ミクロ経済学第10回 企業と費用3:費用関数 前回の宿題の解説 • 資本投入量をK、労働投入量をLとすると、ある企業 の生産関数がY=2KLだとします。資本一単位あたり の資本レンタル率が500円、労働一単位あたりの 賃金率が1000円であるとします。 (1)10000円の総費用に対応する等費用曲線のグラ フを描きなさい。 (2)生産量が100のとき、費用を最小化する資本投入 量と労働投入量をそれぞれ求めなさい。 (3)(2)において、労働の資本に対する技術的な限 界代替率を求めなさい。 今日やること 1.費用関数とは何か 2.限界費用 3.固定費用と可変費用 4.限界費用と平均費用 4.1 限界費用が一定のケース 4.2 限界費用が逓増するケース 費用最小化 • 資本の1単位当たりのレンタル率をr、労働1単位当 たりの賃金(wage)をwとする • 資本レンタル率と賃金は市場で決定(各企業にとっ て所与) Min rK wL subject to F ( K , L) Y0 K,L 「生産量をY0にするという制約条件のもとで、費用を 最小化する資本投入量Kと労働投入量Lをもとめよ」 費用最小化→費用関数 Min rK wL subject to F ( K , L) Y0 K,L • これを解くと、費用を最小化する資本投入量 K*と労働投入量L*がわかる ⇒(生産要素価格wとrを所与として)生産量Y0 を達成するための最小費用は C(Y0; w, r)=rK*+wL* ← これが費用関数 費用関数 費用関数: ある生産量を達成するための最小コスト C=C(Y, w, r) • 生産量と生産要素価格が決まれば費用が決まる • 普通はwとrは定数と考えて C=C(Y) と表記 ⇒(賃金と資本レンタル率の値がわかっているなら) 生産量が決まれば費用が決まる 今日やること 1.費用関数とは何か 2.限界費用 3.固定費用と可変費用 4.限界費用と平均費用 4.1 限界費用が一定のケース 4.2 限界費用が逓増するケース 限界費用と平均費用 dC 費用の増加分 限界費用(Marginal Cost) dY 生産量の増加分 あと1単位生産量を増やすと費用はどれだけ増えるか C 費用 平均費用 (Average Cost) Y 生産量 1単位当たりの費用はいくらか 混同しないように! 例: C=10+2Y 限界費用と平均費用は? 限界費用一定の費用曲線の例 限界費用曲線 MC 費用曲線 C 限界費用 =費用曲線の傾き 傾きが一定なので 限界費用も一定 Y Y 限界費用逓増の費用曲線の例 費用曲線 限界費用曲線 C MC 限界費用 =費用曲線の傾き Yが増えると傾き急 →限界費用が増加 Y Y 今日やること 1.費用関数とは何か 2.限界費用 3.固定費用と可変費用 4.限界費用と平均費用 4.1 限界費用が一定のケース 4.2 限界費用が逓増するケース 総費用=固定費用+可変費用 固定費用: 生産量にかかわらず一定の費用 • 生産量がゼロでも生産を始めるためにかかる費用 • 例: 発電所の建設費用 可変費用: 生産量を変えることで変化する費用 • 生産量を増やすことで増える費用 • 人件費、原材料費など 例: C=1000+2Y 固定費用は? 可変費用は? 可変費用=限界費用の和 例1) 生産を0から1に増やす限界費用=1 生産を1から2に増やす限界費用=2 生産を2から3に増やす限界費用=3 ⇒生産量が3のときの可変費用は1+2+3=6 例2) 限界費用が一定 ⇒ 可変費用=限界費用×生産量 ⇒平均可変費用=限界費用の平均 今日やること 1.費用関数とは何か 2.限界費用 3.固定費用と可変費用 4.限界費用と平均費用 4.1 限界費用が一定のケース 4.2 限界費用が逓増するケース 限界費用と平均費用の関係 費用=固定費用+可変費用 固定費用 可変費用 平均費用 = 生産量 生産量 → 平均費用=平均固定費用+平均可変費用 可変費用=それまでにかかった限界費用の総和 → 平均可変費用=平均限界費用 → 平均費用=平均固定費用+平均限界費用 限界費用が一定のときの平均費用曲線 平均費用=平均固定費用+平均限界費用 生産量が少ないと大 きいが、生産量が増 えるとゼロに近づく =限界費用 生産量にかかわらず 一定 • 平均費用は生産量とともに下がり、生産量が増える につれて限界費用に限りなく近づく 限界費用が一定のときの数値例 C=10+5Y → 平均費用=10/Y+5 平均費用のグラフを描いてみよう 5 限界費用 Y 限界費用が逓増するときの平均費用曲線 平均費用=平均固定費用+平均限界費用 生産量が少ないと大 きいが、生産量が増 えるとゼロに近づく 限界費用が逓増 なら生産量ととも に増える • 平均費用はU字型になり、平均費用が最小になる点 では、平均費用=限界費用 となる 限界費用が逓増⇒平均費用がU字型 AC 平均費用=平均固定費用+平均限界費用 生産量が少ない ⇒生産量が増えると 固定費用÷生産量が 急激に減る 生産量が多い ⇒生産量が増えると 可変費用が急激に 逓増 Y 限界費用が逓増するときの数値例 C=6+Y2→限界費用=2Y 平均費用=6/Y+Y 平均費用のグラフを描いてみよう 限界費用 Y Y 限界 費用 平均 費用 1 2 3 4 5 2 4 6 8 10 7 5 5 5.5 6.2 限界費用逓増のときの平均費用曲線 平均費用=限界費用 MC AC ⇒ 平均費用が最小・傾き0 限界費用<平均費用 ⇒ 平均費用は右下がり 平均費用最小 Y 限界費用>平均費用 ⇒ 平均費用は右上がり 限界費用と平均費用の関係 限界費用<平均費用 → 平均費用は右下がり • 成績が平均未満の生徒が転入 → 平均点↓ • 生産増 → 平均費用減 限界費用>平均費用 → 平均費用は右上がり • 成績が平均超の生徒が転入 → 平均点↑ • 生産増 → 平均費用増 平均費用の増減表 固定費用>0、限界費 用逓増を仮定する。 平均費用を生産量 Yで微分すると、 d C (Y ) 1 C (Y ) 1 C (Y ) 限界費用 平均費用 dY Y Y Y Y Yが小さいと平均費用は 非常に大きくなり、上 式<0 限界費用 平均費用 が成立する と、上式 0 Yが大きいと限界費用が 非常に大きくなり、上 式>0 平均費用はU字型になり、限界費用 =平均費用 となるときに最小にな る。
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