原油価格を知る~変動要因 ③:OECDの需要

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ピクテ・グローバル・マーケット・ウォッチ 2016年6月14日
グローバル
Pictet Global Market Watch
原油価格を知る~変動要因③:OECDの需要
経済協力開発機構(OECD)加盟国の原油需要は世界全体の53%に相当しますが、経済の成熟化を背景に原油
需要の伸びは鈍化傾向にあります。自動車の燃費向上やバイオ燃料の利用促進、経済に占めるサービス産業の
割合が高いことなどが原油需要を抑える要因になっており、今後需要の大幅な増加は見込みにくいと見ています。
原油価格を左右する6つの要因
図表I: 原油価格要因マップ
原油は資源の中でも主要な商品であり、原油価格の変
動は金融市場や実体経済に大きな影響を及ぼす場合
があります。2016年年初は原油価格の変動が金融市場
混乱の一因となりました。原油価格は金融市場はもちろ
ん、ガソリン価格や原材料費などを通して私たちの生活
にも影響を与えます。原油価格は様々な要因の影響を
受けて変動しますが変動要因としては、以下の大きな6
つの要因が挙げられます(図表I参照)。
供給
①OPEC
需要
⑤需給
バランス予測
③OECD
原油価格
①OPEC(石油輸出国機構)の供給、②非OPECの供給、
③OECD(経済協力開発機構)諸国(主に先進国)の需
要、④非OECD諸国(主に新興国)の需要、⑤需給バラ
②非OPEC
⑥金融市場
④非OECD
ンス予測、⑥金融市場動向の6つです。①~⑤のような ※OECD:経済協力開発機構 ※OPEC:石油輸出国機構 出所:米エネ
需給動向はあらゆる市場と同様に原油価格の影響を図 ルギー情報局(EIA)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
る上でも基本となる事項ですが、加えて、⑥のような米
ドル為替レートや投機筋の動向なども影響を及ぼして
④非OECD諸国( 主に新興国)の消費量の伸びは、
います。
OECD諸国(主に先進国)を大きく上回り、年々影響度
原 油 の 価 格 動 向 に 大 き な 影 響 を 与 え て い る の が が大きくなっています。非OECD諸国の経済成長率は
①OPECの供給動向です。OPECは世界の輸出取引量 原油需要に影響を及ぼし、原油価格を左右する大きな
を見ると世界の約6割を占めています。また、生産目標 要因となっています。特に、中国の原油消費量の伸び
を掲げ、生産調整を行うため、なかでも生産量の多いサ が世界の原油消費量の伸びをけん引しています。
ウジアラビアの影響度が大きくなっています。
⑤需給バランスを見る上で、原油在庫は重要な指標で
②非OPECの供給に関しては、民間企業が主体である あり、需給を均衡させる役割を果たしています。原油や
ため、OPECと異なりほぼフル稼働で生産を行う傾向が 石油製品は、生産が消費を上回る局面では、予想され
あります。非OPECの供給が低水準となれば、OPECに る将来の利用に備えて在庫が増加します。一方、消費
増産が求められることとなり、OPECの価格影響力が増 が生産を上回る局面では在庫を取り崩すことによって
すこととなります。
不足分を補っています。原油在庫は緊急時のためのス
③OECD諸国(主に先進国)の需要は世界の原油消費 トックと見なされています。
量全体の53%に相当しますが、消費量の伸び率は非 ⑥実需筋、投機筋の原油先物市場動向、インデックス
OECD加盟国(主に新興国)を大きく下回ります。経済全 ファンドや株式、債券、為替、その他商品市況なども影
体に占めるサービス産業の割合が原油等の燃料を消 響を及ぼすと考えられています。
費する製造業を上回る傾向が見られ、原油価格の変動
が原油需要に及ぼす影響が比較的小さいのが特徴で
す。更に、省エネ化の進展とともにその影響度は相対 ※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変
的に小さくなってきています。
更される場合があります。
ピクテ投信投資顧問株式会社
巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。
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供給
③【需要】OECD
①OPEC
先進国を中心としたOECDの需要は世界全体の需要の
