Page 1 一 はじめに 借屋人が、都市の経済や都市文化のにない手として

鎌
田
道
隆
の体 面 を 保 つ つき あ い の出 費 も 少 く な か った 。 借 屋 人 な ら
町 触 と 町 規 則 に み る 近 世 京 都 の借 屋 人 問 題
はじ めに
経 費 も 、 家 持 町 人 の半 額 以 下 と いう こと が 多 か った 。 さ ら
ば 、 そう し た 外 面 を か ざ った り社 会 的 責 任 を 伴 った り す る
借 屋 人 が 、 都 市 の経 済 や都 市 文 化 の にな い手 と し て、 躍
に少 々 の蓄 財 でも 、 借 屋 人 な ら ﹁金 持 ち ﹂ と し て の自負 や
評 判 を 得 る こと が でき るが、家持 の仲 間 入り とな ると、も っ
動 的 な 姿 を みせ る の は江 戸 時 代 の こと であ る。 借 屋 と い う
居 住 形 態 は、 古 代 か ら現 代 ま で、 都 市 でも 農 村 でも み ら れ
に、 ﹁世 界 の借 家 大 将 ﹂ と いう お も し ろ い話 が あ る。 借 屋
井 原 西 鶴 の ﹃日本 永 代 蔵 ﹄ (一六 八 八 年 刊 ) 巻 二 の 冒 頭
読 ま せ る こと の方 が 多 いと い ってよ い。 近 世 都 市 では家 屋
﹁か し や﹂ と読 ま せ る。 む し ろ借 屋 と書 い て ﹁か し や ﹂ と
借 屋 と いう 文 字 は、 江 戸 時 代 に は ﹁し ゃくや﹂と とも に、
と 巨 額 の蓄 財 家 が 多 く 、 な か な か 注 目 さ れ る こと は な い。
人 で あ り な が ら 、 大 金 持 と の 評判 の高 い店 借商 人 の藤 市 が、
敷 を 所 持 す る 者 が 町 人 と よば れ 、 町 共 同 体 の正 規 の構成 員
る と ころ であ るが 、 江 戸 時 代 の都 市 借 屋人 の歴 史的 意 義 は、
ふ と し た こと か ら 家 屋 敷 を 手 に 入 れ て家 持 町 人 と な って し
と いう た てま え を と って いた 。 都 市 を 支 配 す る 領 主 層 も、
こ こ に借 屋 大 将 藤 市 の コ 生 の不 覚 ﹂ 観 の背 景 が あ る。
ま い、 これ を 一生 の不 覚 だ と悔 む 話 であ る。 江戸時 代 には、
法 令 な ど は家 持 町 人 を 対 象 に発 布 す る のが 通 例 であ った。
と り わ け 注 目 す べき こと で あ る。
市 民 権 を 認 め ら れ て い る家 持 町人 は 、 課 税 さ れ る さま ざ ま
借 屋 人 に対 す る統 制 は家 持 町 人 (家 主 ) を 通 じ て行 な わ れ
かし や
な 公 費 を 負 担 し な け れ ば な ら な か った し 、 ま た 町 人 と し て
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1
一
た 。 借 り る側 の立 場 では な く 、 家 屋 敷 を 貸 す側 の立 場 か ら
何 事 も 発 想 さ れ 、 発 動 さ れ た と こ ろ に、 ﹁し ゃく や ﹂ を
人 の位 置 け は、 徐 々 に では あ る が都 市 生 活 者 と し て の借 屋
し か し 、 近 世 都 市 にお け る こ う し た建 て前 と し て の借 屋
書 ・記録 に登場 し てく る。 町共 同 体 の 町規 則 成 文 法 のも っ
都 市 民 側 と権 力 側 の 双方 か ら 明瞭 に意 識 さ れ た か たち で文
る天 正 ・文 禄 ・慶 長 ・元和 ・寛 永 期 に は、 借 屋 層 の所 在 が
近 世 統 一権 力 の登 場 に よ って、 近 世 都 市 の形 成 が進 捗 す
天 正 ・文 禄 期 の 借 屋 規 定
人 の活 動 が目 立 ってく る のを 反 映 し て、 法 令 や 町 々 の掟 な
と も 早 い例 の ひと つであ る ﹃京 都 冷 泉 町文 書 ﹄ 所 収 の、 天
二
ど のな か で変 化 し て い った 。 借 屋 人 問 題 を無 視 し て は、 個
正 十 六年 の規 則 にそ の 一条 が 見 え る。 こ れ は ﹁家 う り か い
﹁か し や﹂ と よ ぶ世 界 が形 成 さ れ た も のと 考 え ら れ る。
別 の町 の運 営 も都 市 の支 配 も 順 調 に進 め る こと が でき な く
定 之 事 ﹂ と いう 家 屋敷 の売 買 に関 す る 町規 則 に付 さ れ たも
な って い った の であ る 。
都 市 の住 民 と し て は、家 持 町人 と借 屋人 のほか、間 借 人 ・
の で、 コ 、 か り家 之 物 あ る に お い て者、 御 し ゅく 老 衆 へ
下 宿 人 ・部 屋 住 み な ど の奉 公 人 や 下 男 下 女 、 厄 介 者 、 寄 留
ざ ま な都 市 文 化 の形 成 、 都 市 生 活 の展 開 にか か わ って、 重
が 収 め ら れ て い る の で、 これ ら を 丁 寧 に分 析 す れ ば、 町内
﹃京 都 冷 泉 町 文 書 ﹄ には 、 天 正 期 のさ ま ざ ま な 町内 記録
案 内 申 、 御 か てん 二お い て者、 二 百文 の御 樽 出 申 へき 事 ﹂
要 な役 割 を にな ってき た こ と も 注 目 し な け れ ば な ら な い。
にお け る 借 屋 状 況 の 一端 を 解 明 す る こと が でき る であ ろ う
人 、 旅 行 者 、 浮 浪 者 な ど 、 多 様 な 居 住 形 態 を も つも の が考
本 稿 では 、 と く に借 屋 人 に焦 点 を し ぼ り 、 し か も 近 世 都
が 、 前 掲 の町 規 則 は 、 そ う し た 冷 泉 町 内 の借 屋 層 の存 在 を
と いう 文 章 表 現 と な って いる。
市 にお け る 借 屋 人 観 の変 遷 に つい て究 明 す る。 し か し、 こ
前 提 と し た も の であ ろ う 。 文 禄 年 中 の借 屋 の実 例 に つい て
え ら れ る。 し か も 、 借 屋 層 以下 の これ ら の都 市 民 が 、 さ ま
う し た視 点 のみ でな く 、 借 屋 人 の生 業 や 都 市 生 活 の実 態 な
は 、 次 の史 料 を か か げ てお く 。
ヨ ど に つい て の個 別 事 例 の研 究 の つみ か さ ねが 必 要 な こ と は
いう ま でも な い。
一2一
来 申 候 共 、 我 等 一人 請 人 二罷 立 候 上 者、 何 時 成 共 ま か
若 佐 殿 借 屋 二居 被 申 候 孫 六 郎 と 申 人 、 如 何 様 之 大 事 出
か な り 一般 化 し てお り、 定 式 化 し つ つあ る こと を う か が わ
式 や 文 体 が ほ と ん ど 同 一であ る こと か ら 、 す で に家 請 状 が
名 で町 中 宛 提 出 が命 じ ら れ た よ う であ る。
つい て は、 三 力条 に違 犯 しな い旨 の請 状 が 、 身 元 保 証 人 連
起 請 文 を 作 成 し た。 これ に合 わ せ る よう に、 借 屋 人 た ち に
し な い こと の 三 力条 に つい て、 家 持 衆 二十 八 人 が 連 署 し た
の預 り 物 を 所 持 し て いな い こと 、 料 足 のと り や り に撰 銭 を
冷 泉 町 東 側 でも 、 大 坂 諸 牢 人 を か く ま わ な い こと 、 大 坂 方
請 文 ﹂ の作 成 と ﹁借 屋衆 請 文 ﹂ の取 り集 め が それ であ る 。
く な い。 た と えば 、 慶 長 末 年 の大 坂 夏 の陣 に伴 う ﹁町 中 起
に いた るま で政 令 ・法 令 の遵 守 を 誓 約 させ ら れ る例 は少 な
特 定 の政 治 的 意 図 に よ って、 家 持 町 人 はも と より 借 屋 層
せる。
新丁 へんさ いてん丁
孫 右 衛 門 尉 (花 押 )
り い て、 其 紛 を 可申 明 者 也 、 傍 如 件
文 禄 四年 十 二月 廿 一日
れ いせ いむ ろ東 町 か わ
惣中様
参
平 左 衛 門 尉 殿 借 屋 二居 被 申 候 市 右 衛 門 尉 与申 人 、
自 休 (花 押 )
や う の大 事 出 来 申 候 共 、 我 等 請 人 二罷 立 候 上 者、
なり共罷出、其 明可申者也、傍如件
文禄 四
十 二月 廿 二 日
ママ ママ 連泉壼町東 かわ
惣 中 ま いる
ら れ た も のか は判 然 と し な いも の の、 借 屋 人 の居 住 に保 証 人
何 ら か の上 か ら の取 締 り ま た は町 内 取 決 め に よ って提 出 さ
右 衛 門 の居 住 を 示 し てお り 、 これ が 借 屋 契 約 時 の も のか 、
之 旨 相 背 候 者、 両 人 之 請 人 と し て罷 出 相 さ は き 、 御 町
右 三 力条 之 旨 、 か のと の に借 屋 仕 候 藤 三郎 と 申 人 、 右
一、 料 足 取 や り 二付 而、 一切 ゑ り申 間 敷 事
一、 大 坂 衆 預 り物 一切 無 御 座 候 事
一、 今 度 大 坂 諸 牢 人 か く し置 申 間 敷 事
の存 在 が 必 要 と な った こと を 示 し て い る。 ま た 二 通 を比 較
中 同 十 人 与 へ 一切 か け申 間 敷 者 也 、 傍 為 後 日状 如 件
こ の 二通 の借 屋 請 状 は 、 冷 泉 町 東 側 に借 屋 人 孫 六郎 ・平
し てみ ると 、 文 言 にほ ん のわ ず か の違 い はあ る も の の、 書
一3一
い
か
何
時
慶長廿年
五月廿 五日
冷 泉 町東 か わ 中 へま い る
主
藤 三 郎 (花 押 )
蔵 (花 押 )
佐 太 郎 (花 押 )
請
新
同
い な い。 と ころ が、 前 述 のよ う に文 禄 四年 に は 一人 ず つで
は あ る が身 元 請人 によ る実 例 が 見 え てい る。 そ し て、 慶 長
二十 年 には 借 屋人 の保 証人 が 二人 ず つに増 加 し て い る の で
あ る。 これ ら は冷 泉 町 の事 例 であ るが、他 の町 の事 例も 追 っ
てみ よ う。
下 本 能 寺 前 町 の文 禄 三年 の町内 ﹁定 ﹂ に は借 屋 に関 す る
規 定 が 四 力条 見 ら れ る。 そ の中 のひ と つに
非 候 。 家 主他 所 二於 有 之 は、 か り ての善 悪 ヲ被 相極 、
一、 借 屋 之 事、 家 主 有 な か ら か し被 申 二付 而者、 不 及 是
る ﹃京 都 冷 泉 町 文 書 ﹄ のう ち の 一通 を例 示 し た も の であ る
家 主 於 同 心 ハ町中 へ披 露 可被 申 事 。 其 時 各 罷 出 両 請
こ れ は、 三 力 条 に つい て の借 屋 人 の請 状 三 通 を 収 め て い
が、 冷 泉 町 東 側 町 中 と し て は、 これ ら の借 屋 人 請 状 を 集 あ
自 町 堅 相 立 可 置事 。
状 を と る こと は 、 冷 泉 町 東 側 だ け の特 例 では な く 、 京 都 市
と も か く 、 特 定 の御 触 を う け て借 屋 人 か ら 法 令 遵 守 の請
住 の家 持 町 人 が 下 本能 寺 町内 の所 持 屋敷 を借 屋 とす る場 合
と あ る か ら 、 家 主 の判 断 が重 ん じ ら れ る。 し か し、 他 町 在
人 が 家 主 と な って借 屋 契約 が結 ば れ る場 合 は ﹁不 及 是 非 ﹂
と いう 条 文 が あ る。 これ は下 本 能 寺 町内 に居 住 す る家 持 町
た う え で、 家 持 衆 の起 請 文 を ふ ま え て、 町 中 の代 表 者 が 連
中 で は こ の時 期 行 政 的 な 慣 行 でも あ った のか も し れ な い。
は、 家 主 は借 屋 人 の ﹁善 悪 ヲ被 相 極 ﹂ て人 物 を 選 ん だ う え
署 し た触 請 状 を 奉 行 宛 に提 出 し た の であ ろ う 。
し か も 借 屋 人 の請 状 は、 身 元 請 人 の連 署 を 必 要 と し た こと
た の であ る。 家 主 と し て の借 屋人 への監 督 ・監 視 の あ り方
で、 下 本 能 寺 町 中 へ披 露 し 了 承 を 得 な け れ ば な ら な いと し
天 正 十 六 年 三 月 の冷 泉 町 の規 則 では、 家 主 と 借 屋 人 の当
に、 自 町 の家 持 と 他 町 居 住 の家 持 の差違 を 認 め た規 定 であ
にも 注 目 し てお き た い。
事 者 によ る 借 屋 契 約 の ほか 、 冷 泉 町宿 老 衆 に報 告 し て同 意
ろ う 。 な お 、 条 文 最 後 の ﹁両 請 ﹂ ﹁自 町 ﹂ と は下 本 能 寺 町
を 得 る こと を 規 定 し て い る が、 請 人 に つい て は言 及 さ れ て
一4一
な か に借 屋 に関 す る規 定 を も つ町 が 出 現 し は じ め て いる 。
いず れ にし ても 、 天 正 ・文 禄 期 の京 都 市 中 では 、 町 規 の
主 ・他 町 居 住 家 主 を 問 わ な い と読 む べき であ ろ う。 それ は、
そ の規 定 によ れ ば 、 町 に よ って若 干 の差 違 は あ る も の の、
内 よ り 二 人 の借 屋 請 人 が 必 要 と の規 定 であ り 、 自 町 居 住 家
同 年 同 月 同 日付 の ﹁定 条 々之 事 ﹂ で、 コ 、 借 屋 之 事 、 惜
家 主 と 借 屋 人 の当 事 者 の契 約 だ け でな く 、 町 中 へ披 露 し て
下 本 能 寺 前 町 では 、 文 禄 三年 時 点 で、 二人 の身 元 た し か
も、 し だ い に明 確 化 さ れ る方 向 を た ど って いる 。 これ は 借
借 屋契 約 にお い て身 元 の たし か な 借 屋 保 証 人 を た てる こと
成 請 人 無 之 は 不 可 借 事 ﹂ と い う 一条 が あ る こと か ら 確 認 さ
な 保 証 人 を た てる こと が 借 屋 認 可 の条 件 と さ れ て い る。 さ
屋 人 の側 の事 情 で何 ら か の問 題 が 発 生 し た 場 合 、 保 証 人 す
了 承 を 得 る こと は必 要 不 可 欠 であ った よ う であ る 。 ま た 、
き の冷 泉 町 の文 禄 四 年 の場 合 の借 屋 請 人 は他 町 在 住 の 一人
な わ ち 借 屋 請 人 が 責 任 を も って解 決 にあ た る こと 、 町 に対
れ る。
の請 人 が署 名 し て いる だ け であ る の で、 下 本 能 寺 前 町 の方
し ては 一切 の迷 惑 を か け な い こと を た てま え と し て いる 。
め る の に対 し て、 行 政 の側 か ら 借 屋 に つい て言 及 し た 法 令
こ のよ う に町 規 則 のな か に借 屋 に関 す る 規 定 が 見 え は じ
が き び し い よ う に見 え る。
り にき び し い条 件 であ る 。 そ の条 文 は ﹁一、 町人 に家 借候 共、
や 示達 は、 こ の天 正 ・文 禄 期 に は ほと ん ど 見 え な い。 これ
鶏 鉾 町 の文 禄 五 年 以 降 の ﹁定 法 度 ﹂ を み てみ る と 、 さら
御 町 え案 内 申 、 槌 成 請 人 相 立 、 其 上 に て借 可申 事 。 同 町 中
は、 借 屋 人 数 の多 寡 の問 題 で はな く 、 借 屋 人 の存 在 が 社 会
問 題 ま た は 政 治 問 題 に ま で はな って いな か った と 見 る べき
二請 人 可 被 立 事 ﹂ と な って い る。 鶏 鉾 町 では、 同 じ 町 内 の
住 人 に家 を 貸 す場 合 でも 、 家 主 と借 屋 人 の契 約 締 結 だ け で
であ ろ う。
幕 初 のゆ る やか な 借 屋 統 制
慶 長 と 年 号 が 改 元 さ れ ても 、 町 人 や 借屋 に対 す る統制 は、
三
は な く 、 鶏 鉾 町中 に大 し て ﹁案 内 ﹂ す な わ ち披 露 し 、 借 屋
請 人 も 鶏 鉾 町 では 、 下 本 能 寺 前 町 で他 町 居住 の家 主 の場 合
に町 中 への披 露 ・承 認 が 必 要 と し た の に対 し、 同 じ 町 内 居
住 者 同 士 の借 屋 契 約 でも 、 披 露 ・承 認 を義 務 づ け て い るわ
け であ る。
一5一
て 町共 同体 と 借 屋 と の関 係 が し だ い に整 理 さ れ て いき つ つ
天 正 ・文 禄 期 か ら 大 き な 変 更 も な く、 町自 治 の形 成 に つれ
な いと いう 相 互 監 視 の趣 旨 か ら し て、 町内 に居住 す る借 屋
持 町人 を対 象 と し た も の であ る が、 犯 罪者 を 町内 か ら出 さ
の制 を 設 け た も のと 推 測 さ れ る。 十 人 組 は、 原 則 と し て家
り あ った と考 え ら れ るが 、 こ の ことを 裏 づ け る 史 料 は見 え て
人 た ち も 、 何 ら か のか た ち で十 人 組 制 のな か に組 み こま れ
人 関 係 史 料 も 未 見 であ る。
た こと は 当 然 であ った ろ う。 し か し、 十 人 組 結 成 時 の借 屋
い な い。
