-吉田 典代- 不動明王は、密教独自の尊格である「明王」の中の一人です。明王は、仏陀や 菩薩が悪人を教え諭すために、あえて恐ろしい姿に変身した状態をいいます。 「あ いつは悪人だから、もう放っておこう」とは思わないで、何とか正しい道に導こ うとするのです。明王の多くは見た目が怖い姿をしていますが、実は仏陀の慈悲 を体現しているのです。 密教は、平安時代初期に日本にもたらされました。不動明王像は、まず東寺や 金剛峰寺などの密教寺院に祀られ、以後、広く普及していきます。最初はいかめ げ ぼ く しく重厚に造られましたが、やがて修行者の下僕となって助けたり、信者の身代 わりになったりする説話が生み出され、庶民にも「お不動さん」として親しまれ るようになりました。 不動明王の姿は経典に規定されていますが、必ずしもそれにとらわれず、いろ いろな変化形が造られています。そこで、経典の規定、中国から到来した形、日 本において独自に展開した姿や信仰など、広く紹介していきます。 弘法大師(空海)請来の不動明王像 日本で考案された不動明王像(頭部)
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