博士論文発表会 提出

東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科
アカウンタビリティに繋がる
学びと評価の在り方に関する研究
-ポートフォリオを活用した小学校体育授業からの検討
-
(博士論文)
健康スポーツ系教育講座
梅澤 秋久
(配置大学:横浜国立大学)
博士論文の構成概要
第Ⅰ部 序論
体育の学習・評価には
何が求められているか
第Ⅱ部 本論
アカウンタビリティに繋がる
学びと評価の在り方の検証
-実践に基づく研究-
第Ⅲ部 結論
積極的なアカウンタビリティ
に繋がる体育の学びと評価に
ポートフォリオが与える影響
第Ⅰ部 序論の構成
第1章 これからの学習・評価への
パラダイム転換
「習得」型の学習(勉強)だけでなく、「探究」型の学び
体育科においては、「トランスフォーメーション型」の学習
への
第2章 学習者主導の「学び」と
アカウンタビリティに繋がる
ポートフォリオ評価
学習と指導と評価の一体化→「学びのアセスメント」
探究的な学びにおいてアカウンタビリティを果たす評価
ポートフォリオ評価
転
換
第Ⅱ部 本論 アカウンタビリティに繋がる学びと
評価の在り方の検証-実践に基づく研究-
第3章
第4章
第5章
第6章
問題の所在
体育学習におけるファイル型ポートフォリオの影響
体育学習におけるデジタル型ポートフォリオの影響
「評価から学びへの連動」のためのポートフォリオと
ルーブリックの影響
第7章 フィットネス教育実践-ルーブリックを活用した問題解決型発見学習」-
第8章 学習者と保護者の体育学習への期待・意識・学習状況説明
に対する考え方-親子間の意識の相違-
第9章 保護者との双方向コミュニケーションとしての
アカウンタビリティに繋がるポートフォリオ
-小学校体育授業における保護者に対する学習状況説明からの検討-
第Ⅱ部本論
アカウンタビリティに繋がる
学びと評価の在り方の検証
-実践に基づく研究-
3章「博士論文における問題の所在」
探究的な学びに依拠するポートフォリオ評価
の蓄積性が保護者への積極的なアカウンタ
ビリティに影響を及ぼすと考え、小学校の体
育学習における保護者への学習状況説明か
らその影響を検討することを研究目的とする。
第4章 体育学習に及ぼすファイル型
ポートフォリオの影響
「体育科教育」誌 第50巻7号掲載
《研究1》
全観点を網羅した毎時間・単元毎・学期全体の授業評価,
教師行動,技能の変容,保護者の記述等からファイル型
ポートフォリオを活用したクラスと従来の教師主導型学習
におけるクラスとの比較を行い,ファイル型ポートフォリオ
が体育授業に及ぼす影響を検討した.
その結果、 ファイル型ポートフォリオを活用することで
「学び方」や「意欲」、「協力的態度」が教師主導型学習に
比べ、より向上させられることが明らかとなった。
一方、客観的な技能では教師主導型の方がより向上した。
ところで
ファイル型ポートフォリオに挟む物
●教師による「学び方シート」
p.86-87体育学習全体
p.98-99陸上運動 等参照
※プログラムクラスは学習内容を選択できるようになっている p.101-103
●試行錯誤プロセスを記入する「毎時間の学習カード」
・グループ・個人のめあて ・工夫のポイント
・技能の記録 ・ルーブリック項目による3段階の振り返り
・一言自由記述 ※p.99-100陸上運動 等参照
●単元毎の振り返りカード
ポートフォリオには、オープンエンドな問題や
・児童によるコメント ・教師によるコメント
その解決方法といった探究的記述やそれに
よる自己生成の記述が蓄積される。
・保護者によるコメント
第4章 《研究2》
ポートフォリオを活用した
トランスフォーメーション型の「学びクラス」
トランスアクション型の「プログラムクラス」
の2クラスでの比較を行い,体育科でポートフォリオを
活用する際の教師行動等の考察を行った.
●学びクラスは、プログラムクラスよりも学習者から高い
評価を受ける。
●「学び」は、自らの「問題」を解決するための「仮説」の設
定・実践・検証を繰り返す等、 高度な「思考力」を発揮
する。その際、ポートフォリオが有効に機能する。
●「学び」は、オープンエンドであり、ポートフォリオ評価を
より有効に活用できる。
以降の章では,ここでの結論をもとにして研究を進めた.
