ディベートの準備: オープンデータ編(1) オープン化の功罪 背景:オープンデータ政策 政府が保有するデータを広く公表し、かつ利用させることで、次のよう な目標を達成したい ・経済成長、新産業創出、雇用創出など経済効果 ・政府の透明性、政府への理解や信頼向上、政府の無駄の削減 ・様々な場面での情報活用による生活の利便性向上 データは、 ・利用に厳しい制約条件をつけない(CCライセンスのような許諾をつ ける) ・使いやすいフォーマットで提供 ・基本的には無料 ※単に公開するだけでなく、そのデータを誰でも自由に使えるように、 ライセンスもつけることが、オープンデータには必須です。 背景(2) 「データ」の範囲: ・数値データや地図データは主力 ・報告書や政府の文書も広く含む ・政府の内部資料も役に立つなら出してもらう 詳細は「電子行政オープンデータ戦略」などを参照 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/denshigyousei. html 問い:オープン化は素晴しい? ・オープン化すればするほどよいのか? ・オープン化は必ず便益を生むのか? ・オープン化はそもそも、そんなに望ましいの か? 課題 1.オープン化に対して、政府が抱きうる懸念を考えて下さい。 基本的なリストは次ページ以降に示します。 ほかに主要な懸念として何がありそうかを、考えて下さい。 2.これらの懸念を、データの公開を断念したり、利用条件を 厳しく制限するせざるを得ない、「本質的な懸念」と、オー プン化を制限する理由にならない「本質的でない懸念」と、 2種類とに分けてください。(次ページ以降の懸念リストに あるものも含めて) 3.「本質的でない懸念」については、必要な対策や本質的で ないと考える理由を考えて下さい。 4.「本質的な懸念」については、その懸念に基づいてオープ ンデータを制限する範囲について、考えて下さい。 メモ作成 前ページの4点を整理したメモを各人作成して 下さい。 授業に持参して下さい。終了後に回収します。 ※文章やポジションペーパーは不要。 考えを磨くことと、関連資料を読むことに時間を 使ってください。 懸念のリスト ・テロ対策や犯罪捜査・摘発の方法についての情報は 出せない。 ・プライバシーに関わる情報も ・データ販売などから得ていた政府収入の減少 ・オープン化にともなう行政のコスト負担増がいろいろあ る データを整形するコスト データに詳細な解説をつけるコスト データ公表前にエラーがないかチェックするコスト 公表したデータについての質問に解答するコスト データを公開していいかどうか、チェックするコスト 懸念リスト(2) ・データをめぐる賠償責任の懸念 -データに誤りが含まれている場合の責任 ‐データが正しく示した事実によって不利益を被る人がいる場合の責任 (例:地盤データを公開したところ危険な住宅地が判明し、地価が下がる。 犯罪多発地域が避けられる) ・データ公表をめぐる政府への責任追及 - 政府の公表したデータが誤解され、風評被害や差別が発生する。 - 政府の公表したデータが犯罪やテロに使われる - 政府の公表したデータが改ざんされ、誤解が広がる - 政府の公表したデータが変更されたにも関わらず政府由来のものとして 広がる - 政府の公表したデータが、ヘイトスピーチやアダルト作品、カルト宗教の 宣伝など、論議を呼ぶような議論に使われる →これらの結果として市民やメディアから、政府に責任の一端があると批判 される。 懸念リスト(3) ・国益問題: データが外国の事業者に利用され、 外国企業の収益増に大いに貢献するが、国 内企業にはあまり貢献しない。 ・一部の独立行政機関はデータの販売収入を 重要な財源としている。 議論のフォーマット 議論でとりあげる懸念事項を基本的に各チームから2-3 件募ります。加えて、1件はジャッジ側が指定します。 1.選定された各懸念事項毎に、 本質かどうかで議論 そこで両チームの意見が対立しない場合は、 どちらが優れた対策案を出せるかを競います。 懸念事項ごとにジャッジして行きます。 2.チーム分け→チーム毎に議論したい懸念事項の選 定→各チーム内で立場協議→各懸念事項について議 論→最後にレビュー と進めます。 ※または、渡辺1人 vs クラス全員チーム もアリです。 ディベートの準備: オープンデータ編(2) オープンデータの成功・失敗要因 基本的な問い 「オープンデータは成功するのか?」 今日本で進めている政策を題材に、悲観論と 楽観論を考えて行きます。 ・行政が十分にデータを提供したがらない (前回の議論で扱ったたくさんの懸念材料を考 えてみて下さい!) ・効果が出ない ・効果が出ているかどうか、計測・捕捉できない ・・・失敗のシナリオはたくさんあります。 課題1: 成功条件 1.オープンデータの成功のためには、どういう条件が満たされる必要があり そうか、考えて下さい。 2.その中で、特に満たされなさそうな、つまづきやすいポイントはどこでしょ うか? これを考える上で、データの提供から利用による効果発生までの流れを想 定して、それらが全部成立する可能性を考えてみて下さい。 例えば、政府が介護関連サービスや介護関連の支援制度のデータを提供 →技術者がアプリケーションに加工→介護関連の事業者が活用→よりよ い介護が提供されて、要介護者が便益を得る、といった流れを考えること ができます、 この全てが起こらないと、ここで想定しているオープンデータの「効果」は出 ません。 次のページにより抽象的な例を挙げます。 オープンデータの成功条件 ・オープンデータなるものがあることを多くの人が知る ・豊富なデータが提供される ・データを使いたいと思う人が簡単にデータを見つけられる ・データが使いやすいフォーマットになっている ・データの利用条件が厳しくない ・データの解釈・取り扱い上の注意がきちんと解説されている ・データが正確性や細かさの点で使い物になる ・データを利用したアプリケーションが、利用者のニーズに応 えるものになっている →こうしたあれこれの条件が満たされた結果、オープンデー タの実現にかかる費用を上回る便益が得られる。 ※あくまでも参考例なので、自分で条件を考えてみて下さい。 課題2:大きなトラブル ・オープン化によって起こりうる大きなトラブルを、1つ考えて下さい。 「これは確かに起こりそうだ・・・」と思わせるような具体的なものを目 指してください。 例:「国が提供した犯罪統計が元で、ある町にいる外国人の多くが犯 罪予備軍であるかのように猜疑の目で見られてしまう。地域別の 様々な疾患の発症率データが元で結婚差別が起こる。更に悪いこ とに、政府データやその他のデータから作られた数々の指標で手 軽に地域別の比較ができるようなアプリとウェブサイトが流行し、 オープンデータが差別の温床に、と週刊誌が書く。日本人は民度 が低いのだから政府も出してよい情報とそうでない情報をわきま えるべきだ、と主張する大学教授のコメントも掲載される。一部の 議員がこれに反応し、差別や偏見を助長する可能性のあるデータ の公開は大幅に見直され、学術研究機関、報道機関など一部の 公益性の高い利用者に限定される。」 →政策として期待されてい たような効果を出せないままに終わる。 メモ作成 ・課題1:満たすことが特に難しい成功条件2つ ・課題2:大きなトラブルのシナリオ ※授業に持参して下さい。終了後に回収します。 議論のフォーマット 1.チーム分け 2.課題1:各チームが、「この条件でつまづきそ う」という成功の条件を2つ特定→反対チーム はそれに有効な対策があると反論 3.課題2:各チームで1つ「大きなトラブル」シナ リオを作成・選定→反対チームはそれが起こ りにくいか、対処可能であると反論 4.レビュー
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