Astro-E2搭載X線CCD(XIS) flight model の性能評価 中嶋 大、松本 浩典、鶴 剛、小山 勝二(京都大学理学研究科)、他XISチーム Email:[email protected] Abstract:2005年2月に打ち上げ予定の次期X線天文衛星Astro-E2搭載のX線CCDカメラ(XIS2号機)の flight model の性能評価について報告する。2003年7月にチップが完 成し、8月にはセンサーとして組み上げられた。2号機用チップで取得された55Feのデータを用いてエネルギー分解能、電荷転送非効率(CTI)、異常 columns 分布などについて 解析し、また現行のイベント解析法”Grade法”と新しい解析法”Fitting法”の両者について検出効率の違いを議論する。”Fitting法”の導入はXIS2号機における変更点の一つで、 Grade法ではイベントを中心とした3×3ピクセル内での電子雲の広がりからX線イベントと荷電粒子を区別していたのに対し、Fitting法では5×5ピクセル内での電子雲の広が りを2次元ガウス関数でfittingすることで広がったX線イベントも認識し、検出効率を向上させる。これまでの解析結果としては、5.9,11.2keVのX線について検出効率をそれぞ れ~1.4,11%向上させることに成功している。 日本の次期X線天文衛星「Astro-E2」には4台のX線CCDカメラ、XISが搭載される。チップ 自体は基本的にChandra/ACISと同じ構造のものである(表1参照)。高エネルギー分解能・ 高空間分解能が特徴で、エネルギー分解能では同衛星搭載XRSにおよそ一桁劣るが、 空間分解能では一桁以上上回る。 MnKα 7月時点でチップの作成が完了し、製造元であるアメリカ/MITでflight model センサーに 55Feの特性X線を照射する実験が行われた。本ポスターではこの実験で取得した 7675 frames のデータから flight model の性能を初めて評価した結果を報告する。 ←1000frames分のデータか ら”bad columns”とその隣の columns (4.参照)のイベントを差 し引いたスペクトル。 •Fitting はKα Kβ とも、(メイン ピーク+サブピーク)の2つのガ ウス関数モデル。(サブピーク: X線による電荷の一部が隣のピ クセルに逃げた際に出来るイベ ントからなり、メインピークから ~10 ch低いchに現れると考えら れている。) MnKβ escape MnLα SiKα 表1:XIS(1号機)の主な性能 The number of pixels Pixel size Available energy band Time resolution Energy resolution Readout noise 1024×256×4 24μm×24μm 0.4-12.0keV 8sec(Normal mode) 8msec(P-sum mode) E/ΔE(FWHM)~ [email protected] ~3electrons (RMS) •256×1024pixels のセグメントを左図のよ うに32×32 pixels のcell に分割し各cell のスペクトルを fitting しCTIを測定。(以下 セグメントAのみについて) •図4:(上図)セグメント上での電荷損失は 一様ではなく、特にParallel 方向では場所 により有意に異なる(表3)。 (下図)Serial方向では電荷損失が有意でな いlineも存在。 Parallel方向は(1-2)×10-6で 有意に損失を受けている。 ↓結果は以下の表の通り。ほぼ 1号機と同様の性能を示してい る。(括弧内は90%エラー) 図2:55Fe(1000frames分)のスペクトル。 表2:XIS2号機のエネルギー分解能 図1:XISセンサー部分。 Mn Kα(5.89keV) ΔE(eV) (メインピーク) 127(±1) ΔE(eV) (サブピーク) 202(±11) Mn Kβ(6.49keV) 132(±2) 222(±14) log10(1410) 32 pixels log10(1410) ch(ADU) ch(ADU) log10(1408) 32 pixels cell log10(1408) log10(1406) 1セグメント log10(1406) 読み出し口 32 64 Parallel読み出し方向 読み出し口 1024 128 256 128 pixel counts 512 256 128 pixel Serial方向 Parallel方向 ch(ADU) Serial読み出し方向 64 128 512 Serial方向 読み出し口 32 1024 Parallel方向 ch(ADU) 1409 1409 100 1408 表3:各方向のCTI値 CTI×10-6 (-.--は図4中の傾きが 正になってしまった場合) Serial Max:3.64(-.--~7.45) 方向 Min:-.--(-.--~3.41) Parallel Max:2.26(1.76~2.75) 方向 Min:1.31(0.83~1.80) 1408 1407 10 赤:読み出し口に最も近いcell 青:読み出し口から最も遠いcell 緑:赤・青の中間のcell 1400 1350 1407 1406 ch(ADU) 1450 図3:集められた電荷がCCD上を転送される 間に失われていく様子。 ←読み出し方向 X-ray events Bad pixel 1406 32 128 pixel 256 320 640 1024 pixel 図4:(上図)各 cell でのKαピークのch値。左図・右図の違いはそれぞれSerial、Parallel方向に線で 結んでいること。(下図)上図でCTIの最大値・最小値を取った線のfitting結果(表3)。 •図8のように、Grade法では広がったイベントはX線と見なされないため Fitting法では5×5ピクセル内の電荷分布を2次元ガウス関数でfitすること で救出し、硬X線の検出効率を上げている。 •図9のようにピークに裾野が現れるが、エネルギー分解能より統計を必 要とする場合(非熱的放射など)に対して有効な解析法である。 軟X線 counts 硬X線 10000 Bad pixel 1000 100 10 イメージで見ると・・ 図5:チップ上の各ピクセルに入射したX線イベントの 数を色で示した図。赤部分は~20 events,黒部分は0-2 events。(太い黒線はオーバークロック領域) Bad columns の定義 ↕ grade02346イベントが異常に少ないcolumns Bad pixels の定義 ↕ grade02346イベントが異常に多いpixels (ここでは50 events以上) 赤:Grade法によるスペクトル 緑:Fitting法によるスペクトル 残差(counts) 図6:bad column の1 frame のイメージの断面図。 •全1024 columns中~4%がbad columns。 •図5のように、bad columns のほとんど に”bad pixel”が存在し、読み出しまでにそ のピクセルを通過したイベントは右下図の ように尾を引いたイベントとなり、X線とし てカウントされない。 図7:X線CCDの断面図。中性領域では電荷 は拡散するのみであるため硬X線イベントに よる電荷は電極上に広がりやすい。 100 10 図8:(左図):Grade法でX線と見なされるイ ベント(広がりが最大のもの)。黒がイベント 中心、グレーが電荷がはみ出したピクセル。 (右図):実際のX線イベントのパターン。 1600 1800 ch(ADU) 図9:(上段):Grade法とFitting法とでのスペクト ルの比較。(下段):残差。KαとKβは完全に分 解されないが、2つのガウス関数でフィットす るとKαピークで~60000 events(Grade法の~ 3.6%)のイベントを救うことが出来ている。
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