《第4章》ファイル型ポートフォリオが
アカウンタビリティに及ぼす影響
保護者による自由記述には、
・我が子への励まし(学び方、意欲、協力的態度、技能)
・保護者による学習状況の理解に関するコメント
が多く見られた。
つまり、ファイル型ポートフォリオによって質的な
学習状況説明が可能になることが明らかとなった。
また、「教師の学習指導に対するコメント」も見られ、
教師と保護者による双方向コミュニケーションとし
てのアカウンタビリティに繋げられる可能性も示
唆された。
第5章 体育学習に及ぼすデジタル型
ポートフォリオの影響
「体育研究」 第39号掲載
学習者による自己アセスメントに映像機器(デジタル
ポートフォリオ)を活用することで、「学び方」や「協力的
態度」だけでなく、客観的な「技能」も高めることができ
ると考えた。そこで、体育学習におけるデジタルポート
フォリオの影響を明らかにすることを目的とした。
その結果、「学び方」や「協力的態度」、「主観的な技能」
に加え、「客観的な技能」も教師主導学習と同等に向
上させられることが明らかとなった。
まとめデジタルポートフォリオの一例
《第5章》
単元前半に「教え」、後半にデジタルポートフォリオを
活用し、協同的に「考え、創造する」活動を主とした。
その結果、以下のようなコメントが見られた。
「先生が台上前転のやり方を教えてくれたときはでき
なかったけど、グループ別に練習しているとき、○○
ちゃん達が、『いっしょにがんばろう!』って言って、
ポイントを教えてくれたり、何度もほ助してくれたの
で、7段で台上前転ができるようになった。本当にう
れしかったです。みんなと協力してできたので、本当
によかったです。あと、台上前転を仲間と合わせて集
団えんぎできるようにもなりました。(後略)」
習得と探究の連動
第6章「評価から学びへの連動」のため
のポートフォリオとルーブリックの有効性
「学校教育学研究論集」 第11号掲載
「ルーブリック(評価指針)」を併用したファイル
型ポートフォリオが体育学習に及ぼす影響を明
らかにすることを目的とした
中間のポートフォリオ検討会で教師と学習者に
よってルーブリックの項目の追加・修正をした。
それらの項目に関する内容が、その後の学びに
おいて有意なプラスの変容となった。
つまり、学習者を評価指標づくりに参加させるこ
とが、主体的に学ぶ指標づくりに繋がる可能性
が示唆された。
ルーブリックの一例
「課題設定力に関するルーブリックの例」
自分の学びをふり返り、 A,B,C に○をつけよう。
評価基準
評価規準
A
B
C
「思考・判断」観点
自分の活動をふり 自分の活動をふり 自分の活動をふり
返り、良かった点や返ることができる。 返ることができな
・課題設定力
修正すべき点を明ら また、新しいめあて い。新しいめあてや
「ふりかえりをもとに次のかにできる。また、自 や活動を決めるこ 活動を決められな
めあてや活動を決めるこ 分に合った新しいめとが
できる。
い。
目に見えにくい質的
とができる」
あてや活動を決める
(いずれかがあては
な学力にも対応
ことができる。
まればCとする。)
《 A,B,C を選んだ根きょ》
ファイルやVTRのどの学
蓄積された資料や教師、仲間の言葉な
びからそう考えたかを具
体的に書こう。(日付や
ど、客観的な学びの奇跡を根拠にする
書いたことなど)
項目自体、評価規準、評価基準等、全て学習者と教師で追加や修
正を加えることができる→追加・修正された項目ほど学びが深まる
第7章 ルーブリックを活用した
「フィットネス教育実践」
「学校教育学研究論集」 第13号掲載
健康関連体力の保持増進をねらったフィットネス
教育において、ルーブリックを活用し、その影響
を考察することを目的とした
主体的に多様な体力づくりに関する活動を共同
的に生み出していた。
さらに、自分たちだけの体力テスト及び、その診
断基準をつくり、ルーブリックに盛り込んでいた。
休み時間にも体力テストの項目にある運動を自
発的に行う姿がほとんどの学習者に見られ、運
動学習における「時間的な広がり」に繋がった。
以上の第4章から第7章を本論における
基礎研究とした。
これらの研究結果として…
・ファイル型ポートフォリオ
・デジタル型ポートフォリオ
・ルーブリック
体育科におけるトランスフォーメーション型の
「学び」において好影響を与えられるもので
あることが明らかとなった
しかし、どの程度、アカウンタビリティに資する
ものになっているのかは明らかになっていない
第8章 学習者と保護者の体育学習への
期待・意識・学習状況説明に対する
