「迎賓館TOKIWA」を支える仕組みとは

SEP,2008
Wedding market report
業界をリードするプロフェッショナルに聴く
『チャペルなし、競合乱立でも「売上・利益過去最高」
業界注目の快進撃「迎賓館TOKIWA」を支える仕組みとは』
interview vol. 5
Reported by Kazuhiko Sato
神社の付帯施設ゆえ、「チヤペルなし」という条件にも関わらず、激戦区
で4期連続増収&増益を続ける新潟・迎賓館TOKIWA。「立ち止まること、
即ち衰退」と言う斉藤総支配人の信念のもと常に話題性の高い新商品・
新サービスを絶え間なく打ち出し、口コミを徹底的に喚起、リピートにつな
げる地域密着戦略も成功させています。
他の追随を許さない迎賓館TOKIWAの強さ、その秘訣を、2008年7月29
日のブライダル産業フェアーで行われた斉藤総支配人の熱のこもった講
演からダイジェストでご紹介します。
新潟 迎賓館TOKIWA総支配人
斉藤信雄氏
発展・拡大を続けていくためには、
存在意義を考えることが必要不可欠。
弊社は昭和46年3月26日に神社の付帯施設として誕生し、今年38期を迎えました。これまで必ずしも右肩上
がりで成長してきたわけではなく、昭和57年には一度事業撤退を考えたこともあります。しかし、平成15年1月、
事業領域の拡大を狙い、結婚式だけではなく、記念事業、個人、法人までをターゲットにした、迎賓館TOKIWA
として事業転換し、以降は毎年増収&増益を繰り返しています。
私の目標は、売上げに対する経常利益20%。売上げに対する経常利益20%を続けていると、すぐに無借金経
営になります。この目標を前提に、戦略を立てて一つひとつ階段をのぼっていくことが大切なことだと考えていま
す。
現在の売上げは約20億、経常利益20%弱。基本的に無借金経営で、毎年1億円規模の投資を行ない続けてい
ます。昨年もエントランスの改修工事3億5千万を無借金で実現しました。
事業は30年続けていると大半はなくなってしまうという30年説があります。そのなかで事業が発展、拡大してい
くためには、「世のため人のために必要になる」というのがキーワード。「私たちは何を持って生かされるのか?」
「どうやって存在意義を高めていくのか?」を常に考えなければいけない。迎賓館TOKIWAは、「記念事業を通
じて、忘れえぬ感動をつくり続け、提供すること」を使命としています。
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『「売上・利益過去最高」業界注目の快進撃「迎賓館TOKIWA」を支える仕組みとは』
迎賓館TOKIWA 総支配人
斉藤 信雄 さん
変わり続けることが大切。
ハードを変えていくための投資も不可欠。
大切なのは、「変わり続けること」「お客様が来るたびに変化していること」、それにより「お客様の事前期待値
を超えること」だと思います。そのための方法論は、「商品やサービスを磨き続け、変革し続けること」、そして
「来るたびにハードが変化していること」。その仕組み、仕掛けができている会場は、勝ち続けることができると
信じています。
ではまず、私たちのハード面の取り組みを具体的にご紹介したいと思います。
平成13年から、一つひとつの披露宴会場をまず貸切化へと移行しました。そして、ゲストハウスがブームの時代
に、他と差別化を図るため、「ガーデンヴィラトキワ」をオープンさせました。
貸切の邸宅ウェディング
ヨーロッパの森に佇む大邸宅をモチーフに、アットホームな雰囲気と
華やかさを持ち合わせたガーデンヴィラ。
カジュアルなガーデンと、落ち着いたムードのバンケット
森を渡る爽やかな海風、そして天空から降り注ぐ陽光に彩られ
た鮮やかなエバーグリーンは、心に残る幸せの1ページとしてく
わえられるでしょう。
また、窓がなく、柱があるといった条件の悪い会場は、洗練された男性が使う会場として、映像設備、トップブランド
のインテリア等を導入して生まれ変わらせました。
ソフィアクラブトキワ
目指したのは、N.Y.5つ星ホテルのラウンジ
そこはまさに映画のワンシーン。
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『「売上・利益過去最高」業界注目の快進撃「迎賓館TOKIWA」を支える仕組みとは』
迎賓館TOKIWA 総支配人
斉藤 信雄 さん
また、平成16年秋オープンの「ロイヤルヴェッセル(王室の船)」というバンケットルームには、4億5千万円を投資。
