第9課 21世紀への新しい道

第9課 21世紀への新しい道
一、筆者の紹介
中村桂子(なかむら けいこ)
JT生命誌研究館副館長。大阪大学連携
大学院教授。三菱化学生命研究所名誉研究
員。科学技術庁顧問、科学技術会議総合計画
部会委員。
1964年東京大学大学院理学系研究科生物化学専
攻博士課程修了。理学博士。国立予防研究所、三菱
化成生命科学研究所社会生命科学研究室長を経て、
1989年早稲田大学人間科学部教授、国際熱帯農業
研究所理事。1993年5月JT生命誌研究館副館長に
就任、現在に至る。
著書に『生命誌の扉をひらく』『生命誌の世界』など
多数。
二、表現と文型
1.比べものにならない
差がありすぎて、比較することがむだだという意
味を表す。
 A社の製品は外観はいいが、性能はB社のものと
比べものにならないから、あまり売れていないよう
だ。
 彼の足の速さは他の選手と比べ物にならない。た
ちまち皆を500メートルも引き離してしまった。
 あの店のようなおいしいぱんはこれまで食べたこ
とがない。他の店とはまったく比べ物にならない味
だ。
2.いずれにしても
いろいろな可能性はあるが、どれをとってもとにか
くそのことになるという意味を表す。
 中村さんは遅れるとは言っていたが、いずれにして
も来ることになっている。
 後遺症が出る恐れはあるが、いずれにしても回復
に向かっていることは確かだ。
 やりたい仕事はあるが、いずれにしてもこんな健康
状態では希望の職に就けそうもない。
 ここでお昼ご飯食べてしまいましょうか。
 そうしましょう。いずれにしても、どこかで食べなっ
きゃならないんですからね。
3~かのように
副助詞「か」がついて、実際はそうでないのに、そう
いうように振舞ったり感じたりする様子を表す。事実
と矛盾したり、仮想的なことがらをたとえに挙げて言
う場合が多い。
 これから1年間留学する私を祝福するかのように、
出発する朝の太陽はきらきら輝いていた。
 父はとっくに知っていたかのように平然としていた。
 彼は見たこともないのに、いかにも見てきたかのよ
うに話した。
 あたりは一面霧に包まれ、まるで別世界にいるか
のように思われた。
4.つまり~のだ
これまでに述べたことを受けて、自分の判断を述べ
ることを表す。
 最終列車が発車してしまった。つまり、今夜はこの
街で泊まるほかないということなのだ。
 母が植えたメロンの苗は枯れてしまった。つまり、今
年は母の自慢のメロンを食べられないというこのな
のだ。
 学校が主催する団体旅行は中止になった。つまり、
君たちは個人旅行をしてもよいということなのだ。
5.~たうえで
なにか行動をして、その結果に基づいて次に行
動をとるという意味を表す時に用いる。
 担当者と相談したうえで、改めてご返事させていた
だきます。
 金を貸してやるといったのは、おまえがもともな生
活に戻ったうえでのことだ。
 ご両親にお話なさったうえで、ゆっくり考えていた
だいて結構です。
 この部屋代でもよいか、納得したうえで契約書に
サインをしてください。
6~わけだ
当然の結果を示すのに用いるほか、事実や理由、
主張などを述べるのにも用いる。
 彼は日本に5年もいるんですか。道理で日本語が
ぺらぺらなわけだ。
 最近円安が進んで、輸入品の値段が上がってい
る。道理で洋書も高くなってるわけだ。
 あ、鍵が違うじゃないか。これじゃ、いくら頑張って
も開かないわけだ。
 彼女の父親は私の母親の弟だ。つまり、彼女と私
はいとこ同士というわけだ。
7.~はずだ
何かの根拠で論理的な筋道に沿って、話手が判
断・推測することを表す。
 あれから4年たったから、あの子も今年は卒業す
るはずだ。
 もし今の会社に合格しなかったら、全く別な人生が
あったはずである。
 朝早く向こうを出発すると言っていたから、もうぼ
つぼつここへ着くはずだ。
 鍵がないよ。
 そんなはずはない。さっき机の上に置いたんだか
ら。
三、言葉の理解
1.崩れかける:崩れ始める
2.~ざるをえない
动词未然性+ざるを得ない
途中バスが故障したので、帰らざるを得なかった。
あなたの言葉なら、信用せざるを得ませんね。
3.当面(とうめん)
①现在,目前,眼下。
