siciology20090915

メディア社会学(第3回)
2009年9月15日(火)
1.2行為の意味理解の方法⑥
ー「WHY」を知る:クロス集計④比較の観点ー
• 日本人は集団的か?
• 春日の学生はヲタか?
• 基準、目盛りづくり
1.2行為の意味理解の方法⑦
ー「WHY」を知る:クロス集計⑤比較の観点ー
• 集団や個人の属性、あるいは記憶や過去の
経験、先有傾向ごとに 人々の意識や行動を
分析する
言い換えると、
• 過去の変数(属性などの要因)ごとに現在の
意識や行動を比較
1.2行為の意味理解の方法⑧
ー「WHY」を知る:クロス集計⑥比較の観点ー
さらに言い換えると、
• 時間的に先行する要因の差
→ 行為の類型に差
• 前者が行為の「原因」、後者が「結果」に
• 前者が行為の「動機」、「意味」に
1.2行為の意味理解の方法⑨
-「WHY」を知る:クロス集計⑦比較の観点ー
• 具体的には、
「AよりもBの方がCである(かどうか)」
という命題の形にする
• A、Bは変数Xの値(両極的な値)。
• Cは変数Yの片方の値。もう一方の値はDと
でも想定できる 。
1.2行為の意味理解の方法⑩
-「WHY」を知る:クロス集計⑧比較の観点ー
言い直すと、
• 比較
→ 属性等による類型化
• 属性、過去の経験・記憶ごとに人々をグルー
プ分けし、グループごとの意識や行動の差を
調べる。
属性の説明力の低下①
• 今までの議論の前提
• 属性によって、人々の現在(の意識や行動)
充分に説明できる。
• 現在の状況 : 上記の前提、崩れつつある
• 属性で当然予想される行為様式と違う行動
色々な意味でのボーダレスな時
代(桜井哲夫)
属性の説明力の低下②
• 男らしくない男
– 大西ケンジ
• 性同一性障害や同性愛が市民権を得る
• 大人びた若者
– 化粧し、ギャル系ファッションを真似る小学生
• いつまでも子どもっぽい大人
– パラサイトシングル(山田昌弘)、モラトリアム(小
此木啓吾)
属性の説明力の低下③
• 先生らしくない教員
• 教員や警官による犯罪の多発
– ニュースになるということは、頻度そのものは低い
• 親による実子の虐待や保険金目当ての殺害
等々 ← 自分ももっと青春を ← 非婚の元クラ
スメート、離婚の増大
• 宗教家の性やお金を巡るスキャンダル
属性の説明力の低下④
• 性別、年齢、職業
→ それに相応しい役割貰う
→ 役割を演じる
→ 役割に必要なもの以外を求めない(欲望
の制限)
• 様々な欲望を掻き立てるメディア社会
→ もう一つの自分、もっと違った自分
属性の説明力の低下⑤
• 「属性などの独立変数・・・変化しづらい変数」
• ???・・・ 現代社会
• 性
– 性同一性障害が病気として公認され、日本でも
手術後の戸籍の変更を認める
– 椿姫彩菜
属性の説明力の低下⑥
• 年齢詐称 ・・・ サッチー(楽天イーグルス監督
夫人)、井川遙、夏川純(和田アキ子の前で
嘘ついた勇気は称えられる)、はるな愛(大西
ケンジ)
• 学歴 ・・・ 古賀潤一郎(福岡二区、もはや過
去の人ですね)、サッチー、進学率の向上
→ 学歴インフレの進行、生涯学習社会、大学
院進学率の上昇←従来は18、19歳でその
人の学歴がほぼ決まる社会だった。
属性の説明力の低下⑦
• 職業
– 終身雇用制の揺らぎ、リストラ、中途採用の相対
的上昇、フリーター、ニートの増加
• 未既婚
– 従来 : 未婚 → 既婚への一方向的な矢印がほと
んど。
– 現在 : いずれの方向も均等に近くある。またパラ
サイトシングルの増加
属性の説明力の低下⑧
• 家族構成 ・・・ 昔に較べ変わりやすい。
• 熟年離婚の増加。結婚して突然、子供や親
が増える。
• 落語の「中沢家の人々」
– 三遊亭圓歌の創作落語。
• アメリカンジョーク
– 「あなたの息子と私の娘が、私たちの息子をいじ
めている」
属性の説明力の低下⑨
• 属性の説明力の低下
– 1. 社会学の有効性の低下
– 2. 社会学の新たな可能性?
→ ますます学際性の迷路に
• 属性としての類型と、行動を繋ぐ(媒介さ
せる)もの
– 世界観 ・・・ これを見る方法は?