半分を占めますが、需要の伸びは鈍化傾向です。
主なポイントは1)需要の伸びの鈍化、2)経済の成熟化、
などです。
経済協力開発機構(OECD)は、米国、欧州諸国、なら
びにその他先進国で構成されます。2010年のOECDの
原油消費量は、世界の原油消費量全体の53%に相当
します。OECD加盟国は、OECD非加盟国以上に石油
を消費する一方で、原油消費量の伸び率はOECD非加
盟国を大きく下回ります。2000年から2010年までの10
年間には、OECD加盟国の原油消費量が減少する一
方で、OECD非加盟国の消費量は40%増加しています。
OECD加盟国の原油消費量は、OECD非加盟国とは対
照的に原油価格が上昇した2006年から2009年にかけ
て減少しました(図表3-1参照)。特に、同期間の間に
発生した金融危機による景気後退期にはその傾向が
顕著に見られました。経済成長の伸びの鈍化に加え、
輸送セクターが成熟していることが要因となり、原油価
格の変動が消費量に与える影響は、OECD非加盟国よ
りもOECD加盟国でより強く表れる傾向があります。
③OECD
原油価格
②非OPEC
経済と輸送セクターの成熟化で原油需要
の伸びは鈍化傾向
需要
⑤需給
バランス予測
⑥金融市場
④非OECD
図表3-1: OECD加盟国の液体燃料消費量の伸び率
と原油価格の推移
四半期、期間:2001年1-3月期~2017年10-12月期(予想)
6%
4%
米ドル/バレル
OECDの消費変化量(左軸、前年同期比)
予想
原油価格(右軸)
150
100
2%
50
0%
0
-2%
-50
-4%
-100
-6%
01年3月
-150
05年3月
09年3月
13年3月
17年3月
※2016年4-6月期以降は予想
※原油価格:WTI原油先物
出所:米エネルギー情報局(EIA)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
当ページのデータは過去の実績であり、将来の成果等を示唆あるいは
保証するものではありません。
OECD加盟国の経済構造が原油消費量
の伸びを抑制
OECD加盟国の経済状況は、原油価格、経済成長、原
油消費量に影響を及ぼします。先進国では、国民一人
当たりの自動車保有台数が相対的に多く、国の原油
消費量全体に占める輸送セクターの割合がOECD非加
盟国と比べて高くなる傾向があります。また、輸送セク
ターの成熟度が相対的に高く、自動車の保有台数の
伸びしろが小さいため原油消費量の伸びはより緩やか
です。したがって、モノと人の移動に影響を及ぼす景気
変動や政策がOECD加盟国の原油消費量に大きな影
響を与える傾向があります。OECD加盟国の多くは燃
料税率が相対的に高い上に、新車の燃費改善やバイ
オ燃料の普及を促す政策を導入しており、好況期にも
原油消費量の伸びを抑える一因となっています。また、
OECD加盟国には、経済全体に占めるサービス産業の
割合が原油等の燃料を消費する製造業の割合を上回
る傾向が見られます。そのため、高い経済成長であっ
てもOECD非加盟国ほど原油消費量には影響しない傾
向があります。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内
容が変更される場合があります。
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原油価格上昇の予想が将来的な原油需
要を抑える要因になることも
OECD加盟国では最終消費者に対する補助金制度が
殆ど導入されていないため、原油価格の変動が消費
者価格に即刻反映されます。しかし、原油価格の変動
に対応し、移動手段を変えたり自動車の在庫を圧縮し
てエネルギー効率を改善するには、一定の時間が必
要です。そのため、将来の原油価格予想も、移動手段
と自動車の購入についての消費者の判断に影響を及
ぼします。原油価格が高止まりする、あるいは、一段と
上昇すると予想するならば、より多くの消費者が燃費
がよい車を購入したり、公共交通機関を利用すると思
われますが、このような判断は将来の原油需要を減少
させ、原油価格の上昇を抑える一因となります。
図表3-2は原油消費量の伸び率、世界のGDP成長率
(潜在的な原油消費量の伸び率を測る指標)、原油価
格を表しています。2005年から2008年にかけて高い経
済成長率であったにも関わらず、同期間の原油消費量
の伸びは低水準に留まりました(図表3-2青丸部分参
照)。原油価格の上昇により、OECD加盟国の消費量
が低下したことが、世界全体の消費量の伸びを抑制し
