英国のEU離脱による金融市場、経済への影響

【 緊急リポート 】
英国のEU離脱による金融市場、経済への影響
~1ドル=100円の円高に直面し日本経済に激震も~
2016.6.28
Copyright Mizuho Research Institute Ltd. All Rights Reserved.
《構 成》
1.金融市場への影響
P 2
2.世界経済・日本経済への影響
P 15
3.各国政策対応の展望
P 22
4.まとめ
P 29
1
1.金融市場への影響
~リスクオフの展開も、現状金融ショックには至らず~
2
英国のEU離脱決定を受けリスクオフの展開
◯
‧
‧
‧
英国のEU離脱決定を受けリスクオフの展開。急速な円高・株安の展開に
日本株は円高進行を受け一時15,000円を割り込む展開。米国株も大幅に下落。ただし米利上げ期待後退が下支え
長期金利は米利上げ期待の後退や英国国民投票の結果を受け日米欧とも低下
ドル円相場は一時1ドル=100円割れの水準まで円高が進行するも、介入への警戒感などから再び100円台に戻す
【 主要マーケットの推移 】
110
(2015年6月末=100)
3.0
(%)
2.8
105
2.6
100
2.4
95
2.2
90
2.0
85
80
75
70
15/7
1.8
1.6
日(日経平均)
MSCIエマージング
独(DAX)
米(ダウ平均)
15/9 15/11 16/1
1.4
16/3
1.2
15/7
16/5
(年/月)
(%)
124
(2015年6月末=100)
122
米国10年国債(左目盛)
1.8
120
日本10年国債(右目盛)
1.6 118
ドイツ10年国債(右目盛)
1.4 116
1.2 114
112
1.0
110
0.8 108
0.6 106
104
0.4
102
0.2 100
98
0.0
96
-0.2
94
-0.4 92
15/9 15/11 16/1 16/3 16/5
15/7 15/9 15/11 16/1
(年/月)
2.0
円
ドル
ユーロ
16/3
16/5
(年/月)
(注) 為替はBOE名目実効為替レート。
(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成
3
投資家のリスク選好度は急低下
○ 6/24の終値を前提に試算すると、国際金融市場において投資家のリスク選好度は急低下
‧ 2011年夏の米国債デフォルト危機以来の悪化幅
【 投資家のリスク選好度の変化 】
(リスク選好度の変化幅)
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
▲ 0.5
▲ 1.0
▲ 1.5
▲ 2.0
▲ 2.5
▲ 3.0
▲ 3.5
20 07/1 08/1 09/1 10/1 11/1 12/1 13/1 14/1 15/1 16/1
(年/月)
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
16/1
残留との見方が強
まり投票前にリスク
選好度は上昇
投票結果発表後、
リスク選好度は
急低下
16/4
16/7
16/10
(年/月)
(注) 週次ベース、直近は6月第5週(6/27~7/1)。6月第5週に関しては、推計に用いる金融指標が
6/24の終値から変化しなかったと想定。
(資料) Datastream、Bloombergなどから、みずほ総合研究所作成
4
日本株、欧州株が大幅に下落。ポンド相場は急落
◯ 世界各国の株価の騰落率を見ると、日経平均、仏CAC、独DAXが大きく下落
◯ 為替市場ではポンドが大きく下落する一方、円やドルが買い進まれる
【 世界各国株価の騰落率(6月24日) 】
【 世界の為替変動率(6月24日) 】
上海総合指数
日本円
ロシアMICEX指数
米国ドル(名目実効レート)
シンガポールST
香港ドル
インドムンバイ
中国人民元
ブラジルボベスパ
インドルピー
香港ハンセン
ブラジルレアル
韓国総合指数
シンガポールドル
英FT100
ロシアルーブル
米ダウ平均
独DAX
ユーロ
日経平均
韓国ウォン
仏CAC
英国ポンド
▲ 10
▲8
▲6
▲4
(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成
▲2
0
2
4
(%)
▲10
▲5
0
5
(%)
(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成
5
英国とEUとの交渉が長期化すれば、更にポンドが下落する可能性
◯ 英国国民投票当日にポンド相場は約8%下落。1992年に英国が為替相場メカニズム(ERM)から離脱した際、英ポンド
(実効レート)は1カ月で15%程度下落
◯ ただし、今後英国とEUとの交渉などが長期化し不透明感が高まれば、更にポンドが下落する可能性も
【 ポンド相場の長期推移 】
(ポンド/ドル)
2.400
為替相場メカニズム
からの離脱
2.200
リーマン・ショック
2.000
1.800
英国国民投票
1.600
1.400
1.200
90
92
94
96
98
00
02
04
06
08
10
12
14
16 (年)
(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成
6
グローバルに長期金利は低下
◯ 資金逃避の動きから、グローバルに長期金利が低下
・米10年国債利回りは1.4%台に低下、独10年国債利回りは再びマイナス圏へ
【 世界の金利水没マップ 】
スイス
日本
ドイツ
デンマーク
オランダ
フィンランド
オーストリア
フランス
スウェーデン
アイルランド
スペイン
イタリア
英国
ノルウェー
カナダ
米国