理念型
1.3 社会学の独自の類型論
-理念型ー
• 理念型(理想型)(イデアルティプス)
• ウェーバーが提唱
マックス・ウェーバー(1864-1920)
wikipediaからの画像及びhttp://www.geocities.jp/existenzerhellung/eccehomo/weber/weber_nenpu.html
理念型①
• 「社会学独自」 ?
• 通常の類型論・・・平均的な像
VS
• 理念形・・・極端な事例、両極端、色立体、
研究者の想念(頭の中)OK
現実の多様性 索出的
理念型②
• 現実に世界に対応物がなくて構わない
• マックス・ウェーバー『プロテスタンティズムの
倫理と資本主義の精神』
– 禁欲的カルヴィニスト
– あの世のためだけに金儲け
– 本当?
理念型③『プロ倫』(1)
• 『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
(通称・プロ倫)についてのやや詳しい説明
• 救霊予定説
– 不安 → 恩寵の証 → 蓄財
• 人に喜ばれる行為
→ 儲け
• 禁欲的蓄財
→ 資本の蓄積、産業基盤
→ 雇用の促進
理念型④『プロ倫』(2)
• ベンジャミン・フランクリン「時は金なり」
• 「遊びは二重の出費」
• (ウェーバーの挙げているものではないが、)
– プロテスタント的行動の例 ・・・ 『エデンの東』
– カトリック的行動 ・・・ カーニバル、宵越しの金は
持たない南米
理念型⑤
• 丸山真男『日本の思想』(1960年、
岩波新書)
• 丸山真男
– 日本の戦後最大の政治学者の一人
とされる。ウェーバーの影響を受ける。
• 「実感信仰」と「理論信仰」
• 「タコツボ型」と「ササラ型」
• 「であること」と「すること」
Amazon.co.jpからの画像
丸山真男(1914-1996)
http://doraku.asahi.com/special/gorin/1996/photogallery/1996_10.html 並びに
http://members3.jcom.home.ne.jp/mm-techo.no_kai/からの画像
「実感信仰」と「理論信仰」①
• 丸山の問題意識
① キリスト教とマルクス主義
なぜ日本で根付かないか?
← 不寛容な者への不寛容
無限抱擁
② 日本の学問・制度 ・・・ 直輸入
背景部分、根っこを無視した移植
「実感信仰」と「理論信仰」②
• 実感信仰 ・・・ 担い手・庶民
• 背景 : 維新以降、西欧の進んだ文明流入
エリート官僚、知識人への反撥
「現実と理論は違うんだ」
「理屈じゃない」「上から外国の難しい理論や
仕組みを押しつけられても分からないよ」
→抽象と現実との往復関係 欠如
「実感信仰」と「理論信仰」③
• 理論信仰
– 担い手・知的エリート(帝国大卒の官僚・学者)
• 理論を絶対視
• 理論をその背景にある現実との相互作用で
みない
• 庶民蔑視
「実感信仰」と「理論信仰」④
•
•
•
•
•
庶民 ・・・ 日本の一般的文化風土
理論の首尾一貫性、体系性への嫌悪
マルクス主義やキリスト教を排除
日本の固有信仰にルーツ(神仏習合)
寛容な人々(何でも受け入れる文化)(12月
末から1月初めの行動様式)
→ 逆に、「不寛容な人々」を排除
「実感信仰」と「理論信仰」⑤
• 知識人
– 日本の風土への反撥
• 首尾一貫した理論に惹かれる
• マルクス主義やキリスト者
• 理論や制度を絶対的なものとして受け取り、
庶民に押しつけようとした
「実感信仰」と「理論信仰」⑥
庶民、知識人どちらも
• 現実と理論との相互作用で捉えない
↑
• 西欧の学問、制度が生煮え状態で入る
• 本来の学問
– 理論と現実の相互参照・絶えざる修正
「実感信仰」と「理論信仰」⑦
• 理念型である理由・・・グレーの部分
• 現実の知識人は現実との相互作用を無視は
しないどころか、それを何とか定着させようと。
• 現実の庶民は理論や制度の有効性を全否定
するばかりではない。
「タコツボ型」と「ササラ型」①
丸山の問題意識
• 日本の学問・・・輸入学問
• 背景無視した輸入、根っこの部分みない
→細分化された成果の部分のみ輸入
• 欧米の学問・・・根っこの部分、共通性がある
• 枝分かれして今の学問に
• ギリシア・ローマ以来の伝統
「タコツボ型」と「ササラ型」②
• タコツボ型
– 専門が閉ざされており、相互の
交流のない学問ないしは文化
– 日本
• ササラ型
– 専門に分かれているが、根の部
分、底の部分は他の領域に繋
がっている学問ないしは文化
– 欧米
「タコツボ型」と「ササラ型」③
ここでの丸山の問題
• こんなにきれいに日本-タコツボ、欧米-サ
サラと分かれるのか?
