結婚意識調査

September,2011
Wedding market report
業界をリードするプロフェッショナルに聴く
式場再生事業の最先端
interview vol. 13
藤田観光株式会社 婚礼営業本部長 池田直彦氏
Reported
by KUMI NISHIO
激戦の首都圏市場で
ホテル・専門式場
ゲストハウスの
3形態の会場を運営し
年間合計3000組の
カップルを獲得し続ける
秘訣とは?!
藤田観光株式会社は、激戦の首都圏で、椿
山荘(専門式場)、
フォーシーズンズホテル椿山荘 東京(ホテ
ル)、CONVIVION(ゲストハウス)と3つの業
態の違う婚礼会場を運営。
この3会場で年間3000組を越える婚礼受注
を続けています。
今回はその婚礼営業本部長として、今年5月
に着任。基幹事業である婚礼事業の総指揮
をとる池田直彦さんにお話を伺います。
●PROFILE
藤田観光株式会社 婚礼営業本部長
池田 直彦氏
Profile 1985年藤田観光株式会社入社
2002年椿山荘(東京)ブライダルセールス課長
2006年太閤園(大阪)婚礼課長、2010年、同
営業支配人
2011年5月より、婚礼営業本部長および藤田観
光グループPlus Thank Inc.代表取締役社長に
就任
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interview vol. 13 式場事業再生 この人に聴く 藤田観光株式会社婚礼営業本部長
兼 藤田観光グループPlus Thank Inc.代表取締役社長 池田直彦氏
-早速ですが、新規会場が次々と参入する首都圏で3つの業態の会場を安定して運営され、合計で年間約3000組の
お客様を獲得されていることは本当にすごいことだと思います。
椿山荘で約2300組、フォーシーズンズホテル椿山荘 東京で約700組、CONVIVIONで約150組を獲得されていると伺っ
ております。
単刀直入な質問からで恐縮ですが、その合計約3000組を確保し続けている秘訣についてお伺いできますでしょうか?
一番のポイントとしては、基幹となる椿山荘が長い歴史の中でお客様に愛され続けていることだと思います。
椿山荘は来年で60周年になりますが、この60年間で挙式披露を挙げていただいたお客様が、11万組以上になります。
首都圏では、何らかの形で、椿山荘に足を運んでいただいた方がたくさんいらっしゃいます。
やはり60年という長い歴史の中で利用して頂いた方々の、口コミやご紹介というのが基礎になっていると思います。
たとえば挙式をして頂いた方が3世代にわたってご利用いただいていたりすることもあります。
椿山荘ファンの方がたくさんいらっしゃって、そういうお客様に支えられています。
2つ目は、やはり、前身は山縣有朋の別邸だった歴史ある場所ならではの、東京都内でもなかなかないような緑豊かな
庭園など、非常に素晴らしい資産があることも理由だと思いますね。
3つ目は、これまで培ってきたノウハウです。
このような資産を有効活用できているというところが、やはり椿山荘の強みだと思います。
このような点をマーケットで訴求していくと、やはりお客様は一度行ってみたいと思っていただけますから。
足を運んでいただくお客様のお話でいいますと、基幹となる椿山荘の昨年の実績は約2300組だそうですが、2300組ご
成約いただくには実際足を運んでいただいているお客様は相当の数になられますね。
だいたい現在の成約率が40%前後ですから年間で約5000組強のお客様にお越しいただいていることになります。始め
の2300組確保の質問に立ち返ると、そういった我々の強みを広告宣伝の中にも、うまく訴求できているともいえます。
その中でやはり料理であったり、接遇であったり、60年間、何も進化してないわけではなく、ノウハウをどんどん今のトレ
ンドに合せて改善しています。
接遇、料理も品質を上げていく。庭もある。それから歴史もある。
これを、外にうまく伝えて興味を持っていただいたお客様にご来館をいただいて、そこから今度は接遇でご満足いただく
ことで毎年の2千組超えを保っていると思います。
接遇というのは、実際に結婚式を挙げていただいたお客様に期待以上の満足をしていただいて、
それが評判というものにつながって、それがまた次の来館客に繋がる。そういうサイクルをずっと続けている結果です。
その接遇の面についてお伺いします。
今、御社では人の教育とか仕組やオペレーションを、すごくいい状態で維持されているのだと思うのですが、どのように
運営されていらっしゃいますか?