考え方 -親子間の意識の相違-
●アカウンタビリティの対象として必須の保
護者と学習者に対し、体育学習に対する期
待や意識、学習状況説明における現状を
調査することを目的とした(研究Ⅰ)
●ポートフォリオを活用した経験がある親子
と活用した経験のない親子での意識の
相違点を明らかにすることを目的とした
(研究Ⅱ)
研究方法
質問紙は、親子がナンバーで対応させられるようにし、4件法
での回答を求めた。
質問項目例
「技能」、 「楽しく」、
子:「学びたい(高めたい)」
「体力」 、「工夫」、
を 子:「うれしいこと」 「残念なこと」
「協力」 、「進んで」
子:「お家の人に知らせたいこと」
子: 「お家の人にほめられたこと」
親:「学んでほしいこと」
親:「知りたいこと」
親:「伝えてくること」
上記以外には、以下のような項目がある。
子:「お家の人に伝える方法」、「体育がすきかどうか」
親:「通知表での伝達の有効性」、「授業に関する要望」、
「効果的な情報の伝達方法」
結果
学習者と保護者の体育への意識
学習者…回答結果が一致する傾向にあった
保護者…同じく回答結果が一致する傾向にあった
しかし
学習者と保護者は、全般的に回答の傾向
が一致しなかった。
つまり、親子であっても、体育に対する期待
や意識、学習状況を説明している・されて
いるという意識には差があるということが
明らかとなった。
一方、親子で統計的に有意な関係が見られた
項目は次の通りである
親:「体力を高めてほしい」
P<0.01
子:「体力を高めたい」
親子共々、体力はあった
方が良いと考えている。
メディアによる体力低下論
の影響か?
親:「上手になったことを知りたい」
体育における親子間の
子:「上手にならないと残念だ」 P<0.05 学習状況に関するコミュ
親:「上手になったことを報告してくる」
子:「上手になると親にほめられる」 P<0.05
ニケーションには、「技能
の向上」が大きく影響を
及ぼしている
探究的な体育の学びの中でも、体力や技能の向上は
欠くことのできない内容だといえる。
また、次の項目も親子で有意な関係が見られた
親:「協力をしてほしい」
P<0.05
子:「協力できたことを知らせたい」
親:「楽しさを知りたい」
子:「楽しさを知らせたい」
P<0.05
親:「楽しさを知りたい」
P<0.05
子:「楽しく運動できたことを親にほめられる」
親:「楽しさを伝えてくる」
子:「楽しさを知らせたい」
P<0.05
友達と仲良くは、親子コ
ミュニケーションのスロー
ガン?
体育における親子間
の学習状況に関する
コミュニケーションに
は、「楽しく学習」が
大きな影響を及ぼし
ていると考えられる
アカウンタビリティを果たすためには、「協同的」、「楽
しさ」といった学習内容も重要になると思われる。
「学び方」に関して親子で関係が
見られた項目はなかった
序論で述べた通り、探究型・トランスフォーメー
ション型の学びでは、「学び方」が重要である。
学び方に関するアカウンタビリティを果たすこと
がますます求められるようになるため、
親子間での学び方意識の共有ができるような
教師による働きかけが重要だと思われる。
研究Ⅱ ポートフォリオ経験による
意識の相違(学習者の場合)
各観点の「ほめられる」以外のほぼ全項目で、ポート
フォリオ経験のあり・なしで有意な差が見られた。
(以下、一例)
(図8-16)「ポートフォリオ経験」と「工夫ができるとうれしい」の関係
工夫できてもうれ
しくない
工夫できてもあま
りうれしくない
経験あり
(n=73)
工夫できると少し
うれしい
工夫できるとうれ
しい
経験なし
(n=261)
0%
20%
40%
60%
80%
100%
(3,N=334)=22.548 .000***
ポートフォリオ経験による意識の相違
(保護者の場合)
「体力状況を伝えてくる」
「工夫して運動したことを伝えてくる」
「学習結果カードで学習状況がよく分かる」
「学習経過カードで学習状況がよく分かる」
「DVD等、映像で学習状況がよく分かる」
5項目で
有意な差
(図8-19)「ポートフォリオ経験」と 親「映像で学習の様子がわかる」の関
係
映像ではわか
らない
経験あり
(n=63)
映像ではあまり
わからない
映像では少し
わかる
経験なし
(n=235)
0%
映像ではわか
る
20%
40%
60%
80%
100%
(3,N=298)=20.029 .000***
第8章 《まとめⅠ》
①体育科に対する期待や学習状況を説明している・
されているという意識には、親子間で差がある。
②体育科において親子間の双方向性の関連が強い