• 近代(化)主義者、「向こう良い・日本ダメ」
• 理念型の提示なのか、理念型に基づく現実
の描出なのか?
– ウェーバー自身の問題
「であること」と「すること」①
丸山の関心
• 属性価値から達成価値へ
• 政治の世界と学芸の世界の価値逆転
• 政治・・・本来 達成価値 重視されるべき
現実 属性価値 重視
• 学芸・・・本来 属性価値 重視されるべき
「私は誰であるか」の存在証明
一つの作品を目指す
現実 達成価値 重視
「であること」と「すること」②
• 「であること」
– 地盤・看板・経歴(家柄・血筋・性別)で選ばれる
政治家(丸山は学歴はここに入れていないという
か微妙)
• 「すること」
– 何をしたいか?何をしたかで選ばれる政治家
「であること」と「すること」③
• 日本「であること」で選ばれる
• 欧米「すること」で選ばれる
– 成果と今流にいえば「マニフェスト」
「であること」と「すること」④
学芸の領域
• 本来、真実は一つ
– 答えが一つという意味ではない。
– 目指すべき最終目標は一つ
• 本質的な問いは「量」ではなく「質」
• しかし現実、
– 芸術 ・・・ 作品一つ ・・・ 食べられない
– 学問 ・・・ 業績一つ ・・・ 評価されない
丸山真男への批判・評価①
批判はあるが、基本的に大きな存在
• 日本と欧米を対比し、日本に欠如するものを
指摘するのみ
• 極端なまでの近代主義者
• しかしヨーロッパ近代の歪みが指摘される現
代において、近代主義は限界がある
– cf.「未完の近代」(ハーバーマス)
丸山真男への批判・評価②
• 理念型は本来、現実を見るモデルに過ぎない
のに、理念型の提示と現実の証明とを混同し
ている
• 中間的事例の調査(少なくとも報告)がない。
極端な事例のみ。
• 知識人としての自分を相対化しえていない
– 左派なのにエリート主義
理念型的把握と
行為の意味理解との関係について①
• 社会学の基本(比較による行為の意味理解)
属性の差
意識・行動の違い
世界観・行動様式(エートス)≒理念型
• (実際には右側の「意識・行動」にある程度く
いこむ)
• 世界観・行動様式の純粋なものが、理念型
理念型的把握と
行為の意味理解との関係について②
上記の例 今までの話から
1)『プロ倫』
属性
プロテスタント、カトリック
世界観・エートス
意識・行動
禁欲的蓄積・勤勉(プ)
消費・何もしない(カ)
理念型的把握と
行為の意味理解との関係について③
• ここでの「世界観」
– 蓄財によって恩寵の証を得る(プ)
– 閑暇に価値がある(一部のカ)等々
• 「エートス」
• 他人のためになることをして儲け、そして使わ
ずに貯める(プ)
理念型的把握と
行為の意味理解との関係について④
2)『日本の思想』
• 属性 ・・・ 庶民、知識人
↓
• 意識や行動 ・・・ 実感信仰、理論信仰
• 世界観
(庶)無限抱擁性、中心性の欠如←日本の固有信仰
(神道)由来
(知)日本の封建遺制への反撥→体系的なものへの
憧れ、西欧崇拝
理念型的把握と
行為の意味理解との関係について⑤
以下、①の一部繰り返し
属性の差
意識・行動の違い
世界観・行動様式(エートス)≒理念型
• (実際には右側の「意識・行動」にある程度く
いこむ)???
• ただしそうも言えない
→ 例えば宗教上の教義
理念型的把握と
行為の意味理解との関係について⑥
• 宗教上の狭義
・・・ 世界観、エートスを典型的に示す
• しかし多分、昔のキリスト教徒でさえ以下の
文言を守った人は多いのか?
• 「すべて色情を抱きて女を見るものは既に心
のうちに姦淫したるなり」(マタイ書)
理念型的把握と
行為の意味理解との関係について⑦
再び①の変容バージョン
属性の差
現実の意識や行動の違い
背景となる純粋な世界観・
行動様式(エートス)≒理念型
理念型的把握と
行為の意味理解との関係について⑧
人々の世界観や思想 ・・・ 二つの再構成の方向
1. ボトムアップ的な再構成
• 彼らの日常生活そのもの ×
• 彼らの日常生活を繋ぎ合わせて、
おぼろげに浮かぶもの ○
2. トップダウン的な再構成
• 教義 ・・・ △
• 教義の彼らなりの解釈 ・・・ ○
理念型と学問の二分類①
(この項目は発展的内容)
• ウェーバーの問題関心
– 人文・社会科学がいかにして科学たりうるか?