椿山荘、フォーシーズンズホテル、CONVIVIONなど会場ごとに違いがあったりするのでしょうか?
会場のタイプは違っても、婚礼の接遇の方法は同じです。
いわゆる新規は新規専門、打合せは打合せ専門という形で、分業制を取り入れていますね。
基本的にどの会場も、まずは目標を明確化しています。
月間、週間での成約数や、その成約数を獲得するために必要な来館数も、事務所の中でも常時
全員が把握できるようにしています。まずこれは最低限のことだと思います。
その上で約2時間の接客の中で決めきれないお客様へのアプローチは、しっかりやっていると思います。それは個人に
任せている面もありますが、椿山荘の場合ですとグループ単位で、プランナー、マネージャー、課長、支配人が一体と
なって進捗管理を非常に厳しく行っています。
もちろん接客するのはプランナーなのですが、そこだけに全部任せてはいないですね。
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兼 藤田観光グループPlus Thank Inc.代表取締役社長 池田直彦氏
ただ教育で成約率が上がるということもあります。もともとポテンシャルの高いスタッフの実力を伸ばすことも大切ですが、
成約率の上がり下がりの波が激しいスタッフを、研修により高い成約率に安定させていければ大変な強みになります。
なので教育研修もしっかりやっています。
その教育面についてお伺いしますと、社内で行われている体制でしょうか?
最近では外部のコンサルタントを入れる企業も増えているようですが・・・
いわゆる社内教育もありますし、外部の講師を採り入れる場合もあります。
内部にいます我々には自施設の強みや弱みを第三者的に見られないところもあると思いますから、
その把握も含めて、外部の方からの指導を受けることも大切だと思っています。
とはいえ、最近では社外による教育は1年に1回ぐらいに変わりました。
といいますのも、都内に5事業所ありますので、そこのメンバーを集めて情報交換や知識共有をする形にシフトしていま
す。
そういう体制にするために、会場をまたいだ婚礼営業本部という事業ユニットになっている面もあるんですよ。
どのようにやっているかというと、事前に課題を設定し、各会場の現場責任者が、その課題解決方法についての成功事
例や失敗事例を持ち寄り、共有しています。
また、ある会場が始める新しい施策についての効果的なやり方や成功のコツを、他の会場からヒアリングするなど、ノウ
ハウの横展開も図っています。いわゆる我々の強みとは、首都圏で毎年3千数百組の婚礼を実施していて、さらに藤田
観光株式会社全体で約5千組の婚礼を実施していることなのです。
たくさんの会場を運営されている御社ならではの強みですね。藤田観光株式会社全体の5000組の中でも、やはり2300
組を確保している椿山荘が主力会場になると思うのですが、椿山荘の運営についてお伺いします。いま婚礼のスタッフ
体制や運営はどのようにされていらっしゃるのでしょうか?