ポルトガル
オーストラリア
中国
インド
1年
-1.01
-0.30
-0.60
-0.60
-0.58
-0.60
-0.54
-0.54
-0.50
-0.31
-0.12
-0.11
0.21
0.37
0.50
0.44
0.20
1.55
2.41
6.98
2年
-1.00
-0.28
-0.65
-0.57
-0.58
-0.55
-0.54
-0.50
-0.65
-0.24
-0.03
0.03
0.15
0.42
0.49
0.59
0.88
1.59
2.50
7.04
3年
-1.02
-0.26
-0.65
-0.49
-0.54
-0.53
-0.47
-0.44
-0.55
-0.07
0.07
0.12
0.21
0.47
0.47
0.69
1.46
1.55
2.60
7.14
4年
-1.00
-0.28
-0.62
-0.40
-0.51
-0.42
-0.43
-0.38
-0.44
0.00
0.22
0.24
0.33
0.57
0.53
0.83
1.87
1.61
2.73
7.29
5年
-0.96
-0.28
-0.55
-0.31
-0.35
-0.37
-0.32
-0.27
-0.20
0.00
0.42
0.46
0.41
0.66
0.56
0.98
2.12
1.66
2.85
7.41
6年
-0.88
-0.29
-0.52
-0.26
-0.33
-0.24
-0.27
-0.22
-0.11
0.16
0.50
0.66
0.56
0.75
0.67
1.11
2.33
1.76
2.86
7.56
7年
-0.82
-0.29
-0.44
-0.21
-0.22
-0.18
-0.23
-0.11
-0.03
0.35
0.75
0.86
0.72
0.84
0.77
1.24
2.54
1.86
2.86
7.54
8年
-0.69
-0.26
-0.36
-0.16
-0.11
-0.05
-0.18
0.00
0.13
0.53
1.12
1.12
0.84
0.90
0.85
1.31
3.06
1.95
2.87
7.57
9年
-0.60
-0.24
-0.25
-0.04
0.03
0.04
0.05
0.16
0.25
0.68
1.28
1.33
0.83
1.00
0.97
1.37
3.12
2.01
2.88
7.62
10年
-0.54
-0.19
-0.12
0.09
0.15
0.22
0.28
0.29
0.37
0.74
1.45
1.51
0.93
1.07
1.08
1.44
3.30
2.06
2.89
7.46
11年
-0.51
-0.17
-0.11
0.11
0.18
0.26
0.27
0.35
0.45
0.80
1.52
1.56
1.05
12年
-0.47
-0.15
-0.10
0.13
0.21
0.31
0.25
0.40
0.54
0.86
1.58
1.61
1.16
13年
-0.41
-0.12
-0.09
0.15
0.24
0.35
0.24
0.45
0.62
0.92
1.64
1.67
1.28
14年
-0.35
-0.10
-0.08
0.17
0.28
0.39
0.23
0.51
0.71
0.98
1.71
1.72
1.39
1.14
1.48
3.38
2.10
2.93
7.75
1.21
1.52
3.45
2.14
2.97
7.75
1.27
1.56
3.53
2.19
3.01
7.62
1.33
1.60
3.61
2.23
3.05
7.69
15年 20年 30年 40年
-0.29 -0.15 -0.03 -0.01
-0.08
0.08
0.10
0.13
-0.07
0.13
0.38
0.18
0.28
0.48
0.31
0.35
0.53
0.44
0.48
0.57
0.22
0.44
0.89
0.56
0.81
0.99
0.79
1.22
1.04
1.18
1.47
1.77
2.01
2.49
1.77
2.11
2.48
1.51
1.68
1.81
1.62
1.40
1.64
3.68
2.27
3.09
7.79
1.71
1.85
3.94
2.62
1.72
2.26
4.10
7.73
7.88
0%未満
0%以上0.5%未満
0.5%以上1.0%未満
1.0%超
(注)2016年6月27日の値。
(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成
7
金融機関のCDSプレミアムは上昇するも年初より低水準
◯ 欧銀、英銀のCDSスプレッドは上昇。ただし、大手銀行の経営危機等が話題となった年初よりは低水準
【 米・欧・英主要行の平均CDSスプレッド推移 】
(ベーシスポイント)
180
160
米銀平均
欧銀平均
英銀平均
140
120
100
80
60
40
20
0
2015年
1月
3月
5月
7月
9月
11月
2016年
1月
3月
5月
(注)1. 2016年6月27日現在。
(注)2. シニア5年物。
(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成
8
リーマン・ショック時と異なり金融危機ではないが、影響の長期化が懸念
◯ 金融危機となったリーマン・ショック時と異なり現時点では危機の深度(VIX指数等の上昇幅)は限定的。また、バーゼル
Ⅲを始めとする規制強化により金融システムの強靭性は大幅に改善
◯ ただし、財政・金融政策などの対応余地は低下。新興国経済の下支えが期待できない中、影響が長期化した場合は世界
経済を下押しする懸念
【 リーマン・ショック時との比較 】
危機の深度と影響
英国のEU離脱
リーマン・ショック
政治ショック
