Astro-E2衛星搭載用X線CCDカメラ(XIS)の軟X線領域における較正 勝田 哲、林田 清、鳥居 研一、並木 雅章、東海林 雅幸、松浦 大介、宮内 智文、 常深 博(阪大理)、幸村 孝由(工学院大)、片山 晴善(JAXA)、他Astro-E2 XISチーム 概要 XIS 2005年2月打ち上げ予定のX線天文衛星Astro-E2には4台のX線CCDカメラ、XIS(X-ray Imaging Spectrometer)が搭載される。我々大阪大学では軟X線領域(0.2~2.2keV)での較正試験を行ってい る。実験には軟X線発生装置とグレーティングを使用し、分散X線をCCD全面に照射することで連続的 な入射X線エネルギーに対するレスポンスを得るように工夫した。我々は2003年12月から2004年11月 にかけて較正試験を行った。本ポスターでは大阪大学でのXISの較正手順と、較正実験の結果得られ た検出効率について報告する。また、電荷転送非効率に対する補正方法を新たに考案したので、これ についても報告する。 CCDチェンバー内部 X線発生装置 Step 1 -比例計数管の検出効率- FM-FI 1の検出効率 FM-BI1の検出効率 XIS BI1 QE XISの較正に用いるリファレンス検出器として比例計数管を用いた。比例計数管の 絶対検出効率は斜入射較正法(Hayashida et al, 2003, SPIE4851, p933)によって 求めた。 酸素の吸 収端付近 での吸収 微細構造 ●CCDチェン バーとビームラ インが垂直に設 置されている場 合、垂直から ±1°ズレてい る場合について QEを求めた。 1 BI1-QE(Osaka -1deg) BI1-QE(Kyoto) BI1-QE(Osaka 0deg) BI1-QE(Osaka +1deg) BI1 QEmodel with H2O BI1 QEmoel without H2O 0.1 1 10 ●低エネルギー 側のQEについ ては要検討 Ex(keV) 入射X線はPCに垂直 入射X線はPCに45° 斜入射較正法で求めた比例計数管の 検出効率のモデル。 Step 2 -XIS-EUの検出効率- スリット PC BI-CCDの電荷転送の際の電荷取りこぼし現象の補正 BIのイベントパターンの分岐比 XIS-EU(Engineering Unit)をXIS-FMの リファレンス検出器として用いる。我々は XIS-EUと比例計数管の相対検出効率 からXIS-EUの絶対検出効率を求めた (XIS-EUとはXIS-FMと同じCCDチップか らなる)。 XIS-EU 高エネルギー側の検出効率は京都大学での較正試験で求めた値である(山口修論)。 従来のグレード判定法を用いた解析では、BI-CCDに関して、イベント中心から電荷転 送方向にスプリットしたイベント(例を右下図に赤で示す)の数が反対方向にスプリット したもの(例を右下図に黒で示す)に比べ少なくなることを発見した(本来同じ割合のは ず) 。また、上下方向にスプリットした3連続イベントがFI-CCDに比べ多いことも判った。 イベントパターンの分岐比 シングルイベント 読み出し口 11% 横転送 下スプリットイベント 22% 53% その他 PC XIS-EU 上ピクセル 上スプリットイベン 4% 10% 縦 転 送 イベント中心 3連続イベント 下ピクセル 上ピクセルと下ピクセルの波高分布 一次光が0.525keVになる位置でとったスペクトル。 XIS-EUでは多次光がはっきりと見える。 A XIS-EUの絶対検出効率 B Step 3 -XIS-FMの検出効率- EU 分散スペクトルの比を取ることで、各XIS-FMの XIS-EUに対する相対検出効率が連続的なエネ ルギーで求められる。 XIS-FM-BI1 とXIS-EUの 分散スペクトル。 PH [ADU] 実際にはX線発生装置のスペクトルが可動時間 の関数として変化してしまうでの単純にFMとEU の強度比を求めるのでは不十分。 