今の時代、ワンチャペル2バンケットとすれば、そんなに費用をかけなくても集客できる?とも言われましたが、この
バンケットルームは新潟で一番高単価、高品質、ハイグレードな施設として、多くのお客様にご利用いただいてい
ます。
豪華客船を思わせる壮麗なバンケット
ロイヤルヴェッセルとは“王室の船”。エントランスから受付室、ウェイ
ティングルームまで全て、本物の豪華客船を思わせるインテリアで統
一。ここへ足を運んだゲストは、華麗なウェディングクルーズへ参加し
た気分に。
豪華客船の船長室をモチーフに作られた受付
「キャプテンズルーム」。
「参加」と「共感」の創造をキーワードとし、
世界でたった一つのメモリアルを提供。
迎賓館TOKIWAの商品ブランドは「メモリーウエデイング」。私は結婚式&披露宴はお祭り(カーニバル、フェス
ティバル)だと考えています。そのときのキーワードが「参加」と「共感」の創造。映画をつくったり舞台をつくる、そう
いうことと一緒だと感じています。
とくに重要なキーワードは「参加」です。見る祭りは廃れます。参加する祭りは続いて
います。列席するかたにも登場人物になっていただくことが大切。弊社では平成7年
に200名まで参加できる大拝殿を造りました。日本で他に類を見ないものだと思いま
すが、これもお祭りは全員参加が基本という考えかたに基づいたものです。
もうひとつのキーワードが「創造」。ブライダル産業は以前、装置産業といわれ、続い
て情報産業と呼ばれました。そして今は、経験価値創造産業として、きっちりした経営
戦略、マーケテイング戦略をベースにして、お客様の身になって進む企業のみが勝て
ると思っています。
では、ブライダルの創造とは何でしょうか?新郎新婦らしさ、ご両家らしさ、映画であ
れば映画のタイトルを決める、ですからこれは100組いれば100通り、1000組いれば
1000通りの結婚式があっていいはずです。その一つひとつの結婚式を創造していくこ
とが大切です。この新郎新婦だか、ご両家だからとこだわってシナリオを書くプロがい
て、当日会場を仕切る演出プロデューサーがいます。
そして、シナリオに則って、
①音楽&音響②照明ライティング③セッティング&美術④タイミング
という演出の四大要素を駆使しながらドラマ・物語を、ひと組ひと組のお客様に合わ
せて創っていく。それが迎賓館TOKIWAのブライダルの創造です。
大拝殿挙式(参列200名)
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『「売上・利益過去最高」業界注目の快進撃「迎賓館TOKIWA」を支える仕組みとは』
迎賓館TOKIWA 総支配人
斉藤 信雄 さん
私たちは家族の一員のようにお客様と一緒になり、共感を生み出し、最高のパーソナルサービスと最高の施設を
使い、世界でたった一つのメモリアルを提供することをお約束しています。ここでもうひとつキーワードとなってくる
のが「家族」です。「両家の家族の一員になれるか?」、それがスタッフのモチベーションになります。家族の一員に
ならないと結婚式は創れません。
こうした取り組みを通して、お客様は迎賓館TOKIWAで「満ち足りた幸福」「こころのひだに残る一生の思い出」を
経験することができるのです。
ブライダル業界に求められるのは、
必要とされるサービスを創り続けること。
企業の利益は構成員の創造の総和です。日本のブライダル事業を振り返れば、戦後、総合結婚式場というモデ
ルができあがりました。これは、明治記念館が創ったもので、そこに行けばすべてがあるというものです。その後、
ホテルウエディング、海外挙式、レストランウエディング、そしてブームになっているゲストハウスウエディングと続
いてきました。ゲストハウスウエディングが受けた理由はなんでしょうか。「こんなところだったらいいよな」というも
のを形にし、一軒家を貸し切るスタイルにしたことが受けたのだと思います。ただ、これがずっと続くわけではない
でしょう。商品、サービスには限りがあり、寿命があります。お客様に必要とされるサービスを創り続けていかなくて
は、われわれはなくなってしまう。「結婚式・披露宴はこんなものだ」と規定して同じことをやり続けていたら、また、
お客様から「あんなことをやっても意味ないな」と言われ続けていたら、きっとなくなってしまいます。「最近の結婚式
は感動的だよな」「やっぱお金がかかってもやるべきだよな」と思われるよう、業界が皆で手を結んでやっていかな
ければいけないと思います。