②面临。
困難な問題に当面する/面临困难问题。
4. ~そうです(様態助動詞)
用于客观的描述讲话者观察到的、感觉到的某种情
形、样子、迹象、趋势等,即视觉印象。
接続: 動詞連用形、形容詞・形容動詞語幹
いい→よさそうです ない→なさそうです
例:像是要下雨了。 雨が降りそうです。
否定:
お寿司の作り方は難しくなさそうです。(形容詞)
形容動詞+ではなさそうです。
動詞連用形+そうもない/そうにない/そうにもない
彼は行きそうもありません。/他不像是要去的样子。
四、練習問題の解答
リーディング1
1.リーディング1を読んで、次の質問に答えよ。
(1)科学技術の発展を支えてきた動機は何か、簡単
に答えよ。
人間の力の代行、拡大の願望。
(2)1950年代、60年代、70年代の科学技術の特徴
を挙げよ。
1950年代は石油化学、さらにはエレクトロニクス
が発展し、1960年代になると、未来は無限の可
能性を持っているかのように見えた。1970年代に
なると、この無限の神話は崩れかけた。
(3)「スペースコロニー」の概略を述べよ。
月の砂や石を材料に、豊富にある太陽エネルギーを
利用した宇宙建設のこと。
(4)「価値観を転換し、限りのある中での生き方を探る」
とは、どういうことか、簡単に答えよ。
有限の世界の中で上手に生きる、つまり有限の資
源をうまく循環させる技術を利用すること。
(5)「循環させる技術」は21世紀にどのような役割を果
たすと思うか、答えよ。
有限の資源を最大限に活用する役割とともに、広
い宇宙に無限の可能性を求めていく上で不可欠な
役割を果たす。
2.リーディング1の要約文を120字以内でまとめよ。
21世紀の科学技術がめざす道には、拡大と無限
の可能性という価値観を求めるのと、価値観を転換
して限りある中で生きようという2つがある。だが、拡
大を求めて宇宙へ飛び出しても、それでは、やはり
有限の中で循環させる産業技術によって生きるほ
かない。
3.下の枠内から最も適当な言葉を選んで、( )に入
れて、文を完成させよ。
(1)まさに (2)もしも (3)わざと
(4)いずれにしても
(5)はるかなる
4.下の下線部の文の意味と最も近い文を一つ選べ。
(1) c
(2) b
(3) a (4) c
(5) a
リーディング2
1.空欄(A)・(B)・(C)を補うのに最も適切なことばを
次の中から選べ。
(A) a (B) c (C) b
2.下線部①の「浸透力」の説明に相当する部分を、文
中から60字以内で抜き出せ。
初め=水が高い
終わり=ゆくこと
3.下線部②の「それ」とは具体的に何を指しているか。
文中から25字以内で抜き出せ。
自然界の中にもともと潜在していた、さまざまな可
能性
4.「第一の自然」と「第二の自然」はどこが違うのか。
最も適切なものを次の中から選べ。
b
5.本文で筆者が主に述べようとしたのはどのようなこ
とか、最も適切なものを次の中から選べ。
a
リーディング3
1.宇宙船「神舟」の構造について説明せよ。
宇宙船「神舟」の構造は、飛行士が乗り込み、最
終的に地球に戻ってくる帰還モジュール、軌道上で
の仕事場や生活空間になる軌道モジュール、推進
装置や燃料タンクのある機械モジュールの3モ
ジュールからなっている。
2.「神舟」とロシアのソユーズ宇宙船と、どこが違うか
説明せよ。
ソユーズの機械モジュールには電力供給用の太
陽電池板がついているが、神舟には機械モジュー
ルだけでなく、軌道モジュールにも太陽電池板が搭
載され、さらに軌道モジュールは大きな窓と、ドッキ
ングできる装置も持っている。
3.「中国は、歴史上初めてロケットを飛ばした国とされていま
す」とあるが、どういう意味か説明せよ。
11世紀半ば、中国では武器としてロケットを飛ばしたことが
あるという意味である。
4.楊利偉軍中佐が食べた宇宙食にはどんなものがあるか説
明せよ。
鶏肉のカシューナッツ炒めや八方飯を長方形や球形にして、
オブラートに包んで食べるものである。
5.中国で有人宇宙船の打ち上げ、回収に成功したことについ
て感想を述べよ。
例1:これは中国の国力の強さの象徴なので、誇りに思ってい
る。
例2:中国も宇宙開発に貢献できたのでよかったと思う。