D 2004.4.5 (EU) 2004.4 (EU) 2003.12.30(EU) このバンドのイベント数を横 軸稼働時間にプロット Counts/8sec (log) K(E)倍 2004.2.4 (FM) PH [ADU] PH [ADU] CCD受光面 CTI=(4.5±0.3)×10-6 [/transfer] A B C D 転送回数 下ピクセルの波高分布の中心は読み出し口から遠いほど大きくなっている。 ⇒下スプリットイベント、3連続イベントが多くなる原因 右図はそれぞれの領域の平均転送回数を横軸に下ピクセルの中心波高値をプロット したグラフ。転送回数に比例して中心波高値が大きくなっている。イベント中心の電荷 が漏れ出したものと考えて、電荷転送非効率(CTI)を求めた(図参照)。 CTIのエネルギー依存性 Mn Kα以外のエネルギーでも同様 にCTIを求めた。 電荷漏れ補正 X線イベントのエネルギー、入射位置の情報 から、左で求めたCTIの式を用いて電荷漏れ 補正をした。 CTI [ /Transfer] 補正後のMn Kαの波高分布 CTI= (1.72×10 -4 )×E -0.5 A B PH [ADU] PH [ADU] C D 入射X線エネルギー [ADU] PH [ADU] 結果 3連続イベントが減 りその結果採択イ ベント(グレード 02346)の数が Mn Kαに対して 11%アップした。 PH [ADU] 2004.2 (FM) y=at+b y=K(E)×(at+b) 2003.12(EU) 黒、赤はそれぞれEU、FMで取得した分 稼働時間 [h] 散スペクトル いろいろなエネルギーバンドで同様に同時フィットし相 対検出効率(K)を求めた。 参考文献: ●Hayashida et al. 2003, SPIE4851, p933 ●山口 弘悦、 修士論文、 京都大学、2005年 D Mn-Kαのイベント中心の上下の ピクセルの波高分布。黒の点線 が上ピクセル、赤の実線が下ピ クセルに対応する。 X線発生装置のスペクトルの変化を考慮に入れた検出効率 ①同じ条件で繰り返しX線を測定する(左下図、X線の強度が稼働時間と共に強く なっているのがわかる)。②あるエネルギーバンドのイベント数をそれぞれの分散ス ペクトルで求める。③横軸をX線発生装置の稼働時間に求めたイベント数をプロット (右下図)。④強度変化を表す適当なモデルを考える。EUとFMのデータ点はEUとFM の相対検出効率倍になっているので、FMのデータ取得の時間帯では相対検出効率 (K)倍したモデルでFM、EUのデータを同時フィットして、相対検出効率を求めた。 PH [ADU] C C CCD全面に分散X線を照射する。XIS-FM(4台の FIと2台のBI)とXIS-EUを交互に設置して実験を 行い、X線エネルギーの関数として検出イベント 数(分散スペクトル)を取得する。 FM-BI1 B A 下ピクセルの中心信号波高値 [ADU] CCDを4つの領域に区切り、それぞれの領域でイベント中心から転送方向側(上)、 逆側(下)のピクセルの波高値の分布を調べた。 まとめ ●較正の手順と検出効率について 1. 比例計数管の絶対検出効率を斜入射較正法によって求めた。 2. XIS-EUと比例計数管の相対検出効率から、XIS-EUの絶対検出効率を求めた。 3. XIS-FMとXIS-EUの相対検出効率からXIS-FMの絶対検出効率を求めた。 その際、X線発生装置のX線スペクトルの変化を考慮に入れた新たな解析方法を 考案した。結果として系統誤差~5%以内で、XIS-EUとの相対検出効率をBI-CCD に関して83倍@0.28 keV、1.3倍@1.6 keV、FI-CCDに対して1.1倍@0.5 keVと求めた。 ●電荷漏れ出しの補正について 下ピクセルに漏れ出す電荷を発見し、漏れ出し量と入射X線エネルギーの関係を 求め、補正方法を確立した。その補正により実効的な検出効率をMn Kαで 11%上げることに成功した。
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