パワーハラスメント防止には正解はない。

講 演 会
パワーハラスメント防止には正解はない。
まずは、顔を見てコミュニケーションを取って!
株式会社クオレ・シー・キューブ 代表取締役 岡田 康子 様
≪プロフィール≫中央大学(文学部哲学科社会学専攻)卒業。早稲田大学にて MBA を取得後、博士課程を修
了。新事業のコンサルティングを行う(株)総合コンサルティングオアシスを設立され、さらにメンタルヘルスの研修と
相談を行う(株)クオレ・シー・キューブを設立し代表取締役に就任。
パワーハラスメントという言葉をつくり出し、公的機関や企業への講演研修を数多く実施する一方で、職場のハラス
メント防止対策プログラムの開発を行う。 パワハラの研究や防止活動におけるわが国の第一人者。
★パワーハラスメント防止には正解はない
どのような行為がパワハラになるかは、業界や地域によ
って異なります。そういう意味では、本日の講義で私が正
解というものをお伝えすることはできません。
例えば、
「業務の適正な範囲内の指導」であればパワハラ
にならないのですが、その範囲は業界や働く場所によって
異なります。製造業の工場では、安全確保のため、怒鳴っ
たり、緊急時に身体を掴んだりする必要があるかもしれま
せん。これに対し、オフィスでは、大声を出す必要がある
場面はないはずです。また、人間関係が密接な地域もあれば、希薄な地域もあるので、監
視されている、無視されているなどの感じ方は育った環境に応じて、人によって異なりま
す。そこで、本日は、パワハラ防止対策について、皆さんがどう考えて行動すべきかのヒ
ントを差し上げるため、様々な具体例を挙げながらお話をします。
★まずは、顔を見てコミュニケーションを取って!
積極的に顔を見て、コミュニケーションを取ってください。コンプライアンス問題を抱
えているなど、もし何か問題があれば、顔を見ていたら気づくはずです。
最近は、PC 画面を見ている時間が長く、顔を見ながらコミュニケーションを取る機会
が減っています。例えば、話しかけたときに、相手が画面を見たままで返事をすることは
ありませんか。そうすると、
「忙しいのに仕事の邪魔をしては悪いかな、もしかして私のこ
と嫌いなのかな、辞めろってことかな。
」などと空気を読もうとして、ますます質問できな
くなるという悪循環に陥る場合があります。周りがあなたに質問しにくいのは、あなたが
意図せず否定的なメッセージを発しているからかもしれません。
★「マイナスの言葉、目標」だけの職場になっていませんか?
昨日の職場内の会話を振り返ってみてください。肯定
的な発言と否定的な発言とは、どちらが多かったですか。
今は、どこの職場でも会話量が少なくなっています。
「よ
くできた」「すばらしい」「ありがとう」は言わなくて
も仕事が進みます。一方、「ダメ、やり直し」などの指
導は、言わないと仕事が進みません。ゆとりがなくなっ
た忙しい職場では、否定の言葉しか発せられないため、その言葉が相手に与えるインパク
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トは非常に大きくなります。
ある工場では、
「ミスしない」
「クレームがないように」
「他人に迷惑をかけない」という
目標が掲げられていました。このような「マイナスがないように」という目標だけでは、
どんなに頑張ってもゼロにしかなりません。だからこそ、
「よかったね」などのポジティブ
な言葉、人をほめる言葉を意識して増やさないと、個人の気持ちがしぼんでいきます。
★Bad News
News First のために
Bad News First のためには、本当にそれが Bad なのかを判断する必要があります。事
故が起きる前では、
「いつもと音が違う」
「なんとなく違う」などと体感することが多く、
そういう意味では、人間の感覚は非常に優れています。
しかし、いつも頭ごなしに叱られるなど、否定される経験が多いと、
「また否定される」
と思ってしまい、
自分の感覚を信じなくなります。一人ひとりの感性や考えを大切にして、
「変だ」という感覚を周りに伝えられるような環境作りをしてきましょう。
★本質をとらえるパワハラ防止対策が必要
あれダメ、これダメというパワハラ防止対策より、
行為者がなぜパワハラをせざるを得ないところに追い
込まれたかを理解する方が重要です。営業目標、品質、
安全、納期など、管理者は何らかのプレッシャーを抱
えており、ストレスになっている場合があります。そ
の状況で、部下が思うように動いてくれないとイライ
ラ感が募ってしまう。私たちは人間ですから、頭にく
ることはありますよね。原因の本質を考えないと最終
的な解決にならないことを心に留めてください。
★ストレスマネージメント、ゆっくりしゃべる、叱るのは 3 分
★
①パワハラをする人は特別な人ではなく、一生懸命で熱心な人が多いようです。そういう
人は、
自分の尻を叩くのと同様に他人の尻も叩いています。自分のダメな点を許すことで、
他人も許せるようになる。自分を大事にして、心のゆとりを持ってください。
②元々早口の人、地声が大きい人、言い方が乱暴な人などがいるかもしれません。その話
し方だと、相手はどう受け取りますか?自分の言動なので、直そうと思えば直せます。是
非、今日から変えてください。最初は違和感があっても、そのうち自然になっていきます。
③「叱るときは、タイムリーに、
(人ではなく)行為のみを叱る」が原則です。私たちは日
常的に怒りを抑えているので、一旦言い始めると、とめどなく出てきます。そのため、
「叱
るのは3分」と時間を制限したうえで指導してください。
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