先ほどお話ししましたとおり、スタッフはセールスグループとコーディネートグループに担当を分けています。新規接客専
門のセールスグループは約30人いて、約5000組近い新規来館のお客様の接客を担当しています。1人あたり年間170
組近くの新規のお客様を接客している計算になりますね。お客様の来館は土日に集中しますし、再来館されるお客様も
いらっしゃいますから、1日に4組くらいのお客様をご案内する場合も多いようです。
椿山荘のプランナーさんが新規接客される際の接客方法は、セオリーのようなものがあったりするのでしょうか?最近
強い会場さんでは成約いただくためのトーク術・シナリオなるものがあって、個々人の個性に左右されない接客方法に
シフトしているような気がするのですが・・・
もちろん婚礼のマニュアルはありますが、実は接客方法については、場所ごとのセリフを縛るようなカチッとしたものは
設定していませんでした。ですが遅まきながら、少し取り組もうとしているところです。椿山荘なり、フォーシーズンズホテ
ルなりの強みを刷り込んだ、もっとも基本となるセールスシナリオというのを作ろうと思っているんです。
作り方としては、今やっているスタッフ同士の情報共有・ノウハウ交換の結果を、文書化していく形ですね。やはりスタッ
フの入れ替わりもありますし、特に新人さんの場合は即戦力になるまでに時間がかかってしまうと、それだけで機会損
失に繋がります。
ベースとなるぶれないソフトをきっちりと固めて、そのソフトにより成約率40%をきっちりキープできて、更にそれ以上の
数字は、その人のスキルや個性で上昇するようになればいいな、と思っています。
現場のお話しについてもうひとつお伺いします。
新規のお客様は予約でお越しになるケースが多いと思うのですが、お客様ごとの担当はどのよう
に決められていらっしゃいますか?
コントローラーと呼んでいる責任者がいるのですが、その責任者がマッチングしていきます。
お客様の年齢やファッションスタイル、来館構成(お二人、ご両親連れなど)、印象などを考慮しながら、できるだけ相性
が合いそうなプランナーを担当付けしていく、流れですね。
これはどの会場様でもされていることだと思いますが、やはりこうしないと、安定した成約には繋がらないのが実情だと
思います。
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椿山荘は、予約なしでお越しになるお客様もいらっしゃるので、順次、担当を付けせざる得ない時もありますが、基本的
には来館された際のお客様を拝見して、好みを推察することが重要です。
例えばお客様が身につけていらっしゃるものから推察したり、お二人の雰囲気を窺ったり、ということなんですが、やはり
これを徹底する前と後では成約率は大きく変わりました。
ちなみにどの程度変わったのでしょうか?
それ以前とはプラスで10%くらい変わったと思います。
もちろんこれだけではなくて、成約率が上がる要因になっていることは他にもありますが・・・
ひと昔前はどの会場も、会場側がお客様を選んでいたようなところがあったと思うんですが、いまは
そんなことはないですよね。
やはり宴会場というものは、宿泊と一緒で、空いたままにしておいても仕方がないわけです。
ましてやマーケット的にも、今後、これまで以上に来館が増加するとも思えないわけです。
そうなってくると、宴会場の稼働率を上げていって、結果を残さねばならなくなります。
もちろん椿山荘でもコアとなるお客様層というのはありますが、機会損失をなくしていくための努力もしています。和風会
場、洋風会場、レストラン、料亭などハードのバリエーションや、写真婚、パパママ婚などソフトのバリエーションの充実
を図っています。
もちろん時期に合せて、特典対応であったり、価格対応であったりをうまく使い分けて、特にオフシーズンには柔軟に対
応して、成約を確保していくという考え方もあります。
そのような多面に渡る施策がうまく連動して成約率アップに繋がっています。
競合環境についてもお伺いしたいのですが、お越しになるお客様の競合先が以前と変わってきている会場が多いような
んですが、御社ではいかがですか?