慶 長 五 年 の関 ヶ原 合 戦 を 経 、 同 八年 の江 戸 幕 府 の成 立 と
い う 政 治 状 況 のな か でも 、 都 市 民 対 策 と し て は、 十 人 組 の
る や か であ った こと は 、 所 司 代板 倉 勝重 の布 令 か ら 明 ら か
江 戸 幕 府 成 立 後 も 、 し ば ら く は借 屋人 に対 す る規 制 が ゆ
は ほ と ん ど あ ら わ れ て い な い。 十 人 組 の施 行 は、 ﹃当 代 記 ﹄
であ る 。 板 倉 勝 重 は、 慶 長 八年 極 月 二十 二 日付 で ﹁毎 月 可
結 成 が 命 じ ら れ た こと が特 筆 さ れ る と ころ で、 借 屋 人 問 題
の伝 え る と こ ろ に よ れば 、 ﹁京 伏 見 其 外 辺 土 ハ、 盗 賊 令 乱
触 掟 之 事 ﹂ と 題 す る五 力 条 の法 令 を ﹁上 京 年 寄 ﹂ 宛 に発 し
ロ 行 之 間 、 為 政 道 如 此 ﹂ と い う京 都 近 辺 の治 安 の悪 化 に対 応
て いる 。 そ のな か の第 三 条 に次 の条 文 が あ る。
め 次 第 届 借 可 申 候 、 但 、 奉 公 人 ハ伊 賀 守 切 手 次 第 二可
一、 洛 中 洛 外 二借 屋 之 事 、 商 人 諸 職 人 百 性 共 二、 請 人
し た 地 域 限 定 的 な 施 策 であ った。 治 安 の悪 化 の内 実 も 、 盗
賊 横 行 と いう も の で、 反 幕 府 勢 力 の暗 躍 と いう よ う に は解
さ れ て いな い。
結 成 さ せ て、 そ の目 的 を 達 成 さ せ よう と し た こと か ら、 京
考 え ら れ る。 し か し、 町 内 毎 に十 軒 を 一組 と す る十 人 組 を
あ り 、 本 来 は 町 を単 位 と し て課 せ ら れ る べき こ と な のだ と
を 出 さ な い よ う に相 互 監 視 さ せ る こと を 目 的 と し た も の で
のと 考 え た い。 さす れば 、 これ ま で京 都 市 中 で借 屋 慣 行 と
は考 え ら れ な い の で、 各 々 の町 中 への届 出 ・披 露 を さ す も
﹁届 ﹂ を 必 要 と す る と し て いる。 ﹁届 ﹂ は 奉 行 所 への届出 と
人 ・諸 職 人 ・百 性 等 の場 合 はた し か な 請人 を た てる こと と、
こ の条 の本 文 は、 一般 都 市 民 の借 屋 に関 す る 規 定 で、 商
借候、付、家中之者可為同前事
中 の町 々 が行 政 単 位 と し て は いま だ 未 熟 ・不 均質 であ って、
され 、 一部 の 町 々 で 町規 則 に成 文 化 さ れ てき た 事 項 を 、 行
十 人 組 の制 は、 組 中 か ら 犯 罪 者 お よ び 悪 事 に加 担 す る者
そ の た め に特 定 の目 的 を 貫 徹 す る単 純 な 組 織 と し て十 人 組
一6一
政 的 な ル ー ルと し て再 確 認 し 、 公 告 し た も のと 評 す る こと
伊賀御在判
上柳 原町
(
慶長十 二年 )
未九月廿 二日
一方 、 但 書 以下 は 武 士 身 分 に対 す る借 屋 原 則 の公 示 で、
年
が でき る。
これ はか な り厳 し い規 定 であ る。 ﹁奉 公 人 ﹂ と は 、 主 君 に
同 町代
寄
仕 え て奉 公 を し て いる 武 士 の こと で、 こ う し た武 士 の京 都
当 町宗 佐 ノ所 二水 野 内 記 殿 煩 為 養 生 ノ当 座 借 屋 、 炉 庵
市 中 お よび 近 郊 への居 住 は 、 所 司 代 板 倉 勝 重 の許 可 書 す な
わ ち 切 手 が な け れ ば 認 め ら れ な いと い う も の であ る。 また、
板 伊 賀 御在判
聲 之 由 二 村 因 幡 方 依 理 二不 苦 也
慶長十 九年
寅 七月九 日
住 が許 さ れ る と いう よ う に解 釈 でき る か ら 、 本 格 的 に家 屋
の た し か な武 士 であ っても ﹁当 座 借 屋 ﹂ であ る か ら京 都 居
て い る。 こ の二 例 か ら み る と 、 そ れ な り の訳 が あ り、 身 元
を う け て板 倉 勝重 が そ の事 由 を 認 め て許 可 し た と 明 示 さ れ
上 柳 原 町 と福 長 町 の事 例 では ﹁当 座 借 屋﹂ と あ り、 届出
年寄
福長 町
前 掲 史 料 の最 後 の付 の板 倉 勝 重 の家 中 侍 の居 住 も 、 同 じ よ
う に勝 重 の切 手 が な け れ ば 借 屋 を さ せ て は な ら な いと し て
い る。
武 士 の京 都 居 住 に つい ては 、 一般 庶 民 の借 屋 と は 区 別 し
て、 厳 し く 制 限 さ れ て いる 。 家 屋 敷 の買 得 であ る か 借 屋 で
あ る か を 問 わず 、 免 許 状 のな い武 士 の京 都 居 住 を 認 め て い
な い と み る べき で あ ろ う 。
所 司 代 板 倉 伊 賀 守 勝 重 の武 士 京 都 居 住 許 可 状 の事 例 は い
く つか あ る。
む ﹃上 下 京 町 々古 書 明細 記 ﹄ には 上 柳 原 町 と福 長 町 の二 例
と はな か った の では な いだ ろ う か 。 い いか え る な ら、 借 屋
敷 を 買 得 し て 一般 の町 人 居 住 地 内 に武 士 が 居 住 権 を 得 る こ
当 町 小 納 言 家 川勝 信 濃 殿 当 座 借 屋 之 儀 、 依 理 不苦 候 、
と い う形 態 で のみ 、 一般 町 人 地 で の武 士 の居 住 は 許 可 さ れ
が 収 め ら れ て い る。
以上
一7一
正 十 六 年 三月 吉 日付 の冷 泉 町 規 則 で は、 ﹁ 一家 う り か い 御
か ら 町 規 則 の な か に成 文 化 し て禁 止 し て い る 町 も あ る。 天
武 士 への家 屋 敷 の売 却 に つい て は、 す で に天 正 ・文 禄 期
配 の拠 点 であ り、 大 坂 対 策 の江 戸 幕 府 前 戦 基 地 でも あ った
の統 治 を 、 一挙 に前 進 さ せた と いえ る。 と く に、 西 日本 支
後 処 理 を 通 じ て、 江 戸 幕 府 は諸 大 名 か ら 民 衆 に いた る ま で
発 し て豊 臣 氏 を 滅 亡 さ せ た合 戦 で、 こ の合 戦 の準 備 か ら 戦
大 坂 の陣 は、 徳 川 氏 が はじ あ て全 国 の諸 大 名 に軍 役 令 を
奉 公 人 ミ ち の物 ゑ う り 申 候 ハ ・、 計 貫 文 過 銭 た る へき 事 、
京 都 で は、 都 市 政 策 ・都 市 民 対 策 の面 で、 幕 府 的 秩 序 の形
る こと が あ る と い う こと にな ろう 。
た \し す い け う人 ゑ相 か \ る へき 事 ﹂ と い う 一条 を か か げ
成 が 急 速 に進 んだ と い え る。 都 市 民 対 策 の ひと つは 、 町 共
め て い る。 文 禄 五年 七 月 以 降 と され る鶏 鉾 町 の 町規 則 にも 、
同 体 (町 内 会 ) や借 屋 に関 す る統 制 の強 化 と な ってあ ら わ
め ﹁一武 士 に家 売 申 間 敷 事 ﹂ の 一条 が あ る 。 成 文 化 さ れ た 町
れ た。
戴
規 則 に こ の こと を 明 示 し て いな い町 や 町規 則 を成 文 化 し て
いな い 町 でも、 武 士 への家 屋 敷 売 買 は、 ほ と ん ど 認 め ら れ
一、 今 度 御 陣 中 京 都 夜 番 之 儀 、 一町 之 内 よ り 家 主 十 人
つ\罷 出 、 両 方 之 門 二火 ヲたき 、 宵 之 六 つ過 候 ハ ・
て は い な い こと であ ろ う 。 武 士 に家 屋 敷 を 買 得 る さ せ る こ
と は、 町 の構 成 員 と し て武 士 を 迎 え 入 れ る と いう こと であ
く \り を さ し、 一切 人 の出 入 在 間 敷 候 。 公 儀 御 用 之
右 之 旨 、 念 を入 能 々 町中 へ相 ふれ 、 一町 並 借 屋 共 二致
一、 銭 遣 事 、 只今 如 御 法 度 取 や り可 仕 事
指 上 可申 事
一、 火 事 以下 出 来 候 者、 其 町 曲 事 二可 被 仰 付 と の 一札
へ送 届 申 事
使 を ハ、 い つれ の所 江成 共 落 付 申 所 江、其 町 より先 々
り、 町 の運営 上 の支 障 が 想 定 さ れ る か ら であ る。
武 士 の借 屋 居 住 に つい て は、 慶 長 二十 年 の大 坂 の陣 を 契
機 と し て強 化 さ れ 、 そ の取 締 り は 元和 年 間 に入 る と 一層 き
び し く な る。 これ は大 坂 牢 人 の吟 味 ・取 締 り と いう か た ち
牢人問題と借屋統 制
で進 行 し 、 借 屋 一般 への統 制 拡 大 と な って いる 。
四
連 判 指 上 申 候、 以上
一g一
これ は冷 泉 町 の 記 録 に 書 き 留 め ら れ た 御 触 で あ る が 、
町 借 屋 人 に関 す る身 元保 証人 に よ る請 書 が 冷 泉 町 東 か わ 中
仕 候 仁 兵 衛 ﹂ や、 ﹁甚 右 衛 門 借 屋 二仕 候 源 次 郎 ﹂ ら 、 冷 泉
﹁か のと に借 屋 仕 候 藤 三 郎 ﹂ はじ め 、 ﹁与 四右 衛 門 殿 二借 屋
﹃三 条 町武 内 家 文 蔀 ﹄ に よ っ て補 え ば、 発 信 者 は 板 倉 伊 賀
宛 に提 出 さ れ たと い う こと の背 景 に は、 行 政 の側 が 借 家 人
日
守 勝 重 で黒 印 が捺 せ ら れ てお り 、 文 末 の ﹁致 連判 指上 申 候﹂
統 制 に乗 り 出 し てき た と い う事 情 が あ った わ け であ る。
慶長廿年 五月
は ﹁致 連 判 指 上 可 申 候 ﹂ と な ってお り 、 触 請 書 の提 出 を命
口 に お け る 町 人 自 身 に よ る夜 番 を 命 じ て、 夜 間 通 行 を 禁 止
こ の法 令 は、 大 坂 夏 の陣 に際 し てと は いえ 、 各 町 の両 門
一、 十 人 組 事 、 其 町 二而心 を 存 、 家 の内 へも 互 二出 入 有
の徹 底 を ね ら って、 改 変 され た の で はな いか と考 えら れる。
か ら 、 慶 長 八 年 か ら 施 行 され てき た 十 人 組 制 も 、 そ の機 能
大 坂 の陣 後 の大 坂 牢 人 対 策 、 反 幕 府 勢 力 の取 締 り の観 点
す る措 置 を と り な が ら、 ﹁公 儀 御 用 ﹂ の者 だ け は 目 的 地 ま
之 様 成 者 と 組 申 、 十 人 有 も 八 人 五 人 二而も 、 以 来 の
じ た も の であ った よ う であ る 。
で の送 届 を も と め て い る点 で、 と く に注 目 し た い 。 ﹁公 儀
た め 二候 間 、 如 其 可 申 付 事
一、 町 代 申 付 候 と て、 無 理 二押 組 候 儀 ハ無 用 之 事
御 用 ﹂ す な わ ち 徳 川 方 の使 者 のみ の優 先 通 行 を 、 夜 間 外 出
禁 止 令 状 況 のな か で実 現 さ せ よ う と いう こと は、 京 都 全 体
一、 一町 組 候 事 成 間 敷 与申 者 有 之 ハ、 家 を 為 売 、 他 丁
(元和元年)
卯十 月七 日
伊賀
在判
上京町代
の 一、 何 も 触 候 事 、 町 代 能 々此 書 を 以 、 触 渡 可 申 也
ハ、 宿 主 曲 事 之 事
一、 宿 切 手 二当 座 借 屋 と 有 之 処 、 年 を 越 候 迄 何 共 不 申
へ越 可 申 候 、 壱 人 ハ 一町 ニハ難 替 候 事
を 徳 川 体 制 化 にお く と い う こ と であ る。 し か も 、 それ を 幕
府 自 身 の軍 事 力 にお い てで はなく、京 都 の都 市民 の力 によ っ
て実 現 し よ う と し て い る。 そ の た め に コ 町 並 借 屋 共 二致
連 判 指 上 可申 ﹂ と 、 家 持 町 人 は も と よ り 借 屋 人 に いた る ま
で連 判 請 書 の提 出 を 要 求 す る に い た った。
所 司 代 板 倉 勝 重 の こう し た都 市 民対 策 のな か で、 借 屋 人
に対 す る取 り締 ま り は厳 し さを 加 え て いく 。 さ き に紹 介 し
た ﹃京 都 冷 泉 町文 書 ﹄ 所 収 の慶 長 二十 年 五 月 二 十 五 日付 の
一g一
こ れ ま で の十 人 組 は町 内 を 単 位 に、 軒 並 み に家 持 町 人 十 人
お よ び そ の請 書 雛 型 のな か に、 一町 、 町 中 と いう 表 記 と 並
こ の のち 、 元 和 年 間 以 降 、 行 政 の側 か ら 発 せ ら れ る 法 令
示 す も の であ ろう 。
を 基 本 と し て 一組 を 結 成 さ せ る も の であ った と 考 え ら れ る
記 す る か たち で借 屋 の文 字 が 、 し ば し ば 登 場 す るよ う にな
こ れ が十 人 組 制 の制 度 変 更 を 伝 え る 所司 代 の令達 であ る。
が、 町 内 にお い て気 心 の知 れ た も の同 士 で十 人 組 を 結 成 し
る。
被仰出候御法度之事
元 和 二年 二月 五 日付 の請 書 雛 型 を 示 し てお こう 。
な お す こと 、 し た が って十 人 を基 本 と せ ず 、 八 人 の組 でも
五人 の組 でも よ いと し て いる。 し か し 、 十 人 組 に所 属 し な
い者 を 一人 でも 町 内 に居 住 さ せ ては な ら な い と いう こと も
不 及申 、 一町借 夜 共 二御 成 敗 可 被 成 候 、 並 方 々之 あ
間 敷 候 、 若 御 法 度 を 相 背 ゑ り申 候 は \、 其 身 之 事 者
一、 銭 之 取 や り、 此 以 前 如 被 仰 付 候 、 六 文 之 外 ゑり 申
こ の法 令 で は家 持 町人 に つい てし か 言 及 し て いな いが 、
き人 銭 ゑ り申 候 ハ ・、 其 町 よ り召 つれ可 罷 出 候 、 若
付 言 し て い る。
お そ ら く 町 内 の借 家 人 た ち に つい ても 家 持 町人 に準 じ た 十
見 か く し 置申 候 ハ ・、 当 町 中 之 者 共籠者 可被 仰付 候、
ママ 人 組 制 が 施 行 さ れ た も のと 考 え ら れ る。 な ぜ な ら 、 家 持 町
人 で さ え十 人 組 に所 属 し な いも の は 一人 も 町 内 に置 い て は
為 其 町 中 不残 借 夜 土ハ
連 判 指 上 申 候 、 侃 為 後 日之 状 、
マ マ な ら な い と し て いる の であ るか ら、 借 屋 層 が 放 置 さ れ 規 制
如件
一町 連 判
借夜
敗 さ れ る こと 、 銭 を 撰 る 商 人 を 見 逃 さ な い こと が 町人 ・借
こ こ では 撰 銭 令 を 守 ら な け れ ば、 一町 お よ び借 屋 と も成
元和弐年
二月五日
を 受 けな い と いう こと は考 えら れな い。
な お、 先 の法 令 の第 四条 目 の ﹁宿 切 手 二当 座 借 屋 と 有 之
処 ﹂ の条 文 は 、 武 士 の借 屋 人 で い った ん 借 屋 の許 可 状 を 受
け たも の でも 、 ﹁当 座 ﹂ と は 年 内 く ら い の 期 間 だ と い う 判
終 了 さ せ る か し な け れ ば 、 宿 主 の罪 にな るとす る。 これも 、
屋 人 の町 中 の義 務 であ る こと を 申 し渡 し 、 借 屋 人 を含 む 町
断 を 示 し て、 再 度 の借 屋 許 可 を 申 請 さ せ る か 、 借 屋 契 約 を
大 坂 陣 後 の治 安 状 況 を 勘 案 し て、 借 屋 統 制 の 一層 の強 化 を
一10一
事
但 、 ふれ おと し候 ハ ・、 其 所 之 町 代 可 為 同 罪 者 也
内 全 員 の連 判 請 書 を 奉 行 宛 に提 出 さ せ て い る。 こ の時 期 の
法 令 請 書 雛 型 に は、 こう し た 町中 惣 連 判 で宛 名 を 御 奉 行 様
(
元和五年)
未七月廿七 日
一、 右 書 付 之 通 、 町中 同 借 屋 共 二壱 問 つ \不 残 堅 相 改
伊 賀 御在判
と す る も の の ほか 、 各 町 の代 表 者 五 人 ず つが 署 名 し て御 奉
法 令 な のか と いう 考 え も あ る が、 五 人 ず つの代 表 者 署 名 の
候 得 共 、 十 ケ年 以来 之 武 士 之 奉 公 人 町 人 二成 引 籠 候
行 様 宛 に提 出 す るも の の 二種 類 が あ る 。 惣 連 判 の方 が 重 き
場 合 でも 、 各 町 内 で は家 持 ・借 屋 全 員 の連 判 請 書 を い った
二無 御 座 候 、 若 か く し置 、 以来 訴 人 罷 出 候 者 、 此 連
居 候 仁 、 又 者奉 公 望 二而被 致 居 住 候 衆 、 壱 人 も 当 町 中
未七月
御奉行様
お 一町 連 判
判 之 者 共 御 せ い は ひ可 被 成 候 、 侃 後 日 ため 状 、 如 件
ママ ん町 の宿 老 に宛 て て作 成 さ せ、 そ のう え で五 人 の代 表 者 に