金融システムショック
深度(VIX指数)
・VIX指数は25.05(2016年6月27日時点)
・VIX指数は最大80.86(2008年11月)
持続性
・今後の英国とEUとの交渉しだいでは長期化の可能性
・政策対応により危機は収束へ
拡散性
・英国景気後退による影響。金融市場を通じたショックを除き、拡散には一定
の時間を要す
・金融システム不安が短期間でグローバルに拡大
世界経済の状況
・英国の景気下振れと主に欧州経済への下押し圧力が想定されるも、短期
的な世界経済全体への影響はリーマン・ショックに比べて小。ただし、影響
が長期化する可能性が高いほか、新興国が減速基調にある中で影響がよ
り増幅されるリスクも
政策対応余力
・先進国の財政はリーマン・ショック時より悪化。ECB、日銀は既に強力な
金融緩和を実施しており、更なる拡大余地は限定的
・先進国のバランスシート調整で短期的に世界同時不況となるも、大規模な
各国の金融財政政策により回復へ。特に高成長の新興国経済が世界経済
を下支え
・財政・金融政策とも政策余力あり
財政政策
(主要国の格付:S&P)
・主要国の財政はリーマン・ショック時よりも悪化。米国、日本の自国通貨建て
・日本を除く主要国の自国通貨建て政府債務格付け(S&P)はAAA格
政府債務格付け(S&P)は低下。英国はEU離脱決定を受け格下げ
(米国:AAA 英国:AAA ドイツ:AAA 日本:AA)
(米国:AA+ 英国:AA ドイツ:AAA 日本:A+)
金融政策
・米国は2015年12月に利上げ。ECB、日銀はマイナス金利政策を導入する
も、更なる緩和拡大余地は限定的
・政策金利の引き下げ余地あり。日銀は利下げ後量的緩和を拡大
・バーゼルⅢを始めとする一連の規制強化により、金融システムの強靭性は
大幅に改善
・市場流動性が枯渇し、複数の欧米金融機関が破たんする等、世界的な
金融危機に発展。カウンターパーティーの連鎖リスク
金融システムへの影響
(資料)みずほ総合研究所作成
9
米国株は投資家心理の悪化を背景に更なる下落リスクが残存
◯
‧
◯
‧
米株相場は離脱派勝利のネガティブサプライズで急落し、年初来の騰落率もマイナスに
VIX指数は、不安心理の高まりを示すメルクマールとされる20を上回る状況
過去のリスク回避局面と比較すると、投資心理の悪化を背景にさらなる下落リスクが残存
新興国の減速懸念が根強く、ショックが増幅されやすい局面にあることも踏まえれば、リスクオフが一段と強まることも
【 VIX指数の推移 】
90
【 米国株の過去の下落局面 】
リーマン・ショック
80
欧州問題深刻化
(ギリシャ二次支援)
米国債格下げ
70
60
ギリシャ・ショック
50
イベント
発生時期
ボトムまでの
株価下落率
同期間
第一次石油ショック
1973年10月
▲ 17.3%
54日
ブラックマンデー
1987年10月
▲ 31.5%
14日
イラクのクウェート
侵攻(湾岸戦争)
1990年8月
▲ 19.9%
87日
ロシア危機
1998年8月
▲ 19.3%
45日
ITバブル崩壊
2000年3月
▲ 37.7%
74日
リーマンショック
2008年9月
▲ 42.2%
84日
米国債格下げ
2011年8月
▲ 18.8%
88日
チャイナショック
2015年8月
▲ 11.2%
15日
第二次チャイナショック
2016年1月
▲ 12.0%
44日
チャイナ・ショック
40
Brexit
30
20
10
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年)
(注)VIX指数はS&P500のオプション・インプライド・ボラティリティ指標。
(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成
(注)株価下落率はS&P500指数のイベント発生前の直近高値から短期的なボトム
までの変化率。ただし、ITバブル崩壊のみナスダック総合指数の変化率。
(資料)各種報道、Bloombergより、みずほ総合研究所作成
10
ドル円相場は一時99円台まで円高が進行
◯
‧
◯
‧
‧
為替市場では米利上げ期待のはく落と、リスク回避姿勢の強まりから円高ドル安が進む展開
英国のEU離脱確定を受け、一時99円台まで円高が進むも、介入への警戒などから100円台に戻す展開
対円でのドル安地合いは今後もしばらく続く見通し
英国のEU離脱影響を見極めるまで当面時間を要すると想定され、円高地合いが続くと予想
日銀が追加緩和を行えば円安材料となるが、FRBが利上げに慎重な姿勢を続ける間は、ドル高圧力は高まりにくい
【 ドル円相場の推移 】
【 投機筋のポジション 】
(円/ドル)
135
(円/ドル)
(兆円)
シカゴIMM通貨先物・非商業ポジション (右目盛)
125
125
115
▲3.0
ドル円相場 (左目盛)
120
▲2.5
115
▲2.0
110
▲1.5
105
▲0.5
ト
100
0.0
90
2012
2013
2014
(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成
2015
2016
(年)
85
80
1.0
75
1.5
12
13
14
15
16
円
→
85
0.5
←
95
95
75
2011
シ
ョ
ー
105
▲1.0
ロ
ン
グ
(年)
(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成
11
四面楚歌の円
◯ 主要4通貨の実効為替レートの推移を見ると、円が年初来独歩高の展開。為替介入へのサポーターは不在の状況
‧ 米国のドル安誘導策で、ドルは年初から低下。人民元も低下傾向。ユーロは英国離脱の影響などから横ばい圏で推移
【 主要4通貨の名目実効為替レート推移 】