椿山荘の場合は、以前とそれほど変わっていないですね。稀にほとんど競合したことのない会場さんとあたった場合は、
プランナー同士で知っているスタッフにヒアリングして、お客様が比較しているのはどんなポイントなのかを理解しようと
しています。
先ほどの教育のお話しでも出てきましたが、プランナーさん同士の横の情報交換が、御社の特徴であり、強みなんです
ね。
プランナーの人数も多く、年齢も幅広いですし、大きな事務所で皆一緒に働いていますので、事務所自体がブライダル
スクールみたいになっているのかもしれないですね(笑)。
「婚礼とは・・・」という基礎知識はベテランのスタッフが、「今の流行は?」というのは若いスタッフが・・・という風に教え
あっていますから。ベテランのスタッフでも、自分が知らない新しい施設のことに関しては、「どんなとこ?」という風に聞
きあっています。
椿山荘だけでも、セールスグループは約30名、コーディネートグループは35名以上、そのほか引出物担当も10名以
上はおりますので、こういう点は少人数でやっている施設よりも圧倒的なノウハウがありますね。先ほどお話しした強み
はこういう点でもあります。人的資源のシナジーを更に発揮していけば、とても強い組織になりますね。
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他企業にない点が、タイプの異なる会場を至近距離内で展開されている点です。
(椿山荘=専門式場、フォーシーズンズホテル椿山荘 東京=ホテル、CONVIVION=ゲストハウス)これはどのような戦
略ですか?
始まりはもちろん専門式場である椿山荘です。その後、椿山荘の敷地内にフォーシーズンズホテルを建てたわけですが、
ホテルはウエディングが目的ではないので、意図的なものはありません。ただ、表参道に建てたCONVIVIONは違いま
す。
新しい業態としてゲストハウスがどんどん出てきて、業績を伸ばした時期がありましたよね。
それまで我々がやったことがない業態ですから、実際に運営して、お客様に受け入れられている理由やノウハウを掴み、
その中から良いものを、椿山荘を中心とした既存の施設に取り入れていこう、という目的がありました。
実際にやられてみて、これまでの施設と異なる点はなんでしたか?
お越しになるお客様の志向が違う、という点が上げられますね。
1チャペル&1バンケットスタイルのコンヴィヴィオンの場合、完全な貸切りスタイルになりますから、その空間の中で、
お客様がやりたいことはほぼ何でもできるわけです。貸切りスタイルに対するお客様の期待度やウオンツの高さ、いう
のが一番異なる点だと思います。
又、コンヴィヴィオンは、こだわりのゲストハウスとして料理やサービスはもちろん、家具、調度品に至るまで徹底的な本
物志向、リアル志向を貫きましたので、こだわり感や本物志向を重視したお客様も多いんです。その他の点では、あまり
変わらない印象ですね。
3月11日に東日本大震災がありました。ウエディング業界も日延べなどが多発してかなりの影響
がありましたが御社ではいかがでしたか?
3会場とも、日程延期が出ました。直後の3月の婚礼は、4割を超えるお客様が日程変更になりました。更に、新規来館
数の減少や、それまでに接客していたお客様のクロージングができなかった、という影響もありました。今は、もう、元に
戻っている感じですが、それでもやはりやっと前年並みぐらいですね。
大震災という天災もあったので、先が読みにくい面があるかもしれませんが、これから先、婚礼市
場はどう変化するとお考えでしょうか?