れ よ る請 書 を 作 成 し た と 考 え ら れ る の で、 借 屋 を 含 む 町 内 取
締 り と いう 意 味 で は大 き な 違 い は な か った の で はな いだ ろ
う か。
元 和 年 間 にお い て は、 武 士 の牢 人 取 締 り と いう 政 治 課 題
を 通 じ て、 幕 府 によ る町 人 と 借 屋 に対 す る 統 制 が 強 化 さ れ
、 此 以 前 よ り度 々被 仰 付 候 御 奉 行 様 之 無 御 手 形 二、
被仰出候御法度之事
文 に な る が 、 元 和 五 年 七 月 と 八月 の牢 人 取 締 令 を 取 りあ げ
武 士 奉 公 人 衆 同 牢 人 二、 一夜 之 宿 を も 借 申 間 敷 候 、
て い った こと が 、 と り わ け特 徴 的 な こと であ った 。 少 し長
てみよう。
籠 居 候 共 、 町 々を 改 、 十 ケ 年 以 来 ロハ今 迄 居 住 之 分 、
一、 京 中 武 士 之 奉 公 人 、 町人 二成 候 共 、 又 奉 公 望 二而引
成 、 宿 主 之 儀 者不 及申 二、 此 判 形 者 共 可 被 成 御 成 敗
訴 人 罷 出 候 ハ ・、 此 一札 以如 何 様 二も 御 せ ん さ く 被
御 手 形 二 一夜 成 共 宿 を借 し申 候 て、 悪 事 出 来 歎 、 又
今 度 牢 人 御 改 書 物 指 上 申 候 、 以後 御 法 度 相 背 キ、 無
懇 二書 わ け 指 上 可 申 候 、 若壱 人 成 共 か く し 置 、 訴 人
候 、 為 後 日、 町 中寄 合 借 屋共 二不残 相 改 、 連 判 仕 指
強)
於 在 之 候 ハ ・、 其 町 之 年 寄 不 及 申 、 一町 共 二可 為 曲
一11一
上申候所、如件
元和五年
八月廿 八日
御奉行様
一町 連 判
こ の 二 つの史 料 の 関連 を 正 確 に把 握 でき る情 報 は も た な
微 妙 であ った と いえ る。
と も か く、 さ き の 二 つの法 令 請 書 の文 面 に、 武 士 の京 都
居 住 に関 し て、 借 屋 ま で徹 底 し て探 索 さ せ よ うと す る幕 府
側 の方 針 を 確 認 す る こと は でき る。 これ は借 屋 と いう 居 住
形 態 が 、 牢 人 な ど の隠 家 と し て利 用 され やす いと の認 識を、
き が あ る こと は わ か る。 と く に七 月 の法 令 は、 町人 と し て
の状 況 調 査 、 後 者 は今 後 の継 続 的 な 相 互 検 察 と い う 点 に重
内 居 住 を 忌 避 す る動 き が強 め られ てく る。 天 正 十 六 年 の冷
る政 治 状 況 を 反 映 し て、 都 市 民 の側 でも 自 主 的 に武 士 の町
武 士 の市 中 居 住 ま た投 宿 が、 これ ほど に厳 し く 取 締 ら れ
支 配 の側 がも ってい た と い う こと でも あ ろう 。
居 住 し て い る が、 か つては 武 士 であ った者 と 、 い ま だ 仕 官
泉 町 の町 規 則 に、 ﹁御 奉 公 人 ﹂ や ﹁ミち の物 ﹂ へ家 を 売 っ
いが 、 武 士 の市 中 居 住 に関 す る 取 締 令 で、 前 者 は これ ま で
の望 を も ち な が ら 町内 に引 き 籠 って暮 ら し て い る者 と 、 そ
て はな ら な い と あ る こ と は、 す で に指 摘 し てお いた 。 鶏 鉾
町 の文 禄 五 年 の ﹁定 法 度 ﹂ にも 、 コ 武 士 に家 売 申 間敷 事 ﹂
れ ぞ れ に つい て十 年 前 にさ か のぼ って調 査 し書 き あ げ る こ
と を 指 令 し て い て、 所 司 代 板 倉 伊 賀 守 勝 重 の側 で も、 これ
の 一条 が あ る。 さ ら に衣 棚 町 でも 慶 長 十 年 の ﹁法 度 ﹂ で
仕 官 への望 や反 幕 的 感 情 を いだ く 武 士 が 京 中 に充 満 し 、 放
郎 氏 が ﹁牢 人 の思 想 と 行 動 ﹂ にお い て指 摘 さ れ て いる が 、
者 を 町 の構 成 員 と し ては受 け入 れ たく な いと いう 意 思 表 示
敷 買 得 者 が 町 の正 規 の構 成 員 と な る こと か ら 、 武 士 身 分 の
これ ら の武 士 への家 屋 敷 売 買 禁 止 の自 主 的 規 制 は、 家 屋
ら のも と 武 士 ・現 牢 人 の動 向 を 重 文 に把 握 しき れ て いな い
コ 武 士 、 け んき ょう に家 を う る事 、 一切 停 止 す へき 事 ﹂
火 事 件 な ど が しば し ば生 起 し て い る。 元 和 年 間 に は 、 二 代
だ と 考 え ら れ る。 武 士 の居 住 は、 町 の運 営 にあ た って、 発
が 定 め ら れ てい る。
こと を 示 し て お り、 注 目 さ れ る。
元 和 年 間 の京 都 に お け る 牢 人 問 題 に つい て は、 林 屋 辰 三
将 軍 秀 忠 の娘 和 子 の後 水 尾 天 皇 への入 内 問 題 も あ り 、 ま た
言 権 や居 住 様 式 の相 違 な ど の面 にお い て、 難 し い問 題 を も
キ リ シ タ ン問 題 も発 生 し は じ め てお り、 政 治 状 況 は さ ら に
一12
た ら す と の 認識 が あ って、 事 前 に武 士 の構 成 員 化 を 忌 避 し
よ う と し たも の であ ろ う。
な る 規 制 強 化 と な ってあ ら わ れ て いる 。 下 本 能 寺 前 町 は、
陣 後 の牢 人 対 策 の上 か ら の居 住 規 制 は、 町 規 則 に も あ ら た
ろ う 武 士 居 住 問 題 の認知 に加 え て、 関 ヶ原 合 戦 後 や大 坂 の
せ 、 家 持 町 人 を 通 じ て支 配 さ せ る と い う慶 長 年 中 ま で の方
と は、 す で に の べた。 借 屋 の こ と は家 主 で あ る家 持 に任 か
表 現 で、 触 書 の な か に借 屋 の文 言 が登 場 す る よ う にな る こ
元 和 年 間 に 入 る と、 町中 お よ び借 屋 に至 る ま で と い った
触 書 の な か の借 屋
元和 六 年 九 月 五 日付 で、 新 し く 町 規 則 の条 々を 追 加 し て い
針 に、 か な り の変 化 が あ った こ とを 示 し て い る。 借 屋 問 題
五
る。 そ の ﹁定 町 中 之 法 度 ﹂ の第 一条 に、 ﹁一、 武 士 之 十 年
が 家 主 の責 任 に と ど ま ら ず、 町 中 の責 任 と し て認 識 され て
こう し た町 の運営 と いう 自 治 活 動 に支 障 を も た ら す であ
よ り内 之 引 込 候 家 之 売 買 仕 ま し き事 ﹂ を か か げ て い る。 こ
いる こと にな ろ う。 そ れ は、 治 安 ・行 政 の上 に お い て町 中
れ は、 明 ら か に法 令 の規 制 を そ のま ま に町 規 則 にと り こむ
の役 割 が 一層 重 視 さ れ る よ う にな った こと を 示 す も の でも
ママ と い う 動 き であ り、 下 本 能 寺 前 町 では そ の迅 速 さを み せ て
取 調 べ令 の趣 旨 を 直 接 に汲 ん だ も の であ る 。 法 令 に違 反 し
は、 家 屋 敷 を 売 ら な いと い う規 定 で、 元 和 五 年 七 月 の牢 人
様 の暮 ら し ぶ り の者 であ っても、 いま だ 十 年 未 満 のも の に
人 と な った 者 や、 再 仕 官 の望 を も ち な が ら も 当 面 は町 民 同
に関 す る 規 制 が 、 か な り具 体 的 に統 一的 な か たち で明 示 さ
面 か ら 、 さ ら に 一歩 踏 み こ ん で、 借 屋 のす べき こと 、 借 屋
つい ても 、 漠 然 と し た責 任 を 問 うと い う こ れ ま で の触 書 文
か ら 、 市 民 生 活 に関 す る規 制 ・統 制 が 厳 し くな る。 借 屋 に
京 都 所 司 代 が板 倉 勝 重 か ら、 そ の子 重 宗 に交 替 し た こ ろ
ある。
て町 中 が 罰 せ ら れ ると い う事 態 を 回避 し よ う と し たも のと
れ る。 元 和 八 年 八 月 、 同 十 一月 、 寛 永 六 年 十 月 の いわ ゆ る
い る の であ る 。 これ は、 武 士 身 分 の者 で、 武 士 を 捨 て て町
いえよう。
板 倉 重 宗 二十 一力条 に は、 それ が うか が え る。
元 和 八 年 八 月 二十 日 の ﹁京 都 町 中 可 令 触 知 条 々﹂ 九 力条
一13
のう ち の 四条 目 か ら み よ う。
に は、 ﹁借 屋 ﹂ ﹁宿 か し ﹂ ﹁宿 主 ﹂ の文 言 が 三 力 条 にわ た っ
元 和 八 年 霜 月 十 三 日付 の ﹁京 都 可 相 触 条 々﹂ 七 力条 の中
て見 え て い る。
一、 諸 証 文 判 形 之 事
右 諸 証 文 及対 決 、 或 印 判 、 或 自 判 持 出 と い へと も、
(第 二条 目 )
如 此 以前 御 法 度 候 間 、 宿 主 よ り借 屋 之 も の に、 無 失
一、 火 事 之 時 、 火 本 へ刀脇 指 を さ し参 事
他人槌此判 を見しらす、尤非無不審難立証拠、自 今
以 後 京 都 居住 之 町 人 不 及 云 、 借 屋 之 者 た り と いふ と
も 、 町中 た か ひ に判 形 可 見 知 置 候 事
町 民 認 知 の も の でな け れ ば な ら な い こ と を宣 し、 町 人 は も
出 来 之 事 ﹂ と し て令 さ れ た も の の再 触 でもあ り、 元 和 年 間
これ は、 同年 八月 二十 日付 の九 力条 中 の六 条 目 で ﹁火 事
念 可申 聞事
と よ り借 屋衆 に つい ても 相 互 に印 判 や書 判 の事 前 認 知 を し
に お け る 牢 人 問 題 と の関連 を う か が わ せ る放 火 事 件 の多 発
こ れ は、 さ ま ざ ま な 取 引 にお け る ﹁印 判 ﹂ ﹁自 判 ﹂ が 、
て お く こと を 令 し た も の であ る。 家 持 町人 と 同 じ よ う に借
と な が ら 、 家 持 町人 の側 か ら そ れ ぞ れ の借 屋 人 に対 し て、
と いう京 都 市 中 の状 況 を 反映 し た も の であ ろ う。 当 然 の こ
生 活 の 保 障 の ひと つだ と いう こ と であ る。 お そ ら く 、 京 都
刀脇 指 を 帯 し た ま ま 火 元 へ集 ま っては な ら な いと い う こと
屋 の も のも 印 鑑 登 録 を 町 内 単 位 で行 ってお く こと が 、 都 市
の 町 々 で時 折 残 存 す る町 毎 の印 鑑 帳 のは じ ま り は 、 こ の法
を、 よ く 申 し 聞 か せ よ と 、 改 め て命 じ て いる と ころ に、 借
る。 両 条 の文 面 に借 屋 の文 字 は 見 え な いが 、 と も に取 締 り
か し 候 共 一ケ月 切 二可 借 、 月 半 に俄 に宿 を か へ申 に
一、 一夜 之 宿 た り と 云 共 よ く 吟 味 仕 か す へし、 並 借 屋
(第 四 条 目 )
屋 支 配 の基 本 を 確 認 し て いる と 読 む べき であ る。
令 によ る のか も し れ な い。
同 じ 九 か 条 中 の七 条 目 には コ 、武 士之 牢人 不可 隠 置事 ﹂、
八 条 目 には コ 、 は てれ ん門 徒 停 止 之 事 ﹂ が 規 定 さ れ て い
を 放 置 し た 場 合 ﹁町 中 ﹂ が罪 に問 わ れ る と あ る の で、 牢 人
お ゐ て ハ、 此 方 へ可 申 来 、 き わ あ の 一ケ 月 過、 自 然
と ば てれ ん の町 内 居 住 に つい て の厳 重 な 取 調 べ は、 家 持 ・
他 町 へ宿 カ へ候 ハ ・、 最 前 之 宿 よ り さ き く
の町 へ
借 屋 の差 別 な く 行 な え と いう こと であ る。
一14
これ は ま さ に不 審 者 の取 締 り の責 任 を 各 町 に課 し た 法令
であ る。 町 が 責 任 を 負 わ され る のは 、 借 屋 や 旅 籠 な ど が 不
理 り 可申 置 事
これ は、 借 屋 契 約 に つい て の奉 行 所 側 の判 断 と 措 置 法 を
審 者 の宿 にな り や す い、 ま た そう し た 事 例 や そ のよ う な社
元 和 九 年 九 月 二 十 三 日 に は、 同 日付 で二 つの牢人 取締 り
ま と め て示 し た 法 令 であ る。 借 屋 契 約 は月 単 位 と す る こと
れ る。 一般 借 屋 を 不 審 者 が 次 か ら次 へと住 み か え て いく こ
に関 す る法 令 が 板 倉 重 宗 によ って出 さ れ て いる が、 そ のう
会 状 況 が存 在 す る と いう こと な の であ ろ う。
と に対 す る取 り締 ま り の意 図 が 見 え る。 契 約 満 了 後 の宿 替
ち の 一つは牢 人 追 放 令 と よ ぶ にふ さ わ し い内 容 であ る。 そ
と の判 断 は、 数 日 単 位 の借 屋 契 約 を 排 除 し た も のと 考 え ら
え に際 し て、 宿 主 間 で連 絡 を 取 り合 う こと と いう 規 定 も 、
て借 屋 統 制 が 進 ん でき た経 緯 が あ る の で、 全文 を か か げ て
れ は、 払 う べき 牢 人 の種 別 を 明 示 し てお り、 牢 人 問 題 と し
こう し た借 屋 契約 が 当 時 の借 屋 慣 行 を ど れ ほ ど 反 映 し た
お く。 た だ し、 こ の法 令 は、 妙 心 寺 や 金戒 光 明 寺 な ど の記
不 審 者 対 策 に つな が る の であ ろ う。
も のか 、 ま た ど の 程 度 の実 効 性 を も ったか も判然 と しな い。
録 に留 め ら れ て知 ら れ て い るが 、 文 面 ・内 容 か ら 京 中 への
一、 重 而奉 公 可 仕 と 存 牢 人 、 可 払 事
惣)
周 知 が か な り 厳 し く 要 請 され た も の であ る こと は相 違な い。
た だ 、 下 本 能 寺 前 町 の明 暦 年 間 こ ろ制 定 と思 わ れ る 町 規 則
に、 コ 、 借 屋 か し か り ハ、 其 月 之 廿 五 日 よ り来 五 日 迄 之
れ つな が りを 思 わ せ る も の であ る。
一、 出 家 同 前 二罷 成 、 寺 二居 住 仕 、 出 家 之 不 致 学 問 牢
内 二か し か り 可仕 事 ﹂ と いう 条 項 が あ る こと は、 何 ら か の
(五 条 目 )
人 、 可払 事
一、 従 主 人 合 力 を 取 、 京 都 二居 住 之 牢 人 、 可 払 事
一、 し よ く を も 不 仕 、 町 所 を も 不 存 、 不審 成 も の寄 合
出 入 仕 家 於 在 之 ハ、 町 中 と し て可 致 穿 馨 、 油 断 仕 盗
一、 京 都 を 被 出 候 諸 牢 人 、 家 屋 敷 俄 売 儀 成 か た き も の
一、 公 儀 御 存 之 牢 人 、 無 異 儀 可 指 置 、 但 其 牢 人 向 後 奉
在 之 者、 其 家 町 二預 り 置 、 何 時 成 共 可 為 売 事
人 に宿 か し候 を 、 他 所 よ り申 出 る に お ゐ て ハ、 後 日
た りと 云 と も、 宿 主 之 義 者不 及 申 、 其 町 中 曲 事 二可
申付事
一15一
公 仕 間 敷 候 旨 、 並 余 之 牢 人 拘 置 間敷 之 由 、 諸 親 類 知
音 拾 人 組 よ り 、 堅 一札 其 町 へ可 取 置事
一、 年 久 商 いた し 、 妻 子 を 持 、 在 付 候牢 人 、 其 侭 可 指
置 、 但 右 同 前 二一札 可 取 置 事
一、 公 儀 御 存 之 牢 人 、 並 年 久 商 仕 牢 人 に ても 、 此 方 よ
周 防 (黒 印 )
り切 手 可 出 間 、 弥 致 穿 墾 可 申 上 事
元和 九 年 九 月 廿 三 日
一、 牢 人 を指 置、 其 町之 者 為 過 料 、 地 口六 十 間 二付 而、
銀 子 壱 貫 目 可出 、 並 十 人 与 者町並 一倍 可 為 過 料 、 年
寄 分 者な ・
三 二増 倍 過 怠 可 出 事
一、 牢 人就 隠 置訴 人 在 之 者、 其宿 か り の罪 科軽 重 によ っ
て、 褒 美 可遣 事
右 未 霜 月 朔 日 を切 て京 中 可 相 触 、 若 此 日限相 違候 ハ ・、
如 御 法 度 可申 付 者 也
周 防 (黒 印 )
こ の ﹁覚 ﹂ では、 許 可 を 得 て いな い牢 人 を 居 住 さ せ た場
元 和 九年 九 月 廿 三 日
り、 注 目 す べき 法 令 であ る。 大 坂 城 の落 城 か ら 九 年 を 経 過
合 、 家 主 は 閾 所 ま た は成 敗 さ れ る こ とを 第 一条 で宣 し て い
牢 人 の京 都 居 住 に つい て、 かな り 明確 な 判 断 を 示 し てお
し 、 な お牢 人 によ る戦 乱 への期 待 が な く な った わ け で はな
る。 第 二条 では、 町全 体 の責 任 と し て のき わめ て重 い罰金、
こ と に同 じ 十 人 組員 は 二倍 、 年 寄 分 の者 は 三倍 と い う罰 金
