地 域 の 慣 習 を 重 ん じ る

営
経
ほどなく葬儀屋として本格的に取り組んだのは
するのが通例の儀式を取り仕切っていました。
を入れたあと、町内の若衆が墓場まで担ぎ埋葬
期、土葬が一般的だったこの時代、棺桶に遺体
弊社創業者の駒木松五郎は、幕末から明治初
会長も務めました。6年前に他界しましたが、
に全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連)の副
車を導入、岩手県葬祭業協同組合を設立、のち
感の中にいましたが、一念発起、県内初の霊柩
悦郎は一時、敗戦で多くの戦友と死別した虚脱
を切り盛りしていました。終戦となり帰盛した
で出征していたため、戦時中は家族と番頭で店
めることが出来たと思っております。
を導入するには結構面喰いましたが、見聞を広
大手と地方の中小企業との違いに戸惑い、手法
と人夫といった体質が色濃く残っているなど、
のの、弊社に数人いた従業員はどちらかという
規模でした。私なりにいろいろ学んでは来たも
行件数、従業員数、売上高すべて弊社の 倍の
手葬儀社に修行に入りました。その会社は、施
葬儀です。盛岡での葬儀を仕切ったのは、2代
南口で暴漢によって暗殺された平民宰相原敬の
月4日、東京駅丸の内
弊社として歴史的に特筆する葬儀の施行は、何
力で他の仕事で飯を食え」と書かれていたので
は、
「今は家業にお前を必要としていない、自
思いがけない1通の手紙が届きました。手紙に
かり思っていましたが、大学4年の秋に父から
私は大学卒業と同時に家業に入るものとば
鬼で見切り発車的に作りましたが、利用客が予
内初の通夜会場を建設しました。当時は疑心暗
先駆けとなった葬祭会館事業で、本社近くに県
就任し最初に手掛けた事業は、九州と北海道が
時は流れて、平成8年、私が5代目の社長に
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岩手経済研究 2016 年5月号
サ ロ ン
「地域の慣習を重んじる」
2代目若松で、明治 年に「商い」として確立
今思えば仕事以外の話ももっと聞きたかった
葬儀屋としての出発
しました。当時、葬儀を商売として行っていた
目若松と3代目孫次郎でした。2人は盛岡駅で
す。それはまさに青天の霹靂、就職活動をして
想以上にあり、全国的にも広がりを見せるなか、
年
原敬の遺体を迎え、雨の中、400メートルに
いない私は、あわてて先輩にお願いし、運よく
と言っても大正
も及ぶ葬列とともに原敬の菩提寺である大慈寺
2 店目の会館建設はかなり後手を引きまし
県内でもこれを機に同業他社が競って建設、現
きました。父の助言もあり、はじめは京都の大
金融機関に就職できました。そこで4年勤務し
り行われました。
年から終戦ま
へと向かい、しめやかにそして厳かに葬儀は執
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在に至っております。
会館ブーム
と、多少なりとも悔やんでおります。
駒 木 進
のは全国的にも数えるほどだったといいます。
株式会社駒木葬祭
(盛岡市)
代表取締役
た後、株式会社に法人化すると同時に家業に就
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4代目である父悦郎は昭和
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経 営 サ ロ ン
しています。私はお客様に人生 年、 年の間、 「生き往きセミナー」を開催しております。主
店目は場所にこだわり北山界隈と決めていまし
の寺の下寺院群、それと北山の寺院群です。2
あり、ひとつは弊社の本社がある大慈寺町周辺
をかけることとは、まったく意味合いが違いま
ですかと、必ず提言させていただきます。費用
った人生ですので普通に送ってあげたらいかが
親族近隣、友人、知人、たくさんの人とかかわ
が、毎回盛岡グランドホテルを会場に開催して
死を迎えるか」です。
で安心した最期を迎えるヒント「いかに明るく
軸となるテーマは、超高齢化・核家族社会の中
た。ご承知の通り、盛岡には2ヵ所の寺院群が
た。4年前に運よく土地を取得し、翌年完成に
す。そしてやがて大半の方は私のことばに納得
おります。レギュラーでお願いしているお寺の
年に開始し、既に9回を数えました
こぎつけました。火葬場の至近距離にあり使い
してくれます。有難いことです。これからも提
住職と人気アナウンサーのお2人には筆舌に尽
くし難いほどの心からの感謝の念を抱いており
平成
勝手のある会館だと思っております。一度見学
言し続けていきたいと思っております。
弊社の会館に対するコンセプトは、あくまで
儀は、それなりに意味を持つものであり、厳か
葬を薦めております。御本尊のある本堂での葬
企業として、社会へ様々な情報を提供・発信す
様のニーズに対応しつつも一歩先を行く盛岡の
弊社では、葬儀社としてだけではなく、お客
儀に関することとか、素朴な疑問にも答える対
していただいております。ご講演のあとには葬
イムリーな方をお招きし、それぞれにご講演を
ます。そして毎回ゲストとして趣旨に沿ったタ
な儀式になります。寺院葬という昔から地域に
は楽でした。ご先祖さまに感謝、感謝
精霊に挨拶致します。今年は雪が少なくお参り
から墓前に赴き「舎利礼文」を3回唱え先亡諸
「大悲心陀羅尼」
「舎利礼文」を唱えます。それ
す」と誓います。つぎに仏壇の前で「般若心経」
日朗らかに、安らかに、喜んで、進んで働きま
朝5時に起床し、先ずは神棚に拝礼、
「今日1
最後に私の早朝のルーティンをご紹介します。
ます。一度いらしてみませんか。
のひとつとしてとらえ、続けたいと思っており
らもごく小さなことではありますが、社会貢献
200名ほどの皆様の参加があります。これか
談など、毎回好評をいただいており、いつも
人を偲び長く心にとどめるような葬儀ができれ
ばと思っております。
諸行無常 諸法無我
諸行無常―仏教用語で万物は移り変わるも
ので、全ては変化の過程にあり一つとして恒久
なるものなどないということですが、会社経営
的には、その時代の流れやニーズをその都度的
確に捉え、情報収集し、決断、実行しなければ
なりません。そして、これを素早くできる経営
者が未来永劫、存続する会社を作り上げるもの
笑顔で聴講する「生き往きセミナー」参加の皆さん
る、ということを主旨に、地域の皆様を対象に
「生き往きセミナー」
にいらしてください。
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根ざした先祖を敬う慣習を伝承することで、故
も通夜に使用する目的であり、お客様には寺院
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上げます。これからもよろしくお願いします。
ここまで拙文にお付き合いいただき感謝申し
‼
だと確信しております。
諸法無我―これも仏教用語で全てのものが
「かかわり」あって存続しているという意味で
すが、近頃「家族葬」ということばが独り歩き
岩手経済研究 2016 年5月号
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