電気回路学Ⅱ コミュニケーションネットワークコース 5セメ 山田 博仁 ラプラス変換による過渡現象の解析 1. RC直列回路の過渡現象 R e(t) E(s) i(t) I(s) q(0) C 図に示す回路における閉路方程式は、 1 e(t ) Ri (t ) i (t )dt C 電流 i(t) の積分を、 t 0 t t 0 0 i(t )dt i(t )dt i(t )dt q(0) i(t )dt ただし、 0 i(t )dt q(0) と置く。 両辺をラプラス変換すると、 E ( s ) RI ( s ) 1 I ( s) q(0) sC ただし、I(s) および E(s) は、i(t) および e(t) のラプラス変換である。 q(0) は、t = – ∞ から t = 0 の直前までの間にキャパシタ C に流入した電流を積分 したもの、即ち C に蓄えられた電荷である。 ラプラス変換による過渡現象の解析 I(s) について書き直すと、 q(0) E ( s) I (s) sC 1 1 R R sC sC 第1項は励振 E(s) に関する項 第2項は初期条件 q(0) に関する項 初期条件として q(0) = 0 (定常状態)を考えると、 I ( s) E ( s) E ( s) 1 Z ( s) R sC Z (s) R 1 sC となり、s を jω で置き換えれば、 Z ( s ) Z ( j ) は回路のインピーダンスであるから、 インピーダンス関数と呼ばれる。 当然その逆数はアドミタンス関数と呼ばれ、 Y (s) 1 1 Z ( s) R 1 sC I(s) をラプラス逆変換すれば、電流の瞬時値 i(t) が求まる。 ラプラス変換による過渡現象の解析(具体例) 例 6.1.1 S t=0 時刻 t = 0 でスイッチを閉じる場合、電源電圧の 過渡関数 e(t) は、単位ステップ関数 u-1(t) を用いて、 R e(t ) E0u1 (t ) E0 i(t) q(0) C で与えられる。 従って、 時刻 t = 0 で電圧 E0 を印加する過渡関数波 1 e(t ) E0u1 (t ) Ri (t ) i (t )dt C これをラプラス変換すると、 E0 q(0) q(0) E 0 E0 I ( s ) q(0) 1 sC C RI ( s ) となり、I(s) は、 I ( s) s 1 1 s sC R R s sC RC となる。 これをラプラス逆変換すると、 i (t ) £-1 I ( s) q(0) t C e RC R (t > 0) E0 となり、微分方程式の直接解法による解と 一致する。 ラプラス変換による過渡現象の解析(具体例) 例 6.1.2 i1 S1 C1 時刻 t = 0 で2つのスイッチを同時に閉じる場合、 抵抗 R を流れる電流を求める。ただし、C1, C2 に は当初、各々電荷 q1, q2 が蓄えられていたとする。 i2 C1-S1-R の閉路に対して、以下の閉路方程式が成り立つ。 S2 q1 C2 q2 1 t R(i1 i2 ) i1dt q1 0 C1 0 R C2-S2-R の閉路に対して、以下の閉路方程式が成り立つ。 R (i1 i2 ) 1 t 0 i2 dt q2 0 C2 これらの式をラプラス変換すると、 R ( I1 I 2 ) 1 I1 q1 0 sC1 R ( I1 I 2 ) 1 I 2 q2 0 sC 2 ただし、I1 = L i1、 I2 = L i2 とした。 両式より、I1, I2 を求めると、 I1 sR (C2 q1 C1q2 ) q1 sR (C1 C2 ) 1 I2 sR (C1q2 C2 q1 ) q2 sR (C1 C2 ) 1 ラプラス変換による過渡現象の解析(具体例) 従って、抵抗 R を流れる電流 I は、 I I1 I 2 q1 q2 q1 q2 sR (C1 C2 ) 1 R(C1 C2 ) s 1 1 R(C1 C2 ) となる。 これをラプラス逆変換すると、 t q1 q2 i(t ) e R (C1 C2 ) R(C1 C2 ) (t > 0) となる。 スイッチを閉じた直後( t = +0 )での電荷の総量は、スイッチを閉じる直前( t = −0 ) において、各キャパシタが蓄えていた電荷の合計(q1 + q2)に等しいことが分かる。 (電荷量不変の理) ラプラス変換による過渡現象の解析(具体例) 例 6.1.3 S t=0 R e(t)=Emsinωt i(t) t = 0 の時刻に、e(t)=Emsinωt なる正弦波を印加する 時、回路を流れる電流 i(t) を求める。ただし、C には 当初、電荷 q(0) が蓄えられていたとする。 1 e(t ) Em sin t Ri (t ) i (t )dt (t > 0) C q(0) C £sin t 2 (表5.2(11)参照)であるから、 s 2 Em I ( s ) q ( 0) 1 q (0) RI ( s ) R I ( s ) s2 2 sC sC sC s q(0) 1 E q(0) 1 Em 従って、 I ( s) 2 m 2 R 1 2 sC sC R CR s CR s 2 s s CR このラプラス逆変換を求めるにあたり、ラプラス変換表(教科書の表5.2)を用いる。 