い が、 牢 人 た ち が 京 都 を 退 散 し た り、 町 人 生 活 へ同 化 し よ
う と し た り す る 時 期 にあ た り、 所 司 代 によ る 牢 人 対 策 の総
刑 を う け な け れ ば な ら な い と の べ てい る。
所 、 其 上 或 者公 儀 背 御 法 度 、 或 者人 を 殺 し 、 対 主 人
一、 諸 牢 人 み た り に宿 か し候 ハ ・、 其 家 主 共 に可 為 閾
り、 さ ら に時 事 的 問 題 や、 日常 の治 安 警 察 的 な 観 点 か ら 、
継 続 す る 牢 人 対 策 と キ リ シタ ン対 策 が並 行 す る か たち と な
の指 針 も 示 し て いる と いえ よ う。 寛 永 年 間 以 降 にな ると 、
一部 町人 化 牢 人 の居住 認可 の提 示 な ど、 牢 人 問 題 の収 束 へ
お将 来 的 にも 継 続 す る ことを 示 しな が ら、 罰 金 刑 の導 入 や
元 和 九 年 九 月 二十 三 日付 の 二 つの法 令 は、 牢 人 問 題 が な
ま と め的 な 法 令 と し て の意 味 が強 い。 牢 人 取 締 り が な お 重
大 な政 治 課 題 であ った こと は、 同 日付 のも う 一つの板 倉 周
防 守 黒印 状 の ﹁覚 ﹂ に明 ら か で あ る。
ゆ 不 儀 働 仕 牢 人 抱 置 候 ハ ・、 当 人 之 儀 者不 及 云 、 家 主
家 持 層 ・借 屋 層 への法 的 規 制 が 一般 化 す る。 そ う し た若 干
覚
共以可為成敗事
一16一
の例 を あ げ てお く 。
御奉行 様
も に ほ ぼ 同 じ 文 言 か ら 構 成 さ れ て いる。 キ リ シタ ンと し て
第 一条 が キ リ シタ ン、 第 二 条 が 牢人 に つい てで、 両 条 と
一、 は てれ ん門 徒 、 先 年 よ り御 法 度 之 旨 二候 、 自 然 町
の 居 住 は 認 あ ら れ な いか ら 、 第 一条 に請 人 云 々 の語 が な い
京町中可触渡麹
中 二於 在 之 ハ、 可 申 上 候 、 ほ う び を 被 遣 、 若 隠 置 、
の は当 然 であ る が 、 扱 いと し ては 両 条 同 じ であ る 。 ﹁右 御
そ のな か に ﹁町 中 借 屋 迄 不 残 相 改 申 候 へ共 ﹂ と あ る の を注
他 所 よ り 於 申 出 ハ、 宿 主 之 儀 ハ不 及 申 、 両 隣 之 者 可
一、 牢 人 京 都 居 住 之 儀 、 最 前 就 御 法 度 、 町 よ り指 出 を
目 し てお き た い。 これ は、 当 然 ﹁町 中 借 屋 迄 ﹂ 取 り 調 べよ
書 付 之 通 ﹂ 以 下 は 、 こ の触 状 に付 さ れ た 請書 の雛 型 文 で、
以 、 町 人 二罷 成 候 牢 人 之 外 、 宿 を 借 置 二付 而ハ、 可 為
と いう 奉 行 所 側 の意 図 を 明 示 し て いる 訳 であ る が、 町 の側
為同罪事
曲 事 、 若 訴 人 於 在 之 ハ、 ほ う ひ可 遣 、 惣 別 惜 二請 人
のな か に、 ﹁町中 借 屋 迄﹂ と か ﹁家 持 借 屋 共 に﹂ の よ う な
さ れ る 。 こう し て、 法 令 本 文 のな か に、 ま た 触 請 状 の文 言
不残 ﹂ と 書 く こと 、 書 か な け れ ば な ら な い書 式 と し て理解
に し てみ れ ば 、 触 請 状 の雛 型 の文 言 と し て、 ﹁町 中 借 屋 迄
の 町、 何 れ の所 に ても 、 鉄 炮 を はな
無 之 も の 二宿 を 於 借 置 ハ、 如 御 法 度 可 申 付 事
一、 京 中 す ゑ く
周 防 守 御在判
つ事 、 堅 令 停 止 畢 、 自 然 盗 賊 入 候 共 、 不 可 放 鉄 炮 事
寛 永 四卯 年 九 月 十 九 日
記 載 が 一般 化 す る。
時 事 的 な 法 令 のな か で借 屋 が 登 場 す る の は、 そ の内 容 に
右 御 書 付 之 通 、 町中 借 屋 迄 不 残 相 改 申 候 へ共 、 当 町中
二一切 無 御 座 候 、 若 か く し を き 、 訴 人 罷 出 候 ハ ・、 町
よ る 。 た と え ば 、 寛 永 十 一年 三 代 将 軍 徳 川 家 光 の上 洛 にと
黒 印 によ る ﹁覚 ﹂ が 出 さ れ て い る。 これ は将 軍 上 洛 に供 奉
中 曲 事 二可 被 仰 付 候 、 為 其 、 年 寄 行 事 判 形 仕 指 上 申候 、
年寄
す る 人 々 の京 内 京 外 の宿 割 は、 宿 割 御 奉 行 衆 の決 定 ど お り
も な う 宿 割 に関 係 し て、 同 年 四月 二十 二 日 に板 倉 周 防 守 の
行事
と す る こと を 令 し たも の であ る が、 ﹁宿 割 御 奉 行 衆 家 御 渡
伍 後 日之 状 、 如 件
卯九月十九 日
五人 ツ ・
判
一17一
奉 人 数 の上 洛 で、 宿 所 の確 保 は深 刻 な 問 題 であ った の であ
と 、 私 的 な借 屋 の禁 止 を 付 言 し て い る。 お そ ら く 膨 大 な 供
宿 か し 申 に お ゐ て ハ、 其 家 閾 所 可 仕 候 問 、急 渡 可申 渡者 也﹂
し 被 申 候 外 、 其 家 主 と し て、 たと ひ御 供 之衆 た りと 云 ふ共、
触 請 書 の場 合 、 借 屋 人 を ま った く抱 え て いな い町 であ った
借 屋 不 残 ﹂ と す る の は当 然 と い う こと にな るが 、 こう し た
対 象 と し た 調査 であ った こと であ ろ う。 し た が って ﹁家 持
人 と い う こと にな れば 、 都 市 下 層 民 の借 屋 人 な ど を 主 た る
と 考 え ら れ る。 餓 死 す る ほ ど、 ま た乞 食 に出 る ほど の窮 乏
が ろう が、 こ う し た 臨 時的 な出 来事 の場合 でさえ、 私的 な宿 ・
と し ても 、 雛 型 文 ど お り、 ﹁家 持 借 屋 不 残 ﹂ な ど と 書 く も
こ う し た こと の ほ か、 火 事 ・火 の本 用 心 な ど 、 家 持 ・借
の であ った ことも 考 え ら れ る。
借 屋 の提 供 を禁 じ 、 違 犯 者 は閾 所 に処 す と し て いる 。
ま た、 寛 永 十 九 年 の大 飢 饒 に よ る影 響 は京 都 市 中 にも お
よ ん で い た よ う で、 寛 永 二 十 年 二月 に餓 死 者 等 に対 す る 取
屋 の区 別 な く、 都 市 民 と し て心 がけ る べき 事 項 な ど の通 達
で は、 町中 並 び に借 屋 、 家 持 借 屋 の こらず と いう かた ち で、
調 べ令 の触 請 書 が 記 さ れ て い る。
今 度 被 仰 出 候 条 々 、 恭 奉 存 候 、 当 町家 持 借 屋 不 残 申 聞
の両 名 は、 連 名 によ る 町政 改 革 を 命 じ る ﹁覚 ﹂ と ﹁追 加 ﹂
寛 文 十 年 、 京 都 町奉 行 雨 宮 対 馬 守 正 種 ・宮 崎 若 狭 守 重 成
を お こな って いる。
指 導 と い う か た ち を と り な が ら、 具 体 的 な か た ち で、 介 入
自 治 への介 入 が強 化 さ れ た時 代 に は、 借 屋 の問 題 にも 町 政
た。 し か し、 寛 文 年 間 や享 保 年 間 に、 京 都 町 奉 行 によ る町
て 以降 も、 基 本 的 な借 屋 統 制 の方 向 はか わ る こと はな か っ
京 都 市 中 の支 配 が所 司 代 か ら新 設 の京 都 町 奉 行 へ替 わ っ
署 判 が要 請 さ れ る こと は、 い う ま でも な い。
借 屋 ま での触 の徹 底 と、 触 の遵 守 を 誓 う 請 書 にも 借 屋 衆 の
多
佐右衛門
同
三右衛門
同
九左衛門
同
年寄
喜
口 吟 味 仕 候 共 、 餓 死 及 申 、 乞 食 二出 申 者 、 今 日 ま て無
御 座 候 、 重 而出 来 候 ハ ・、 可 申 上 髄
寛永弐拾年
二月 二 日
御奉行様
こ れ は ﹃西 村 彦 兵 衛 家 文 書 ﹄ であ る か ら、 中 之 町 の事 例
一18一
得 者 が 町 へ出 す 十 分 の 一銀 を 以 後 は 二十 分 の 一へ下 げ る こ
の二 つの触 を 発 し た。 四 月 二 日付 の ﹁麹 ﹂ は・ 家 屋敷 の買
の干 渉 であ る こと は い う ま でも な い。
あ る が 、 町 自 治 に お け る 町政 経 費 の出 銀 規 制 は、 町 自 治 へ
民 が 難 儀 す る こ と で あ る か らと いう 建 て前 を 取 った 措 置 で
は 借 屋 賃 に関 す る ﹁口触 ﹂ を 二回 出 し て い る。
享 保 改 革 が ほぼ 始 ま ろ うと す る享 保 七 年 、 京 都 町 奉 行 所
と 、 そ の他 の町 振 舞 お よ び 町 振 舞 代 銀 ・礼 銀 も 減 額 ま た は
廃 止 す る こと な どを 指 示 し て いる 。 そ の理 由 は ﹁彼 是 町中
へ出 銀 多 、 諸 人 令 難 儀 族 有 之 由 ﹂ と いう も の で、 倹 約 の趣
口艇
近 比 町 々借 屋 賃 上 ケ候 由 相 聞 江候 間 、 借 屋 賃 上 ケ 候 儀
旨 か ら 町 政 の改 善 を 指 導 す る と いう か た ち を と ったも の で
あ った 。 こ の 一連 の施 策 のひ と つに、 借 屋 に関 す る次 の 一
無 用 可 仕 候 、 此 旨 洛 中 洛 外 へ可 相 触 知 者 也
寅二月九 日
条 も あ った 。
一、 借 屋 仕 候 輩 、 棚 か り越 候 時 、 其 町 中 振 舞 之 儀 又 者
宿 酒 と 名 つけ 酒 を も り候 由 、 是 又 向 後 可 為 無 用 事
的 に 調査 し て、 京 都 市 中 全 域 に お け る 町政 慣 行 を 把 握 し た
し相 聞 候 、 前 々之 通 り之 宿 賃 二而借 可 申 候 、 以 来 不 用
町 々借 屋 之 儀 、 先 達 而相触 候得 共 、 今 以 引 下 ケ さ る よ
艇
う え で の こと であ る。 借 屋 人 が町 入 りす る時 は 、 家 屋 敷 の
者 於 有 之 者、 遂 吟 味 可 申付 候
口
買 得 者 が 町 入 り す る の に準 じ て、 簡 略 では あ る が 、 町 民 と
右 之 段 、 洛 中 洛 外 へ可相 触 者 也
も ち ろ ん 、 こう し た規 制 は、 事 前 に町自 治 の有 様 を 具 体
し て の披 露 や 挨 拶 ・謝 礼 が な され る の が通 例 であ った 。 奉
は町 毎 に相 違 す る と こ ろも あ り、 具 体 的 に何 と 何 を 廃 止 す
中 振 舞 と宿 酒 を 廃 止 せ よ と な って い る。 町中 振 舞 の内 容 に
る。 な ぜ 借 屋 賃 の 一斉 値 上 げ の よ う な状 況 にな った のか 、
お り、 内 容 も た だ家 賃 の値 上 げ を 禁 止 す る と い うだ け であ
二 つの法 令 と も 口触 と いう き わ め て簡 略 な形 式 を と って
寅 三月 十 二 日
る のか は明 示 さ れ て いな いが 、 全 体 に過 度 な ふ る ま いご と
ど れ ほど の値 上 り だ と いう の かも 未 詳 であ る。 い わ ゆ る物
行 所 の判 断 では 、 そ う し た 借 屋 契 約 に伴 う出 費 のう ち 、 町
を 廃 止 し て、 出 費 を お さ え さ せ よと いう こと であ ろ う 。 庶
一19一
日付 のも の によ る と 、 二月 の値 上 げ 禁 止 令 は 効 果 が な か っ
に触 れ ら れ な け れ ば な ら な いか が 理解 し が た い。 三 月 十 二
価 抑 制 策 と い った 意 味 であ るな ら、 な ぜ 借 屋 賃 のみ が 単 独
う な借 屋 手 続 を 決定 し てい た の か、 借 屋人 の負 担 や義 務 は
た の では な い こと は、 い う ま でも な い。 町 々 で は、 ど の よ
な ど が、 町 々 によ って、 か な ら ず し も均 質 な意 味 を も ち え
か な り の規 制 を 加 え てい る こと が多 く、 奉 行 所 か ら の 町触
武 士 の牢 人 や キ リ シタ ン の拒 否 は、 支 配 の側 で の強 い政
た と い う こと であ る の に、 三 月 令 で も 現行 借 屋 賃 維 持 を 要
治 的 規 制 が あ り 、 町 規 則 のな か に銘 記 した 町が多 いこと も、
ど う な って いた のか、 個 別 町 の事 例 を 見 てい き た い が、 そ
に関 心 を も ってお り 、 借 屋 値 段 に干 渉 し てき た こと は注 目
す で に述 べた 。 し か し 、 こう し た 政 治的 な規 制 以外 に、 借
請 し て い る にす ぎ な い。 再 令 す る だ け でも か な り の効 果 が
し てお く べき であ ろう 。 家 主 対 借 屋 人 の当 事 者 間 で定 め ら
屋 人 の職 業 規 制 を し て いる 町 も 少 な く な い。 この職 業 規 制
の 前 に借 屋 受 入 れ に関 す る規 制 か ら、 考 察 し てお く。
れ てき た 借 屋 賃 が 、 それ ぞ れ の家 主 や 借 屋 人 の個 別 的 事 情
は 、 借 屋 人 対 象 と いう よ り は 、 本 来 家 屋 敷 の買得 者 の職 業
あ るも の な のか ど う か わ か ら な い が、 奉 行 所 の方 が 借 屋 賃
では な く 、 世 間 一般 に値 上 りす る と いう 新 し い状 況 が 発 生
に つい て規 定 し た も のを 借 屋 人 にも 適 用 し た事 例 が多 い。
し てき た ら し い こと 、 当 事 者 や 町共 同 体 な ど の個 別 事 情 を
超 え て、 奉 行 所 の側 が借 屋 賃 問 題 を と り あげ ている こと は、
又相定申事
れ た と え ば 、 清 和 院 町 の町 規 則 の正 保 四 年 追 加 分 は次 のよ う
であ る。
借 屋 人 問 題 の新 し い展 開 を 予 見 さ せ る 。
借 屋の手続 と負担
り物 屋 、 又 ハ食 物 之 類 、 其 外 何 二而も 見 苦 キ 職 商 売
六
奉 行 所 の側 か ら は、 借 屋衆 に対 し 、 家 持 家 主 に よ る 監 督
仕 仁 、 家 買 せ 申 間 敷 事 、 又 ハ借 屋 二も 置 申 間 敷 候 、
一、 酒 屋 、 茶 染 屋 、 こん や 、 餅 屋 、 こう し や 、 ね り は
と 町 を 単 位 と す る支 配 を 原 則 と し な が ら、 し だ い に都 市 借
巳吐
保 四歳
亥 ノ霜 月 廿 一日
屋 層 と し て の認識 を す す あ て いく 傾 向 が み え る。 し か し 、
町 の側 で は そ れ ぞ れ の町 の個 性 に よ って、借 屋 の受 入 れ に、
一20一
ま た 二 条 西 洞 院 町 の享 保 十 二年 一月 の ﹁町 中 式 目 ﹂ の第
七 条 目 も 例 示 し てお こう 。
れ い る も の のほ か、 町 の構 成 員 ・仲 間 と し て受 け 入 れ た く な
いも の を あ げ て いる の であ る 。
風 呂 屋 、 米 屋 、 取 売 、 座 頭 、 啓 女 、 後家 、あ い染 屋、
牢 人 、 筋 目 悪 敷 人 、 鍛 冶 屋 、 薬 錘 屋、指 物 屋、湯 屋、
公家衆奉公人、御公儀役人、雑色、 武士之引籠、同
な い か に つい て、 細 心 の注 意 と 最大 の関心 が よ せ ら れ る の
保 持 が乱 さ れ な いか 、 のち のち に町 運営 上 の支 障 を き た さ
保 護 は も と よ り、 新 来 者 によ って町内 生 活 の環境 や品 位 の
わ け であ る か ら、 受 け 入 れ る 町 の側 では、 先 住 者 の既 得 権
家 屋 敷 買 得 者 は 、 家 持 町 人 と し て正規 の町構 成 員 と な る
柴 屋、 雪 踏 屋
は、 当 然 であ ろ う。 借 屋 人 は 家 屋敷 買得 者 ほ ど では な い に
一、 家 屋 鋪 売 買 不 仕 候 人 之 事
右 之 人 江家 屋 鋪 売 買 仕 間 敷 候 、 勿 論 借 屋 借 シ 候 儀 も
あ っても 町内 で の営 業 活 動 に従事 す る こと が あ た り ま え で
し ても 、 家 持 町人 に準 じ る 町 の構 成 員 と な る こと、 借 屋 で
こ の ほ か、 三条 衣 棚 町 の正 徳 四年 ﹁町 之 式 目 ﹂、 文 化 二
あ った か ら、 家 屋敷 買 得 者 同様 に、 そ の職 業 や人 品 、 世 帯
無 用 二候 事
年 ﹁町 中 掟 書 ﹂ では 、 コ 、 家 買 来 候 仁 に 不 限 、 借 屋 以 下
借 屋 人 を 家 屋 敷 買 得 者 に準 じ て取 り扱 う と い う こと が 一
状 況 等 が、 町 の状 況 に応 じ て規 制 を う け た の であ る。
校 、 油 屋 、 唐 薄 屋 、 鞘 立 職 人 、 風 呂 屋 、 氏 性悪 人、練 物 屋、
般 的 であ る が、 視 点 を か え る と、 借 屋人 こそ厳 し く規 制 す
