1.「ブリリアント」社長 新林孝英氏

SEP,2008
Wedding market report
業界をリードするプロフェッショナルに聴く
ブライダル産業フェア
業界リーダー講演ダイジェスト
Special issue
Reported by Kazuhide Nakai
7月29日、30日の両日、東京ビッグサイトにて、ブライダル業界関係者が一堂に会する
『ブライダル産業フェア』が開催されました。
今回のレポートは、その一環として行われた業界リーダーによる「ブライダル経営セミナー」
で行われたれた講演をダイジェストでお届けします。
1.「ブリリアント」社長 新林孝英氏
婚礼プロデュース会社社長。現在もプロデューサーとして第一線で活躍し、
これまでに2000組以上のウェディングを手掛けてきた。
2.「エスクリ」社長 岩本 博氏
ハウス、レストラン、既存施設のウェディング会場など、ハードの形態に
かかわらず、高収益のオペレーションスキルの構築をはかるブライダル
会場運営ビジネスを展開している。
3.「クラリス ウエディングプランナースクール」
校長 伊藤 淳氏
ブライダルプランナー育成スクールを主宰。ブライダル関連の研修の
エキスパートとしても、全国に根強いファンを持つ。
4.「ベルズ」会長 小林世志広氏
埼玉での婚礼プロデュース会社を皮切りに、ハウスウェディングの出店、
ショースタイルウェディングの提案、シティホテルの運営など新サービス
を展開している 。
5.「グレートプランニング」会長 羽原俊秀氏
全国で17か所のプランニングを手掛け、婚礼事業の飛躍的なアップを実現。
顧客満足の実現の前提として、スタッフのモチベーションを重要視する。
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Special issue 『業界リーダー講演ダイジェスト』
1.「ブリリアント」社長
新林孝英氏
Profile: 婚礼プロデュース会社社長。現在もプロデューサーとして第一線で活躍し、
これまでに2000組以上のウエディングを手掛けてきた。
本物の感動はどのように作るか
「家族愛」「絆」「感謝」「心のこもったおもてなし」がキーワード
━ 新郎新婦・両親・ゲストの目線でプロデュースすることが大切
日本では晩婚化、ジミ婚化が進んでいますが、原因は“結婚式をしたくない”のではなく、“現在のような
結婚式ならしたくない”と思っている人が多いからだと言えます。私が新郎新婦にどんな式を望むのかを
尋ねると、「両親への感謝の気持ちを表したい」「アットホーム、フレンドリーな雰囲気」といわれることが
多いのですが、今のウェディングがこうしたニーズに一致しているのかは疑問です。
例えば、両親の席は高砂席と離れた末席というのが常識になっていますが、「両親への感謝の気持ち
を表したい」というニーズに対応するため、私は両親はメイン席(主賓席)へという提案をしています。
娘を嫁がせる親は、きれいな娘の姿を間近で見たいと思っているはずですから。
また、「アットホーム、フレンドリーな雰囲気」を望む声に対しては、高砂席をつくらないという提案をしてい
ます。例えば、中央の大きなテーブルを家族席として、そのテーブルの上座に新郎新婦の席を設けるという
ことも考えられます。ゲストが気軽に新郎新婦と話をするためには、各テーブルに新郎新婦の席を設けると
いうのも、ひとつのやり方でしょう。
プランニングする際は会場側の目線になりがちですが、新郎新婦、ご両親、ゲストの目線で考えてみる
ことが必要です。
━ HOW TO(やり方)だけではなくWHY(意味・由来)を伝え
る 引出物を例に取ると、“ご夫婦には1つ”と言われることがありますが、引出物の由来を考えれば、本来は
出席した一人ひとりに感謝の意を込め渡すもの。売り上げの向上にも繋がります。近年、カタログギフトで
済ますことが増えていますが、私は、引出物を一緒にラッピングしませんか、と新郎新婦に提案することも
あります。自らラッピングすることで引出物への思いが深まり、心が形として表れます。
また、新婦が持つブーケにしてもその由来は、男性がプロポーズするとき、野の花を摘んで渡し、そのうち
の1本を女性から男性に渡していたことにあります。ですから、その本来の意味をご説明し、結婚式の前に、
