null

結晶の振動を解析する
エレクトロニクス材料評価技術
*熱伝導=原子の振動の伝導
*熱輻射=電磁波による原子の振動
理工学部・材料機能工学科
岩谷 素顕
[email protected]
原子レベルで原子の振動を考える。
10-2
10-1
結晶における原子の振動の仕組み
赤外分光
赤外線吸収からは格子振動の情報が得られる
以前
波長分散型赤外分光器
:結合を表す。
最近
FTIR(フーリエ変換赤外分光)
R
10-3
NaCl
原子間距離をRとする
10-4
透過率・吸光度の関係
赤外分光の原理
反射は無視できるとする
透過率 [%]
Pi
吸光度:  log10
P0
P
透過率: i
P0
Wavelength [μm]
3.3
10
透過率(Transmittance);光学および分光法において、特定の波長の入射光が試料を通過する割合
吸光度(Absorbance):分光法において、ある物体を光が通った際に強度がどの程度弱まるかを示す
無次元量
試料
入射光:P0
ランベルト・ベールの法則
透過光:Pi=P0exp(-d)
(波数 [cm-1])
赤外光と紫外・可視光の吸収の違い
分子の振動や回転の状態を変化させるのに必要なエネルギー
(赤外光の波長)は、物質の化学構造によって異なる
⇒物質に吸収された赤外光を測定すれば、化学構造や状態に関
する情報を得ることができる。
d
10-5
10-6
赤外線分光・ラマン測定では
一般的に波数(cm-1:カイザー)を用いる
k
1
測定原理:赤外分光
赤外線の吸収スペクトルは分子の振動に関係
分子が赤外線の領域で光を吸収する条件:分子が双極子モーメントを持つ
:エネルギーを扱う場合に使う(今回はこちら)