迄 定 置 所 之 人 品 停 止 之 事 ﹂ と し て、 米 屋 、 問 屋、 出 家 、 検
酒 屋 、 手 代 人 殖螺韻来、 紅 屋 、 武 士 、 菓 子 屋 な ど を あ げ て
る必 要 があ り、 家 屋敷 買 得者 を これ に準 ず る扱 い と す る こ
ゆ 中 式 目 之 定 ﹂ では次 のよ う な か た ち を と ってい る。
と も あ り え る の であ ろ う。 柳 八幡 町 の享 保 元年 の ﹁諸 事 町
い弱 ・
こ こ に家 屋 敷 買 得 者 ま た 借 屋 人 と し て不 適 格 な も のと し
て挙 げ ら れ て い る も のは 、 か な ら ず し も 職 業 の種 別 のみ で
一、 藍 染 屋
一、 鍛 冶 屋
一、 湯 屋
一、 木 地 屋
一、 風 呂 屋
借 屋 借 シ申 間 敷 事
苦 キ 職 商 売 仕 仁 ﹂、 ﹁筋 目 悪 敷 人 ﹂、 ﹁後 家 ﹂、 ﹁氏 性 悪 人 ﹂ な
一、 薬 錘 屋
は な く 、 身 分 や人 品 、 世 帯 状 況 等 ま でも 含 ん で い る。 ﹁見
ど は そ う し た例 で あ る が 、 法 によ って町 居 住 が禁 止 さ れ て
一21一
一、 突 米 屋
一、 飛 脚 屋
一、 油 し あ 屋
一、 竹 屋
一、 桶 屋
一、 打 綿 屋
一、 薄 屋
一、 合 羽 屋
、馬屋
、鋳物師
、材木屋
・ なめし皮
ふす へや
を と く にか か げ て い る。 男 やも め と いう 世 帯 生 態 が な ぜ 排
規 制 はな く 、 男 やも め に家 を 借 し ては な ら な いと いう 一条
目 之 麹 ﹂ が あ り、 注 目 さ れ る。 足 袋 屋 町 では 、 ほか に借 屋
し て い る世 帯 形 態 と し て、 足 袋 屋 町 の慶 安 二 年 九 月 の ﹁式
は いな い。 ただ 、 明 暦 二年 七 月 の西 竹 屋 町 の ﹁町 中 定 置 処
除 さ れ な け れ ば な ら な いか は、 こ こ では 具 体 的 に記 さ れ て
右 之 外 二も 人 之 き ら ひ 申 職 商 人 、 又 ハ火 之 用 心 悪 敷 家
之 条 々﹂ のな か に、 コ 、 後 家 之 処 二、 男 や も め 宿 借 シ 申
一、 道 具 夜 市 道 具 の 会 、 同 取 売
業 人 ニハ、 借 シ 申 問 鋪 事 、 並 家 為 買 申 事 も 、 右 二同 前
事 、 失 規 よ り御 法 度 故 、 今 以 同 事 也 (後 略 )﹂ の条 文 が あ
と の関 連 が あ る こと であ るか も し れ な い。
り 、寛 永 六年 十月 十八 日付 の板倉 周防 守 の ﹁京都 可相 触条 々﹂
ゆ 之定也
こう し た 借 屋 の職 業 等 規 制 を か かげ て、 家 屋敷 買 得 者 を
これ に準 ず る と し た 規 則 も あ る が、 ほ と ん ど は 正 規 の町 構
買 来 ル人 也 ﹂ の割 注 の よ う に、 家 屋 敷 買 得 者 と し ては 手 代
の三条 衣 棚 町 のと こ ろ で掲 出 し た手 代 人 に つい て、 ﹁但 家
然 と し な い。 各 町 内 の個 別 の状 況 や 判 断 によ って、 町 規 則
ま ったく 自 由 に借 屋 契 約 を 認 め ら れ た も のか ど う か も 、 判
ま で実 効 性 を も ったか 、 ま た 規 制 さ れ て いな い職 業 等 が 、
こう し た職 業 等 に よ る借 屋 対 象 か ら の排 除 規 定 が 、 ど こ
人 は 不 適 格 であ るが 、 借 屋 人 と し て な ら 町 への受 け 入 れ が
を 基 本 と し な が ら、 借 屋 人 の選 定 が あ った こと は 、 充 分 に
成 員 の資 格 を 基 本 と し て、 借 屋 が こ れ に準 じ て いる 。 前 出
許 さ れ る。 ま た 、 四条 菊 屋 町 の寛 永 十 九 年 九 月 の町 規 則 で
推 測 され る と ころ であ ろう 。
職 業 等 の規 制 だ け で はな く 、 表 借 屋 、 裏 借 屋 と いう 借 屋
は、 いく つか の家 屋 敷 買 得 者 の職 業 等 規 制 を か か げ 、 そ の
ひと つに髪 結 を あ げ て い る が・ ﹁但 し ・ 借 屋 は 不 苦 敷 廃 ﹂
形 態 に つい ても、 町 に よ って判 断 を 異 にし て いる 。 三 条 衣
棚 町 で は、 慶 長 十 年 十 月 の ﹁法 度 ﹂ に早 く も 、 ﹁お も て は
と、 借 屋 人 な ら ば 許 容 さ れ る と い う事 例 も 見 え る 。
後 家 と いう 世 帯 形 態 の家 屋 敷 買 得 者 と 借 屋 を 禁 止 す る例
か り を 借 屋 に 仕 候 ハ ・、 其 沙 汰 あ る へか ら さ る 事 ﹂ と 、 表
ゆ を 二 条 西 洞 院 町 の町 規 則 で み た が、 借 屋 に つい て のみ 禁 止
一22一
棚 町 で は 正 徳 四 年 の ﹁町 之 式 目 ﹂ で も、 ま った く 同 じ 規 定
対 象 が あ ら か じ め制 限 さ れ る か ら、 借 屋手 続 が開 始 さ れ る
借 屋 契 約 に先 立 ち 、 各 町 ご と に定 め た規 定 によ って借 屋
普 通 であ った 。
を か か げ て いる 。 ﹁お も てば か り を ﹂ の意 味 は 理 解 し に く
と い う こと は、 と り あ え ず前 述 の規 制 を、 何 ら か のか たち
通 り に面 し た 部 分 の みを 借 屋 とす る こと を 禁 じ て い る。 衣
いが 、 当 町 では 借 屋 一般 を 禁 止 し て い るわ け ではな いの で、
る 事 例 が 多 い が、 蛸 薬 師 町 の享 保 八 年 十 月 の ﹁享 保 八 年 卯
で越 え た人 々 と い う よ う に理解 し た い。 具 体 的 な 借 屋 手 続
これ に対 し て、 清 和 院 町 で は 、 ﹁表 を 借 屋 二た て、 奥 住
十 月 御 公 儀 様 よ り被 仰 付 候 御 条 目 二因 テ古 来 より 之 町 内 法
表 を 借 屋 と し て、 家 主 が 裏 に住 む と い った 町家 経 営 を 禁 止
居 は く る し か ら ず髄 ﹂ と、 衣 棚 町 と はま った く背 反 す る規
式 相 改 候 条 々﹂ にと り わ けく わ し く 記 され て い る の で、 ま
の要 点 に つい ても 、 各 町単 位 に町 規 則 のな か に規 定 し て い
則 を 、 寛 文 十 三年 六 月 に定 め て いる 。 た だ し 、 こ の清 和 院
ず これ を 掲 出 し よう 。
し て い る の であ ろ う。
町 の決 定 は、 同 年 五 月 八 日 の関白 鷹 司 房 輔 第 よ り の出 火 に
一、 借 屋 之 事
お よ り、 禁 裏 以 下 百 余 町 五千 余 戸 を焼 失 し た 大 火 後 の、 緊 急
享 保 四年 四月 の ﹁定 ﹂ で コ 、 裏 借 屋 、 古来 より無 用之 事﹂
は 認 め て も、 裏 借 屋 は禁 止 す る町 も あ った。 饅 頭 屋 町 で は
裏 借 屋 は よ り貧 し い借 屋 人 であ る こ と が多 いか ら 、 表 借 屋
の は、 ま った く 個 別 町 の事 情 や価 値 観 による の であ ろうが、
表 借 屋 、 裏 借 屋 を 区 別 し て認 め た り 認 め な か った りす る
壱 匁 也 、 用 人 江ハ遣 し 不 申 候 、 其 外 年 寄 五 人 組 並 借
借 屋 よ り 町 へ之 出 銀 、 表 借 屋 よ り は 弐 匁 、裏 借 屋 ハ
無 用 二候
人 相 添 、 判 本 見 届 さ せ 候 、 請 人 方 二而酒 出 候 事 、 必
案 紙 相 渡 候 、 請 状 取 候 時 ハ、 日行 事 之 手 代 家 主 並 用
候 而、 町 江可 頼 事 也 、 其 後 町 中 相 談 之 上 相 極 、 請 状
町 江不 申 聞 前 二、 其 家 主 能 々 聞 合 、 髄 な る 者 と 聞 届
の 一条 を あ げ て、 明 瞭 に これ を 禁 じ て い る。 し か し 、 これ
宅 之 近 所 相 借 屋 江も、 餓 り 物 並 振 廻 等 も 無 用 之 事 二
の町 規 則 改 定 と いう 特 別 な 事 情 が背 景 と な って い る。
も 一般 的 に は、 表 借 屋 ・裏 借 屋 と も に認 め ている例 が多 く、
候 、 則此 度 被 仰 付 候趣 也 、 此 儀 急 度 可相 守 事 二候
れ 借 屋 賃 や 借 屋 契 約 時 の町 への出 銀 額 に差 違 を設 け る こと が
一23一
用 人 方 江、 借 屋 中 よ り 年 中 二両 度 祝 儀 遣 し 候 得 共 、
町 中 二指 合 な く 候 歎 、 構 有 之 候 ハ ・無 用 二致 、 別 条
一、 借 屋 貸 候 義 は 、 借 り 主 口入 等 聞 届 ケ、其旨 ヲ書付馬
な く 候 は、 相 究 メ可 申 候 、 自 今 ハロ入 之 義 、 家 持之
是 も 向 後 堅 無 用 二候 、 家 主 よ り 借 屋 江申 渡 可 有 之 事
附 、 借 屋 二付 物 入 之 事 出 来 候 得 は、 其 家 主 よ り 相
外 無 用 二候 、 口入 宅 替 申 義 も 可 有 之 候 事
諸 状 況 を 周 辺 の人 々 にも よく 尋 ね、 た し か な身 元 であ る こ
き の は じ め は 、 借 屋 主 が 該 当 す る借 屋 人 の こと に つい て、
借 屋 に あ た って の出 銀 や 祝 儀 に つい て は後 述 す る。 手 続
よ い と いう規 定 であ る。 こ の借 屋 口入 れ 人 を 、 今 後 は家 持
く。 町内 の人 々 の同 意 が あ れば 、 借 屋 契 約 の交 渉 に入 って
宿 主 が い る ことを 告 知 し て、 差 し 障 りが な いか ど う か を 聞
借 屋 を 希 望 す る貸 し 主 が あ れ ば 、 町 内 の人 々 に借 屋 希 望 の
こ こ で は、 口入 れ 人 が 借 屋 事 務 を 取 り 扱 うと いう。 まず、
あ さ は き被 申 候 筈 二候 間 、 常 々家 主 よ り 無 油 断 吟 味
と を 調 査 す る こと であ る。 つぎ に、 借 屋 契約 を 結 ん でよ い
に限 る と し て いる が、 口 入 れ人 の資 格 が町 内 家 持 に限 定 さ
可有 之 事 に候
か ど う か の判 定 を 町 へ依 頼 す る。 町 内 では よ く 相 談 を と げ
れ て いる か ど う か は 不 明 であ る。 た だ し、 口入 れ人 が借 屋
く 、 肝 煎 人 ま た は 口入 れ人 を 置 く べき こと を 規 定 し て い る
差 加 可 申 廃 ﹂ と 定 め て いる 。 ま た 口入 れ人 に つい て の規 定
前 掲 の条 文 の次 の条 に ﹁向 後 、 借 屋請 状 二口 入 判 見 等 名 前
契約 の過 程 でな お 一定 の役 割 を にな う こと は確実 な よう で、
た う え で、 借 屋 契 約 の締 結 の許 可 を あ た え る こと と な る。
町 も あ る。 西 上 之 町 の宝 永 二 年 三 月 の ﹁町 式 定 ﹂ で は 、
に新 規 決 定 の こと な ど が 見 え る の で、 二 条 西 洞院 町 で の借
借 屋 人 の選 定 にあ た って、 家 主 本 人 が 調 査 す る の で は な
コ 、 借 屋 之 事 、 町 内 二肝 煎 取 申 度 事 二候 、 借 主 之 様 子 相 尋
いず れ に し ても 、 借 屋 契 約 の成 立 に は、 貸 主 と 借 主 の双
屋 口入 れ 人 の設 定 も 、 それ ほど 古 く さ か のぼ る こと では な
方 の合 意 だ け では な く、 町年 寄 ま た は町 中 の承 諾 が 必 要 で
借 申 度 事 二候 、 肝煎 無 之 方 ハ、 年 寄 五 人 組 寄 合 、 能 吟 味 仕
し く、 借 屋 人 の選 定 が そ の役 目 で あ る と し て いる。 二 条 西
あ った こと は 、天 正 ・文 禄 期 以降 変 じ て いな い。 借 屋 手 続
い の かも し れ な い。
洞院 町 の享 保 十 一年 一月 の ﹁定 ﹂ では 口入 れ の役 割 ・資 格
借可申髄 (
後 略 )﹂ と、 肝煎 役 を 町 内 か ら 出 す こと が 望 ま
を 記 し て い る。
一24一
め れ の 町 の規 則 にも 見 え、 法 令 で請 人 を 置 く こと を 必 須 と し
借 屋 ノ仁 、 家 へ御 入 可有 事 、 何 も槌 成 請 人 可被 相 定
一、 借 屋 来 り 候 時 二、 請状 ・寺 請 並送 り状 取 候 て、 其
借 屋 借 シ申 し 候 次 第
て い る。 し か し 、 次 第 に借 屋 手 続 は整 備 さ れ 複 雑 化 し て く
者 也 、 能 々判 本 ヲ吟 味 仕 取 可申 事
き に あ た って身 元 の た し か な請 人 が 必要 と の規 定 は、 いず
る。
切 手 な く て は借 申 問敷 候、 若 親 類 之 内 槌 か 成 人 か能
一、 武 士 之 御 奉 公 人 衆 江宿 借 シ申 候 ハ ・、 御 公 儀 様 御
度 の開始 は 、 江 戸 幕 府 に よ るキ リ シタ ン取 締 り によ る も の
る と いう規 定 は、 町 側 で の早 い対 応 の例 と いえ る。 壇 家制
さ れ る か ら 、 四 条 菊 屋 町 の借 屋 手 続 に寺 請 状 と 送 り 状 を 取
寺 請 制 度 す な わ ち 壇 家 制 度 の開 始 が、 寛永 十 五 年 ころ と
ク様 子 存 た る御 方 な ら ハ、 組 中 理 り 相 談 之 上 二而ハ、
であ る が、 寺 請 証 文 は身 元 保 証 や 戸 籍 の役 割 を にな いは じ
明 暦 二 年 七 月 の西 竹 屋 町 の ﹁町中 定 置 処 之 条 々﹂ に は
槌 成 請 人 口入 之 加 判 に て借 シ可 申 候 、 御 町 衆 合 点 な
め てく る。 人 々 の住 所 の移 動 に際 し て、 寺 請 状 や 送 り 状 は
必要 と さ れ る 書 類 と し て 一般 化 す る 。 借 屋 の場 合 も 同 じ で
く て ハ、 借 シ申 間敷 候 事
と、 請 人 だ け で はな く、 口 入 れ 人 の加 判 も 必 要 であ る と し
る 西竹 屋 町 の例 、 享 保 十 一年 に 口入 れ 人 加 判 を 定 め た 二条
町規 則 では 、 ﹁借 屋 請 状 年 寄 へ理 り、 其 当 り 行 事 に 吟 味 仕
足 袋 屋 町 の慶 安 二年 九 月 や寛 文 五 年 九 月 の借 屋 に関 す る
あ る。
西 洞院 町 の例 を み た が、 こ の間 に七 十 年 以 上 の ひ らき が あ
可 取 事 ﹂ と 借 屋 請 状 し か明 示 さ れ て いな いが 、 元 禄 十 年 二
て いる 。 明 暦 二年 に す で に口 入 れ 人 加 判 の制 度 を 定 め てい
る。 こ の よう に、 民 間 に お け る 借 屋 手 続 で は、 個 別 町 の事
月 の ﹁式 目 ﹂ に は、 ﹁一、 借 屋請 状 年 寄 へ断 り 、 其 借 り 主
寛 永 十 九 年 九 月 の 四 条 菊 屋 町 の ﹁四条 菊 屋 町 内 誰 式 目之
要 であ る こと が 付 加 さ れ て い る。 宝 永 二 年 の西 上 之 町 の
断可申事、其時之当行事吟味仕取可申事﹂と、寺請状が必
の 情 に応 じ て時 間 的 な差 違 が 大 き いが 、 し だ い に こ れ は整 理
之 前 々之 居 所 町 請 人 所 並 寺 請 等 、 家 主 ヨリ吟 味 仕 、 以 書 付
覚 ﹂ に は、 早 く も寺 請 状 、 送 り 状 を 借 屋 契 約 に お い て求 め
﹁町式 定 ﹂ の ﹁一、 借 屋 之 事 ﹂ の条 の付 記 に も ﹁付 、 顔 見
の さ れ 、 共 通 の様 式 へと 展 開 し て いく の であ ろう 。
る 規 定 が お さ め ら れ て いる 。
一25一
申 髄 ﹂ と 、 寺 請 状 と 送 り 状 を と って、 身 元 の確 認 と く に前
参 申 由 、 送 り状 を 取 、 又 宿 替 致 候 ハ ・、 其 行 所 を 聞 届 置 可
せ 昼 仕 、 夜 致 申 間敷 候 、 時 行 事 寺 請 迄 取 可 申 候、 何 方 よ り
一般 的 で あ った。 鶏 鉾 町 の文 禄 五 年 七 月 の規 定 で は、 一軒
に は、 表 借 屋 と裏 借 屋 と の間 で、 そ の額 に差 違 が あ る のが
で約 束 す る宿 屋賃 と は別 に、 町 中 に対 し て支 払 う 借 屋 出 銀
ね﹂ な ど、 い ろ い ろな 名 目 を も つが、 借 屋 人 が宿 主 と の間
る 前 に確 認 す る こと が 建 て前 であ った よ う で、 南 新 在 家 町
これ ら の借 屋 契 約 に関 す る 書 類 は、 本 人 が引 っ越 し を す
や は 二匁 で、 役 人 へも 一匁 と な って い る。 足 袋 町 で は、 慶
町 の慶 安 元 年 八月 の規 定 で は、 お も や 四匁 、 う ら や ・か た
借 の場 合 二〇 〇 文 、 宿 主 の家 内 な ら 一〇 〇 文 と いう が 、 同
お 居 住 地 の確 認 を す る べき こと を 規 定 し て い る。
