平成28年度の主な税制改正

平成28年
月
平成28年度の主な税制改正
公認会計士・税理士
納税環境整備
八代醍 和也
平成28年度税制改正における改正事項のうち、納税環境整備に関して、いくつかの注目すべき改正が行われています。平成28年度税制改正は、
法人税率の引下げや減価償却方法の見直し等の大きなトピックがありますが、今回はこれらの影に隠れて、意外と見落しがちな納税環境整備関連
の改正を採り上げて解説します。
1 クレジットカード納付制度の創設
国税の納付方法について、従前の方法に加えて、インターネット上でのクレジットカードによる納付を可能とする制度が創設されました。
今般創設された制度の内容を図示すると、右図のようになります。
■ クレジットカード納付制度の概略図
留意点は以下のとおりです。
税目、納税額について制限はありません。
た だ し、ク レ ジ ッ ト カ ー ド 会 社 の 取 扱 い 上、納 税 額 が
1,000万円未満の場合に限定されます。
納付受託者であるクレジットカード会社が、納税者から委
託された納付手続を受託した日が納付日とみなされます。
クレジットカード利用手数料は、納税者の負担となります。
この改正は、平成29年1月
について適用されます。
① 納付を委託
納税者
③ 請求
納税者の
取引銀行等
② 納付
日本銀行
(代理店)
④ 口座引落
日以後に国税の納付を委託する場合
2 加算税制度の見直し
クレジット
カード会社
(納付受託者)
3 延滞税の計算期間等の見直し
① 事前通知を受けて修正申告等がなされた場合の措置
当初申告の適正性確保のため、調査の事前通知以後、更正予知
(その調査があることにより更正又は決定があるべきことを予知す
ること)前に修正申告がなされた場合に新たに過少申告加算税が課
されるとともに、期限後申告又は修正申告に基づく無申告加算税の
税率が改正されました。
この制度の概要は、次のようになります。
■ 事前通知を受けて修正申告等がなされた場合の税率
税率(カッコ内は改正前の税率)
事前通知以後、更正予知前の修正申告
に基づく過少申告加算税
%※1
( %)
事前通知以後、更正予知前の期限後申
告又は修正申告に基づく無申告加算税
(
10%※
%)
延滞税は法定納期限の翌日から納付日まで日割計算されますが、今回
の改正で、一定の場合に延滞税や加算税が課税されない措置が設けられ
ました。
① 延滞税について
申告後に減額更正がされ、その後、さらに増額更正又は修正申告(以
下、「増額更正等」といいます。
)があった場合における増額更正等によ
り納付すべき税額(申告税額に達するまでの部分に限ります。)について、
その申告により納付すべき税額の納付日の翌日から増額更正等までの間
(減額更正が更正の請求に基づくものである場合には、減額更正がされ
た日から1年を経過するまでの期間を除きます。
)は、延滞税が課され
ないこととなりました。
改正後の取扱いを図示すると、以下のようになります。
■ 改正後の取扱いのイメージ
※1 期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える場合、その部分は10%
※ 納付すべき税額が50万円を超える場合、その部分は15%
調査前の修正申告であっても、事前通知以後は加算
税が課されるようになります。
当初申告納付
減額更正
増額更正
修正申告
② 無申告又は仮装・隠蔽の繰り返しに対する加重措置
無申告又は仮装・隠蔽を繰り返す納税者に対する罰則を強化する
観点から、これらに対する加重措置が設けられました。
すなわち、期限後申告若しくは修正申告又は更正若しくは決定等
があった場合で、その期限後申告等のあった日の前日から起算して
年前の日までの間に、その同じ税目に係る無申告加算税(更正予
知によるものに限ります。
)又は重加算税を課されたことがある場
合には、各加算税の税率が次のとおり10%加重されます。
減額更正が
職権更正に
基づく場合
■ 無申告等の繰り返しに係る税率
減額更正が
更正の請求に
基づく場合
税率(カッコ内は改正前の税率)
加算税の種類
無申告の場合
延滞税が
課されない※1
延滞税が※1
課される※
延滞税が
課されない※1
25%(15%)※
無申告加算税
重加算税
(過少
・
不納付に代えて課されるもの)
仮装・隠蔽の
場合
重加算税
(無申告に代えて課されるもの)
45%(35%)
50%(40%)
※ 納付すべき税額が50万円を超える場合、その部分は30%(20%)
過少申告加算税及び源泉所得税の不納付加算税につ
いては、加重措置の対象外です。
①②ともに、平成29年1月1日以後に法定申告期限が到来する国
税について適用されます。
や しろ だい
延滞税が課されない※1
※1 申告税額に達するまでの金額に限ります。
※ 減額更正がされた日から1年を経過するまでの期間
② 加算税について
上記①の延滞税の計算期間の見直しに併せて、増額更正等により納付
すべき税額※(申告税額に達するまでの部分に限ります。)については、
過少申告加算税が課されないことが明確化されました。
※ 減額更正が更正の請求に基づくものである場合を除きます。
これらの改正は、平成29年1月1日以後に法定申告期限等が到来する
国税について適用されます。
かず や
八代醍 和也(公認会計士・税理士)
著者紹介
八代醍会計事務所
同志社大学経済学部卒業。税理士法人勤務を経て、2008年(平成20年)公認会計士試験合格後に大手監査法人に入社。主に国内上場
企業に対する法定監査業務に従事。2012年(平成24年)に公認会計士登録。
2016年(平成28年)に税理士登録、独立開業。現在は、税務・会計両面の経験を活かし、各種コンサルティング業務に従事。