新郎から新婦へブーケを渡す二人だけのイベントを提案することもあります。そうすると、みなさん涙を流し
て喜ばれます。そこには心があるからです。
ウェディングにおいて手間隙を省いてはいけないと思うのです。形(HOW TO)だけではだめです。
形に心を込めないと、プロデュースとは言えないと思います。
━ ブライダル業界も「社会貢献」するという企業理念を
最近、様々な痛ましい事件が起きていますが、希薄になった家族関係が一因となっていることも多い
と思います。私たちは結婚式に携わることで、こうした事件を少なくするお手伝いができるのではない
かと思うのです。
2時間半の式を、幸せな家庭が築けるようなものにする。そうすることで、悲惨な事件が起こらない社
会をつくる一助になりたいと思うのです。ブライダル業界の人たちにも、そうした社会貢献の考えを持っ
てほしいと願っていますし、それが仕事への誇りにも繋がるのです。
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Special issue 『業界リーダー講演ダイジェスト』
1.「ブリリアント」社長
新林孝英氏
Profile: 婚礼プロデュース会社社長。現在もプロデューサーとして第一線で活躍し、
これまでに2000組以上のウエディングを手掛けてきた。
本物の感動はどのように作るか
「家族愛」「絆」「感謝」「心のこもったおもてなし」がキーワード
━ 奇をてらった演出・パフォーマンスは必要か?
よく同業者に「良い演出はないですか?」と聞かれますが、私はいつも「演出は必要ない」と答えてい
ます。必要なのは、お二人にこれから本当に幸せになってほしいと思う心。それがあれば、感動できる
式にすることができます。例を挙げてみます。
1. 新郎新婦のプロフィール紹介は、最近では司会者がやることが多いですが、それで本当に伝わる
ので しょうか。お二人のことを一番良く知っているご両親が適任と提案しています。
2. 乾杯に関しては会社の上司が行うことが多いようですが、本当にお二人の結婚を心から喜んでいる
人はご家族です。以前、お祖母さんが乾杯の挨拶をし、そこでゲストがみな涙したことがありました。
新婦の5歳の姪が行った時には、会場が笑いに包まれました。
3. ゲストは席次表を見ると、必ず新郎新婦の家族をチェックするものです。どんな人が家族なのか気
に なるからです。そこで、新郎新婦から家族の簡単なプロフィールを紹介してもらいます。ゲストは
必ず
集中して聞くものです。
ブリリアントHP www.b-wedding.jp
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Special issue 『業界リーダー講演ダイジェスト』
2.「エスクリ」社長
岩本 博氏
Profile: ハウス、レストラン、既存施設のウエディング会場など、ハードの形態にかかわらず、
高収益のオペレーションスキルの構築をはかるブライダル会場運営ビジネスを展開している。
ブライダルサバイバルの時代。混迷の時代を生き抜くには
━ これまでの延長線上では収益は減少の一途
ハードにはトレンドやブームがあり、それは必ず変化します。これまでは、ハウスを建てれば誰でも儲
かった時でしたが、次第に厳しくなってきました。私はハウスウエデイング・ブームの終焉と捉えています。
これからの出店には慎重になった方がいいし、現在集客できている会場は運がいいとも言えます。
本質はハードの優位性で集客をはかるのではなく、オペレーションノウハウによって、はやり廃りに左右さ
れない安定的な収益を目指すことにあるのです。
━ 今をチャンスに変えるポイントとは
それでは、安定的に収益を確保するためのポイントをいくつか挙げてみましょう。
1.集客はこれ以上伸びないことを前提にした場合、成約効率の向上を目指さなければなりません。その達
成のためには、その場での即決を促す接客力を強化することが重要になってきます。また、人数を増やす、
オプションを販売する、アイテムをランクアップするといった、提案による細かな単価の積み上げができるか
どうかも、接客力と言えるでしょう。
2.売れるコンセプトの創出も大事な作業です。もちろん、他社の模倣ではダメ。例えば変化の著しい飲食店
のトレンドを参考にするのもいいでしょう。会場のリニューアル効果は3年ともちません。
.
