熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System Title ヒト正常腎組織と小児腎糸球体疾患におけるinverted formin 2(INF2)タンパク発現の検討 Author(s) 田村, 博 Citation Issue date 2016-03-09 Type Thesis or Dissertation URL http://hdl.handle.net/2298/34643 Right 田村 博 氏 の 学 位 論 文 審 査 の 要 旨 論 文題 目 ヒ ト正 常 腎 組 織 と小 児 腎 糸球 体 疾 患 に お け るinverted formin 2(INF2) タ ンパ ク発 現 の検 討 (Analysis of inverted formin 2(INF2)in normal human kidney and pediatri glomerular diseases) 近 年 、 腎 糸球 体 ポ ドサ イ トに特 異 的 に発 現 す る タ ンパ クが 次 々 と発 見 され 、 濾 過 機 能 調 節 に 重 要 な役 割 を 担 って い るこ とが 明 らか と な って きた 。 これ らは ポ ドサ イ ト突 起 間 に存 在 す る ス リッ ト膜 の 機 能 を調 節 し、 その 異 常 が ネ フ ロー ゼ 症 候 群 等 の 腎疾 患 を きた す こ とか ら、新 た な 治 療標 的 と して も注 目され る 。Invert£d formin2(INF2)は 、常 染 色 体 優 性 巣 状 分 節 性 糸球 体 硬 化症(FSGS)の 責 任 遺 伝 子INFZの 遺 伝 子 産 物 と して 同定 され た ア ク チ ン関連 タ ンパ ク で あ る 。 腎臓 で は ス リッ ト膜 タ ンパ ク と共 在 して ポ ドサ イ トに 発 現 し、糸 球 体 係 蹄 構 造 維 持 に お け る意 義 が 示 唆 され る 。 しか し、 タ ンパ ク尿 発 症 へ の 関与 や ネ フ ロー ゼ症 候群 で の 病 態 生 理 的意 義 は 明 らか で な い 。 申 請 者 は 今 回 、 ヒ ト正 常 腎組 織 に お けるINF2の 小 児 腎 糸球 体 疾 患 に お け るINF2発 発現 を検 討 す る と と もに 、 現 を解 析 し、 病 態 との 関 連 に つ い て検 討 を行 った 。 方 法 と して 、 まず 、 ウ サ ギ を用 い てINF2タ ンパ クC端 腎癌 の手 術 よ り得 られ た ヒ ト正 常 腎臓 に お けるINF2発 に対 す る 抗INF2ポ リク ロー ナ ル 抗 体 を作 製 し、 現 に つ い て 、 ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト法 お よ び 免疫 組 織 化 学 に て検 討 した 。次 い で 、小 児 の微 小 変 化 群(MCD,n=18)、FSGS(n=8)、IgA腎 症(IgAN,n=17)、 非IgA型 メサ ンギ ウム 増 殖 性 腎 炎(non・IgAN,n=5)、 患 に お いてINF2発 紫斑 病 性 腎 炎(HSPN,n=8)の5疾 現 の 免 疫 組 織 化 学 的 検 討 を行 い 、シナ プ トポ ディン 発 現 との 比 較 を行 った 。さらに 、INF2発 現 と病 態 お よび 臨 床 的 重 症 度 との 関連 に つ いて 統 計 学的 解 析 を行 った 。 そ の 結 果 、ヒ ト正 常 腎皮 質組 織 、お よ び単 離 糸 球 体 組 織 を用 い た ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ トで は 、予 想 され る140 kDaの 位 置 にバ ン ドを認 め た 。INF2の 免 疫 組 織 化 学的 検 討 で は 、足 突 起 の マー カー で あ る シナ プ トポ デ ィ ン、 お よ び 一次 突起 の マ ー カ ー で あ る ビメ ンチ ン と共 に染 色 され 、INF2は に 発 現 す る と考 え られ た 。 ま た 、INF2は ポ ドサ イ トの 一 次 突 起 と 足 突起 腎 臓 内の 動 脈 血管 壁 に も発 現 し、 平 滑 筋 ア クチ ン と一 部 共 存 して いた が 、尿 細 管 、 間 質 に は 認 め られ な か った 。小 児 腎 疾 患 の検 討 で は 、MCD、IgAN、non・IgAN、HSPN で は 全 症 例 でINF2の 染 色 性 が 維 持 され 、 正 常 腎組 織 同様 に 、 糸 球 体 基 底 膜 に沿 って 線 状 、一 部 穎 粒 状 を呈 した 。一 方 、FSGSで は8例 中5例 で 染 色 性 が 消 失 、3例 で 染 色 性 の 高 度 低 下 を認 め た 。INF2発 現 と尿 タ ンパ ク量 、薬 剤 との 関連 や 、再 発 ・寛解 例 で の 変 化 は認 め なか った が 、 ス テ ロイ ド抵 抗 性 ネ フ ロー ゼ 症 候 群 で はINF2の とFSGSの 染 色 性 低 下 が 予 後 不 良 と関 連 す る可 能 性 が 示唆 され た 。以 上 よ り、INF2発 現 の 検 討 に よ りMCD 鑑 別 に 役 立 つ可 能 性 、 難 治 性 ネ フ ロー ゼ 症 候 群 の病 態評 価 に 有 用 で あ る可能 性 が 示 唆 され た 。 審 査 で は、1)抗INF2抗 4)ポ 体 の 特 異 性 、2)INF2の ア イ ソ フ ォー ム 、3)INF2の 想 定 され る生 理 的 役 割 、 ドサ イ ト傷 害 マー カー と して の シナ プ トポ デ ィ ン との 差 異 、5)腎 臓 以 外 の 組 織 で の 作 用 、6)臨 床応 用 へ の 展 望 、 等 の 質 疑 が な され 、 申請 者 か ら概 ね 適 切 な 回 答 が な され た 。 本 研 究 は 、新 規 ポ ドサ イ ト関連 タ ンパ ク の解 析 か ら小 児 腎糸 球 体 疾 患 の 病 態 に 関 す る 新 た な 知 見 を示 し、 ス テ ロイ ド抵 抗 性 ネ フ ロー ゼ症 候 群 の 病 態 評 価 に 有 用 で あ る可 能 性 を示 した 。 さ らに 、 ネ フ ロー ゼ 症 候 群 の 鑑 別 診 断 に お け る有 用 性 を示 唆 す る研 究 で あ り、学 位 の授 与 に 値 す る もの と評 価 した 。 審螢 員長 腎臓内科朝 当教授 向 必 玖 臨
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