た一因と思われます。足元では、景気回復期待を背景
に、OECD加盟国の緩やかな原油消費量の伸びが予
想されています。
図表3-2: 世界の液体燃料消費量、GDPならびに
原油価格の推移
四半期、期間:2002年1-3月期~2017年10-12月期(予想)
8%
6%
米ドル/バレル
予想
200
150
4%
100
2%
50
0%
0
-2%
-50
-4%
-100
-150
-6%
02年3月 05年3月 08年3月 11年3月 14年3月 17年3月
世界の液体燃料消費量の伸び率(左軸、前年同期比)
世界のGDP成長率(左軸、前年同期比)
原油価格(右軸)
※2016年1-3月期までは実績、2016年4-6月期以降は予想
※原油価格:WTI原油先物
出所:米エネルギー情報局(EIA)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
当ページのデータは過去の実績であり、将来の成果等を示唆あるいは
保証するものではありません。
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2016年の見通し変化~原油価格の
上昇要因が増加
図表II: 原油価格要因マップ 2015年
供給
①OPECの供給動向:OPECは原油価格の下落にかか
わらず2015年は増産に転じており、原油価格の下押し
圧力となりました。2016年年初来からは、原油の生産量
増加のモメンタムは低下し、生産余剰能力も低下が予
想されており、今後原油価格の上昇要因となると見られ
ます。
①OPEC
増加
⑤需給
バランス予測
③OECD
原油価格
下落
②非OPECの供給はシェールなどの非在来型の石油供
給の増加が牽引し増加しました。2016年に入って、コス
トが高い不採算油井の閉鎖などを背景に、増加のモメ
ンタムが急低下し、減少が予想されています。
③OECD諸国(主に先進国)の2015年の需要は原油価
格の下落を背景に増加しました。2016年は原油価格に
底打ち感も見られることから小幅増加が予想されます。
需要
増加
2015年年間
53.27ドル/バレル→37.04 -30%
増加するも
モメンタム低下
増加
②非OPEC
⑥金融市場
④非OECD
図表III: 原油価格要因マップ2016年 足元
④非OECD諸国(主に新興国)の2015年の需要はGDP
成長率の低下にもかかわらず、人口増、経済成長を背
景に消費量は引き続き増加しました。2016年も消費量
拡大が予想されます。
供給
需要
①OPEC
減少
⑤原油在庫を見ると、2015年は原油価格は現物価格以
上に先物価格が上昇し、将来的により高い価格で売れ
るとの思惑が働き、在庫は積み上がりました。2016年に
入ってからも在庫は高水準にありますが、足元では先
物価格以上に現物が上昇しており、在庫の取り崩しが
予想されます。
⑤需給
バランス予測
③OECD
小幅
増加
上昇
原油価格
年初来2016年5月31日まで
+32%の49.10ドル/バレル
②非OPEC
⑥金融市場
⑥金融市場を見ると、近年、原油価格とS&P500種株価
減少
指数の間には正の相関が見られる一方で、原油価格と
ドル・レートならびに米国国債との間には逆相関が見ら
マイナス要因
れます。2015年は、主要通貨に対してドル高傾向となり、
プラス要因
投機筋のネットポジションが低下するなど、原油価格に
はマイナス要因が多くなっています。2016年に入ってか
らはドル安傾向、投機筋のネットポジションは拡大して 図表IV:原油価格推移
月次、期間:1996年5月~2016年5月
おり、原油価格のプラスの要因が増加しています。(図
160 米ドル/バレル
表II、III参照)
④非OECD
増加
140
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内
容が変更される場合があります。
記載のデータは過去の実績であり、将来の成果等を示唆あるいは保証
するものではありません。
120
100
80
60
40
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96年5月
ピクテ投信投資顧問株式会社
00年5月
04年5月
08年5月
12年5月
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16年5月
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