サービスには機能的サービスと情緒的サービスがあると考えています。機能的サービスはマニュアルサービス。マ
ニュアルサービスは空気のようなサービスで、金太郎飴のように問題もなにも発生しない。もちろん問題が発生し
ないことは基本なのですが、機能的サービスだけを続けていては、お客様の事前期待値を超えるサービスはでき
ません。では、どんなサービスを造ればいいのでしょう。それが、お客様が気づく前に提供するサービス、つまり情
緒的サービスです。言われてやるのは当たり前のサービス。情緒的なサービスは、言われる前にやるサービス、
お客様のニーズを先読みして行なうサービスです。それをどうやって自分たちで学んで創っていくか、自分たちの
経験のなかから「こうしたら喜ばれた」「こうしたら非常にいい評価をもらった」といった、初めは一部の人しかできな
かった情緒的サービスを全員ができるようにマニュアルサービス、機能的サービスに変えていき、そしてまたあら
たな情緒的サービスを創り上げる。それを繰り返すことで、人的サービスが高まります。お客様から言われたことを
改善するようなレベルでは、お客様の満足を得ることは不可能です。
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迎賓館TOKIWA 総支配人
斉藤 信雄 さん
業績アップの鍵となっているのが
「成長戦略」と「安定戦略」。
われわれブライダル業界の指標は集客。半年前、1年前には売上げがわかります。お客様の集客が減っ
たら、赤字になります。売上げを確保するためには、集客戦略が欠かせません。集客戦略とは、弊社へ足
を運んでくれる新郎新婦を増やすということ。見たい、聞きたい、知りたい、行ってみたいと思ってもらうこと
です。そのためには「やっぱりここがいいね」と言ってもらえる、言わせるものが現場になければいけない。
ゼクシィに広告をいっぱいだしたとか、いい宣伝をしたとしても、現場がきちっと一つひとつの結婚式を造り、
その上で目標に向け、どんな手を打つか、どのようなイベント、新商品、新サービスを出していくのかという
ことを明確にして、それをやり続ける。
そして、足を運んでくれた新郎新婦の成約率アップにむけて、1人の営業マンでやるのか、チームでやるの
かを考え、成約しなかったら、どうしてダメだったのかを接客した1組1組について検証・反省していかなけ
ればなりません。
大変貌する経営環境のなか、競争はますます厳しくなり業績を落とす会社も多くなっています。こういう
状況下で私たち迎賓館TOKIWAがなぜ業績を伸ばしているのか。それは、全職員が2つの哲理をよくわ
かって果敢に実行しているからに他なりません。それが、成長戦略と安定戦略です。
事業の発展に必要なこと、そのひとつが成長戦略です。成長戦略とは増客、増販のための戦略。お客様
を増やし、一人当たりの単価をどう上げて行くのかという戦略を練ることです。そして各事業を安定的に運
営していくためには、5本の樹を植えておく必要があると考えています。我社は今、なにをもって生きている
のか、売上げの5本の柱ということです。5本の樹で育たないものは、新しいものに植え替える。今はまだ
だけど、3年後にはこれだけ見込める、ここまで育つというものもあります。事業の最終目標は利益です。
が、売上げが落ちているものは、いつまでも利益を確保することはできません。
もうひとつが安定戦略です。安定戦略とは繰り返し、繰り返しお客様に買っていただくということ。お得意様、
上お得意をつくり、5回買っていた方に10回買っていただけるようにするということです。この成長戦略と安
定戦略を同時にまわすことが経営の基本です。
私はダーウィンの進化論が大好きです。力のあるものが勝つわけでも、頭のいいものが勝つわけでもあり
ません。環境の変化に適応したものが勝つのです。環境変化に適応し、変化に対応した企業が勝ち伸び
ていきます。これに加え、わが社しかできないという独自性を磨くことが、重要なのです。
「存在するものはすべて生きている、たとえそれが有機体であっても無機体であっても、形があってもなくと
も、生命体であってもなくとも、強く必要とされるものは輝いて生きている、存在する価値があるから」。
だから、迎賓館TOKIWAも地域社会において、強く必要となる存在でありたい。
大勢のお客様に来ていただけるということが、強く必要となっているあかしだと考えています。
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