3.基本的にブライダルビジネスはサービス業ですから、優秀な人材は最も大切な経営資源と考えられます。
そのような人材を確保するには、例えば、成約率の高いプランナーのナレッジを共有化できるシステムを確
立し育成するとか、スカウト会社を利用する、などが考えられます。一方で、優秀な人材は教育できても、そ
れをマネージメントできる人間が不足している現状があります。コンサルティングの現場に経営者やマネー
ジャーが出席しないような会社は、勝つことが難しいでしょう。
エスクリHP www.escrit.jp
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Special issue 『業界リーダー講演ダイジェスト』
3.「クラリス ウエディングプランナースクール 」校長
Profile:
伊藤 淳氏
ブライダルプランナー育成スクールを主宰。ブライダル関連の研修の
エキスパートとしても、全国に根強いファンを持つ。
大きく変化する消費志向に対応する接客スキルとは
━ ウェディングを「価値」として売るスキルが重要
現在、自動車やマンションが売れない時代と言われています。これは、商品を単なる「モノ」と判断する姿
勢から、そのものにどれだけの「価値」を見出すか、というシビアな消費者動向の変化と捉えることができ
ます。同時に今の若者は“夢を語れない”とも言われますが、このことは様々なモノ・コトに対して「価値」を
見出すことができない不安に駆られていると判断できます。
そんな中、ウェディングは当然、その商品自体が「価値」を創造していくものです。私は、それは住宅販売に
よく似ていると考えています。
━ “建売型”を脱却し、“注文型”を目指せ
例えば、1800万円の建売住宅があったとします。消費者は自分のライフスタイルに合わせ、リビングを広
げたり、キッチンをもっと使い勝手のよいものにするため、施工元に注文を出します。その結果、施工料金
は2800万円になりますが、間違いなくその消費者にとって「価値」が向上し、後悔はしないはずです。
私は過去2年間、およそ2000人のウェディングプランナーのトレーニングにあたりましたが、ほとんどが“建
売型”の販売になっていると感じてきました。
ここで、“建売型”と “注文型”の違いをキーワードで整理しておきましょう。
●建売型=説明する力、商品知識、説得力
●注文型=聞き取る力(納得力)、商品価値知識、創造力
本来、プランナーとは住宅でいうところの設計士と同じです。例にするなら住宅デザインは披露宴でいうと
ころのテーマ・コンセプトであり、設計図は進行表です。注文型を目指すのであれば、司会者に丸投げする
ことが多い進行表を、プランナーが十分なカウンセリング(納得力)のもとに創り上げていくことが大事です。
━パートナーとの密接な関係が成功へのカギ
ウェディングにはドレスや装花や引き出物が絶対に必要、といった接客になっていませんか。極端な言い
方をすれば、それらが無くてもウェディングは可能ですし、その視点に立たないと注文型でいうところの、聞
き取る力(納得力)には繋がりません。商品説明に終始する固定概念から脱却することが肝要です。
私が見てきた中でいうと、成功している会場はパートナーとの関係が非常に密接です。ドレス屋さんがその
会場の料理内容を説明できたり、お花屋さんが会場のよさを伝えられたり。そういった会場は、それらの複
合で納得力の連鎖が広がり、結果的にウェディングの単価が上がっていくのです。
ウェディングは住宅同様、一度作ったものはやり直しがききません。カップルごとのストーリーを理解して、
「価値」の高いものを創造してください。
クラリス ウエディングプランナースクール HP www.claris-wedding.jp
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Special issue 『業界リーダー講演ダイジェスト』
4.「ベルズ」会長 小林世志広氏
Profile: 埼玉での婚礼プロデュース会社を皮切りに、ハウスウェディングの出店、ショー
スタイルウェディングの提案、シティホテルの運営など新サービスを展開している。
「ベルズ」の考えるウェディング業界の今後
━ 少子化こそビジネスチャンス
2006年の出生率は2000年のそれと比べると、8.5%の減少というデータがあります。一般的にウェディン