項目は、「技能」、「協力」、「楽しさ」である。
ゆえに、保護者へのアカウンタビリティの視点から、
協同的に技能を高め、楽しさを感じられる体育授
業を推進することが求められていると考えられる。
③探究型の学習においては、「学び方」が重要に
なってくる。親子間での学び方意識の共有ができ
るような教師による働きかけが重要となると考えら
れる。
第8章 《まとめⅡ》
①ポートフォリオを活用している学習者は、「学ぶ意
欲」、「喜び(うれしさ)」、「できないと残念だ」といっ
た期待や意識、「学習状況を保護者に報告してい
る」という意識が、活用していない学習者よりも有
意に高いことが明らかとなった。
②ポートフォリオを活用している群は、ポートフォリオ
を活用してない群に対し、ポートフォリオに残され
た活動の創造や振り返り等はもちろんのこと、工夫
の過程や結果、パフォーマンスが保護者に伝わり
やすいことが明らかとなった。
よりアカウンタビリティに資する具体的な方法は、
第9章の課題とする。
第9章 保護者との双方向コミュニケーションとしての
アカウンタビリティに繋がるポートフォリオ
-小学校体育授業における保護者に対する学習状況説明からの検討-
「体育科教育学研究」掲載
社会的要請として、また、保護者の要望として
アカウンタビリティが重要視されてきている
ファイル型ポートフォリオ、DVD型ポートフォ
リオ、ルーブリックが保護者へのアカウンタビ
リティに及ぼす影響を検討する。
研究方法
対象…小学校高学年を対象とした3つの授業
ポートフォリオの活用方法…
①ファイル型ポートフォリオ(含む、ルーブリック)
②DVD型ポートフォリオ
収集した資料と分析方法…
①保護者へのアンケート調査
(説明能力を指導要録型通知表と比較)
・授業 ・意欲 ・協力 ・学び方 ・技能 ・成長
②ファイル型ポートフォリオへの保護者の記述
③DVD型ポートフォリオへの保護者の感想
研究結果:保護者へのアンケートでの
アカウンタビリティ状況の比較
図1
授業の様子がよくわかる
*** p<0.001
***
5
***
4.5
図2
n=78
***
意欲の様子がよくわかる
***
5
n=78
*** p<0.001
***
***
4.5
4
4
3.5
3.5
3
3
2.5
2.5
2
2
通知表
ファイル
ルーブリック
協力の様子がよくわかる
図3
通知表
DVD
*** p<0.001
***
5
ファイル
ルーブリック
DVD
「授業」・「意欲」・「協力」の様子
は、ほぼ同様の結果であった。
***
4.5
***
4
3.5
3
2.5
2
通知表
ファイル
ルーブリック
DVD
n=78
「指導要録型通知表」が「ファイ
ル型ポートフォリオ」、「ルーブ
リック」、「DVD型ポートフォリ
オ」に比べて、アカウンタビリティ
状況が有意に低い傾向にあった。
研究結果:保護者アンケートでの
アカウンタビリティ状況の比較②
n=78
学び方の様子がよくわかる
図4
*** p<0.001
***
***
***
5
4.5
5
***
***
4.5
4
4
3.5
3.5
3
3
2.5
2.5
2
*** p<0.001
** p<0.01
* p<0.05
技能の様子がよくわかる
図5
***
***
**
*
***
2
通知表
ファイル
ルーブリック
DVD
*** p<0.001
** p<0.01
成長の様子がよくわかる
図6
通知表
***
5
***
4.5
***
**
***
4
3.5
3
2.5
2
通知表
ファイル
ルーブリック
DVD
n=78
ファイル
ルーブリック
DVD
n=78
「成長」と「技能」では、「DVD
型ポートフォリオ」が優れてお
り、「学び方」では、「ファイル型
ポートフォリオ」と「ルーブリッ
ク」が特に優れていることが明
らかとなった。
ファイル型ポートフォリオへの保護者の記述
DVD型ポートフォリオへの保護者の感想
まとめⅠ
①従来の指導要録型の「通知表」に比べ、「ルーブリック
を含むファイル型ポートフォリオ」は、「関心・意欲」、
「協力」、「学び方」、「技能」という体育科の観点に加え、
「授業(学習)の様子」、「子どもの成長」という点におい
て、より詳しく保護者に説明できることが明らかになっ
た。
② 「DVD型ポートフォリオ」でも、①と同様の結果が得ら
れた。
これらの
ことから
これからの時代に必要な「積極的なアカウン
タビリティ」を果たすために、ポートフォリオ評
価が有効であることが明らかとなった。
まとめⅡ
③問題解決過程である「学び方」に関しては、「DVD型」より
