iCAP シリーズ ICP発光分光分析装置による硫酸中の微量金属分析

Technical Note EL14005
iCAP シリーズ ICP発光分光分析装置による
硫酸中の微量金属分析
サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社
キーワード
試験内容と手順
ICP-OES /硫酸10% /微量不純物/安定性試験
①メソッド検出限界調査
ブランク、1 mg/L標準試料の2点で検量線を作成後、ブランクを
概要
このテクニカルノートでは、
Thermo Scientific™ iCAP™ 7000シリーズを用いた硫
酸中の不純物分析について、
その検出性能と安定性を報告します。
10回繰り返し測定し、メソッド検出限界(3 σ)を算出しました。
②1時間の連続導入安定性試験
①の測定後、1 mg/L標準試料を連続1時間導入しました。この間、
10分ごとに測定を行い、定量値を算出しました。
試験の目的
代表的な不純物金属元素6元素について、硫酸10 %試料を直接
装置と機器構成
導入した場合のメソッド検出限界を求めました。また、標準を添
測定には iCAP 7400(または7600)Duoモデルを使用し、軸方
加した硫酸10 %試料を1時間連続導入して、定量値の安定性を評
向測光にて微量元素を測定しました。試料導入系には高塩濃度
価しました。
試料用キットを用いました。粘性の高い硫酸の導入には、高塩濃
度用ネブライザーとバッフルチャンバーが適しています。主な試
料導入系の構成と、機器パラメーターを表1に示します。
測定試料
下記の2試料を調製しました。
・ブランク試料:H2 SO4 10 %液性
・1 mg/L標準試料:H2 SO4 10 %液性に Al, Cd, Ni, Cr, K, Na
(1 mg/L )を添加したもの
表1:メソッドパラメーター
パラメーター
設定
高周波出力
1250 W
プラズマガス流量
12 L/min
補助ガス流量
0.5 L/min
ネブライザーガス流量
試料置換時間
測光方向
積分時間
繰り返し測定回数
ネブライザー
スプレーチャンバー
センターチューブ
0.65 L/min
45秒
軸方向
低波長 15秒 高波長 10秒
n=3
高塩濃度試料用(エアロサルト)
高塩濃度試料用(バッフルチャンバー)
高塩濃度試料用 2.0 mm
表 2:硫酸10%におけるメソッド検出限界
元素
波長 (nm)
MDL (µg/L)
Al
Cd
Cr
K
Na
Ni
396.152
214.438
267.716
766.49
588.995
221.647
2.0
0.08
0.69
1.3
1.1
0.69
試料名
測定時刻
1 ppm-0 min
1 ppm-10 min
1 ppm-20 min
1 ppm-30 min
1 ppm-40 min
1 ppm-50 min
1 ppm-60 min
14:43
14:53
15:03
15:13
15:23
15:33
15:43
Al
Cd
Cr
K
Na
Ni
396 .152 nm
214 .438 nm
267.716 nm
766 .490 nm
588 .995 nm
221.647 nm
1.007
1.007
1.01
1.008
1.006
1.008
1.008
1.008
0.001
0 .12
1.002
1.001
1.003
0.999
1.000
1.000
0.991
0 .999
0.004
0 .38
1.007
1.007
1.008
1.004
1.004
1.006
1.002
1.005
0.002
0.21
1.01
1.007
1.016
1.011
1.01
1.013
1.016
1.012
0.003
0 .33
1.009
1.009
1.014
1.007
1.008
1.01
1.011
1.010
0.002
0.23
1.002
1.002
1.005
1.000
1.001
1.002
0.994
1.001
0.003
0 .33
平均
標準偏差
%RSD
Technical Note EL14005
(濃度の単位:mg/L )
表3:硫酸10%マトリックス1 mg/L標準液の1時間連続導入の安定性結果
結果
①硫酸10 %マトリックスにおける検出限界
表 2に、各元素の測定波長とメソッド検出限界(n=10のブランク
測定の3 σ)を示します。いずれの元素についても µg/Lオーダー
の検出限界値が得られ、水溶液ベースとほぼ同等の検出性能が
確認されました。
図1に、代表的な検量線およびプロファイル(Cd )を示しました。
②硫酸10 %マトリックス試料の1時間連続導入安定性
1 mg/L標準試料を1時間連続導入し、10分ごとに7回測定した定
量値を表3に示します。相対標準偏差で0.5%以下という、非常
に安定した結果を確認しました。
まとめ
iCAP 7000 シリーズ ICP-OESは、その強靭なプラズマにより、
硫酸10 %マトリックスのような非常に粘性の高い試料において
も、高い検出性能と安定性に優れた分析値を提供します。
図1:硫酸10%における Cd 214.438 nmの検量線とサブアレー
プロット
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