(2014/7/1=100)
130
125
120
ドル
115
円
110
人民元
105
100
95
ユーロ
90
85
2014
2015
2016
(暦年)
(注)1. 円は日銀公表値(円インデックス、ただし1営業日後実績)。2016年6月24日は、BISウェイトに基づき、 みずほ総合研究所が計算。
2. ドルはFRB公表値。ただし2016年6月20-24日はFRBウェイトに基づきみずほ総合研究所が計算。
3. 人民元はBloombergによる推計。
4. ユーロはECB公表値。
(資料)各種資料よりみずほ総合研究所作成
12
日本株はドル円で100円割れが定着すれば一段の下落も
◯ 英国の国民投票の結果を受けて先物主導で急落。日経平均株価は一時15,000円を下回り、年初来安値を更新
・ 日経平均のボラティリティを表す予想変動率も2016年6月以降上昇基調を強め、国民投票後に急上昇
◯ 為替をにらみ値幅の大きい不安定な推移が続き易いが、バリュエーション上は一定の歯止めも(PER13.3倍(6/27))
・ ただし、ドル円が100円割れ、米株安が継続する場合は、日経平均株価の14,000円割れも視野に
【 ドル円相場とダウ平均から推計される日経平均 】
【 日経平均株価と予想変動率の推移 】
(Index)
(円)
60
メインシナリオ
リス クシナリオ
21,000
ダウ平均( ド ル)
日経平均株価(右目盛)
20,000
1 4 ,0 0 0
50
19,000
18,000
17,000
30
16,000
ド
ル
円
相
場
(
40
円
15,000
日経ボラティリティー・
インデックス
14,000
15/10
15/12
16/2
16/4
1 5 ,0 0 0
1 6 ,0 0 0
1 7 ,0 0 0
1 8 ,0 0 0
85
11,000
11,100
11,200
11,300
11,400
90
11,800
11,900
12,100
12,200
12,300
95
1 2 ,8 0 0
1 2 ,9 0 0
1 3 ,0 0 0
13,100
13,200
100
1 3 ,8 0 0
1 3 ,9 0 0
1 4 ,0 0 0
1 4 ,2 0 0
1 4 ,3 0 0
105
14,900
15,000
15,200 1 5 ,3 0 0
1 5 ,4 0 0
110
16,000
16,200
16,400
16,500
16,600
115
17,300
17,500
17,700
17,800
18,000
120
18,700
18,900
19,100
19,200
19,400
16/6
(年/月)
(資料) 日本経済新聞社、Bloombergより、みずほ総合研究所作成
)
20
10
15/8
(単位:円)
(注)以下の推計式より算出。推計期間:2005.01~2016.4。adj-R2:0.95()内はt値。
LN(TOPIX)=0.61+0.15*LN(ダウ平均)+0.75*(鉱工業生産)+0.02*ドル円相場
(1.5) (5.5)
(10.4)
(33.5)
(資料)経済産業省、Bloombergより、みずほ総合研究所作成
13
長期金利はグローバルに低下。独国債利回りはマイナス圏に
◯ リスクオフ姿勢の高まりに伴い、英国の長期金利だけでなく、日米独の長期金利も低下
‧ 英国民投票の結果を受け、英国のみならず、日米独の長期金利も低下
――― 英国民投票前日には独10年国債利回りはプラス圏に戻ったが、国民投票の結果を受け再びマイナス圏に
‧ リスクオフの動きから、ギリシャ・イタリア・スペイン・ポルトガルの金利は上昇
◯ 世界経済の先行き不透明感が高まれば、長期金利に低下圧力がかかり続ける可能性
【 主要国の長期金利の推移(日米英独) 】
【 欧州長期金利の推移(ギリシャ・イタリア・スペイン) 】
(%)
2.5 (%)
1.5
(%)
(%)
12.0
2.0
スペイン
米国
2.0
1.0
11.0
1.5
イタリア
10.0
英国
1.5
0.5
1.0
9.0
1.0
0.0
0.5
8.0
ドイツ(右目盛)
日本(右目盛)
ギリシャ(右目盛)
▲ 0.5 0.0
0.5
16/1
16/2
16/3
16/4
(注) 10年国債利回り。
(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成
16/5
16/6
(年/月)
7.0
16/1
16/2
16/3
16/4
16/5
16/6
(年/月)
(注) 10年国債利回り。
(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成
14
(ご参考)海外拠点からの情報(総研ニューヨーク事務所、6月24日時点)
○ 金融市場の注目材料はFRBの利上げの行方と米国経済のファンダメンタルズから欧州の
政治に移りつつあるが、先行きの不透明感は強く、不安定な相場が長期化する可能性も
○ 米債券市場ではFRBによる7月の利上げの可能性は極めて低くなったとの見方が優勢。
ECBと日銀については、7月の追加緩和の可能性が織り込まれ始めている
○ 世界的な金利低下が一段と顕著になる中、米国債需要は強まることが予想され、米10年国
債利回りは、低下余地を探る展開も
○ 為替市場ではポンド・ユーロ売り圧力が引き続き強い見込み。他EU諸加盟国に離脱の動き
が拡散していった場合はユーロ売りが顕著となる可能性
○ ドル円については、介入への警戒感もあり、目先の100円の壁は厚いが、FRBの利上げが先
送りされるとの観測が高まる中で買い圧力は強まっており、円高地合いは変わらず
15
2.世界経済・日本経済への影響
~円高地合いの持続が日本経済の下振れ要因に~
16