• ウェーバーの哲学上の師、リッケルトの師ヴィ
ンデルバント(1848-1915)の学問の二分
– 自然科学 ・・・ 法則定律科学
– 人文・社会科学(歴史的文化科学) ・・・ 個性記
述科学
理念型と学問の二分類②
• リッケルト(1863-1936)
– 一般化的方法 ・・・ 自然科学中心
– 個性化的方法 ・・・ 人文・社会科学中心
• ウェーバー 理念型
– モデルを作る ・・・ その点は一般化的方法に近い
– 極端な事例 ・・・ その点は、個性化的方法
理念型と学問の二分類③
• ウェーバーの方法
– マルクスの逆との見方も
• マルクス
– 下部構造決定論(非常に粗っぽくいえば)。
・・・経済領域が思想・文化領域を決定する。
• 一部のウェーバー解釈
– 宗教などの文化が、経済を決定づけると。
注釈
• 上部構造・・・政治・社会・文化
「社会の経済的土台(下部構造)の上に形成
される政治・法律・宗教・道徳・芸術などの意
識形態(イデオロギー)と、それに対応する制
度・組織」 http://note.masm.jp/%BE%E5%C9%F4%B9%BD%C2%A4/
• 下部構造・・・経済
「史的唯物論で、一定の発展段階にある社会
構成の基礎となる物質的な生産関係の総体」
http://note.masm.jp/%BE%E5%C9%F4%B9%BD%C2%A4/
理念型と学問の二分類④
『プロ倫』に即すと、
• 「プロテスタント→恩寵への不安→蓄財・禁欲」
• 信仰 → 経済的行動ゆえ、
上部構造決定論とも。
理念型と学問の二分類⑤
• 大塚久雄(1907-1996)
• 『社会科学の方法』(1966)では、その見方(ウ
ェーバーは上部構造決定論だという見方)を否
定
• 理念型は、一般化的方法と個性化的方法の折
衷ゆえ
• 上部構造 → 下部構造の一方的規定ではない
• 双方が「親和性」をもつと。(シュパンヌング)
大塚久雄(1907-1996)
http://drc.diamond.co.jp/sales/pdf/200309/index.html及びスパイシー、さらに
http://hurec.bz/mt/archives/2006/08/294_199711.htmlからの画像
理念型から価値自由へ
• 研究者自身の信仰、世界観、価値観
→ 棚上げ
• 人々の価値観
→ 純粋な型で抽出 ・・・ 理念型
• 「棚上げ」を学術用語で
→ 「価値自由」
価値自由
• 「価値中立性」とも。
• 「価値自由」でいう「自由」の語感
– 日本語の日常の「自由」の語感
→ 120-180度違う(要注意!!)
• 「・・・から解き放たれた」「・・・が欠如した」
• 「(特定の)価値(観)から解き放たれた」
= 「中立的な」
価値自由と価値関係①
• 価値自由
– 特定の価値観や価値判断から研究者が解き放
たれて、中立的に研究対象に臨む
• 価値関係
– 研究対象のもつ価値観は価値判断を尊重し、そ
れを内在的に追っていく
– OR 研究対象当人の究極の価値(多くの場合宗
教観や革命の理想などになる)から位置づけた
個々の事柄の価値付け・価値判断の体系を追う
こと。
価値自由と価値関係②
• 価値自由
→ 価値関係を可能に
• 価値関係の研究
→ 理念型の追究の基礎
• 価値関係を価値自由に追う例
– 若者文化が分からないと言っていたマクルーハン
・・・ ミイラ取りがミイラに
– オウム真理教やネオコンに対する私の態度
政策論の問題
-価値自由との関係でー
• ウェーバー
– 社会政策学会で、価値自由を唱える
– 一部のマルクス主義者を批判
• 「べき論」
– 科学ではなく、論説・主張
• とはいえ、ウェーバー自身、研究者の窮極の
価値を否定はせず
– 現代のウェーバー解釈
現在の「価値自由」解釈①
• 研究者の研究の動機部分
→ 価値を含む
• 虚心に研究対象の人々に向き合う
• 自分の価値と反対の世界観をもつ人々
– 彼らの動機や意味世界をきちんと把握
→ 似たことを別の表現で(次のスライド)
現在の「価値自由」解釈②
•
•
•
•
人間は必然的に価値判断を持つ
研究者も例外ではない
価値判断をなるべく減らす努力は可能
それでも残る価値判断の部分
– 自分及び他人に正直に話す
→ 価値判断による歪みを最小限に
• 反対の例 : 中立的な装いの調査報告
→ 大いに人を欺くことに