音楽療法士のセルフケアに 関する一考察

◆音楽療法士のセルフケアに
関する一考察
○坂下正幸(びわこ学院大学教育福祉学部)
徳永喜久子(ハーネスト唐崎)
◆問題提起
○音楽療法が医療・福祉・教育など幅広い領域
で実践されるようになった。
○音楽療法士も2426名(2013年)に達した。
○実践者は臨床を継続していくことで精一杯で
あり、燃え尽きを経験する音楽療法士もいる。
◆セルフケアに関する先行研究
音楽療法士のセルフケアに関する先行研究は、
わが国では、見当たらない。そこで心理援助職
のセルフケアに関する先行研究を参考にした。
コーリー(2004)はセルフケアについて「ぜいたく
ではなく倫理的義務なのです。自分自身に滋養
を与えないで、クライエントに滋養を与えることは
できません」1)
◆研究目的
音楽療法士のセルフケアに関する
実態を、アンケート調査から考察し
ながら、「燃え尽き」や「離職」から
の回避を目指し、セルフケアの重
要性を示唆することを目的とする。
◆研究方法
• 近畿地方に在住の音楽療法実践
者35名に対してアンケート調査を
実施した。
• 期間:平成25年1月~7月。質問
用紙は全て回収済。
◆研究成果
1)属性
①あなたは
ア、男性 イ、女性
②あなたは近畿のどの地区に在住ですか
滋賀県 イ、京都府 ウ、大阪府 エ、兵庫県 オ、奈良県 カ、和歌山県
③資格について当てはまるものを選択して下さい
ア、日本音楽療法学会認定音楽療法士 イ、海外の認定音楽療法士
エ、自治体認定音楽療法士 オ、その他(
)自由記述
2)セルフケアについて
①あなたは、「セルフケア」という言葉を知っていますか
ア、知っている イ、知らない
②セルフケアは重要だと思いますか
ア、思う イ、思わない
③セルフケアを実際に行っていますか
ア、行っている イ、行っていない
④セルフケアを行っている人は、どのような方法で実施していますか。(自由記述)
(
)
⑤音楽療法士の仕事に疲れたとき、あるいは「やりがい」を感じられないとき
あなたはどのようなことをして対処しますか。
ア、しばらく仕事を休む イ、友人の音楽療法士に相談する
ウ、スーパービジョンを受ける エ、仕事を辞める
オ、その他 (
)自由記述
⑤音楽療法士にとって「やりがい」を感じるときはどんな時ですか。
(
)自由記述
アンケート結果 <その1>
男性
女性
アンケート結果 <その2>
25
20
15
10
5
0
滋賀県
京都府
大阪府
兵庫県
奈良県
和歌山県
アンケート結果 <その3>
30
20
10
認定音楽療法士
海外音楽療法士
自治体音楽療法士
その他
0
アンケート結果 <その4>
知ってる
知らない
アンケート結果 <その5>
重要だと思う
重要だと思わない
アンケート結果 <その6>
行っている
行っていない
アンケート結果 <その7>
8
仕事を休む
6
SVを受ける
4
友人に相談
2
0
仕事を やめる
その他
◆セルフケアの具体的内容
○日常生活に組み込まれている。
○音楽瞑想を行う、動物とふれ合う。
○森の中で歌う。
○好きなピアノ曲を弾く。
○趣味の時間を作る。
○仲間と話し合う(ピアスーパービジョン)。
◆やりがいを感じるとき
○対象者とお互いに良い音楽を共有
できたとき
○対象者が普段見られない表現を
したとき
○対象者に必要性を訴えられたとき
○何より対象者が喜んでくれたとき
◆考察
アンケート調査から、音楽療法士はセルフケアの
「重要性」や「必要性」を認識しながらも、具体的な
セルフケアの実施に至っていない現状が明らかに
なった。
つまり、臨床実践することで精一杯であると推察
される。それは、いまだ音楽療法の「社会的認知度」
が低いため、ゆとりがないともいえよう。
◆残された課題
○さらにより多くの音楽療法士のセルフケア
に関する実態を把握し、認識を広めること
である。
○音楽療法士を含めた援助専門家は対象者
を治癒や維持改善へ導こうとするが、その
核になるのは、対象者への寄り添いであり、
音楽療法士が心身ともに健康な状態で、
臨床実践できる環境を構築したい。
◆謝辞
◎本研究におけるアンケートにご協力いただ
いた音楽療法関係者に心より感謝申し上げ
ます。
◎音楽療法士のセルフケアに関して、適切な
アドバイスをしていただいた同志社女子大
学の濱谷紀子特認教授に感謝いたします。
(文献)ジェラルド・コーリー(村本詔司監訳)
援助専門家のための倫理問題ワークブック.
創元社,pp93,2004