sociology20160510

メディア社会学
(第4回)
2016年5月10日(火)
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1
理念型的把握と
行為の意味理解との関係について①
• 社会学の基本(比較による行為の意味理
解)
属性の差
意識・行動の違い
世界観・行動様式(エートス)≒理念型
• (実際には右側の「意識・行動」にある程度
くいこむ)
• 世界観・行動様式の純粋なものが、理念型
2
理念型的把握と
行為の意味理解との関係について②
上記の例 今までの話から
1)『プロ倫』
属性
プロテスタント、カトリック
世界観・エートス
意識・行動
禁欲的蓄積・勤勉(プ)
消費・何もしない(カ)
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理念型的把握と
行為の意味理解との関係について③
• ここでの「世界観」
– 蓄財によって恩寵の証を得る(プ)
– 閑暇に価値がある(一部のカ)等々
• 「エートス」
• 他人のためになることをして儲け、
そして使わずに貯める(プ)
4
理念型的把握と
行為の意味理解との関係について④
2)『日本の思想』
• 属性 ・・・ 庶民、知識人
↓
• 意識や行動 ・・・ 実感信仰、理論信仰
• 世界観
(庶)無限抱擁性、中心性の欠如←日本の固有信仰
(神道)由来
(知)日本の封建遺制(天皇制など)への反撥→体系
的なものへの憧れ、西欧崇拝
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理念型的把握と
行為の意味理解との関係について⑤
以下、①の一部繰り返し
属性の差
意識・行動の違い
世界観・行動様式(エートス)≒理念型
• (実際には右側の「意識・行動」にある程度
くいこむ)???
• ただしそうも言えない
→ 例えば宗教上の教義・・・その点で先述のように属性
にもなる
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理念型的把握と
行為の意味理解との関係について⑥
• 宗教上の教義
・・・ 世界観、エートスを典型的に示す
• しかし多分、昔のキリスト教徒でさえ以下の
文言を守った人は多いといえるのか?(亀井勝一
郎)
• 「すべて色情を抱きて女を見るものは既に心
のうちに姦淫したるなり」(マタイ書)
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理念型的把握と
行為の意味理解との関係について⑦
再び①の変容バージョン
属性の差
現実の意識や行動の違い
背景となる純粋な世界観・
行動様式(エートス)≒理念型
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理念型的把握と
行為の意味理解との関係について⑧
人々の世界観や思想 ・・・ 二つの再構成の方向
1. ボトムアップ的な再構成
• 彼らの日常生活そのもの
×
• 彼らの日常生活を繋ぎ合わせて、
おぼろげに浮かぶもの
2. トップダウン的な再構成
△
• 教義 ・・・
• 教義の彼らなりの解釈 ・・・○
→トートロジーになりかねないと批判しうるかも
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理念型と学問の二分類①
(この項目は発展的内容)
• ウェーバーの問題関心
– 人文・社会科学がいかにして科学たりうるか?
