金に見合う3時間を過ごせること。
過去と未来を見据えて、私たちがふたりの仲人のような役割を果たす。
リーフレットにGO-BETWEEN YOKOHAMA WEDDNGと謳っているのは、
「横浜がふたりの仲人になる」という意味をこめています。
最後に、いま激しい競争で若干閉塞感といいますか、どういう風にウエディングを提案していっていいか
わからないという声を会場さんから聞くことがあります。
ウエディング業界の将来や方向性について、中村さんはどう感じていらっしゃいますか?
披露宴を売るとか手がけるという考えだけでは今後はうまくいかないような気がしています。
披露宴の前後を、過去と未来にどうヒモづけできるか。
カップルはいま1日の、しかもたったの3時間で数百万円かかるウエディングに
価値を見出せなくなっています。
披露宴をやるくらいならマンションの頭金にしたほうがマシという人も多いですよね。
でも披露宴というのは、自分たちが大切にしている人たちに感謝するチャンスの場です。
その数時間をかけがえのない時間にしてあげる工夫をするのが私たちの役目。
詰め込むだけ詰め込んでおざなりのサービスをするというのではなく、
1組1組を大事にするべきです。
それにはその意識だけではなく、自社や地域での情報の共有が必要です。
実際に来られたお客様がどういう背景や価値観を持って来られたのか、
それを把握して初めて最善のご提案ができます。
自社内で例えるならセクション間にまたがって、お客様の情報を共有しておふたりの準備に対する負担を
緩和するのはもちろん、ユーザーの動向がどのようなものなのか、どういったニーズをお持ちなのか、
社内で共有して自社の展開に有効につなげる努力も必要です。
いくら長い目で見るといっても、企業は利益を求めるのが当たり前ですから、
お客様の情報共有なくして社内でプレゼンをしても「何をいってるんだ」ということになりますから。
エリアでも参加する事業者がみんなでお客様のニーズを汲み取る努力をする。
そしてそれを情報共有することです。
今のお客様の価値に見合うものを提供するには、そんな努力も必要なのではないでしょうか。
Interview.vol03
この人に聴く アディックウエディング中村 卓さん
カンタンなことのようで実は難しい。でも努力のしがいはありますよね。
価値に見合うものを提供しなければ、この業界が衰退していく原因になります。
くどいようですが見合う価値が何であるのかを考えること。
小さな女の子に「大きくなったら何になりたい?」って聞いたら、
昔は「お嫁さんになること」という答えが返ってきたけれど、今はそうでもないんですよ。
地味婚などで招待人数も減っているから、小さな子がお呼ばれして
披露宴で花嫁を見る機会も少なくなっていると思うのです。
極端なことを言えば、会場側は披露宴に参加する子どもは食事無料くらいのサービスを打ち出して、
その子が大人になったときの憧れになるような努力をするくらいのことはしても良いかもしれない。
現場でこのような、ある意味攻撃的な努力もしながら、地域ぐるみで盛り上げていく。
私の夢は、こういう輪が全国に広がっていって、
各エリアの取り組みを全国レベルで情報交換できるような場まで
もてるようになれば良いなと思いますね。
日本における結婚式は大事な儀式であり、文化でもありますから。
それを守っていくという意味もあります。
横浜に続いての動きに期待したいですね。
本日はお忙しい中、貴重なお話を本当にありがとうございました。これからも頑張ってください。
横濱WEDDING実行委員会 昨年度(2007年度)の活動内容
定例会議(第30回~第51回開催:会場ホテル持ち回り)
そごう横浜店ウエディング相談会開催(6/22~24)
YOKOHAMA WEDDING SUMMER SEMINAR
(8/8:於ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル)
平成19年8月・9月合同BF開催(共同リーフレット作成)
認定事業説明会出展
(8/31於:ロイヤルホール横浜)
モザイク銀座阪急にて告知イベント開催(10/22~28都内をターゲットにした告知イベント
共催:ぐるなびWEDDING)
結婚式は横浜で!「YOKOHAMA WEDDING ~Anniversary~」販売開始
(横浜の7ホテルで2人で挙式を行う458000円プラン共同企画販売)
平成20年1月・2月合同BF開催
㈱アディック
本社・東京都港区南青山。銀座・横浜・大宮・大阪・福岡でウエディングプロデュース事業を
手がけるほか、フォトグラファー・カメラエージェント事業である“アートディレクトコーポ
レーション”、“レストラン葉山庵グループ”を運営するレストラン事業運営部門、スクール事業
である“アディックウエディングスクール“など、ブライダルに関する幅広い事業展開を行っている。