今どんどん披露宴しない人が増えている点が、業界の懸念材料になっています。
婚姻率の低下や初婚年齢の上昇、もしくは就労状況の変化、又はいわゆる標準家庭が世帯としての標準でなくなる、
など家族のカタチや、社会・経済の変化に伴い、今イメージするような標準的な披露宴というものは少なっていくかもし
れませんが、その分、新しい挙式・披露宴の姿・カタチが顕在化してくると思います。
「妊娠したので結婚する」パターンも増えていますが、たとえば、現在は出産前に挙式・披露宴を挙げるケースが多いよ
うですが、もしかしたら、出産後に、もしくはお子様がもの心ついた頃に挙げるようなケースが増えてくるかもしれません。
又は、家族・親族だけでゆっくり食事をしたい、というご希望が増えてきたり。
業界の懸念材料に対する一番の課題は、お客さまのニーズと提供する商品のミスマッチでしょうね。お客さまの変化に
対応して新しい商品をどんどん造成していますが、残念ながら変化に追いついていけていない。
そのため披露宴そのもの魅力を十分訴求しきれていない。だから披露宴をしたい、と思う新郎新婦が増えていかない。
ファッションの流行はファッション業界が仕掛けていくそうですが、披露宴もブライダル業界全体で流行を仕掛けて行く必
要があるかもしれません。
当たり前ですが、お祝い事に伴う食事会・宴会、もしくは記念写真などは残るわけですから、課題を解決する一つの方
法として、今後はスタンダードな披露宴とともに、細かなニーズを満たす販売スタイルも増えてくるんじゃないでしょうか。
施設側が顧客目線で商品を作っていけば、需要というのは十分に掘り起こせると思います。
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椿山荘ではここ最近、パーツニーズのお客様向けの商品をたくさん作られていますね。
お庭での写真プランなども先日リリースを頂きました。
そうなんですよ。これから来るかな?という時点で、すぐ商品にして販売してみて、軌道に乗ってきたら、大きく出してい
きます。
写真プランも既にいい反響を頂いています。写真プランでご成約のお客様も、実はその後、挙式や、会食もしたいという
風に変化するケースも多いんですよ。
結婚式には興味がないけれど結納はちゃんとやりたい、というお客様向けに、結納プランも告知しています。 このプラ
ンをご希望のお客様も、実は後日、親族で食事会をしたい、というご希望が多いようです。
お決め頂いたプランの呼び名は違うけれど、様々なオプションを加えた結果、「これ、ほとんど結婚式だよね」っていうこ
とも多々あります。あくまでもお客様にとっては結婚披露宴ではないんですが。
こういうことからも、入口のバリエーションを増やしていくことの大切さを感じています。
お客様のこだわりや考え方に合うよう、入口商品の充実が重要になってきて、そこから結果、披露宴になってくる、とい
うケースも増えてきそうです。
我々、施設側は、「披露宴だけしか受けない」という販売方法ではなく、入口をずっと広げていく。
それはプランの価格を安くするというわけではなく、食事や写真など、披露宴パーツ単体も十分クオリティを上げて行き、
単体でも高単価で販売できるような商品をきっちりと持っていれば、まだまだブライダルのビジネスとしてはやっていけ
ると思います。
「披露宴は嫌なんです」っていうカップルって、意外と多いですから、確かに一気にハードルが低く
なる感じですね。
そうですね。いまお越しになるお客様も、婚礼窓口ではなく一般宴会の窓口に問い合わせをする方もいらっしゃいます。
ご自身のご希望が披露宴とか婚礼というカテゴリーではない、とお考えになっていらっしゃるようです。
いま我々施設側が考えなければならないのは、もはやライバルは他の施設ではなくて、大きい意味でいけば、住宅会
社であったり、ハネムーン・旅行会社であったりすることです。
新郎新婦が考える結婚の全体の予算の中で、どこに価値を感じるか、感じていただけるか、です。
新郎新婦の価値観の中で、結婚披露宴よりも、ヨーロッパへハネムーンに行って写真を撮るとかの方が価値が高くなっ
てしまうと、ヨーロッパに負けちゃっているわけです。
だからこそ、商品バリエーションと共に、高いクオリティの商品を提供して、披露宴の魅力を上げていかなければならな
いと思います。
結婚披露宴をやりたいから会場を探し椿山荘を見つける、というよりも、結婚を機に椿山荘、フォーシーズンズホテルを
思い出していただき、「椿山荘で何かやりたい」とか、「フォーシーズンズホテルで何かをやりたい」というように、相談に
来てくれればいいですね。
大型デパートのような十分な品揃えで、いわば“椿山荘百貨店”を完成させ、新郎新婦は椿山荘に行って、「何か買い物