の享 保 十 九 年 九 月 の ﹁町 内 定 式 目 ﹂ にも 、 ﹁一借 屋 貸 申 候
安 二年 九 月 の ﹁式 目 之 麹 ﹂ で表 借 屋 出 銀 五匁 でほか に 一匁・
よ う に、 町 の人 々 への顔 見 せ 、 披 露 代 を ほ と ん ど の町 で、
う に決 ま って い たわ け で はな い。 し か し 、 借 屋 契 約 成立 に
と あ り、 かな らず し も 裏 借 屋 出 銀 が 表 借 屋 の半 額 と いう よ
一、 う ら借 屋 ハ、 出 銀 三 匁 、 右 同 断
酒 二而も 町 中 へも も り 申 間 敷 事
一、 面 屋 ハ、 町 へ之 出 シ 銀 四 匁 三 分 被 出 、 其 外 ハ
借 屋 町儀 之 事
寛 永 十 九 年 九 月 の 四条 菊 屋 町 の町 規 則 で は、
お ハ ・、 諸 道 具 持 不来 以 前 に、 寺 請 町 請 状 取 置 可 申 事 ﹂ と 定
裏 借 屋 出 銀 は 二匁 五 分 で年 寄 銀 が 五 分 と 規 定 さ れ て いる 。
ね あ て い る。 そ し て同 町 規 則 では 続 け て次 の条 に コ 、 同 家
裏 借 屋 の出 銀 は表 借 屋 の ほぼ 半 分 と い のが 一般 であ るが、
お 二移 住 宅 候 ハ ・、 早速 寄 会 場 江罷 出 、 顔 見 セ仕 、 並 請 状 出
銀 持 参 可 致 候 事 ﹂ と、 借 屋 人 の町 入 り に つい て の規 定 を か
か げ て い る。
借 屋 人 の町 入 り に つい ては 、 天 正 十 六 年 の冷 泉 町 の町 規
お 則 の ﹁二百 文 の御 樽 ﹂ や文 禄 三 年 の下 本 能 寺 前 町 の ﹁定 ﹂
ロ 早 く か ら か かげ て いる。 見 知 ら れ と か 顔 見 せ は、 町共 同 体
と も な って、 町 への出 銀 は、 ど の町 でも 額 に差 は あ れ、 町
の ﹁借 屋 之 人 見 し ら れ 酒 の代 と し て五 升 つ \﹂ に見 ら れ る
の構 成 員 と し て必要 不 可欠 であ り 、 そ の費 用 を借 屋人 本 人
入 り の顔 見 せ代 と し て不 可 欠 であ った と 理 解 し た い の であ
る が 、 清 和 院 町 の寛 永 十 六 年 の規 則 で は、 町 入 り 銀 さ え 不
か ら 徴 収 す る のが 原 則 であ った 。
﹁見 し ら れ﹂ ﹁か ほ み せ﹂ ﹁樽 代 ﹂ ﹁ふ る ま いせ ん﹂ ﹁町 か
一26一
要 と 読 め る か の よ う な 規 定 と な って い る 。
二十 分 の 一銀 に半 減 さ れ 、 ま た さ ま ざ ま な 町振 舞 銀 な ど が
禁 止 ま た は制 限 さ れ た。 こ の町触 のな か に コ 、 借 屋 仕 候
輩 、 棚 か り越 候 時 、 其 町 中振 舞 之 儀 、 又者宿 酒 と 名 つけ 酒
借屋之事
一、 請 人 二家 持 寺 請 取 可 申 事
を も り候 由 、 是 又向 後 可為 無 用事 ﹂ と い う 一条 があ り、 借
一、 借 屋 の 町 か ね
れ 三匁 ハ用人 銀 也
定 で はな い が、 宝 永 二年 三月 の西上 之 町 の ﹁町 式定﹂ では、
屋 手 続 に お け る出 費 も規 制 を う け た。 この町 触 の直 後 の規
一、 町 へ之 礼 銭 、 酒 も 盛 申 ま し き 事 、 但 其 組 両隣 へ案
内 可申 事
﹁町 へ之 礼 銭 ﹂ と は 、 町 入 り 銀 ま で含 ん でい る のか、 町
年 寄 や用 人 への礼 銭 そ のも の であ る のか 、 こ こ では 明 示 さ
と し て、 借 屋 手 続 時 の 町儀 を 簡 素 化 し、 実 際 に契 約 にと も
も ち く は り な し、 宿 酒 な し
いわ ゆ る 町入 り銀 を含 め た す べ て の借 屋 出 銀 の こと を ﹁町
な う 雑 事 を と り しき る 町 用人 への実 際 の手 当 てと し て の礼
れ て は い な い。 ほ か に町 入 り 銀 に つい て の規 定 がな いの で、
へ之 礼 銭 ﹂ と し てい る の では な いか と も 考 え ら れ る。 清 和
借 屋 替 り のと き の町 銀 に つい て は、 享 保 八 年 十 月 の町 触
銭 の みを 定 め て い る。
いる が 、 全 体 に 町運 営 費 の倹 約 方 針 と いう か 、 町 儀 の簡 素
で、 家 屋 敷 売 買 時 の出 銀 な どと と も に、 再 び 厳 し い規 制 が
院 町 で は、 家 屋 敷 売 買時 の出 銀 規 定 は他 町 同 様 に明 示 し て
化 の方 向 が う か が え る。 借 屋 契 約 時 の礼 銭 は不 要 で酒 盛 も
あ り 、 次 の よう に布 達 さ れ た。
者 を 振 廻 候 儀 ハ勿 論 、 酒 肴 其 外 何 二而も 、 借 屋 替 二付
裏 借 屋 二候 ハ ・銀 一匁 可 出 之 、 年 寄 五 人 組 相 借 屋 之
一、 借 屋 替 来 候 者 町 銀 之 事 、 表 借 屋 二候 ハ ・銀 二 匁 、
せ ず、 家 の組 の うち 両 隣 に だ け は 挨 拶 を す ると い う のも 、
そ う し た 清 和 院 町 の簡 素 化 方 針 の具 体 化 と み る べき であ ろ
う。
寛 文 十 年 四月 、 京 都 町奉 行 連 名 によ って、 京 都 市 中 に お
こ の町 触 によ って、 町 銀 は表 借 屋 二匁 、 裏 借 屋 一匁 と 統
候 餓 り 物 者、 堅 令 停 止 候 職
統 一的 な 町 触 が 発 せ ら れ た こ と は、 よ く 知 ら れ て い る。 こ
一的 に出 銀 が 規 制 さ れ 、 そ の他 の礼 銀 等 も 一切 禁 止 さ れ て
け る 町 中 への出 銀 慣 行 に つい て、 これ を 大 き く 変 更 さ せ る
の町 触 によ って、 家 屋 敷 売 買 時 の出 銀 であ る 十 分 の 一銀 が
一27一
治 姿 勢 のな か に 組 み こま れ た も の であ った が、 町 への規 制
た の で み な く、 町 自 治 への干 渉 ・統 制 と い う幕 府 権 力 の統
し ま った。 こ う し た 規 制 は、 借 屋 に つい ての み の規 制 だ っ
持 参 仕 、 随 分 消 し 可 申 事 ﹂ な ど が あ る。 これ は都 市 民 と し
之 時 、 町中 亭 主 た る 身 ハ、 家 持 借 屋之 衆 中 共 二、 火 元 へ水
和 六 年 五月 の ﹁町中 相 改式 目序 ﹂ の コ 、 若 町中 火 事 出 来
の ﹁火 之 用 心 、 借 屋 以下 迄 堅 可申 付 候 ﹂ や、 足 袋 屋 町 の 明
れ と い う か た ち で、 借 屋 出 銀 も 統 制 さ れ た こと は 、 注 目 し て
て の義 務 でも あ った の であ ろ う。 寛 文 九年 の塩 屋 町 の ﹁火
事 出 来 之 時 定 之 事 ﹂ の申 し 合 わ せ では、 コ 、 借 屋 衆 之 儀 、
お お か な け れ ば な ら な い。
そ れ では、 次 に町 入 りし た借屋 人 の義務 ま た は責任 と い っ
借 屋 衆 も 町 の構 成 員 であ る か ら、 法 令 は も ち ろ ん町 の慣
追 録 し 、 不 勤 者 に対 す る借 屋 契 約 解 消 と いう 厳 し い措 置 を
内 二有 会 出 不 申 二お ゐ て ハ、 其 家 ヲ早 々 追 出 し 可 申 事 ﹂ と
町衆 同 前 二い そき 罷 出 、 も み け し 候 様 二急 度 申 付 可 申 候 、
習 に従 い、 町 の規 則 を 守 ら な け れ ば な ら な い こと は い う ま
定 め て い る。
た こ と に つい て、 町 規 則 を 中 心 にみ てお こう 。
でも な い。 借 屋 衆 に対 し て家 持 町 人 と 同 様 の義 務 が課 せ ら
で消 火 、防 火 にあ た る こと であ る。 冷 泉 町 の 元 和 六 年 三 月
売 町 の よ う な規 則 を定 め て い る例 も あ るが 、 こ こ で は割 愛
行 す ると き の 日数 を 町衆 ・借 屋 と も に限 定 す るな ど の中 立
に町 衆 ・借 屋 とも に出 席 す る こと や、 泊 り が け で他 所 へ旅
日常 的 な こと で、 毎 月 二 日 の朝 食 前 の会 所 で の寄 り 合 い
の ﹁定 条 々﹂ に、 コ 、 借 屋 衆 之 御 出 な く 候 ハ ・、 く わ せ
れ る こと と いえ ば 、 火 災 時 にお け る 出 動 であ り、 町中 総 員
ん と し て銀 子 拾 枚 御 出 し 可 有 事 ﹂ と あ る が、 これ は 火 事 に
す る。
時 の借 屋 衆 の出 勤 は 当 然 な こと であ る と し た う え で、 不 勤
え ら れ る が、 下 本能 寺 前 町 の文 禄 三年 七 月 の ﹁定 ﹂ に、 早
借 屋 の 又貸 し に つい ても、 当 然 認 め ら れな い こと だ と 考
お 対 す る冷 泉 町 の取 り 組 み を 決 め た町 規 則 であ り、 火 災 発 生
の罰 金 に つい てと く に条 文 化 し たも の であ ろ う 。 ち な み に
く も これ に関 す る 規 定 が あ る。
聞 付 次 第 、 家 主 へ相 談 と \け出 可申 事
一、 借 屋 之 人 、 不 寄 知音 親類 、 又借 シ於 被 申 は、 見 付
家 持 町人 の不勤 料 は銀 子 三十 枚 と な って いる 。
火 災 時 の借 屋 衆 の出 勤 を 町規 則 に条 文 化 し て い る例 は少
な いが、 西 竹 屋 町 の明 暦 二年 七 月 の ﹁町 中 定 置 処 之 条 々﹂
一28一
付 、 一夜 と ま り の儀 不 及 申 、 堅 停 止 可 仕 事
て責 任 を 問 わ れ る こと が請 人 の責 務 であ った 。 従 って請 人
に借 屋 人 に関 し て政 治 的 経 済 的 道 義 的 のあ ら ゆ る面 にお い
り 同 じ よ う な 規 定 が、 清 和 院 町 の万 治 二 年 五 月 の ﹁町 中 定
町 の明 暦 二 年 三 月 の ﹁定 ﹂ で は、 ﹁一、 借 屋 請 人 之 事 、 両
の動 静 確 認 は、 借 屋 契 約 の維 持 のた め 必 要 で、 中 立 売 三 丁
一、 借 屋 之 又 借 仕 ま し き事 、 但親 兄 弟 其 外 し た し き 仁
人 宛 吟 味 之 上 二て、 髄 成 者 可 在 御 取 候 、 判 形 ハ十 人 組 行 事
之 事 ﹂ にも 見 え て い る。
な ら は、 年 寄 両 隣 へ断 置 申 へく 事 、 若 一ケ月 弐 ケ月
家 主 よ り 見 せ 二可 被 遣 事 、 請 人 無 事 二居 候 事 ハ、 毎 月 家 主
わ に ても 居 申 候 ハ、 請 人 を立 可申 候 、 其 人 帰 候 ハ ・、
よ り改 メ可 申 事 ﹂ と 、 借 屋 請 人 の無 事 確 認 は家 主 が 毎 月 励
が 其 通 又 町 中 へ断 可 申 事
中 立 売 三 丁 町 の規 定 と は年 紀 も 九 十 年 以 上 も 遅 れ て相 当
行 し な け れ ば な ら な いと 定 め て いる 。
限 で あ る が 、 親 類 知 音 と い え ども 、 借 屋 宅 で の宿 泊 を 禁 止
に違 う が、 六 角 町 の寛 延 四年 一月 の ﹁定 ﹂ では 、 ﹁ 一、 借
清 和 院 町 の方 が 下 本 能 寺 前 町 よ り、 か な り ゆ るや か な 制
す る た てま え の町 が 多 い。 こ う し た規 則 が た てら れ ると い
屋 請 状 、 三 年 二一度 ッ ・家 主 よ り 、 請 人 居 所 吟 味 可 致 候 、
請 人 居 所 宅 替 致 候 ハ ・、 何 時 二不 寄 、 年 寄 迄 届 可 申 事﹂ と、
う こ と は、 借 屋 の又 貸 し に近 い状 況 が少 な く な いと いう こ
と で あ ろ う。 清 和 院 町 で は、 そ う し た実 体 を踏 え たう え で、
一、 上 は
二条通迄
借 屋請 状 取 様 之事
永 十 九 年 九 月 の ﹁町 内 謹 式 目之 覚﹂ であ る。
る。 借 屋 請 人 の居 住 地 域 規 定 の早 い例 は、 四 条菊 屋 町 の寛
ら であ ろ う か、 借 屋 請 人 の居 住 地域 を 限 定 し て いる 町 も あ
主 あ る い は 町 と し て把 握 し てお か な け れ ば な ら な か った か
事 が起 これ ば そ の都 度 、 何 事 も な く と も 請 人 の動静 は家
三年 毎 の確 認 を 定 め て い る。
借 屋請人問題 の転 回
た て ま え だ け で はな い現 実 対 応 の規 定 と し た の では な いだ
ろう か 。
七
借 屋 契 約 にお い て、 借 屋 人 の身 元 保 証 を す る 請 人 が も っ
と も 重 要 であ る こと は 、 す で にく りか え し述 べ てき た 。 請
人 の重 要 性 は、 借 屋 契 約 時 だ け の こと で は な く、 事 あ る 毎
一 一29一
一、 東 は
一、 下 は
堀川迄
寺 町通 迄
五条 橋 通 迄
町 も 多 い。
区 域 指 定 に つい て、 町 規 則 で はま った く 条 文 化 し て いな い
て設 定 し た も のな の であ ろう 。 も ち ろん 、 借 屋 請 人 の居 住
こ の よう に、 借 屋 請 人 に つい て地 域 指 定 を す る な ど 、 借
一、 西 は
右 之 通 、 何 も御 か てん被 成 候 ハ ・、 宿 御 借 り可 有 候 、
ると 、 身 元 保 証 を 引 き う け てく れ る請 人 と し て、 親 類 や 知
屋 を 貸 す 側 の家 主 と 町 側 か ら は規 制 を 設 け て、 信 頼 でき る
下 京 の 町 であ る 四条 菊 屋 町 の借 屋 請 人 は、 二条 か ら 五 条
人 の家 持 町 人 を い つでも 確 保 でき ると いう も の でも な い。
此 判 本 吟 味 二は、 家 主 役 人 ヲ被 召 連 、 能 々 御 吟 味 可 有
の間 、 寺 町 か ら堀 川 ま で の間 と いう 下 京 中 心 部 に地 域 限 定
お そら く、 他 人 に礼 金 を 支 払 って でも 請 人 と な っても ら わ
請 人 の確 保 を め ざ し て い るが 、 借 り る側 の借 屋 人 にし てみ
さ れ てい る のだ が、 これ は ﹁判 本 吟 味 ﹂ に家 主 と 役 人 が 請
な け れ ば な ら な い こと も 、 少 な く な か った であ ろう 。
候
人 を 確 認 す る た め 現 地 に赴 く と い う こ と と 関係 し て いる の
の家 請 人 制 度 導 入 に関 す る 一件 は、 家 請 人 問 題 の現 状 を の
享 保 十 七 年 十 一月 の、 町 奉 行 所 か ら の京 都 市 中 への諮 問
の ﹁式 目之 覚 ﹂ でも 、 借 屋 請 人 に つい て 、 ﹁上 ハニ 条 ヨ リ
ぞ か せ てく れ る。
で あ ろ う。 同 じ く 下 京 の綾 小 路 通 足 袋 屋 町 の慶 安 二 年 九 月
下 ﹂ ﹁下 ハ五 条 ヨリ上 ﹂ ﹁東 ハ河 ヨリ 西﹂ ﹁西 ハ堀 川 ヨリ東 ﹂
強)
此 度 、 洛 中 洛 外 町 々借 屋 請 之 儀 、 方 角 を 分 十 六 ケ所 二
し か し 、 同 じ 下 京 に属 す る 三 条 衣 棚 町 で は 正 徳 四年 の
請 人 弐 人 宛差 置 、 其 町 々江取 来 候 証 文 之 通 請 判 致 シ、
と いう よ う に、 ほぼ 同 じ よ うな 地 域 限定 を 定 め て いる 。
﹁町 之 式 目 ﹂ で、 コ 、 請 人 所 ハ、 中 立 売 、 下 ハ五 条 、 東 ハ
家 主家 入 用之 節 者早 速 宅 替 為 致 、 家 主 並 借 屋 人 共 指 支
寺 町 、 西 ハ堀 川 限 也 ﹂ と 、 北 限 が上 京 の地 域 に及 ん で い る
無 之 様 可 致候 、 為 請 判 料
但 、 壱 ケ年 之 内 五 ケ度 三分 宛 取 集 可 申 候 由
表 借 屋 壱軒 よ り壱 ケ年 銀 壱 匁 五分 宛
か た ち と な って い る。
お そら く 、 こ う し た こ と は、 各 町 の京 都 市 中 にお け る所
在 地 や 生 業 に伴 う活 動 範 囲 な ど、 いく つか の条 件 を 考 慮 し
一30一
裏 借 屋 壱 軒 よ り壱 ケ年 銀 七 分 五 厘 宛
区 分 け が ど のよ う な 地 域 分 け と な って いた か も これ だ け の
方 か ら、 ﹁家 請 人 仕 方 覚 書 ﹂ と いう も のが 添 付 さ れ て い た
文 面 で は 不 明 であ る が 、 家 請 人 出 願 の願 書 に は、 家 請 人 の
右 之 外 、 掛 り 物 少 も 無 之 、 双方 差 支 無 之 様 二可 致 候 、
よ う であ る。 少 し な が く な る が、 請 人 問 題 を 知 る史 料 であ
但 、 右 同 断 壱 分 五 リ ン宛 取 集 可申 候由
只 今 迄 借 屋 人 銘 々 よ り相 頼 候 請 人 江相 応 之 附 届 、 余 程
る の で、 掲 出 す る。
一、 此 度 、 洛 中 洛 外 町 々借 屋 請 之 儀 、 表 借 屋 よ り壱 ケ