も「ルーブリックを含むファイル型」のポートフォリオの方が
説明手段として優れていることが明らかとなった。
④パフォーマンスである「技能」や「子どもの成長」に関して
は、「ファイル型」よりも「DVD型」のポートフォリオの方が
説明手段として優れていることが明らかとなった。
これらの
ことから
「ファイル型」と「デジタル(DVD)型」のポートフォリ
オの双方の利点を考慮して「保護者への説明責任
としてのアカウンタビリティ」に活用していくことが重
要であることが示唆された。
まとめⅢ 教師と保護者の双方向
コミュニケーションとしてのアカウンタビリティ
アンケートやインタビューにおける「教師の指導」
に関する項目は多い
学校におけるアカウンタビリティは、先の
①「学習状況における説明責任を果たす」
という視点に加え
②「保護者や地域住民等との双方向コミュニケー
ションとしての教育改善にあたるプロセス」
という考え方も重要である
②「双方向コミュニケーションとしての教育改善
にあたるプロセス」としてのアカウンタビリティ
に繋げるために
ファイル型ポートフォリオへの保護者欄を
設けることによって、評価参加者として保
護者を位置づけることができる。
中には、「授業を実際に見たい」と書かれ
る保護者もいられる。授業参加という形へ
の保護者のかかわりに繋げられる可能性
も示唆された。
博士論文 第Ⅲ部 結論
第10章 積極的なアカウンタビリティに繋がる
体育の学びと評価にポートフォリオが与える影響
-双方向コミュニケーションとしてのアカウンタビリティの実現に向けて-
第1節 積極的なアカウンタビリティに繋がる評価
ポートフォリオを保護者に閲覧してもらうことで 保護
者を評価参加者に取り込むことができた。
ポートフォリオへの我が子の質的な学びに対する賞賛、
叱責に加え、保護者自身のかかわり方の反省といっ
た記述から、保護者も含めた「学びの共同体」の形成
が見られた。
ポートフォリオを活用することで、積極的な学習状況
説明としてのアカウンタビリティに繋げられる可能性
が示唆された
第2節 ポートフォリオを活用する際の
学習観、指導観、学力観、評価観
学力‥多面的で総合的な資質や能力。自己生成・集団
生成に資する資質や能力。
学習‥上記の学力を育成するためには、学習過程が重
要視されるべきであり、主体的な学びが不可欠である。
自己・集団生成に資する探究型のトランスフォーメー
ション的な学びが求められる。
指導‥探究的な学習を推進させるような教師のかかわり
が重要である。また、保護者へのアカウンタビリティを
果たすためには、学習者主導の学習においても技能
や協力、楽しさ感を高める必要がある。
評価‥数値化された能力の測定だけではないオーセン
テッィクアセスメント
総合的な学力における「学習と指導と評価の一体化」
第3節 ポートフォリオ評価とそれ以外の
評価との比較
1.形態としての評価
・相対評価はなじまない。
・絶対評価は目標つぶし的にならないように 規準創出型の
ルーブリックによって多面的に評価する。
・個人内評価はポートフォリオ評価の大原則である。
曖昧な評価にならないように多角的に評価する。
2. はたらきとしての評価
・「今、目前」にある問題状況を解決するプロセスには、診断的
評価・形成的評価・総括的評価が不可欠となる。
3.評価の蓄積
・ファイル型やDVD型のポートフォリオは、通知表のように数
値だけでなく、質的な学習状況を蓄積することができる。
第4節 ポートフォリオを活用させる際の
教師の役割
学びにおける教師の役割
①学びの場のデザイナー
②学びの経験のデザイナー
③協同的な対話的実践の促進者
学習と評価を連動させる教師の役割
④ルーブリックの再構築(中間検討会)では、
学習者の学ぶ道筋に繋げられる話し合いの
コーディネーター
等
第5節 体育授業以外の時間の活用
自己アセスメント能力の育成
主体的な活動実践への参加
基準創出したルーブリックを
単元以外でも活用できるようにする
やらされではない運動の時間的な広がりに
第6節 双方向コミュニケーションとしての
アカウンタビリティに繋がるポートフォリ
オ
積極的な学習状況説明としてのアカウンタビリティに
加え・・・・・
保護者や地域住民等との双方向コミュニケーション
を通じた教育改善にあたるプロセスとしての「学校
アカウンタビリティ」も求められてきている
その一方策としてポートフォリオが活用でき
る可能性が示唆された
以上のことから、本博士論文においてアカウンタビリティ
に繋がる体育科の学びと評価にポートフォリオが好影響
を及ぼすことが明らかとなった
以上で発表を終わります。