ラプラス変換による過渡現象の解析(具体例) 表5.2(27)にある表関数 f(t) を b →1/τ, τ → RC , a → ω と置き換えて、t について微分 (27) e bt 1 f (t ) 2 sin at 2 2 2 a b a a b f (t ) e 1 2 1 2 1 e つまり、 a b F ( s) 1 t 2 tan 1 sin t 2 t E m t e df (t ) 1 cost 1 dt 1 2 2 2 2 df (t ) 1 cost 1 dt 2 1 2 2 2 従って、 I ( s ) 1 ( s b)( s 2 a 2 ) s q (0) 1 1 2 R CR s CR 2 s s CR F ( s) s 1 ( s )( s 2 2 ) をラプラス逆変換すると、 ラプラス変換による過渡現象の解析(具体例) 1 t q (0) t Em e 1 i (t ) cost e CR R 2 1 CR 1 2 2 2 1 t t E m E 1 q ( 0 ) CR e CR m cost e CR R 2 1 R CR 1 2 CR 2 CR 2 Em C 1 R C 2 2 e t CR t q (0) CR e CR E m R 2 1 CR 2 cost Em t Em q ( 0 ) C e CR cost 1 CR 2 1 R R2 2 C C 2 tan CR t → ∞ で 0 に収束する過渡項 持続する正弦波振動を表わす定常項 と求まる。 ラプラス変換による過渡現象の解析(具体例) これを図に示すと、 ラプラス変換による過渡現象の解析(具体例) キャパシタ C の電荷 q(t) は t > 0 に対して、 t q (t ) q (0) i (t )dt 0 EmC R e q (0) q (0) 2 2 2 1 C R 2 t CR Em sin t sin 1 1 R2 C 2 Em R E t m q (0) e CR sin t 1 2 1 R R2 2 C C 2 となる。 ラプラス変換による過渡現象の解析 1. RL直列回路の過渡現象 R i(0) e(t) E(s) i(t) I(s) L 図に示す回路に流れる電流 i(t) は、 e(t ) Ri (t ) L di (t ) dt を解いて求められる。 両辺をラプラス変換すると、 E(s) RI (s) LsI (s) i(0) ただし、I(s) および E(s) は、i(t) および e(t) のラプラス変換であり、 i(0) は初期電流 である。 i(0) は、厳密には時刻 t = +0 での電流であるので i(+0) とすべきであるが、コイルに 流れる電流は瞬時には変化できないので、時刻 t = −0 での電流 i( −0) とは等しい。 上式より、 I ( s ) E ( s ) Li (0) R sL I(s) をラプラス逆変換すれば、電流の瞬時値 i(t) が求まる。 ラプラス変換による過渡現象の解析(具体例) 例 6.2.1 S t=0 時刻 t = 0 でスイッチを閉じる場合、電源電圧の 過渡関数 e(t) は、単位ステップ関数 u-1(t) を用いて、 R i(0) E i(t) L e(t ) E0u1 (t ) で与えられる。 スイッチを入れた瞬間(t = 0)の電流はゼロであるから、 E0 RI ( s ) sLI ( s ) s 従って、 I ( s ) E0 sR sL 表5.2の(15)を参考にしてこれをラプラス逆変換すると、 R R t t E0 E0 1 E0 L E I ( s) 1 e L 0 1 e L となる。 i(t ) より、 R R s R sL L L R s s L ラプラス変換による過渡現象の解析(具体例) 例 6.2.2 S t=0 t = 0 の時刻に、e(t)=Emsinωt なる正弦波を印加する 時、回路を流れる電流 i(t) を求める。 R e(t)=Emsinωt i(t) e(t ) Em sin t Ri (t ) L L £sin t s2 2 di (t ) dt (表5.2(11)参照)であるから、 Em RI ( s) sLI ( s ) s2 2 従って、 I ( s ) E m s2 2 R sL Em (t > 0) L と置いた。 R E m 1 1 R 2 1 2 L L 2 2 s s s s L このラプラス逆変換を求めるにあたり、ラプラス変換表(教科書表5.2)の(27)を用いると、 t Em e 1 i(t ) sin t L 2 1 1 2 2 2 tan L R と求まる。 ラプラス変換による過渡現象の解析(具体例) 例 6.2.3 R1 S i1 L1 t=0 E0 R1 R2 i2 R2 i L2 L2 L1 左図の回路において、スイッチ S が閉じた状態で、R1 および R2 に定常電流 i1, i2 が 流れている。t = 0 でスイッチを開くと、右図のような回路となり、電流 i が流れるとする。 t > 0 に対して閉路方程式は、 R1 R2 i L1 di L2 di 0 dt dt となる。この式をラプラス変換すると、 R1 R2 I (s) L1sI (s) i1 (0) L2 sI (s) i2 (0) 0 となり、ラプラス逆変換すると、 R1 R2 L1i1 (0) L2i2 (0) t L1 L2 i(t ) e L1 L2 と電流が得られる。 ラプラス変換による過渡現象の解析(具体例) コイルに流れる電流は急変することはないので、 i1 (0) i1 (0) E0 E , i2 (0) i2 (0) 0 R1 R2 従って、これを代入すると、 L1 L2 R R t 1 2 R1 R2 i (t ) E0 e L1 L2 L1 L2 となる。 ところで、i(t) において、t → +0 を考えると、 ( L1 L2 )i(0) L1i1 (0) L2i2 (0) となる。左辺は S を開いた直後における全コイルの鎖交磁束であり、右辺は S を開く 直前における各コイルの鎖交磁束の和である。即ちスイッチを開閉する直前直後にお いては、全てのコイルについての鎖交磁束の総和は変化しない(鎖交磁束不変の理)
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