発表資料

「極冠域電離圏におけるプラズマ流
出現象のメカニズムについて 」
蜂谷宣人
東京理科大 修士1年
1
極冠域電離圏
・ 高緯度(85°以上)領域
・ 磁力線は太陽風に引き伸ばされて閉じ
ていない
・ プラズマ密度は、磁力線の閉じている
中低緯度(100 – 10000 /cc)に比べ非常
に薄い
2
ポーラーウインド
ポーラーウインドを加速させる
主な2つの力
圧力勾配による力
∇pte-
∇pH+ + eE
プラズマ密度:電離圏>>磁気圏
↓
静的圧力によりプラズマは加速を受ける
∇pO+ + qE
Th.e
H+
E
O+
eE + meg
分極電場による力
mH+g + 摩擦力
mO+g
+
さらに、プラズマ流出の中で流出速度の
速い電子とO+のような重くて遅いイオンと
の間に電荷の分離が生じる
↓
この分極電場により主にH+など軽いイオ
ンが加速を受ける
3
光電子と熱的電子
Photoelectrons!
光電子
→ 電離直後のエネルギー
状態を保っている状態の電
子(数十 eV)
熱的電子
→ 電離された後、中性大気と衝突を繰り返
しエネルギーが低くなった電子(0. 数 eV)
4
研究の動機
◇ポーラーウインドの古典論:
光電子の外向き流速が熱的電子のそれよりも大きければ、
イオンがより大きな速度をもちうる
◇この理論の条件:
数RE程度の高高度で効果的
しかし
あけぼの衛星SMS観測データから、極冠域高度10000 km以下
の領域において、ポーラーウインドのイオン速度に明瞭な昼夜
非対称性が観測された。(T., Abe et al)
→ “極冠域高度10000 km以下の領域においても
光電子による加速機構は存在するか?”(本研究テーマ)
より厳密に太陽放射の影響を吟味するため、季節変化をみる
5
解析方針
①SMS観測から夏側冬側のイオン速度の平均的高度
プロファイルを統計解析により作成・比較
②プラズマ輸送方程式を用いて熱的電子が作り出す
分極電場により加速されたイオン速度を算出して高
度プロファイルを作成
③光電子による寄与が少ないと考えられる冬において
観測と数値計算のプロファイルを比較(①と②)し、
夏側での光電子寄与の可能性を探る
6
SMSの解析条件
夏
N極
S極
冬
5, 6, 7月
11, 12, 1月
不変磁気緯度 (invariant
latitude) [°]
11, 12, 1月
5, 6, 7月
80°以上 (オーロラ帯を除く)
高度(ALTITUDE) [km]
3000 – 10000 km
イオン温度 [K]
30000 K以下(カスプ領域のイオン加
熱の影響を除く)
MLT(磁気地方時間)[h]
0 – 8 hと16 – 24 h
(カスプ領域のイオン加熱の影響を
除く)
表 SMSの解析条件
7
夏側と冬側でイオン速度
の差異が確認できる。
(①)
高度 [km]
高度 [km]
H+速度の高度プロファイルの季節比較(SMS)
速度の高度勾配:
夏側0.000878 (km/s)/km
冬側0.000419 (km/s)/km
H+速度 [km/s]
H+速度 [km/s]
1991, 夏
1991, 冬
8
基礎方程式からのイオン速度算出
H+に着目し、衝突項を無視して
mH  nH  u H 
du H 
dp H 
n H  dp e


 m H  n H  g ||  0
ds
ds
ne ds
磁気管Aに対してフラックスは保存するため
d nH  u H  
ds
0
これらを連立させて解を得る。
※今回、全高度領域において温度一定とした。
9
H+, O+の密度と高度の関係(SMS観測データより)
夏 log n   0.1389 103 z  7.328
H
log nO  0.2594 103 z  8.116
log nth.e.  0.3983 103 z  15.44
今回H+, O+の密度プロファイルから、
熱的電子密度のプロファイルを得ている。
冬
log nH   0.2699 103 z  7.639
log nO  0.3088 103 z  7.650
log nth.e.  0.5787 103 z  15.29
10
太陽放射の影響が少ないと考えられる冬において、温度を設定して
計算結果
観測値と一致させると、イオン速度が夏<冬となり、現実に即さない。
T = 3000 K
高度 [km]
10000
9000
夏 T = 700 K
8000
冬 T = 700 K
7000
一方、イオン速度
に着目し、夏>冬
となるように温度を
設定すると、冬側
におけるイオン速
度が観測値と合致
しない。
夏 T = 3000 K
6000
冬 T = 3000 K
5000
4000
T = 700 K
3000
(②、③)
0
2
4
6
イオンH+速度 [km/s]
8
10
11
考察(ずれの原因)
• SMS観測データから得られたH+, O+密度のプロファイ
ルの妥当性(夏と冬で差異が小さい)
• 熱的電子の密度、温度に対する近似:
・ H+, O+密度直線の和を熱的電子密度のプロファイル
と仮定した
・ 温度を全高度領域に対して等しいと仮定した
• 密度の関数近似のとして対数を選んだこと
• 基礎方程式においてH+ - O+, H+ - Oの衝突項を無視
している
• 今後、光電子と熱的電子のフラックス比較も行う必要が
ある
12