2 :波を扱うときに使う
k

双極子モーメントをもつための条件
逆対称伸縮運動
演習:1cm-1は何Jか?またeVでも計算しなさい。
h  h
1
c

1cm 
より
6.626 10 34  3.0 108

 1.99 10  23[ J ]
4
電気陰性度に差がある
(双極子モーメントがある)
 1.24 10 [eV ]
10-7
10-8
振動(反対称的な伸縮振動や変角振動)
により双極子モーメントが誘起
代表的な振動エネルギー
振動
波数 [cm-1]
対称伸縮振動
3652
非対称伸縮振動
3756
変角振動
1595
逆対称伸縮振動
2349
分子
H2O
CO2
対称伸縮
半対称伸縮
FTIRの測定手法
日本分光のHPから
変角
逆対称伸縮振動
10-9
結合によって振動エネルギーは異なる
10-10
実際のデータ
ラマン分光
ラマン活性な分子振動や格子振動を検出でき、物質の同定、
評価が可能
得られたスペクトル
10-11
解析によって分子構造を決定する
C. V. Raman
(1930; ノーベル物理学賞)
10-12
散乱のメカニズム
光の散乱のメカニズム
入射光݄νi
電子雲
原子核
電場の影響がない原子
散乱光 hνi
(レイリー散乱:Reyleigh散乱)
誘起双極子
モーメント
光により電場
が生じる
電場下の原子
光の電場による作用
原子
電場下では電子雲が歪み、双極子モーメントが生じる
10-13
10-14
ラマン散乱の原理
入射光の振動する電場によって誘起双極子モーメントが振動すること
で、入射光と同じ振動数の散乱光が放射される
ラマン散乱の原理
実際の結晶では原子核が振動している(振動数 ν≪νi )
光の電場の振動(νi )と原子核の振動(ν)で“うなり”が生じる
ν0+νi ラマン散乱
(アンチストークス散乱)
入射光 hν0
ν0 レイリー散乱
双極子モーメントの振動に(νi+ ν)と(νi-ν)の成分が生まれる
分子振動エネルギー hνi
ν0-νi ラマン散乱
(ストークス散乱)
ストークス散乱:入射光に対して光のエネルギー
が減少する方向にシフトすることを呼ぶ
10-15
10-16
ラマンシフト量の計算方法
代表的な測定例
励起波長
励起波長
ラマン散乱(ストークス散乱)
ラマン散乱
(アンチストークス散乱)
ラマン散乱(ストークス散乱)
ラマン散乱
(アンチストークス散乱)
演習:このピークのラマン
シフト量を計算しなさい
544
544
538
532
526
波長[nm]
538
519
10-17
532
526
波長[nm]
519
10-18
解答
詳細な測定結果
励起波長
538nmの波数は?
1
 18587cm 1
7
538 10 cm 
ラマン散乱
(アンチストークス散乱)
ラマン散乱(ストークス散乱)
532nmの波数は?
1
 18796cm 1
7
532 10 cm 
よってラマンシフト量: 209 ㎝-1
10-19
実際にはもう波長分解能をあげて精度を高める
ラマンシフト[cm-1]
473
219
0
-219
-473
波長 [nm]
544
538
532
526
519
10-20
演習:538nmの格子振動のエネルギー
はいくらか?eVで求めなさい。
ラマンシフトで何が測定できるか?
209×1.240×10-4=0.0259eV
10-21
10-22
実際の測定構成
日本分光のHPより
測定の具体例
見た目の異なる2つの
サビ、Aはβ-FeOOH、
BはFe3O4という構造の
違いを確認できる
10-23
10-24
ラマン散乱による結晶性の評価
アモルファスSi
Diamond
ラマン強度
ラマン強度
ポリSi
単結晶Si
波数(cm-1)
演習: 結晶構造の異なるSiにおいてラマン散乱の結果が
以下のようになる理由を定性的に考え答えよ。
1,332[cm-1]
=165 [meV]
Graphite
DLC
波数(cm-1)
10-25
10-26
ラマン散乱における選択則
GaAs(100)
FTIRとラマン測定の違い
ラマン強度
ラマン強度 吸/光度
LO
LO:Longitudinal Optical
(縦波光学モード)
TO:Transverse Optical
(横波光学モード)
GaAs(110)
TO
GaAs(111)
LO+TO
波数 [cm-1]
10-27
波数(cm-1)
10-28
分子子振動のうちスペクトル上に現れる振動モードと現れない振動モードがあり,
吸収による赤外分光法と散乱によるラマン分光法では現れ方が異なる
⇒赤外光を吸収しない振動モードでもラマン散乱が起こる場合やその逆、また両
方に現れる場合がある。このことは「選択律」と呼ばれる。
結晶の光学定数を測定する
エリプソメトリ
エリプソメトリとは物質の表面で光が反射するときの偏光状態の変化
(入射と反射)を観測し、そこから物質に関する情報を求める方法
分光光度計
透過率スペクトルから、吸光度を求め
ることができます。吸光度と濃度の関
係を検量線として、分析に使う。
10-29
10-30
偏光とは?
 電界ベクトルEと磁界ベクトルHは直交している
 磁界Hを含む面を偏光面、電界Eを含む面を振動面と呼ぶ
 光は電磁波
波の進行方向
波長
 電磁波には時間とともに振動する電界と磁界があっ
て、それらが空間的にも振動しながら伝わっていく。
電界も磁界も大きさと向きをもっておりベクトルで表さ
れる。電界ベクトルと磁界ベクトルの向きは互いに直
交している。
 電界(または磁界)ベクトルの振動の向きが一定の面
内にある場合を直線偏光と呼ぶ。
E
H
10-31
10-32
s偏光・p偏光
XY面を境界面としてZの正負で媒質が異な
るとする。面に垂直な線を法線と呼ぶ。
境界面に入射角Ψ0で光が入射する。
光の一部は境界面で反射し、一部は境界
面を透過する。反射角をΨ1、透過光の屈折
角をΨ2とする。
境界面に垂直で入射光・反射光を含む面を
入射面と呼ぶ。
等方性媒質1(誘電率ε1、屈折率n1)から等方性媒質2(誘電率ε2、屈折率n2)に
向かって、平面波の光が入射するときの反射と屈折を考える。両媒質は均質で
あり、それぞれの媒質の比誘電率はε1、ε2 であるとする。
ψ0
p偏光、s偏光に対するフレネル係数は異なり
rp  K 2 cos  0  K 0 cos  2  / K 2 cos  0  K 0 cos  2 
rs  K 0 cos  0  K 2 cos  2  / K 0 cos  0  K 2 cos  2 
エリプソメトリ(偏光解析)
rs

cos  0   2  rs

exp( i )  tan  exp i 
cos  0   2  rp
媒質2
境界面から媒質2の中に向かう法線方向をz軸にとる。光の入射面はxz面内
にあるとする。入射光と法線のなす角(入射角)をψ0、反射光の法線となす角
をψ1、媒質2へと屈折する光の法線となす角をψ2 とする。
10-34
rp
媒質1
ψ2
p偏光:入射面内で電界が振動する偏光をp偏
光と呼ぶ。pはparallelの頭文字。
s偏光:入射面に垂直に電界が振動する偏光
をs偏光と呼ぶ。sはsenkrecht(ドイツ語で垂直
の意味を表す)の頭文字。
10-33
ψ1
K0、K1、K2はそれぞれ入射光、反射光、屈折光の波動ベクトル
エリプソメトリ
直線偏光の光を照射
s 偏光とp 偏光の位相差: ∆
s 偏光とp 偏光の反射振幅比角:tanψ
ψ: azimuth (方位角)
Δ: phase (位相差)
(反射波) 楕円偏光
反射光は一般には楕円偏光になっているが、そのp成分とs成分の
逆正接角Ψと位相差Δを測定することによって、補正する。
測定試料
10-35
10-36
エリプソメトリで測定可能な物性値
その他
 試料の屈折率n・消衰係数κ
 光の分解能を超えた測定が可能
 試料の膜厚
SNOM
円二色性分散計
⇒実際には計算モデルを立ててフィッティングによって
各物性パラメータを算出していく
10-37
10-38
今日の講義のまとめ
 光を使った材料の評価技術
FTIR
ラマン
分光光度計
エリプソメトリ
10-39