平成28年１月第10回決算で減価償却費を計上しなかった場合公認会計士・税理士篠藤敦子適正な期間損益計算のためには、減価償却は、一定の方法に従って、毎期、計画的・規則的に実施する必要があります。しかし、中小企業においては、利益の額との兼ね合いから、費用として計上する減価償却費を本来計上すべき金額より少なくすることもあるようです。この場合においてて、損金の額に算入する償却費はどのように計算されるのでしょうか。決算処理の過程で、当期の利益が計画値を下回ることが判明したため、本社社屋分の減価償却費を計上しないことになり決算ました。税務申告書の別表４で、本社社屋の償却限度額に相当する金額を減算することにより、その金額を損金の額に算入ましたすることは認められますか。するここ減価価償却資産につき償却費として当期の損金の額に算入される金額は、会社が償却費として損金経理した金額のうち、償価却限度度額に達するまでの金額です。本社社屋については、確定した決算において減価償却費を計上していませんので、償却度費としして当期の損金の額に算入される金額はありません。解説減価償却費の計算は、会社が内部的に行うものです。その計算を全て会社の意思に任せることは、課税の公平の見地から好ましくありません。そこで、法人税法は、減価償却資産の取得価額や耐用年数、償却方法等を詳細に規定することにより、減価償却の計算に関して会社の恣意性を排除しています。１償却費の損金算入要件減価償却資産の償却費を各事業年度の損金の額に算入するには、次の要件を満たしている必要があります。償却費の損金算入要件 ① 償却費として損金経理していること損益計算書科目金額 ⋮ 売上高 ⃝⃝円 ⋮ 損益計算書に費用として計上販売費及び一般管理費減価償却費 ⃝⃝円 ② 選定した償却方法に基づいて計算した償却限度額に達するまでの金額であること損金経理した償却費（財務諸表に計上した減価償却費）いずれか少ない金額を損金の額に算入する償却限度額（法人税法の規定に基づいて計算した限度額）損金経理とは、確定した決算において費用や損失として経理すること、すなわち損益計算書や製造原価報告書において費用や損失として計上していることをいいます。つまり、損益計算書や製造原価報告書に減価償却費として計上していなければ、償却費を損金の額に算入することは認められないということです。本事例の検討本社社屋については、確定した決算において減価償却費を計上していませんので、損金経理の要件を欠くことになります。別表４で減算処理を行うことにより、償却費を当期の損金の額に算入することは認められません。償却費を損金の額に算入するには、償却費として損金経理していることが要件となります。なお、償却費の科目を用いていなくても、次のような金額は、償却費として損金経理した金額に含まれるものとして取り扱います。 ● 減価償却資産の取得価額とすべき付随費用のうち、取得原価に計上せず費用処理した金額 ● 修繕費処理した金額のうち、資本的支出に該当するものとして損金の額に算入されなかった金額 ● 減価償却資産について計上した除却損又は評価損のうち、損金の額に算入されなかった金額しのとうあつこ篠藤敦子（公認会計士・税理士）著者紹介名古屋市出身。津田塾大学卒業後、平成北区堂島）開業。平成20年年公認会計士登録。大手監査法人を経て平成年に篠藤公認会計士事務所（大阪市月より甲南大学大学院社会科学研究科会計専門職専攻教授。企業の監査役を兼務している。