平成27年度 総合教育センター 研究報告書 第391 号 ダイジェスト版 『体育・保健体育における「協調学習」の進め方 』に関する調査研究(1/1年次) 埼玉県立総合教育センター 教育課程(体育・保健体育) 担当 Ⅰ 主題設定の 背景と研究の目的 体育・保健体育授業において、小集団(グループ等)を活用した実践事例は、多く存在する。 しかし、子供たちの主体的な学びに主眼を置いた授業実践は、決して多いとは言えない。 本研究は、 「知識構成型ジグソー法」を用いた授業の実践研究を通して、児童・生徒の思考 力・判断力・表現力をより効果的に高めることのできる教材の開発と主体的・協働的な学び を意図的に引き出す指導方法の確立を目指して実施した。 Ⅱ 研究の仮説と仮説検証の手立て 1 研究 の 仮説 体育・保健体育授業の中で協調学習「知識構成型ジグソー法」の手法を用いた授業を行 うことによって、児童・生徒は主体的に運動に取り組み、仲間と協働的に課題の発見や解 決に取り組むであろう。また、そのための指導方法の開発は、教師の授業改善につながり、 「豊かなスポーツライフの実現」を目指した効果的な授業実践にもつながるであろう。 2 仮説 検 証の 手 立 て (1)研究協力委員 による「知識構成型ジグソー法 」の理解 (2)授業計画上の工夫 に関する 協議 (体育授業における「知識構成型ジグソー法」の活用場面の検討) (3)協調学習に適 した運動領域や単元の授業案の検討と実践 (4)効果検証(形成的授業評価による児童・生徒の意識変化 ) Ⅲ 研 究 の 成果と課題 研究の成果 (1)各校種において 協調学習の授業実践と効果的な活用事例を開発することができた。 (2)形成的授業評価を用いて協調学習の効果について検証した結果、多くの授業で 「成果」「関心・意欲」「学び方」「協力」の項目が向上し、生徒の意識に変容 が見られた。 (3)「知識構成型ジグソー法」について、全研究協力委員が その有効性を 実感する とともに継続的な授業改善の必要性を再認識した。 今後の課題 (1)主体的・協働的な学びを 、より効果的 に引き出すための教材、教具、学習資料 等 の開発(ICT活用を含む) (2)授業計画上の位置付け等、効果的に協調学習を展開するための 活用場面に関する 研究 (3)教師の「知識構成型ジグソー法」 に関する研修機会の充実と普及 (4)「知識構成型ジグソー法」の効果に関する客観的・具体的な検証方法の研究と開発 (5)その他(運動技能に関する検証、運動量に関する検証、評価方法に関する研究等) - 1 - 体 育 ・ 保 健 体 育 (実 技 )授 業 に お け る 特 徴 的 な 実 践 事 例 の 紹 介 ( 小 ・ 中 ・ 高 等 学 校 ) Ⅳ 研究の取組と結果 (1)小学校の実践例: 小学校6年生「ボール運動( ソフトバレーボール )」 ・エキスパート(3種のアタック) ・ジグソー(チーム戦術の検討) ・クロストーク(試合で自他の集団技能向上) ⇒攻 撃 方 法 を理 解 ⇒チーム戦 術 を考 案 ⇒集 団 技 能 の習 熟 と他 チーム戦 術 の認 知 ⇒自 チームの集 団 技 能 、戦 術 の改 善 … ・エキスパート資料 PDCA ・形成的授業評価 協調学習を通して、児童の「授業外での作戦会議」「戦 術に関する共通言語」「新たな攻撃方法」が生まれた。 - 2 - 第5時、第6時に協調学習を取り入れた。「成果」の値 が向上し、その後どの項目も高い値で授業が進んだ。 (2)中学校の実践例: 中学校3年生「器械運動(マット運動・跳び箱運動)」 ・エキスパート資料 ・形成的授業評価 ・エキスパート (器械の使い方・演技内容・採点方法) PDCA ・ジグソー(自チームの演技構成の考案) ・クロストーク(自チームの演技構成の再考) 形成的授業評価の推移 3.00 2.60 総合評価 _ 2.20 ・ マ ・ ス ・1.80 成果 意欲・関心 学び方 1.40 協力 個 人 技 能 として捉 えがちな器 械 運 動 を集 団 演 技 という形 で教 材 化 した。その上 で… ⇒チーム内 の個 人 技 能 や採 点 項 目 を意 識 し た演 技 構 成 を考 案 ⇒練 習 ・発 表 を通 して新 たな発 見 、気 付 き ⇒自 チームの個 人 技 能 の習 得 ・習 熟 と集 団 演 技 の高 まり 1.00 第1時 第2時 第3時 第4時 第5時 第6時 第7時 第8時 第9時第10時第11時第12時 時数 協調学習を行った第4時は、どの項目も低下を示した。 しかし、その後の活動は伸びを示し、生徒の意識に変化 が見られた。 - 3 - 協調学習を通して、生徒の「教え合い」の場面が数多く 見られた。個の能力差を集団演技でカバーしようとする 演技構成が見られた。器械運動終了後のアンケート結果 で「好き」と答える生徒が9割であった。 (3)高等学校の実践例:高等学校1 年生「器械運動(マット運動)」 ・エキスパート資料 ・ エキ ス パー ト 資料 ・形成的授業評価 ・エキスパート【技能の習熟度で3つに分類】 (A運動構造・B習熟・Cつまずき) ・ジグソー(与えられた道具を基に教具の開発) ・クロストーク(他のグループが考案した教具で練習) 与 えられた道 具 を基 に練 習 方 法 (教 具 の開 発 )を 考 案 することで生 徒 全 員 が側 方 倒 立 回 転 の運 動 構 造 を理 解 し、協 働 的 に技 能 習 得 に取 り組 む。 第2時、第3時に協調学習を取り入れた。第2時では、 「学び方」が、第3時では「成果」が顕著に向上した。 その後の活動では、どの項目も高い値で推移している。 協調学習を通して生徒の「教え合い」が自然と生まれて いた。例年と比較して「側方倒立回転」を習得する生徒 の割合が増えた。 体力向上に向けた「合い言葉」 研究報告書は、埼玉県立総合教育センターのホームページ 「コツコツときたえた体は たからもの」 (http://www.center.spec.ed.jp/)か ら 閲 覧 で き ま す 。 - 4 -
© Copyright 2024 ExpyDoc