平成28年 第14回 除 除却損の損金算入時期 ─除却損を繰り延べることはできるか 篠藤 敦子 公認会計士・税理士 店舗の改装工事を行い、帳簿価額500万円分の什器(一括償却資産に該当するものはありません)を廃棄しました。当期 店舗 は業績が厳しく赤字になりそうなので、廃棄にともなう除却損は来期に計上したいと考えています。除却損500万円を来期 は業績 の特別損失に計上し、来期の損金の額に算入することは認められますか。 の特別 別 廃棄した固定資産の除却損は、資産を廃棄した事業年度の損金の額に算入します。当期中に固定資産を廃棄しているにも 廃棄 棄 かかわらず、その除却損を来期の損金の額に算入することはできません。 かかわ 解説 1 除却損の金額と損金算入時期 固定資産を廃棄したときは、その資産の廃棄直前の帳簿価額(税務上)を、廃棄した日の属する事業年度の損金の額に算入します。 期首 期末 廃棄 廃棄 廃棄 除却損の損金算入〉 金 額 直前の税務上の帳簿価額 損金算入時期 廃棄した日の属する事業年度 なお、一括償却資産*として償却している固定資産を廃棄した場合には、除却損を一度に損金の額に算入することはできません。廃棄 の前後で、一括償却資産の損金算入限度額は変わらないため、廃棄後も3年間の均等償却を続けることになります。 * 取得価額20万円未満の減価償却資産については、通常の減価償却の方法ではなく、事業の用に供した資産の取得価額を一括し、3年間にわたって均等償却を行うことが認 められています。この方法で償却を行う資産を「一括償却資産」といいます。 また、固定資産の取壊しや廃棄に費用がかかる場合には、その費用もあわせて損金の額に算入します。反対に、廃材等の処分代金を受 け取っている場合には、それを控除した金額を損金の額に算入します。 本事例の検討 店舗の改装工事により什器を廃棄したのは当期です。したがって、除却損500万円を当期の損金の額に算入します。来期の損金の額に 算入することは認められません。 固定資産の除却損については、資産を取り壊したり廃棄した時期を明確にしておくことがポイントとなります。その ための方法として、取壊しや廃棄の事実を明らかにする書面や写真を残しておくことが考えられます。 また、除却損の処理もれが発生しないよう、定期的に固定資産台帳と現物を照らし合わせる作業を実施することも重 要です。 しの とう あつ こ 篠藤 敦子(公認会計士・税理士) 著者紹介 名古屋市出身。津田塾大学卒業後、平成 年公認会計士登録。大手監査法人を経て平成 北区堂島)開業。企業の監査役を兼務している。 年に篠藤公認会計士事務所(大阪市 月
© Copyright 2024 ExpyDoc