をしよう」、「この写真はいいから、ちょっと写真を買っていきます」というイメージでお買求めいただき、その中の一つの
商品として披露宴もあって、披露宴を選ぶお客様もいる、というのが理想です。
従来までの、全部まとめてドーンと買わなきゃいけなかった時代から商品をカスタマイズして購入する時代ですね。新郎
新婦ごとに、いろんなカタチにちゃんとカスタマイズした商品を提供して、それをわかりやすく販売していけば、いろんな
機会で買っていただけると思うんですよね。
すごく面白い発想の転換だと思います。これだけの施設をお持ちですから、藤田観光さんがやって
いくだけで、相当の影響力があると思います。
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話は変わりますが、もうひとつ傾向のことでお伺いしたいことがありまして。
和婚のことです。椿山荘では神前式の割合が全体の3割を越えたそうですね。
外部の著名な神社との提携を増やしていますので、和婚志向で来館される方は確かに増えました。ブームであることは
もちろんですが、新郎新婦の年齢が上がるに従い本物志向、大人思考、または日本人としてのアイデンティティを感じ
るようになりますので、和婚に相応しい宴会場への改装や、料亭での披露宴などを訴求していった結果だと考えます。
もちろん、広大な日本庭園があることも大きな強みです。
椿山荘には施設内の神殿のほかに、外部提携の神社が3社あります。文京区の湯島天満宮と、神楽坂にある赤城神
社、及び本年5月より北区の王子神社とも提携しています。
提携の神社にもそれぞれ独自のスタイルがあるので、ブライダルフェアで3社をめぐる神社ツアーを始めたところ、もの
すごく人気で、しかも成約率もとてもいいんです。
実際に車で回ってみることによって、おふたりが挙式当日に椿山荘に移動する場合の距離感や、時間の感覚をつかめ
ることが成約率にも結びついていますね。
やはり本物の神社で挙式ができるというのは、本物志向のお客様には響きますね。
もちろん、椿山荘内の神殿での挙式に対する魅力付けも忘れていません。
昨年の7月より挙式後の花嫁花婿が、朱傘持ちの従者を従えて庭園内の小道を歩く「花嫁御幸」という演出を取り入れ
たところ、施設内の神殿挙式も増えてきています。
神前式の式次第での演出はなかなか難しいので、大きく「和婚」と捕らえた枠組みでの付加価値も必要だということです
ね。
和婚ブームといっても、ただブームだからというだけでは、なかなか件数は増えていきません。トレンドとして察知して、
ブームの背景を捉えて、きちんと商品を開発したり、チャネルを増やしたりすれば件数増につながると思います。
ちなみに椿山荘に隣接するフォーシーズンズホテルでは、神前式が増加しているということはありません。 フォーシー
ズンズホテルはオープン以来、ヨーロピアンエレガンスをテーマとした強いイメージ訴求を行なっていますので、神前式
に絞った訴求が難しい施設です。
しかしながらフォーシーズンズホテルらしい「和婚」への取組みとして、披露宴の色直しの衣装として、色打掛や引振りを
含む振袖をお勧めしています。和装での様々な演出と合わせ、2,3年前に比べて3,4割は増えています。そのほかにも、
お庭での和装の前撮りなども増えています。
フォーシーズンズの場合、お色直しで和装を利用されても、お客様には「和婚をした」という強い意識はないようです。あ
くまでも、ご新婦様が自分らしさを表現する為に選んだ衣裳が和装だった、だけのようです。
和装の人気が高まった要因のひとつとして、美容の功績があるかと思います。従来、打掛は文金高島田が当たり前でし
たが、日本髪の鬘には抵抗ある方も多く、昨年までは洋髪でも似合う振袖が多く出ておりました。しかしながら打掛にも
似合う新しい洋髪スタイルの提案により豪華な色打掛を選んでいただけるようになりました。
実際、今年になって、振袖よりも色打掛けがよく出るようになっています。色打掛の場合、一般的な洋装よりも単価が上
がりやすいので、ありがたい限りです。
こういう成功事例を紹介していくとマネされる面も増えてきそうですね(笑)
いえいえ、他社様も十分取り組んでおられることだと思います。もちろん、他社様に先駆けて、いろいろやりたいなって
いうのはあります。結果的に先陣を切れて、それが真似されるようになれば、ちょっとうれしいですね。更に言えば、他
社様がまねをされるころには、もう次のことに着手しているというのが理想ですね(笑)。
常に先頭を走る、というのは本当に理想ですね(笑)。では最後になりますが、着任されて2カ月ですが、池田さんの目
標イコール藤田観光さんの目標だと思うのですが、抱負をお聴きしてもいいですか?