英国経済は中長期的に悪化との試算
◯ 経済協力開発機構(OECD)や英財務省は、EU離脱に伴う、EUとの貿易やEUからの直接投資減少により、残留に比べ
GDPの水準が低下するとの試算を発表
‧ 離脱派は、EU離脱後に他の国・地域との貿易交渉に成功すれば英国経済にプラスになると主張。ただし、複雑な貿易
交渉には時間を要すると考えられ、中長期的にBrexitにより景気が悪化する可能性が高い
【 主要機関によるBrexitの経済効果試算 】
経済協力開発機構(OECD)
EEA(欧州経済領域)加盟
FTA(二国間協定)
WTO
(ノルウェー・オプション)
(スイス・カナダオプション)
(EUとの貿易協定なし)
▲5.1
-
▲2.7~▲7.7
※2030年時点のベースラインとのかい離
英財務省
▲3.8
▲6.2
▲7.5
※EU離脱から15年後時点のベースラインとのかい離
▲3.4~▲4.3
▲4.6~▲7.8
▲5.4~▲9.5
英国立経済社会研究所(NIESR)
▲1.8
▲2.1
▲3.2
※2030年時点のベースラインとのかい離
▲1.5~▲2.1
▲1.9~▲2.3
▲2.7~▲3.7
(注)表中の数値は英国GDPのベースラインとの水準の差。ベースラインとは、EU残留ケースを指す。数値の上段は中央値、下段はレンジ。単位は%。
(資料)OECD、英財務省、NIESRより、みずほ総合研究所作成
17
EU離脱決定に伴い、世界経済全体の下押し圧力が高まることに
◯ OECDによる世界経済モデルによる分析では、震源地の英国、欧州のみならず、新興国や日本に対しても相応の経済下
押しに
(%)
【 英国のEU離脱による世界経済への影響 】
(2018年までの残留ケースとの比較)
0
‐0.2
‐0.4
‐0.6
‐0.8
‐1
‐1.2
‐1.4
‐1.6
(注)社債スプレッドの拡大や長期国債利回りの上昇などを通じた各国実質GDPへの影響。
欧州影響度大:アイルランド・オランダ・ノルウェー・スイスの合計、影響度中:ドイツ・フランス・スペイン等の合計、影響度小:イタリア・中東欧諸国等の合計
(資料)OECD Economic Outlook, Volume 2016 Issue 1より、みずほ総合研究所作成
18
日本経済への影響① 円高・株安で2016年度は0.6%の下押し圧力
◯ 円高・株安が日本経済の下押し圧力に
‧ 英国のEU離脱に伴う日本経済への影響をグローバルモデル(Global VAR)から試算すると、主に金融ショック(為替が
100円/ドル、株価が14,900円になるショックを想定)により2016年度の実質GDPに0.6%弱の下押し圧力がかかるとの結果
――― また、英国が実際にEUを離脱する2018年度後半~2019年度には、英国とEU等との貿易協定交渉の行方次第
で、更なるショックが生じる可能性も。英国の内需減少が日本の輸出に与える直接的な影響は限定的だが、不確
実性の高まりによる金融市場を通じた波及効果も含めると、実体経済に及ぼす悪影響が懸念される
【 Brexitによる日本経済への影響試算(2016年度) 】
円高ショック
株安ショック
英国GDP下振れ
(OECDベース)
合計
円高ショック
株安ショック
英国GDP下振れ
(OECDベース)
【 英国の内需が1%減退した場合の輸出への直接的影響 】
フランス
実質GDP成長率
への影響
▲ 0.3%Pt
▲ 0.2%Pt
ユーロ圏
▲ 0.1%Pt
ドイツ
▲ 0.6%Pt
イタリア
シ ョッ クの前提
105円/ドル
⇒100円/ドル
16,200円
⇒14,900円
英国成長率
0.3%Pt低下
(注) グローバルモデル(Global VAR)による試算。円高ショック、株安ショックは、6月23日の
為替相場(中心相場)、株価(終値)をベースに、為替相場が100円/ドル、株価が約
14,900円になるショックが発生したと想定。英国GDP下振れの影響は、OECD試算によ
る英国のGDP下振れ幅に合致するように構造ショック(英国GDP)を設定して試算。
(資料) みずほ総合研究所作成
スペイン
日本
米国
0.00
0.02
0.04
0.06
0.08
(各国輸出の減少幅、%)
(注) 英国の内需が1%減少した場合に、各国・地域の輸出がどれだけ減少するかを
国際産業連関表により試算。
(資料) Timmer, M. P. et. al.(2015), “An Illustrated User Guide to the World Input–
Output Database: the Case of Global Automotive Production”,
Review of International Economics, 23: 575–605より、みずほ総合研究所作成
19
日本経済への影響② 急激な為替変動で輸出の下振れリスクも
◯ 6月は、米景気の先行きやBrexitに対する懸念を背景に、24日の英国民投票前から円高が進行。四半期ベースでは4~6
月期、7~9月期ともに、5%を上回る円高となる可能性が高い
‧ 急激な円高が生じた場合には、通常の為替変動に比べ輸出への影響が大きくなる傾向があり、要注意
――― 1四半期で5%超の円高は、過去の為替変動からみると10四半期に1回程度しか生じていないほど、急激な動き
【 実質輸出の為替感応度 】
【 実質実効為替レートの推移 】
(半年後までの累積、10%の為替変動の影響)
(実質輸出変動率、%)
円高 (2010年=100)
90
2.5
英国の
EU離脱が決定
7~9月平均
2.0
85
4~6月平均
80
75
1.5
2016年
1~3月平均
6.5%
円高
2015年
10~12月平均
6.2%
5.8%
円安 70
2015年10月
円高
円高
2016年1月
見通し
