2016.6.17. 大学入門講座 多文化主義への理解 依岡隆児 はじめに 課題: 「徳島において、いかにすれば多文化共生は可能か」 *ポイント:現代日本は多民族・多文化化していることの認識。差別の構造の理解。外国人・ マイノリティ差別の実態把握。外国人との協働とその社会的・文化的メリットの認識。文 化と文化の境界に立つ人々に注目。 *背景:ヘイトスピーチ、嫌中・嫌韓、シリア難民急増、日本礼讃ブーム…… 訪日外国人観光客急増(年間 2000 万人以上) 、留学生増 …… *日本の外国人登録者数 2014 年、日本の外国人は 212 万 1,831 人。中国人 30.9%、韓国人 23.6%、フィリピン人、 ブラジル人、ベトナム人…… 労働者、留学生、国際結婚など。 (参考、 『多民族ニホン― 在日外国人の暮らし』国立民族博物館、2004 年) *徳島では:中国人研修生問題、徳島大学国際交流会館建設問題など *徳島在住の外国人教員・留学生のみた日本・徳島 シートゲス先生と留学生たち 1、 外国人とは 移民: (難民、亡命者) 今に始まったことではない、東方植民、貿易、新大陸移住、宗教的迫害(ユグノー派、ピュ ーリタン) 、ユダヤ人…… ヨーロッパにおける難民・移民の流れ、移民排斥運動・極右の台頭 社会的不安への懸念 ➡外国人犯罪の増加は、本当か? サラダボール ビデオ「文化は混血する」 差別の構造 * エンツェンスベルガー『国際大移動』 : 「車室の先客」 「異邦人への別称」 ➡差別の構造を知る! 2、 「境界人」のススメ * 杉本良夫『日本人をやめる方法』 (ちくま文庫) : 「越境主義」 「マージナルマン」 * クリステヴァ『外国人』(1988 年): 「他者とは自分のこと」 「エトランジェ、それは驚く なかれ、外人は我々自身のなかに住んでいる」 「我々のアイデンティティの隠れた顔」 →新しい帰属意識、影を統合する関係性の哲学を! * ギュンター・グラス(ジプシー擁護、亡命権制限に反対)…… 1 バイリンガル作家 * 多和田葉子『カタコトのうわごと』 (1999 年) :ドイツ語で書く日本人作家。 「エクソフ ォニー」 * リービ英雄『日本語を書く部屋』 (2001 年) :日本語で書く外国人。万葉集の歌人・山 上憶良は帰化人? 日本語の複合性。 ➡外国人であることの積極的意味:複眼的思考 3、 多文化社会に向けて *「異文化」とは?外国文化? 見えない境界の存在 *「多文化主義」とはなにか: 「文化差異の承認」 「アイデンティティ」…ジレンマも *徳島大学国際交流会館建設問題:1994 年に建設計画が明らかになったとき、地元の北島 町で建物の敷津周囲に 2 メートルのフェンスや照明設備の設置を要求、建設が危ぶまれる。そ の後、住民側との対話で、建設にこぎつけ、現在では町は国際交流会を定期的に開いている。 *「外国人だから悪いの?」 (共同通信社) :外国人入浴拒否事件 ➡対話の大切さ *徳島大学での取り組み:異文化キャラバン隊…… ➡「お客様」ではなく *徳島在住の外国人教員・留学生からの意見 シートゲス先生と留学生たち ○私の意見: 「地域の人々と協働する場(多文化フェス企画運営、農業体験など)を設けな がら、外国人を社会的・文化的豊かさをもたらすものとして積極的に受けいれれば、徳島 において多文化共生は可能となる」 おわりに 参考文献: 青木保『多文化世界』 、岩波書店(新書) 、2003 年 岩渕功一『多文化社会の<文化>を問う』 、青弓社、2010 年 エンツェンスベルガー『国際大移動』 、晶文社、1993 年 カミュ『異邦人』 、新潮社(文庫) 、1985 年 姜尚中『在日』 、集英社、2004 年 共同通信社編集委員室編著『新開国考・多国籍ジパングの主役たち』 、明石書店、2003 年 クリステヴァ『外国人』 、法政大学出版会、1990 年 杉本良夫『日本人をやめる方法』 、筑摩書房(ちくま文庫) 、1994 年 『多民族ニホン―在日外国人の暮らし』国立民族博物館、2004 年 多和田葉子『カタコトのうわごと』 、青土社、1999 年 依岡隆児『ギュンター・グラス~『渦中』の文学者』 、集英社(新書) 、2013 年 リービ英雄『日本語を書く部屋』 、岩波書店、2001 年 2
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