家請人仕方 覚書
あ 之 物 入 も有 之 由 、 相聞 候 、左候 得者 入 用減少 致 シ、面 々
勝 手 二も 可 罷 成 候 哉 、 若 差 支 之 品 存 寄 之 物 有 之 二お ゐ
て ハ、 無 遠 慮 其 趣 書 付 、 可 差 出 事
勝 手 之 筋 も 有 之 、 指 支 候 品 有 之 候 ハ ・、 如 何 様 之
右 之 通 被 仰 出 候 間、 町 々裏 借 屋 等 迄 具 二為 申 聞 、 若 不
持 衆 並 借 屋 人 江割 掛 申 間 敷 候 、 尤 後 々迄 、 右 御 定 之
様 之 出 入 失 却 有 之 候 而も 、 入 用 掛 り物 杯 ヲ申 立 、 家
但 三 分 、 壱 分 五 リ ン宛 年 中 五 ケ度 二請 取 、 其 外 いか
年 二壱 匁 五 分 宛 、 裏 借 屋 よ り壱 ケ年 二七 分 五 リ ン宛 、
儀 二而差 支 候 趣 、 委 細 書 付 、 来 ル十 五 日 迄 之 内 、 私
外 少 二而も 相 集 候 ハ ・、 御 公 儀 様 御 替 可 有 御 座 候 、
子 十 一月
宅 江可 被 指 越 候 、 尤 何 之 指 支 も 無 之 候 ハ ・、 猶 又 差 障
且 又 家 主 衆 中 並 借 屋 人 双 方 為 二相 働 候 事 御 座 候 と て、
可被 成 候 事
カ 、武家 方堂方
御 家 来 衆 中 ハ、 是 迄 之 通 御 相 対 次 第 二
酒肴 青 物 等 礼 義 、 堅 請 不 申 候 事
り 無 之 段 、 一町 切 二不残 書 付 、 可 被 指 出 候 事
附 、 右 御 書 付 之 趣 二付 、 町 々 二而か さ 高 二無 之 様 二可
仕旨申渡候、以上
梅 村四郎兵衛
、 洛 中 洛 外 二方 角 分 チ、 十 六 ケ 所 請 判 人 弐 人 宛 相 定
子 十 一月 六 日
後 段 ﹁右 之 通 ﹂ 以 下 で示 さ れ てい る よ う に、 これ は 法 令
置 可 申 候 間 、 家 持 衆 貸 被 置 候家 入 用之 儀 御 座 候 歎 、
座 候 而、 家 明 さ セ度 思 召候 ハ ・、 早速 右 向 寄 之 請 人
又 ハ借 屋 人 之 所 存 、 御 町中 並御 家 主御 気 二不 入 事 御
で は な い ﹁書 付 ﹂ であ り 、 町 代 の持 ち場 毎 に各 町 か ら の意
見 .回答 を集 め る も の であ った。 な お、 家 請 人 制 度 の出 願
を し た者 が、 ど のよ う な 人 々 であ った か、 ま た十 六 ケ 所 の
一31一
可 申 候 、 若 急 二御 座 候 ハ ・、 借 屋 人 妻 子 諸 道 具 共 、
ハ ・、 御 申 聞 可 被 成 候 、 且又 借 屋 人 望 之 方 方 角 有 之
一、 家 持 衆 中 貸 シ家 、 相 応 之 借 り人 も 無 之 明 家 御 座 候
様 二随 分 世 話 可 仕 事
先 請 人 方 へ引 取 、 家 明 さ セ相 談 可 申 候 、 尤 明家 椿 置
候 而、 家 替 致 度 段 御 申 聞 被 成 候 ハ ・、 随 分 聞 繕 為 御
方 へ御 申 聞 可 被 成 候 、 外 二借 屋 聞 立 、 早 々 家 明 さ セ
候 而、 何 ケ 所 二而も 差 支 無 之 様 二可 仕 候 、 勿 論 御 家 主
右 之 通 、 後 々 二至 り相 違 仕 間 敷 候 、 双 方 勝 手 宜 様 二可
知 可申 間、 御 家 主 も 相 対 之 上 借 り請 可 被 成 候 、 双 方
仕 旨 、 御 公 儀 様 へ奉 申 上 、 蒙 御 免 候 上 ハ、 全 御 権 威 ヲ
借 屋 人 勝 手 つ く の家 替 ハ、 是 迄 之 通 相 対 次 第 二可 被
内 二も 又 々相 重 り、 家 主 衆 中 御 難 儀 之 筋 二御 座 候 、
以、 後 々借 屋 支 配人 之 様 二毛 頭 仕 問敷 候 、 少 二而も仕 方
勝 手 宜 様 二可仕 候 、 尤 是 迄 之 通 、 双方 相 対 之 上 御 借
縦 五 ケ 月 三 ケ月 相滞 候而も、借 屋人 之 仕方 悪敷 候 ハ ・、
悪 敷 御 座 候 ハ ・、 早 速御 公儀 様 江御訴 可被 成 候 、 い か
成候事
家 明 さ セ候 様 二御 申 可 被 成 品 、 可 有 御 座 候 、 若 不 坪
り請 相 極 メ候 ハ ・、 請 判 可 仕 候 事
之 儀 被 申 候 借 屋 人 御 座 候 ハ ・、 早速 御申 聞 可被 成候 、
様 之 曲 事 被 仰 付 候 共、 御 町中 へ対 シ、 一言之 子細 申 間
、 宿 料 貸 之 儀 ハ、 売 掛 預 ケ銀 杯 と違 ひ、 催 促 被 成 候
品 能 相 済 候 様 二引 請 増 明 ケ 可申 候 、 宿 料 さ へ相 済 候
誰判
家請人
鋪 候 、 為 後 日価 而 如 件
何之通
御 組 町中
享 保 十 七 年 子 十 一月
ハ \家 替 二も不 及、 双方 勝 手 宣 候 様 二可 被 成 候 、 ケ
様 之 世 話 無 之 と て、 御家 主 ハ不 及 申 、 借 屋 人 よ り も
言 葉 之 御 礼 二も 不 及 候 、 且 又 町 々宿 料 直 段 上 ケ 下 ケ
之 儀 ハ、 御 相 対 次 第 二可 被 成 候 、 家 請 人 方 二少 も 相
右 之 通 相 認印 形 仕 、 洛 中 洛 外 組 町 中 江相 渡 可 申 候 、 願
こ の仕 方 書 に よ ると 、 洛 中 と 洛 外 を 区 別 せ ず 、 町 々 にお
構申儀無御 座候
け る家 主 と借 屋人 の便 宜 の ため に家 請 人 制 度 を 均 質 に立 ち
之 通 被 為 仰 付 候 ハ ・、 難 有 可 奉 存 候 、 以 上
出 来 候 ハ ・、 早 速 御 申 聞 可 被 成 候 、請 人 罷出 坪明 ケ、
、 何 事 二よ ら す 借 屋 人 之 儀 二付 、 家 主 御 役 害 二成 申 品
家 主 之 御 難 儀 掛 不 申 候 様 二可 仕 候 、 借 屋 人 も 相 立 候
32一
覚
此 度 洛 中 町 々借 屋 請 之 儀 、 請 判 い たし 候 節 、 為 印 形 代
あ げ た いと し て い る。 家 請 人 の必 要 性 と借 屋 を め ぐ る ト ラ
ブ ル の発 生 が 、 洛 中 洛 外 の町 々全 域 に わ た って発 生 し てお
表 借 屋 之 分 者壱 匁 三分 つ\、 裏 借 屋 之 分 者銀 八 分 つ \、
相 願 候 も の有 之 候 、 左 候 ヘ ハ、 宿 料 相 立 不 申 家 替 不 仕
り、 これ に対 し て は、 ほぼ 同 じ手 法 で解 決 でき る と いう 判
借 屋 側 の負 担 が 、 借 屋 契 約 時 だ け でな く、 年 五 回 の分 割
者 杯 引 請 、 及 出 入 不申 候 様 可 仕 、 困窮 之借 屋 も の ヘ ハ、
其 翌 年 よ り年 々 五節 句 毎 二、 表 借 屋 ハ銭 三 拾 文 つ \、
払 い であ る が 、 毎 年 請 判 料 を 払 うと い う組 み立 て に特 徴 が
其 品 二よ り合 力 等 仕 、 渡 世 取 続 候 様 可 致 旨 二候 、 尤 親
断 が 出 願 者 側 にあ り 、 ま た 奉 行 所 側 でも 同様 な 認識 を し た
あ る。 し か も 、 借 屋 人 の転 居 先 の確 保 の約 束 も あ る には あ
類 縁 者 を 相 願 候 故 、 是 迄 家 請 判 代 出 不 申 も の ハ、 相 対
裏 借 屋 ハ銭 廿 文 つ\取 之 、 惣 家 請 人之 儀引 請相 立度 旨、
るが 、 家 主 側 の難 義 の解 決 、 す な わ ち借 屋 の明 け渡 し や 宿
を 以 、 是 迄 之 通 二為 致 可 申 候 、 且又 是 迄 家 請 人 二相 立 、
と い う こと であ ろ う 。
屋 賃 の滞 納 処 理 な ど と い った 家 主 側 の恩 典 が強 調 さ れ て い
少 ハ渡 世 之 助 力 二も仕 居 候 も のも 有 之 候 ハ ・、 其 も の
之 儀 ハ、 是 迄 立 居 候 家 請 軒 数 之 外 二、 軒 数 相 増 為 致 世
る。 家 持 町人 側 に有 利 な 借 屋 ト ラブ ル の解 決 を強 調 し てお
か な い と、 市 中 町 々か ら の同 意 が 得 ら れ な いと いう出 願 者
話 、 其 も の へ難 儀 筋 無 之 様 可 仕 段 、 申 之 候 、 然 ハ町 々
の有 之 候 ハ ・、 無 遠 慮 其 趣 書 付 、 可 差 出 候 事
末 々之 も の、 勝 手 二も可 相 成 哉 、 若 差 支 之 品 存 寄 之 も
側 の判 断 が あ った のか も し れ な い。
こ の享 保十 七 年 度 の家 請 人 制 出 願 の結 果 が ど う な った か
は未 詳 であ る。 と こ ろが 、 こ の出 願 と同 じ よ う な家 請 人 制
触 状 では な いと し つ つも 、 享 保 十 七 年 度 と 同 じ よ う に、 市
有 之 、 差 支 候 品 有 之 ハ、 如 何 様 之 儀 二而差 支 候 と 申 趣
右 之 通 、 町 々裏 借 屋等 迄 具 二申 聞 せ、 若 不 勝 手 之 筋 も
戌五月
中 各 町 々 に対 し て こ の出 願 に対 す る諾 否 を 問 う諮 問 を 発 し
書 付 、 可 差 出 候 、 此 段 随 分 か さ高 二無之 様、無急 度 内 々
度 の出 願 が 宝 暦 四 年 にも あ った よ う で、 京都 町奉 行 所 では、
て い る。
二
而承 合 可 申 候
一33一
こ れ に よ る と、 親 類 縁 者 に頼 む ほ か は、 印 形 代 と いう か
か は不 明 であ るが 、 宝 暦 年 中 に家 請 会 所 と いう も のが 出 現
家 主 ・借 屋人 間 の ト ラブ ルを 解 決 し、 困窮 者 への合 力 や こ
ま え て、 借 屋 惣 家 請 人 出 願 者 は、 家 請 人 制 の設 立 によ って、
す る事 例 な ど のあ る こと が う か が え る。 こう し た 状 況 を 踏
き な く、 し か も 転 居 も でき ず に家 主 ・借 屋 人 双方 と も 困 惑
渡 世 の助 け と し て い る人 々も い る こ と、 家 賃 の支 払 いが で
り 一般 的 であ る こと 、 家 請 人 を 引 受 け る こと で収 入 を 得 て
之 由 二候 、 右 躰 之 者 有 之 候 而者紛 敷 、 取 〆 リ不 相 成 難 義
向 寄 之 外 、 内 証 二而印 料 を 取 、 家 請 いた し 候 も の も 有
致 奥 印 候 儀 、 先 達 而願 出 差 免 置 候 、 然 ル処 、 右 差 配 之
致 候 借 屋 請 人 差 置 、 右 引 請 之 請 状 二候 故 、 会 所 之 者 も
尤 目 印 を 差 出 シ町 々向 寄 二家 請会 所 之 も の共 引 請 二
差配
の無 之 借 屋 も の、 相 対 之 上 極 之 印 料 を 取 、 家 請 二相 立、
町 々借 屋 之 者 共 、 実 之 親 類 家 持 無 之 、 家 請 人 相 立 候 も
し て い る。
れ ま で家 請 人 業 を や ってき た も の へも支 援 も し 、 ま た 親 類
之 段 申 出 候間 、 以来 印 料 を 取 、 無 縁 之 者 之 家 請 印 形 い
たち で借 屋 請 人 と な ってく れ る人 へ礼 金 を払 う こと が か な
等 を頼 ん でき た 人 々 に は家 請 人 制 に強 制 加 入 さ せ る も の で
た し間 敷 候
右 之 趣 、 洛 中 洛 外 へ可 相 触 者 也
も な いと し て いる 。
享 保 十 七 年 度 に は請 判 料 を毎 年 表 借 屋 一匁 五 分 、 裏 借 屋
借 屋 一〇 〇 文 と 定 あ て い る。 全 体 と し て借 屋 人 負 担 は宝 暦
年 度 か ら 年 五 回 分 割 で あ る が、 表 借 屋 は 年 額 一五 〇 文 、 裏
は 、 借 屋 契 約 時 に表 借 屋 一匁 三 分、 裏 借 屋 は 八 分 と し 、 次
会 所 側 か ら そ う し た も の の取 り締 ま り に つい て奉 行 所 へ願
内 々 で印 料 を と って家 請 人 の仕 事 を す るも の が お り、 家 請
行 の業 務 を お こな って いる。 し か し、 縁 者 でもな いも のが、
か ら な い も の の、 各 地 に家 請 会 所 が設 置 され 、 借 屋 請 状 発
これ は宝 暦 十 二年 十 二月 の京 都 町 触 であ る。 そ の数 はわ
午 十 二月 二 日
四 年 度 が 大 き く な る。 い ず れ にし ても 、 洛 中 洛 外 の借 屋 状
い が出 さ れ た こと が わ か る。 こ の点 は、 宝 暦 四年 五 月 出 願
は そ の半 額 と し て い た の に く ら べる と 、 宝 暦 四 年 度 のも の
況 を 勘 案 し て、 家 請 人 制 が 営 業 と し て成 り 立 つと いう 計 算
のも の では 、 従来 の家 請 業 を営 む者 は む し ろ支 援 を す ると
が あ った の であ ろ う。
宝 暦 四年 五 月 の惣 家 請 人 制 が そ のま ま 認 め ら れ たか ど う
一34一
奉 行 所 は宝 暦 十 四 年 四月 にな って、 そ の 理由 は ま った く 示
請 会 所 に ど のよ う な 問 題 が 生 じ て い た の か 不 明 であ る が 、
な ってお り、 相 違 し てき て い る。 こ の ほ か、 宝 暦 年 中 の家
一、 前 方 右 同 様 之 願 人 有 之 、 相 尋 候 処 、 親 類 縁 者 を 相
之 訳 二而指 支 と 申 儀 、 具 二答 書 可 指 出 候
も の存 寄 之 趣 、 両 様 二相 分 、 指 支 等 申 立 候 共 、 如 何 様
趣 、 借 屋 人 共 へも 具 二為 申 聞 、 借 宅 人 共 存 寄 並 家 持 之
と こ ろ が、 こ の家 請 会 所 廃 止 か ら 六 年 後 の明 和 七 年 、 ま
趣 相 聞 得 候 、 全 音 物 等 無 之 相 頼 候 儀 者、 稀 成 様 子 二
礼 銀 等 指 出 シ、 家 請 相 頼 候 者 と も ハ、 音 物 等 相 送 候
頼 候 故 、 出 銀 無 之 段 申 答 候 町 々、 多 分 有 之 候 得 共 、
さ な い ま ま に、 家 請 会 所 を 廃 止 さ せ た こ とを 洛 中 洛 外 へ触
の た あ ら た め て家 請 会 所 の設 立 を 出 願 す るも の が あ り、 享 保
候 、 左 候 得 者、 外 二失 却 等 無 之 相 定 候 印 料 指 出 し 、
れ て い る。
十 七 年 度 、 宝 暦 四 年 度 の例 にな ら って、 そ の諾 否 を奉 行 所
請 印 形 相 頼 候 方 、 却 而勝 手 二可 相 成 候 、 尤 願 人 へも
遂 吟 味 候 処 、 印 形 之 外 決 而懸 り 物 不 相 懸 候 段 申之 候、
は各 町 々 に問 う て いる 。
町 々家 請 人 之 儀 、 是 迄 相 応 之 音 物 等 を 遣 ひ、 或 ハ礼 銀
返答可申出髄
勿 論 願 人 よ り、 公 儀 御 益 等 も 申 立 候 得 者、 与 得相 考、
二会 所 相 建 、 右 会 所 年 寄 之 者 へ印
等 指 出 し、 失 却 等 多 ク相 懸 候 儀 二付 、 以 来 洛 中 洛 外 家
請人之儀、向寄 ー
銀 八 分 宛 取 之 、 家 入 用 之 節 者、 無 滞 会 所 へ引 取 、 勿 論
と し て、 半 季 二表 借 屋 よ り 銀 一匁 五 分 宛 、 裏 借 屋 よ り
家 請 人 二相 立 、 会 所 二て相 改 、 家 請 状 二致 奥 印 、 右 印 料
が あ って の こと で はな いと 見 受 け ら れ る。 後 段 の文 章 か ら
せ る と いう のも 、 前 回 、 前 々回 の出 願 と 方 針 に大 き な 変 化
象 的 であ る。 困 窮 人 や長 病 者 を 会 所 で引 き 受 け 施 薬 養 生 さ
な い。 む し ろ料 金 が 年 額 と し て は倍 額 と な って い る のが 印
家 請 会 所 の趣 旨 と し て は、 従 来 のも のと ほと んど 変 化 は
懸 合 等 も 有 之 候 ハ ・、 是 又 引 請 坪 明 遣 、 困 窮 人 ま た ハ
は 、 これ ま で の家 請 会 所 に つい て の奉 行 所 か ら の諮 問 に、
札 を 相 渡 置 、 町 々 へも 印 鑑 相 渡 、 右印 札 を目 印 いた し、
長 病 に て致 難 義 、 親 る い等 も 無 之 も の ハ、 会 所 へ引 請
町 側 では 現 金 を 支 出 しな けれ ば な ら な い家 請 会 所 の新 シ ス
テ ムよ り 、 従 来 ど お り親 類 縁 者 に依 頼 す る こと を 支 持 す る
致 、 施 薬 等 養 生 可 致 遣 旨 、 願 人 有 之 候 、 右 之 趣 二候 得
者、 借 屋 人 共 勿 論 家 主 等 、 勝 手 二も 可 相 成 儀 二候 、 右 の
一35一
た と い う こと では な い だ ろ う か。 衣 棚 北 町 の返 答 書 にも あ
者 の方 が出 費 が な く て よ い と申 し出 た 町 々 も少 な くな か っ
こ の明 和 七 年 度 の奉 行 所 か ら の問 い か け に対 し 、 三 条 衣
る よ う に、 困 窮 し てい る借 屋 人 が家 請 会 所 へ毎 年 現 銀 を 支
回 答 が多 か った こと が わ か る。
棚 町北 町 の返 答 書 案 が 知 ら れ て い る の で、 これ も あ げ て み