4月
7月
1.0
0.5
0.0
通常の為替ショック
(約5%以内)
(注)2016年6月以降の値は、27日時点のドル円相場見通しをもとに延長。
(資料)日本銀行「外国為替市場」より、みずほ総合研究所作成
急激な円安ショック
(約5%超)
急激な円高ショック
(約5%超)
(注)1.急激な円高(円安)とは、実質実効為替レートの変動が90パーセンタイル以上(10パー
センタイル以下)、つまり頻度でいえば2年半に1度起きるかどうかの上昇(下落)を想定。
2.輸出をショックが急激であるかどうかを考慮した実質実効為替レートと世界の鉱工業
生産で説明するモデルを推計。
(資料)日本銀行「外国為替市場」、「実質輸出入の動向」などより、みずほ総合研究所作成
20
日本経済への影響③ 100円割れで国内空洞化懸念再燃も
◯ 100円/ドルを上回る円高水準が定着すれば、国内空洞化懸念が再燃する可能性
‧ 足元の均衡為替レートは、調査によって幅があるが、おおむね100円/ドル台半ばとみられる。2014年度・2015年度の市場
レートは均衡レートよりも円安となったが、2016年度は円高水準に転じる可能性大
‧ 市場レートが均衡レートよりも円高になればなるほど、海外生産の動きは加速。仮に80~90円/ドルの為替水準が定着す
れば、2年程度のラグを持って、海外生産が明確に加速する可能性も
【 為替レートと海外生産比率の関係 】
【 円・ドルの市場レートと購買力平価 】
(円/ドル)
160
購買力平価(円/ドル)
(%) 円安
40
(海外生産比率の変化、過去2年平均・2年ラグ、%Pt)
3.0
140
見通し 30
2.5
120
20
2.0
10
1.5
80
0
1.0
60
▲ 10
0.5
40
▲ 20
100
20
0
市場レート(円/ドル)
市場レートの購買力平価からのかい離
(右目盛)
▲ 30
▲ 40
2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016
円高
(年度)
(注) 購買力平価はOECDによる推計値(暦年値)。2016年度の市場レートは27日時点の
暫定的な予測値。2016年度の購買力平価は2015年度から横ばいと想定。
(資料) OECDなどより、みずほ総合研究所作成
y = ‐0.06 x ‐ 0.36 R² = 0.41 0.0
▲ 0.5
▲ 40
円高
▲ 30
▲ 20
▲ 10
0
(市場レートの購買力平価からのかい離、%)
円安
(注) 1997年度から2015年度の値。海外生産比率の変化は、前年比の過去2年平均・2年ラグ
とした。
(資料) 内閣府「企業行動アンケート調査」、OECDなどより、みずほ総合研究所作成
21
日本経済への影響④ 金融市場の不確実性上昇で設備投資に1%の下押しも
◯ 英国国民投票後の金融市場での不確実性上昇により、設備投資には1%弱の下押し圧力が生じる可能性
‧ 日経平均株価のヒストリカル・ボラティリティ(過去20日間)は、英国国民投票後に大きく上昇。これによる設備投資への影
響を試算すると、約1年後には設備投資の水準が0.7~0.8%押し下げられるとの結果に
【 金融市場での不確実性の高まりによる
設備投資への影響(累積)】
【 2016年の日経平均株価のヒストリカル・ボラティリティ 】
(%)
70
(%)
0.0
▲ 0.1
60
▲ 0.2
国民投票後にボラティリティが上昇
50
▲ 0.3
▲ 0.4
40
▲ 0.5
▲ 0.6
30
▲ 0.7
20
▲ 0.8
▲ 0.9
10
0
0
1/1
2/1
3/1
4/1
5/1
6/1
(注) 過去20日間の株価のボラティリティを年率換算したもの。
(資料)日経NEEDSより、みずほ総合研究所作成
(月/日)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11 12 13 14 15
(カ月後)
(注) 1.6月1日~23日までの株価のボラティリティ(過去20日間のヒストリカル・ボラティ
リティ)をベースとし、24日以降のボラティリティの高まり(28日以降は27日から
横ばいと想定)による月間ボラティリティの上昇による設備投資への影響を試
算。
2.試算の詳細は、市川雄介「不確実性の増大と景気への影響」 (2015年9月11
日)を参照。
(資料)経済産業省、日経NEEDSなどより、みずほ総合研究所作成
22
3.各国政策対応の展望
~為替動向しだいでは協調介入、追加緩和の可能性~
23
金融政策への影響 米利上げ期待が大幅後退。ECBは緩和効果見極め姿勢を維持
◯ 英国国民投票の結果を受け、市場の米利上げ期待が大きく低下。FRBは国際経済、金融動向を注視しており、市場が落
ち着きを取り戻すまでは利上げは困難との見方が増加
◯ ECBは、次回7月21日の政策理事会に向け市場を注視
‧ 追加利下げを含む追加緩和策に対するハードルは依然高く、急速な市場変動がなければ、緩和効果見極め姿勢を維持
‧ 危機対応としては、ユーロやドルの流動性供給が中心となる公算大
【 最近のECB高官の追加利下げに関する発言】
【 米利上げ確率 】
100%
90%
7月FOMC
9月FOMC
11月FOMC
12月FOMC
80%
プラート専務理事
70%
60%
50%
ドラギ総裁
40%
30%
20%
コンスタンシオ副総裁
10%
0%
16/1
16/2
16/3
16/4
16/5
金利政策は引き続き政策手段の中にある。しか
し、将来的に更にマイナス金利を拡大するの
4月29日 は、インフレ見通しに顕著な悪化が見られた場
合だ。今のところ、我々はそうした状況が現実化
するとは考えていない。
均衡金利が非常に低く、中央銀行がそれを十分
に下回る水準まで政策金利を引き下げる