• ウェーバーの哲学上の師、リッケルトの師ヴィ
ンデルバント(1848-1915)の学問の二分
– 自然科学 ・・・ 法則定立科学
– 人文・社会科学(歴史的文化科学) ・・・ 個性記
述科学
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理念型と学問の二分類②
• リッケルト(1863-1936)
– 一般化的方法 ・・・ 自然科学中心
– 個性化的方法 ・・・ 人文・社会科学中心
• ウェーバー 理念型
– モデルを作る ・・・ その点は一般化的方法に近い
– 極端な事例 ・・・ その点は、個性化的方法
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理念型と学問の二分類③
• ウェーバーの方法
– マルクスの逆との見方も
• マルクス
– 下部構造決定論(非常に粗っぽくいえば)。
・・・経済領域が思想・文化領域を決定する。
• 一部のウェーバー解釈
– 宗教などの文化が、経済を決定づけると。(上部
構造決定論)
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注釈
• 上部構造・・・政治・社会・文化
「社会の経済的土台(下部構造)の上に形成
される政治・法律・宗教・道徳・芸術などの意
識形態(イデオロギー)と、それに対応する制
度・組織」
• 下部構造・・・経済
「史的唯物論で、一定の発展段階にある社会
構成の基礎となる物質的な生産関係の総体」
http://note.masm.jp/%BE%E5%C9%F4%B9%BD%C2%A4/
http://note.masm.jp/%BE%E5%C9%F4%B9%BD%C2%A4/
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理念型と学問の二分類④
『プロ倫』に即すと、
• 「プロテスタント→恩寵への不安→蓄財・禁
欲」
• 信仰 → 経済的行動ゆえ、
上部構造決定論とも素直に読めば解釈可能。
しかしその解釈は間違いとする意見が強い。
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理念型と学問の二分類⑤
• 大塚久雄(1907-1996)
• 『社会科学の方法』(1966)では、その見方
(ウェーバーは上部構造決定論だという見
方)を否定
• 理念型は、一般化的方法と個性化的方法
の折衷ゆえ
• 上部構造 → 下部構造の一方的規定では
ない
• 双方が「親和性」をもつと。(シュパンヌン
グ)
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大塚久雄(1907-1996)
http://drc.diamond.co.jp/sales/pdf/200309/index.html及びスパイ
シー、さらにhttp://hurec.bz/mt/archives/2006/08/294_199711.htmlからの画像
• マルクスとウェーバーとさらにキリスト教まで
統合しようとした大塚久雄。東大教授時代は
松田智雄教授(のちに図情大初代学長)とも
親しかった。
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理念型から価値自由へ
• 研究者自身の信仰、世界観、価値観
→ 棚上げ
• 人々の価値観
→ 純粋な型で抽出 ・・・ 理念型
• 「棚上げ」を学術用語で
→ 「価値自由」
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価値自由
• 「価値中立性」とも。
• 「価値自由」でいう「自由」の語感
– 日本語の日常の「自由」の語感
→ 120-180度違う(要注意!!)
• 「・・・から解き放たれた」「・・・が欠如した」
• 「(特定の)価値(観)から解き放たれた」
= 「中立的な」
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価値自由と価値関係①
• 価値自由
– 特定の価値観や価値判断から研究者が解き放
たれて、中立的に研究対象に臨む
• 価値関係
– 研究対象のもつ価値観は価値判断を尊重し、
それを内在的に追っていく
– OR 研究対象当人の究極の価値(多くの場合
宗教観や革命の理想などになる)から位置づけ
た個々の事柄の価値付け・価値判断の体系を
追うこと。
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価値自由と価値関係②
• 価値自由
→ 価値関係を可能に
• 価値関係の研究
→ 理念型の追究の基礎
• 価値関係を価値自由に追う例
– 若者文化が分からないと言っていたマクルーハン
・・・ ミイラ取りがミイラに
– オウム真理教やネオコンに対する私の態度
– かつての多くの日本のソ連・中国研究者
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政策論の問題
-価値自由との関係でー
• ウェーバー
– 社会政策学会で、価値自由を唱える
– 一部のマルクス主義者を批判
• 「べき論」
– 科学ではなく、論説・主張
• とはいえ、ウェーバー自身、研究者の窮極の
価値を否定はせず
– 現代のウェーバー解釈(山之内靖、矢澤修次郎)
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現在の「価値自由」解釈①
• 研究者の研究の動機部分
→ 価値を含むのは当然
• 虚心に研究対象の人々に向き合う
• 自分の価値と反対の世界観をもつ人々
– 彼らの動機や意味世界をきちんと把握
→ 似たことを別の表現で(次のスライド)
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現在の「価値自由」解釈②
•
•
•
•
人間は必然的に価値判断を持つ
研究者も例外ではない
価値判断をなるべく減らす努力は可能
それでも残る価値判断の部分
– 自分及び他人に正直に話す
→ 価値判断による歪みを最小限に
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現在の「価値自由」解釈③
• 反対の例 : 中立的な装いの調査報告
• → 大いに人を欺くことに
• 例・・・政府の報告書の調査・企業の研究所
の調査(「科学の中立性神話」を利用)
• ←こういう見方の背景に量的調査主導であっ
た社会学への反省もありうる
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