払 い つづ け る こと は、 容 易 で は な い。 結 論 か ら い えば 、 家
く こ と は、 困 難 な こと であ った に相 違 な い の で あ る。 明 和
請 会 所 が 借 屋 人 か ら家 請 判 料 を毎 年 期 日 ま で に集 金 し て い
る こと にし よ う 。
は 七 年 度 の家 請 会 所 の出 願 が受 理 さ れ た と い う こ とを 示 す 史
町中御返答書
一、 町 内 借 宅 之 者 共 、 請 人 印 形 勝 手 二相 成 候 義 、 相 願
料 も未 見 であ る 。
借 屋 請 人 に つい て では な い が、 あ ら た に借 屋 引 取 人 と い
候 者 在 之 候 二付 、 御 尋 難 有 奉 存 候 、 町 内 借 屋 共 相 尋
柳 礼 銀 音 物 等 少 も相 送 り 不 申 候 、 困 窮 之 物 共 候 得煮
う も のが 登 場 し 、 そ の統制 に 関 し て、 奉行 所 は天 明 二年 九
候 処 、 銘 々縁 者 懇 意 之 者 共 相 頼 、 住 居 仕 罷 在 候 得煮
出 銀 仕 候 義 難 敷 候 間 、 是 迄 之 通 二被 為 仰 付 被 為 下 候
月 十 四 日 付 で町 触 を 発 し て いる。 これ によ る と、 借 屋 人 た
様 、 御 願 申 上 ク レ候 様 相 頼 候 間 、 御 返 答 申 上 候 、 御
ち が 相 互 に引 取 人 と な り 、実 際 に引 取 り 問題 が発 生 し た と
いる 。
家 主 た ち も 引 取 人 に つい ては よ く 調 べる よ う にと指 令 し て
取 人 を 専 門 に請 け 負 う 者 も いる こと を 指 摘 し てお り、 今 後
慈 悲 之 上 、 是 迄仕 来 候 通 二被 為 仰 付 候 ハ ・、 難 有 可
寄
き 、 これ を 処 理 でき ず に混 乱 す る 事 態 が あ る こと、 ま た引
衣棚北 町
年
奉 存 候 、 以上
年号月 日
五人 組
合 に よ って、 借 屋 を 明 け 渡 さ な け れ ば な ら な い時 、 ま ず 借
引 き 取 り問 題 と いう の は、 借 屋 人 の事 情 ま た 家 主 側 の都
衣 棚 北 町 の事 例 だ け で 断 定 は でき な い が 、 奉 行 所 か ら
屋 人 の妻 子 ・諸 道 具 ま で請 人 方 で引 き 取 る こと 、 ま た 難 問
中
﹁親 類 縁 者 を 相 頼 候 故 出 銀 無 之 段 申 答 候 町 々 多 分 有 之 候 得
の処 理 も 引 き う け る作 法 を い い、 前 掲 の享 保 十 七 年 の史 料
町
共 ﹂ と指 摘 が あ った にも か か わ らず 、 か さ ね て縁 者 懇 意 の
一36一
にも 見 え て い る。
問 題 が 発 生 し た と き に、 借 屋 人 を と り あ え ず 引 き 取 る の
は借 屋 請 人 の任 務 と さ れ 、 家 請 会 所 の出 願 でも、 会 所 への
引 き 取 り に言 及 し て いた 。 借 屋 に関 す る ト ラブ ル の解 消 に
引 き 取 り の責 務 の励 行 はと く に重 視 さ れ た の であ ろ う か 、
十 八 世 紀 の後 半 か ら は 、 借 屋 請 状 と と も に借 屋 引 取 証 文 も
借 屋 契 約 時 に同 時 に作 成 さ れ る よ う に な ってい る。 も ち ろ
ん 、 借 屋 の請 人 と 引 取 人 は別 々 の人 物 で あ る。
家 請 人 に つい ては 、 京 都 の町 の永 い慣 行 で家 持 町人 でな
け れ ば な ら な い こと が 周 知 さ れ て い た が、 新 興 の引 取 人 に
つい て は借 屋人 同 士 が お 互 い に引 取 人 に立 つ場 合 も あ った
の であ ろ う。 天 明 二年 九 月 十 四 日付 の町 奉 行 所 か ら の町 触
は 、 そ の こと に言 及 し て いる の であ る。 こ れ は、 家 請 人 が
一九 九 一年 )
(思 文
化 し て い く こ と に つ い て の実 例 は 、 橋 西 二 丁目 町 の実 例 か
ら 、 す で に 紹 介 し た こ と が あ った 。
注
閣出版刊
京 都 冷 泉 町文 書 ﹂ 第 一巻
(1 ) 京 都 冷 泉 町 文 書 研 究 会 編 ﹃
(2) ﹃京 都 冷 泉 町 文 書 ﹄ 第 一巻 、 四 一頁 。
(
3 ) ﹃京 都 冷 泉 町 文 書 ﹄ 第 一巻 、 五 四頁 。
(4) ﹃京 都 冷 泉 町 文 書 ﹂ 第 一巻 、 一〇 七 頁 。
(5) ﹃京 都 冷 泉 町 文 書 ﹂ 第 一巻 、 一〇 八 頁 。
(7) 小 林 丈 広 氏 編 ﹃京 都 町式 目 集 成 ﹄ (京 都 市 歴 史 資 料 館 刊
(6 ) ﹃京 都 冷 泉 町 文 書 ﹂ 第 一巻 、 一〇 九 頁 。
一九 九 九 年 ) 九 九 頁 。 ﹁一か り家 之 物 あ る にお い て は 、 御
し ゆく 老 衆 へ案 内 申 、 御 か て ん 。お い て は 、 二 百 文 の 御 樽
出 申 へき 事 ﹂ と あ る。
(8 ) ﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹂ 一六 二頁 。
(9 ) ﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹂ 一六 三頁 。
引 き 取 り の任 務 か ら解 放 さ れ た こと を 意 味す る の ではな く、
引 取 人 が 請 人 に加 え て引 き 取 り の任 務 を 分 担 し て負 う と い
(10 ) ﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹂ 三 〇 三頁 。
(13 ) ﹃下 柳 原 南 半 町 文 書 ﹄ 京 都 町触 研 究 会 編 ﹃京 都 町 触 集 成 ﹄
市 歴 史 資 料 館 紀 要 ﹄ 第 三号 所 収 ) 三七 頁 参 照 。
(12 ) 鎌 田 道 隆 ﹁京 都 に お け る十 人 組 ・五 人 組 の再 検 討 ﹂ (﹃京 都
書 刊 行 会 刊 )、 八 二頁 。
(11 ) ﹃当 代 記 ﹂ 巻 三、 慶 長 八年 此 年 条 。 ﹃史 籍 雑 纂 ﹂ 第 二 (国
う か 、 と く に引 き取 り の問 題 を 中 心 に扱 う こと に な った も
の であ る。 この こと は、 秋 山 國 三 氏 の ﹃公 同 沿 革 史 ﹄ 上 巻
に紹 介 さ れ てい る借 屋請 状 と 引 取 証 文 の事 例 か らも 明 ら か
であ る。
ま た 家 請 人 や引 取 人 が十 九 世 紀 にお い て、 ます ま す専 業
一37一
別 巻 二 (岩 波 書 店 刊
一九 八 九 年 ) 一六 二頁 。
(14 ) ﹃日 本 都 市 生 活 史 料 集 成 一﹄ 三都 篇 1 (
学 習研究社 刊
一
九 七 七 年 ) 所 収 。 な お引 用 の 二史 料 は、 同書 一四 〇 頁 。
(15 ) ﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹂ 九 九 頁 。
(16 ) ﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹄ 三〇 三頁 。
(17 ) ﹃京 都 町 触 集 成 ﹄ 別 巻 二、 一六 七 頁 。
(18 ) 同 前 。
(19 ) ﹃神 田 家 記 録 ﹄ (
﹃京 都 町触 集 成 ﹂ 別巻 二 、 一六 九 ∼ 一七 〇
﹃三 条 町 武 内 家 文 書 ﹄ (﹃
京 都 町触 集 成 ﹄ 別 巻 二 、 一七 一頁)
﹃京 都 冷 泉 町 文 書 ﹂ 第 一巻、 五 八 ∼ 五 九 頁 。
﹃三 条 町 武 内 家 文 書 ﹄ (﹃
京 都 町 触 集 成 ﹂ 別 巻 二 、 一七 五 ∼
一七 六 頁 )
一九 七 二年)
﹃三 条 町 武 内 家 文 書 ﹂ (﹃京 都 町 触 集 成 ﹄ 別 巻 二、 一七六 頁)
四 四∼ 四七 頁 。
﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹄ 二 一〇 頁 。
﹃京 都 町 式 目 集 成﹂ 一六 四 頁 。
﹃京 都 町触 集 成 ﹂ 別 巻 二 、 一七 九 頁 。
同前。
﹃
京 都 町触 集 成 ﹂ 別 巻 二 、 一八 一頁 。
﹃
京 都 町式 目 集 成 ﹄ 一六 五 頁 。 ﹁諸 法 度 相 定 之 事 ﹂ は、 第
同前。
一条 に [先 奉 行 廿 一条 ﹂ ﹁今 度 九 ケ 条 之 趣 ﹂ と あ る こと か
ら、 制 定 さ れ た の は、 牧 野 佐 渡 守 所 司 代 の時 代 の も の と 推
測 さ れ る。
﹃妙 心 寺 文 書 ﹄ (﹃
京 都 町触 集 成 ﹂ 別 巻 二、 一八 二頁 )
﹃京 都 町触 集 成 ﹄ 別 巻 二、 一八 一頁 。
﹃下 本 能 寺 前 町文 書 ﹄ (﹃
京 都 町 触 集 成 ﹂ 別 巻 二、 一八 三 ∼
同前。
一八 四頁 )
﹃
京 都 上 京文 書 ﹄ (﹃
京 都 町触 集 成 ﹂ 別 巻 二、 一八 九 頁 )
﹃西村 彦 兵衛 家 文 書 ﹂ (﹃
京 都 町 触 集 成 ﹄ 別 巻 二、 一九九 頁)
﹃
塩 屋 町 文書 ﹂ (﹃
京 都 町触 集 成 ﹄ 別 巻 二、 二 四九 頁 )
﹃
古 久 保 家文 書 ﹄ (﹃
京 都 町触 集 成 ﹂ 第 一巻 、 三六 九 頁 )
同前。
同前 、 三 七 一頁 。
﹃
京 都 町 式 目集 成 ﹂ 八 八頁 。
﹃
京 都 町 式 目 集 成﹂ 一二 五頁 。
﹃
京 都 町 式 目 集 成﹄ 二 = 頁 ・二 一三∼ 二 一四 頁 。
﹃
京 都 町 式 目 集 成 ﹄ 一七 八∼ 一七 九 頁 。
﹃
京 都町式目集成﹄二五二
﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹂ 三 三 〇頁 。
﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹂ 九 九 頁。
﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹄ 二 〇 九頁 。
﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹄ 九 一頁。
﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹂ 二 一
二〇 頁。
﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹂ 一四 三 ∼ 一四 四頁 。
一38一
)))
)
35 343332
)))))))))))))))
頁 。)
)))
京 都 市 編 ﹃京 都 の 歴 史﹂ 第 五 巻 (学 芸 書 林 刊
222120
504948474645444342414039383736
))
(((
))
))))))
)
5251
((
2423
31 302928272625
(53 ) ﹃京 都 町式 目 集 成﹄ 六 七 頁 。
(54 ) ﹃京 都 町式 目 集 成﹂ 一二 三 頁 。
(55 ) 同 前 。
(56 ) ﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹂ 九 六頁 。
(57 ) ﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹂ 二 五 二 頁 。
(58 ) ﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹄ 三 三〇 頁 、 三 三 三 頁 。
(59) ﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹂ 三 三七 頁 。
(60) ﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹄ 六 七 頁 。
(61) ﹃
京 都 町 式 目 集 成 ﹂ 七 一頁 。
(62) 同 前 。
(
6
3) ﹃
京 都町式目集成﹂九九頁。
﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹂ 一六 二頁 。
﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹂ 八九 頁 。
申 四月
洛 外 不 洩 様 可 申 通事
達 而相 触 置 候 得 共 、此 度 右 会 所 相 止 さ せ 候 間 、 此 旨 洛 中
相 対 之 上 家 受 二相 立 候 儀 、 家 請 会 所 へ相 届 可 致 旨 、 先
町 々借 屋 之 者 共 、 実 々親 類 家 持 無 之 、 家 請 人 二相 立 も の、
のと お り で あ る。
﹃京 都 町触 集 成﹂ 第 四 巻、 三 〇 五頁 。 家 請 会 所 禁 止 令 は 左
﹃京 都 町触 集 成 ﹄ 第 四 巻 、 二 一八頁 。
﹃
京 都 町触 集 成﹂ 第 三 巻 、 三 六 一∼ 三 六 二頁 。
頁 に わ た り 、 京 都 の借 屋 問 題 を と り あ げ て いる。
﹁
借 屋 の 手 続 ﹂ と いう 項 目 を た て て 、 二 六 四 頁 か ら 二 七 一
て実 現 し な か った ﹂ と し て い る 。 な お 、 秋 山 氏 は 同 書 中
では 、 こ の計 画 が あ った こと を 述 べ 、 ﹁市 民 の 反 対 に 逢 っ
秋 山 國 三 氏 ﹃公 同 沿 革 史 ﹂ 上 巻 (昭 和 十 九 年 刊 ) 二 六 七 頁
﹃
京 都 町 触 集 成 ﹄ 第 二巻 、 一七 九 ∼ 一八 〇 頁 。
﹃京 都 町 触 集 成 ﹂ 第 二巻 、 一七 六 ∼ 一七 七 頁 。
﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹄ 二 一二 頁 。
﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹂ 三 三 〇 頁 。
﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹂ 二五 三 頁 。
﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹂ 二 二五 頁 。
﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹂ 八 二頁 。
)))))))
(90 ) ﹃京 都 町 触 集 成 ﹂ 第 五巻 、 九 二∼ 九 三頁 。
一39一
(
6
4) ﹃
京 都 町 式 目 集 成 ﹂ 一六 二頁 。
(6
5) ﹃
京都 町式目集成﹂三〇三頁。
(66 ) ﹃京 都 町式 目 集 成 ﹂ 三 〇 六 頁 。
(67 ) ﹃京 都 町式 目 集 成 ﹂ 三 三 〇 頁 。
83828180797877
)))
(68 ) ﹃京 都 町式 目集 成 ﹂ 二 五 二 頁 。
(69 ) ﹃京 都 町式 目集 成 ﹄ 八 八 頁 。
(70 ) ﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹂ 別 巻 二 、 二四 九 頁 。
(71 ) ﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹂ 六 七 頁 。
(72 ) ﹃京 都 町 触 集 成 ﹄ 第 一巻 、 四 一六 頁 。
(73 ) ﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹂ 一〇 〇 ∼ 一〇 一頁 。
(74 ) ﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹂ 九 六 頁 。
(75 ) ﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹂ 三 三 八 頁 。
(76 ) ﹃京 都 町 式 目 集 成 ﹄ 二 八九 頁 。
868584
))
89
iii
)
(91) ﹃京 都 町 触 集 成 ﹂ 第 五 巻 、 九 三頁 。
近 来 、 借 屋 人 共 相 互 二引 取 人 二相 立 罷 在 、 懸 り 合 引 取 候
(92 ) ﹃京 都 町 触 集 成 ﹂ 第 六 巻 、 二 三 二 ∼ 二 三 三 頁 。
節 差 支 、 彼 是 甚 紛 敷 い た し 形、 不 坪 二候 、 以 来 相 互 二引
取 人 二立 候 儀 、 堅 致 間 敷 候 。 此 外 所 々 二引 取 二相 立 、 渡 世
同 前 二い たし 罷 在 も の有 之 趣 相 聞 江、 是 亦 不 埼 候 間 、 向 後
右 躰 之 儀 致 間 敷 候 、 尤 家 主 共 儀 も 、 兼 而心 を 付 、 引 取 人
之 儀 入 念 取 之 候 様 可致 候
右 之 通 相 触 候 上 者、 以 来 右 躰 之 儀 有 之 候 ハ ・、 急 度 替 可
の也
(﹃京 都 市 史 編 さ ん
申 付 候 間 、 此 旨 洛 中 洛 外 裏 借 屋 二至 迄 、 不 洩 様 可 相 触 も
寅九月十 四日
通信 ﹂ 第 一二 一・ 一二 二 ・ 一二 四号 、 一九 七 九 年 六 月 ∼ 九
上 京 橋 西 二 丁 目 の借 家 事 情
(93) 鎌 田道 隆 ﹃
月)
一40一