ことが出来ない場合、短期金利変動による刺激
6月9日 効果は限定的となる。・・(中略)・・実際として、
貯蓄や投資を決めるのは一つの(政策)金利
だけでは無い
年を通じてマイナス金利であった2015年において
も、銀行の純金利収入は増加した。それでも、もし
6月15日
長期にマイナス金利を維持しようとすれば、そ
の使用には限界がある。
16/6
(資料)ECBより、みずほ総合研究所作成
(注)FF金利先物から計算した、各会合までに1回以上利上げされている確率(累計)。
(資料)Bloomberg より、みずほ総合研究所作成
24
日銀は為替動向しだいで臨時会合を開催、追加緩和を行う可能性
◯ 日銀が重視する物価の基調を示す指標(生鮮食品・エネルギーを除く消費者物価指数等)は足元低下。円高地合いが継
続すれば2017年度中の物価目標達成が困難となるため、追加緩和が行われる可能性が高まる
‧ 為替動向しだいでは臨時会合で追加緩和が決定される可能性も
◯ 追加緩和策としてETFや社債等の買入れ拡大、ドル資金調達サポートなどを予想。マイナス金利幅拡大のハードルは
高いものの、金融機関向け貸付金利へのマイナス金利適用とセットでの更なる利下げの可能性も
【 追加緩和の選択肢 】
【 物価の基調を示す指標 】
QQE導入
(2013年4月)
(前年比:%)
追加緩和
(2014年10月)
マイナス金利
(2016年1月)
1.5
緩和策
効果
1.0
0.5
○
ETF・REIT買い増し
(現状:ETF 年3兆円、REIT ・ポートフォリオリバランス進展
年900億増)
・日銀バランスシートの損失懸念
◎
国債買い増し
(現状:年80兆円増)
・実質金利の引き下げ
・国債市場の流動性低下
・政策の限界が意識されやすい
△
・企業の資金調達コスト引き下げ
・社債市場の規模(約50兆円)から、
買入れ拡大余地は限定的
○
・貸出金利引き下げ競争につながる
可能性
○
-
◎
・実質金利の更なる引き下げ
・円高進展の歯止め
0.0
▲ 0.5
▲ 1.0
総合(除く生鮮食品・エネルギー)
▲ 1.5
可能性
・金融機関収益、消費マインドへの
影響
・米国のドル高修正スタンスが変わ
らなければ円安効果の期待薄
マイナス金利の
拡大(現状:▲0.1%)
10%刈込平均値
問題点
(%ポイント)
50
40
30
20
10
0
▲ 10
▲ 20
▲ 30
▲ 40
▲ 50
上昇品目比率-下落品目比率
11
12
13
14
15
16
(暦年)
(注)10%刈込平均値:値の大きい品目と小さい品目をウェイトベースで
それぞれ10%控除して算出。
(資料) 日銀より、みずほ総合研究所作成
CP・社債等買い増し
(現状は残高維持:社債 3.2
兆円、CP 2.2兆円)
金融機関向け貸付金利への
マイナス金利適用
(現状0.0 %)
成長基盤融資(米ドル特則)
の拡充(現状120億米ドル、
6カ月Libor)
・金融機関の貸出増と資金調達
コスト引き下げ効果
・金融機関のドル資金調達、企業の
海外展開をサポート
(資料)みずほ総合研究所作成
25
ドル調達コスト上昇に伴う政策対応も選択肢
◯ 英国のEU離脱、政府の消費増税先送りなどを要因に通貨スワップで見たドル調達コストは上昇
‧ 日銀のドル特則の拡充や、外貨準備等の活用による金融機関、企業のドル調達サポート等が選択肢に
【 ドル調達コストの推移 】
(%)
1.4
1.2
ベーシススワップ
1.0
金利差
ドル調達コスト
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
13/1
13/4
13/7 13/10 14/1
(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成
14/4
14/7 14/10 15/1
15/4
15/7 15/10 16/1
16/4
(年/月)
26
各国の政策協調、為替介入の可能性
◯ G7財務相・中央銀行総裁会議は24日、金融安定で協力することを確認する共同声明を発表
◯ 今後の為替相場しだいでは、協調介入が行われる可能性も。ドル円相場が急速に円高に進む場合、政府・日銀が介入
する可能性も
‧ 米財務省は為替報告書(4/28)で為替政策に関する監視リスト対象国を公表し、各国の為替政策をけん制
【 為替政策の評価軸と各国の現状(為替報告書より) 】
評価軸
大幅な対米貿易黒字
大幅な経常黒字
持続的・一方的な
為替介入
主な基準
対米貿易黒字が
200億ドル超
経常黒字が
GDPの3%超
1年間のネット為替
介入額が
GDPの2%超
単位
(億ドル)
(%)
(%)
中国
3,657
3.1%
▲3.9%
【 過去の介入実績 】
(兆円)
(円/ドル)
介入額
10
150
ドル円相場(右目盛)
9
140
8
130
7
120
6
ドイツ
742
8.5%
-
110
5
100
4
日本
韓国
台湾
686
283
149
3.3%
7.7%
14.6%
(注)図表上の数値は2015年の数値。
(資料)米国財務省「為替報告書」より、みずほ総合研究所作成
0.0%
0.2%
2.4%
90
3
2
80
1
70
0
92
94
96
98
00
02
04
06
08
10
12
14
60
16 (年)
(資料)財務省、日本銀行より、みずほ総合研究所作成
27
欧州で高まる政治リスク
◯
‧
◯
‧
英国のEU離脱を受けて、域内のEU懐疑政党の勢力は伸長
現時点のEU懐疑政党の下院選挙での得票率をみると既に過去最高水準まで上昇
2017年のEUは選挙の年、3月のオランダ下院選挙の結果が最も注目
フランス大統領選挙では国民戦線の台頭に注目。オランダ下院選挙は比例代表制であり、EU懐疑的な自由党が躍進す
る可能性
