第 回 一括償却資産を除却した場合の取扱い

平成27年
第
篠藤 敦子
回 一括償却資産を除却した場合の取扱い
公認会計士・税理士 減価償却資産のうち取得価額が20万円未満のもの(一括償却資産)については、取得価額を3年間にわたって均等に損金の額に算入す
ることが認められています。
この一括償却資産の損金算入も、第4回でとりあげた少額の減価償却資産と同様に、適用する機会の多い制度です。
今回は、一括償却資産の損金算入制度に関する実務上の注意点について解説します。
一括償却資産の損金算入制度の対象としている備品(取得価額15万円)を、当期の3月に廃棄しました。この備品は、前
期の10月に事業供用したものです。備品の期首帳簿価額10万円は、当期の損金の額に算入できるのでしょうか。当社は、3
月決算です。
いったん一括償却資産として処理することを選択した減価償却資産について、その後の事業年度に滅失や廃棄等の事実が
生じたとしても、除却損に相当する額をそのまま損金の額に算入することは認められません。引き続き3年均等償却額が損
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= 50,000円
金算入限度額となります。したがって、当期の損金算入限度額は5万円*です。 * 150,000 × ─
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解説
1 一括償却資産の損金算入限度額
一括償却資産の損金算入限度額は、次の算式により計算します。
当事業年度の月数
一括償却資産の損金算入限度額 = 一括償却資産の取得価額の合計額 × ─
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一括償却資産の損金算入限度額は、一括償却資産を構成する個々の資産について計算するのではなく、事業年度ごとに一括償却資産の
取得価額の合計額を求め、その合計額に対する額を一括して計算します。
損金算入限度額の計算例
事業年度
X1年度
X2年度
X3年度
各事業年度に事業供用した一括償却資産の取得価額の合計額
600,000 円
900,000 円
1,500,000 円
X3年度における一括償却資産の損金算入限度額の計算
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─ + 1,500,000 × ─
600,000 × ─
+ 900,000 × = 1,000,000円
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会計処理方法
一括償却資産の会計処理には、2つの方法があります。
一括償却資産の会計処理方法
処理方法
会計処理(仕訳例)
申告調整
会計処理と税務処理が
一致する方法
❶事業供用事業年度 ⇨ 資産計上
一括償却資産 150,000 / 現金預金 150,000
❷事業供用事業年度以後 年間 ⇨ 均等償却
減価償却費 50,000 / 一括償却資産 50,000
なし
会計処理と税務処理が
異なる方法
●事業供用事業年度 ⇨ 費用処理
消耗品費 150,000 / 現金預金 150,000
以後、仕訳なし
❶事業供用事業年度
⇨ 別表四で100,000円加算(一括償却資産の損金算入限度超過額)
❷事業供用事業年度の翌事業年度、翌々事業年度
⇨ 別表四で50,000円減算(一括償却資産の損金算入限度超過額認容)
規定適用上の注意点
① 対象となる減価償却資産
取得価額20万円未満の減価償却資産の全てを適用の対象とする必要はなく、任意の一部の資産を対象とすることもできます。
② 事業年度の途中で事業供用した資産がある場合
一括償却資産のうちに事業年度の途中で事業供用したものが含まれていても、その資産について損金算入限度額を月数按分する必要は
ありません。
の前期(事業供用事業年度)における損金算入限度額
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150,000 × ─
= 50,000円
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10月に事業供用しているが月数按分はしない
③ 均等償却期間(3年)内に滅失、廃棄、売却した場合
均等償却している3年の間に資産が滅失したり、資産を廃棄した場合、その事業年度に除却損に相当する額を損金の額に算入すること
は認められません。損金の額に算入することができるのは、均等償却額です。一括償却資産を売却した場合も、同様の取扱いとなります。
の当期における損金算入限度額
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150,000 × ─
= 50,000円
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月に廃棄しているが損金算入限度額の計算に影響はない(
年均等償却を続ける)
④ 明細書の添付
制度の適用を受ける場合には、別表十六(八)「一括償却資産の損金算入に関する明細書」を確定申告書に添付することが必要です。
一括償却資産について、固定資産台帳等で個別の資産ごとに管理を行っているケースがあります。台帳上は個別管理の
対象としていても、除却や売却等が生じたときに個別に計算した損益を計上しないよう注意が必要です。
しの とう
あつ こ
篠藤 敦子(公認会計士・税理士)
著者紹介
名古屋市出身。津田塾大学卒業後、平成
北区堂島)開業。平成20年
年公認会計士登録。大手監査法人を経て平成
年に篠藤公認会計士事務所(大阪市
月より甲南大学大学院社会科学研究科会計専門職専攻教授。企業の監査役を兼務している。
月