臨時レポート「ブラジル:1-3月期GDPは経済安定化に向けた最初の兆候」

臨時レポート
ブラジル:1-3月期GDPは経済安定化に向けた最初の兆候
ブラジル経済の安定化は市場センチメントの改善につながるか
HSBC投信株式会社
2016年6月3日
 ブラジルは景気後退局面にあるが、1-3月期国内総生産(GDP)は安定化に向けた最初の兆候
 景気は2016年下半期に底入れし、2017年はプラス成長に転じるとの見方が市場のコンセンサス
インフレ率は既に低下傾向にあり、本年下半期に利下げの可能性も。経済は最悪期を脱しつつある
1-3月期GDPは安定化に向けた最初の兆候
 ブラジルは景気後退局面にあり、6月1日(水)に発
表された2016年1-3月期の実質GDP成長率は前
年同期比-5.4%と大幅に落ち込みました。
 しかしながら、前期比で見ると、マイナス幅は昨年
下 半 期 か ら 縮 小 傾 向 に あ り 、 本 年 1-3 月 期 は
-0.3%と、10-12月期の-1.3%から縮小しました。
レアル安を受けた輸出の回復が成長率にプラス
寄与しています。
図表1 ブラジルの実質GDP成長率の推移
15年1Q 2Q
3Q
4Q
16年1Q
前年同期比 -2.0% -3.0% -4.5% -5.9% -5.4%
前期比
-1.2% -2.0% -1.6% -1.3% -0.3%
出所:ブルームバーグのデータをもとにHSBC投信が作成
 また、景況感が悪化する中で、企業は在庫を削減
し て い ま す 。 1-3 月 期 の 成 長 率 は 前 年 同 期 比
- 5.4 % で し た が 、 在 庫 減 少 の 影 響 を 除 く と 同
-2.7%とマイナス幅は大きく縮小します。今後、在
庫調整が一巡すれば、成長率が上向くことが期待
されます。
景気底入れに期待
インフレ率は低下、本年下半期に利下げ余地
 一方、インフレ率は既に低下に転じています。拡
大消費者物価指数(IPCA)は2016年1月の前年
同月比+10.7%をピークに低下し、4月は+9.3%
でした。市場の予想インフレ率も低下しており、
2016年末は+7.1%、2017年末は+5.5%(ブラジ
ル中央銀行が集計する市場関係者の予想。
2016年5月27日時点)となっています。
図表3 IPCA上昇率(前年同月比)の推移
(2012年~2017年)
IPCA
(%)
12
10
予想
8
 景気は2016年下半期に底入れし、2017年はプラ
ス成長に転じるとの見方が市場のコンセンサスと
なっています。
図表2 GDP成長率の推移(前年比)
6
4
7.1%
5.5%
2
0
12/01 13/01 14/01 15/01 16/01 17/01 (年/月)
(2005年~2017年)
出所:ブルームバーグ、ブラジル中央銀行のデータをもとに
HSBC投信が作成、2016年末、2017年末は中央銀行集計
による市場関係者の予想(2016年5月27日時点)
(%)
10
8
6
4
2
0
-2
-4
-6
予想
0.6%
-3.8%
2005
2007
2009
2011
2013
2015
2017
出所:ブルームバーグのデータをもとにHSBC投信が作成 (年)
2016年、2017年はブラジル中央銀行集計による市場関係者
の予想(2016年5月27日時点)
1
 現在、政治の混乱による経済政策の停滞が企業
及び消費者の信頼感を損ねています。今後、5月
に発足したテメル代行政権の経済再建策が明ら
かとなり、政策実行力が認められれば、景況感
は改善し、市場センチメントの回復につながると
考えます。
当資料の「留意点」については、巻末をご覧ください。
 インフレ率が低下する中、ブラジル中央銀行は、
本年下半期に利下げに踏み切る可能性がありま
す。これはブラジル債券・株式市場にとり大きな
プラス要因となります。
このように、ブラジル経済は最悪期を脱しつつあ
ると当社では見ています。
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