グ業界では少子化=業界危機のように言われますが、私たちはこれこそがビジネスチャンスであると捉え
ています。
子供の数が減るということは、それだけ一人の子供に対しての関心の目が届くようになります。すると親は
もちろん、親類やご近所の人までその子の結婚というものに対しても、今以上に関心を持つようになり、大
事に思うと考えているからです。充実したウェディングを望むようになるのは、当然のことでしょう。
━ウェディング業界に忍び寄る「淘汰と連合」
しかしながら、現在のウェディング業界は冬の時代と言っていいでしょう。結果、成約が伸びない地方のホ
テルや歴史の長い会場がゲストハウス展開に進出したり、貸衣装や写真といった元来本業ではない業者が
式場運営に乗り出すといった例が増えています。
一方で、花、美容室、記念品などを含めた関連業者の間では、はっきりと勝敗がついてきていると感じます。
そうなると、次の段階では負け組が大資本に呑まれていく「淘汰と連合」が始まりますが、既にその時代に
入っていると考えます。「ベルズ」に対しても、ひと月に3件程度のM&Aの話が申し込まれるほどです。
━ 「ベルズ」の考え方とは
おかげさまで、我々「ベルズ」は順調に成長を続けていますが、これは考え方にブレがないからだと自負し
ています。その考え方とは以下の3点です。
・コンセプトがしっかりとしたハードを提供する
・他にはないサービスの提供を実践する
・スタッフについては、常に考える集団であり続ける
ハードに関しては、コンセプトを完遂するため十分にコストをかけ、忠実に英国調を再現したゲストハウス
を展開しています。また、料理はすべて手作りに徹し、決して手を抜きません。参加者が料理の味を持ち帰
り、次回のお客様になっていただけると考えているからです。
「ベルズ」は競合会場の見積もりには合わせないことを心がけています。つまり、自社の会場の商品力を
信じ、値引き合戦による制約獲得はしないということです。その結果はどうでしょう。最近では成約率が50%
を超える月があるほどで、お客様の満足度もトップレベルに達しています。これもひとえに、“常に考える集
団”である、わが社のスタッフワークのよさの賜物でしょう。
ベルズHP www.bells.bz
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5.「グレートプランニング」会長 羽原 俊秀氏
Profile: 全国で17か所のプランニングを手掛け、婚礼事業の飛躍的なアップを実現。
顧客満足の実現の前提として、スタッフのモチベーションを重要視する。
スタッフが自ら感動するウェディングを目指して
━ スタッフの「楽しさ」「感動」に対し、数値目標を設定
私が考える長期的に売れ続ける婚礼施設とは、一言でいえば「すごい!」と言われるウェディングをやり
続けることができる所だと思います。そのために重要なのはお客様はもちろん、スタッフが本心から「楽し
いか」「感動的か」と思えることだと考え、それを数値化し目標としています。
具体的には、そのパーティがいかに楽しいかを『楽しい度=TSD』、いかに感動的かを『感動度=KDD』と
名づけ、それぞれ10段階に設定。パーティごとに最高ポイントを目指してプランニングすることによって、
楽しく感動的なウェディングが実現できるというわけです。
━普段はおとなしいスタッフが、本番ではじけられるように・・・
本社のある岡山の会場「ザ マグリット」ではスタッフミーティングの際、気持ちを解放するため調理担当
者も含め、みんなで踊ったりしています。実際に踊るのです。
当然そこには、そういったことを恥ずかしいと思わない社風や文化、空気感といった環境が必要になりま
すが、このことは先ほど申し上げた楽しく、感動的なウェディングを実現すためには非常に役立ちます。何
より、スタッフが本番で思う存分はじけられますから。
この社風はスタッフのモチベーションアップに繋がります。直営の金沢のレストラン「ディスティーノ」では、
スタッフが数日徹夜で、独自にプロモーションビデオを完成させてくれました。このビデオをフェア来館者
に観ていただいたところ、成約率100%を達成したという事実もあります。
グレートプランニングHP www.greatplanning.jp
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