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まず、全ての事業所とも共通ですが、お客さまからの評判を、もっともっと上げたいです。
例えば、椿山荘には広大な日本庭園があったり昔からご贔屓頂いているお客様がいらっしゃったり、又は、コンヴィヴィ
オンやフォーシーズンズホテルは内装にこだわったりと、ハードや、ロケーションに対する強みがある施設もあります。
でも、やはり当日の接遇や、きちんとした料理、おもてなしを提供して、お客様に「ああ、やっぱりあそこ、良かったよ」っ
ていう口コミの評判を上げたい。
実際にご利用頂いたお客さまの評判を上げて、そのお客様が「あそこ、いいよ。あそこでやったほうがいいよ」とお勧め
いただき、更にお客様が増えていくようなサイクルを作り上げたい、というのが抱負ですね。
広告宣伝も大切ですが、そこに頼らなくても、年間6千組以上の方が新規相談に来るような、そういう施設になりたいで
すね。ただ、これは社内の活動だけではできないことです。ですから、われわれは共に働くパートナー企業の皆様との
関係が大切だと思っているんです。
例えば衣装室で失敗したことに対するお客様の評価は、椿山荘全体の評価と共通ですよね。
逆に、どんなに良い衣装を提供していても、披露宴でお出しする料理やサービスが駄目だったら、そこの衣装まで悪い
評価になってしまいます。
ですからパートナー企業様とも、一緒に仕事をする本当の仲間となって、一丸となって施設総合力を発揮して、そこから
素晴らしい品質の披露宴を作り上げていく。
新しいお客さまがお越しになって、満足して頂いて、そして良い評判があがるためには、パートナー企業様との協働が
不可欠ですから。
目指している施設は、「常連客でなかなか予約のとれないレストラン」です。
そのようなお店は、味はもちろん、おかみさんの人柄だったり、メニューの内容だったり、コストパフォーマンスだったり、
お客様の期待以上のものを提供しているわけです。
お客様はそういったものに満足して次の予約をして帰る。そして次回来るときには新しいお客様を連れてくるようなお店
なんです。
披露宴に関しても同様です。出席した披露宴が期待以上に満足していただけたら、たいていの方は、他の人に言いたく
なります。知り合いが披露宴会場を探していたら「あそこいいわよ、椿山荘!」という話が出たら、理想的ですよね。
広告を見て初めて椿山荘を知るのではなく、クチコミやご自身の体験から選ばれる会場です。椿山荘は一般宴会の会
場としても、さまざまご利用いただいています。
謝恩会や企業の催しなど様々な機会にご利用いただき、ご満足をいただければ、広告を見なくても結婚式場を探す際
に椿山荘を思い出していただけるようになります。
決してウエディングの広告を否定しているわけではないですよ(笑)。でもこういう形の積み重ねで挙式件数が増えてい
く。これが目標ですね。
素敵なプラスの連鎖ですね。ちなみに池田さん個人の目標、夢についてもお伺いしてもいいですか?
目標はお好焼き店を開くことかな。場所も考えてるんですよね。東京だったら高田馬場にしようと思ってます(笑)。
関西人の池田さんのお好み焼き屋さんなら絶対美味しそうですね、ぜひ行って見たいです(笑)。
今日はお忙しい中、ありがとうございました。今後のご活躍を祈念しております。
了
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