【 EU懐疑政党の下院選挙得票率 】
【 欧州の今後の政治日程 】
(%)
2016年
6月28・29日
EU首脳会合
16
7月8日・9日
NATOサミット
14
7月21日
ECB政策理事会
9月8日
ECB政策理事会
10月20日
ECB政策理事会
18
12
10
8
6
10月20・21日
4
12月8日
2
12月15・16日
0
80
85
90
95
00
05
10
15
(年)
(注)各国下院選挙におけるEU懐疑政党の得票率の単純平均値。対象とした政党は以下
の通り。イタリア:イタリア社会運動、国民同盟、北部同盟、五つ星運動。フランス:
国民戦線、ベルギー:ブラームス・ブラング、オーストリア:自由党、オランダ:自由党、
デンマーク:国民党、フィンランド:真のフィン人、ノルウェー:進歩党、スウェーデン:
民主党、ギリシャ:シリザ、黄金の夜明け、ハンガリー:ヨッビグ、英国:独立党。
選挙の結果のみを反映し、各選挙の間の期間の得票率は同率としている。2回投票
がある場合は初回投票、比例と小選挙区並立の場合は比例部分。
(資料) INTER-PARLIAMENTARY UNION PARLINE Database、European Election
Database、Wikipediaより、みずほ総合研究所作成
2017年
EU首脳会合
ECB政策理事会
EU首脳会合
3月15日
オランダ下院選挙
4月23日
フランス大統領選・初回投票
5月7日
同決選投票
8月27日~10月22日
独連邦議会選挙
(注)EU首脳会合と、ECB政策理事会は2016年の予定のみ
(資料)ECB、European Council等より、みずほ総合研究所作成
28
(ご参考)今後の主要政治経済日程
国
際
2016 年 (23-24)G20(財務大臣・中銀総裁会議)
7月
米
国
(8)米雇用統計
欧
州
(21)ECB政策理事会
(18)米共和党全国大会
日
本
(1)日銀短観(6 月調査)
新興国
(2) オーストラリア連邦議会選挙
(28-29)金融政策決定会合
(25)米民主党全国大会
(展望レポート)
(26-27)連邦公開市場委員会
(10)参院選投開票
(月内)FRB議長半期議会証言
(31)東京都知事選
8月
(5-21)リオデジャネイロ夏季五輪
(5)米雇用統計
(11)新たな祝日、山の日
(7)タイ憲法草案国民投票
9月
(4-5)G20 首脳会議(中国・浙江省
(2)米雇用統計
(8)ECB政策理事会
(20-21)金融政策決定会合
(9 月頃) 香港議会選挙
(20)ECB政策理事会
(3)日銀短観(9 月調査)
(1)中国人民元SDR採用
(6-7)金融政策決定会合
(秋)中国六中全会
杭州市)
10 月
(11)米同時多発テロ事件から 15 年
(月内)国連総会
(20-21)連邦公開市場委員会
(6) G20(財務大臣・中銀総裁会議)
(7)米雇用統計
(7)IMF・世銀年次総会(ワシントン)
(31-1)金融政策決定会合(展望レポート)
(秋)補正予算(経済対策)編成見込み
11 月
(1-2)連邦公開市場委員会
(4)米雇用統計
(8)米大統領選挙
12 月
(2)米雇用統計
(13-14)連邦公開市場委員会
2017 年
予定
(8)ECB政策理事会
(14)日銀短観(12 月調査)
(15-16)EU首脳会議
(19-20)金融政策決定会合
(3 月)蘭議会選挙
(7 月)木内委員・佐藤委員任期満了
(月内)中国中央経済工作会議
(2 月頃)香港行政長官選挙
(4~5 月)仏大統領選挙
(秋)第 19 期中国共産党大会
(9~10 月)独議会選挙
(12 月頃)韓国大統領選挙
(年内)タイ総選挙の可能性
(注)1.スケジュールは一部未定
(注)2.( )内は日付
(資料)みずほ総合研究所作成
29
4.まとめ
○ 英国のEU離脱決定による不確実性の高まりから金融市場はリスクオフの展開。ただし、欧銀
英銀のCDSスプレッドは年初より低水準にあり、現段階では金融危機的状況ではない
○ 英国のEU離脱はリーマン・ショックと異なり金融危機に波及する可能性は低い。金融規制等
により金融システムは健全化。ただし、各国の財政・金融政策余地が限られる中、英国とEU
との協議長期化などで不透明感が高まれば、世界経済にとってマイナスの影響
○ 米国株は投資家心理の悪化を背景に更なる下落リスクが残存。日本株はドル円100円割れ
が定着すれば一段の下落も。長期金利は世界経済の先行き不透明感から引き続き低下圧力
がかかる可能性。為替市場ではFRBが利上げに慎重な姿勢を続ける中、ドル高圧力は高ま
りにくい
○ 円高・株安が日本経済の下押し圧力に。日本の実質GDPは0.6%程度の下押し圧力がかか
ると試算。急激な円高が生じた場合、通常の為替変動に比べ輸出への影響が大きくなる傾向。
円高が定着すれば、国内空洞化懸念が再燃する可能性も。不確実性の高まりは設備投資の
下押し圧力に
○ 円高が急激に進む場合は、政府・日銀による為替介入や、臨時会合による日銀の追加緩和
が行われる可能性。ドル調達コストの高まりに対応した政策対応が選択肢に
30
(※) 本資料は、みずほ総合研究所調査本部が作成した。
〔本資料に関する問い合わせ先〕
みずほ総合研究所 調査本部
TEL :03-3591-1249
本資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり、取引の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、弊社が
信頼に足り且つ正確であると判断した情報に基づき作成されておりますが、弊社はその正確性・確実性を保証するものではあ
りません。本資料のご利用に際しては、ご自身の判断にてなされますようお願い申し上げます。
31